博士課程は人生終了?満期退学・単位取得退学とは、修了後の就職率と学位を取れる期限(計算機つき)

博士課程は人生終了?令和7年3月の博士課程の卒業者16,278人のうち就職者70.0%(一定の有期雇用を含む)・うち無期雇用48.4%・進学も就職もなし22.0%・満期退学20.3%(人文科学は46.4%)、満期退学後に学位を取れる期間は退学後3年の研究科の例(学校基本調査) 生き方・キャリア

「博士課程 人生終了」「満期退学」「満期退学とは」「単位取得退学」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

博士課程に進むと人生終了、と言える統計はありません。令和7年3月に博士課程を出た16,278人のうち、就職者は11,388人(70.0%)です。この70.0%は、満期退学者と一定の有期雇用を含む、卒業した年の5月1日の状況で、入学した人が就職に成功する確率ではありません。統計を分けると厳しい面もはっきり出ます。学位を取らずに出た満期退学者が3,299人(20.3%)いて、人文科学では46.4%、社会科学では34.6%です。進学でも就職でもない「左記以外の者」が3,582人(22.0%)、期間の定めのある有期雇用が4,238人(26.0%)います(学校基本調査、割合は計算)。有期雇用4,238人のうち3,219人は就職者にも重なって数えられているので、70.0%・26.0%・22.0%は足し合わせられません。

満期退学(単位取得退学)とは、博士課程に所定の年限以上在学し、所定の単位を修得したけれど、博士の学位を取らずに退学することです。学校基本調査の定義は「所定の年限以上在学し,所定の単位を修得したが,博士の学位を取らずに卒業した者」です。満期退学・単位取得退学という言葉は法令にはなく、統計と大学の規程の言い方です。どれも博士号を取らずに博士課程を離れるときの呼び名ですが、成立の条件・研究指導の認定・退学後の学位申請の資格は、大学・研究科で違います。統計の上では中退に数えず、博士課程の「卒業者(修了者)」に含めて数えます。

満期退学したあとでも、大学・研究科の規程にある期間内に博士論文を出せば、課程を経た博士として審査を受けられる道があります。東京大学 人文社会系研究科・京都大学 文学研究科・早稲田大学 法学研究科の案内では、その期間は退学後3年です。全国一律の決まりではなく、期限を過ぎても、論文を出して審査を受ける博士(いわゆる論文博士)の道が大学の規程で開かれていることがあります。

知りたいこと 答え 章
博士課程は人生終了か そう言える統計はない。卒業者16,278人のうち就職者70.0%(満期退学者と一定の有期雇用を含む、5月1日の状況。入学者の就職成功率ではない)。満期退学20.3%、左記以外の者22.0%、有期雇用26.0%で、分野の差が大きい。有期雇用のうち3,219人は就職者と重なるので、3つの割合は足せない 3章
満期退学とは 所定の年限以上在学し、所定の単位を修得したが、博士の学位を取らずに退学すること。統計では卒業者(修了者)に含め、中退には数えない 2章
単位取得退学との違い どれも博士号を取らずに博士課程を離れるときの呼び名(単位取得退学・単位修得退学・研究指導認定退学などは大学の規程の言い方)。成立の条件・研究指導の認定・退学後の学位申請の資格は大学・研究科で違う 2章
満期退学の割合 令和7年3月の卒業者の20.3%。人文科学46.4%、社会科学34.6%、教育39.2%、理学18.0%、工学15.4%、保健16.6% 3章
何年で出ているか 3年制の博士後期課程の卒業者のうち、3年で出た人は37.2%(満期退学を含む。その年の卒業者の内訳で、入学者が3年で修了する確率ではない)。人文科学は18.3%で、7年以上が28.5% 3章
修了後の進路 就職者70.0%のうち無期雇用が7,873人(就職者の69.1%)。有期雇用は人文科学32.8%・理学35.3%。満期退学者だけの進路の統計はない 4章
満期退学から学位を取る期限 大学・研究科で違う。例は退学後3年(東大 人文社会系・京大 文学研究科・早大 法学研究科)。論文の受付月や申請資格も研究科で確かめる。過ぎたら論文博士の道 5章
学費と支援 国立の博士後期3年で入学料と授業料1,889,400円(標準額)。学振DCは令和9年度採用で月額227,000円、採用率は令和8年度DC1 11.2%・DC2 11.9% 6章
自分の場合 分野別の満期退学・在学年数・進路、規程の年数を足した参考年月、学費と支援(額面の試算)を計算機で 7章

1. 先に、この記事の数字と、書いている人について

私は大学院に行っておらず、博士課程の経験はありません。この記事は、法令・公的な統計・大学の規程と案内だけで書きます。自分の研究科の決まりは、その大学の規程で確かめてください。

数字の中心は、文部科学省の学校基本調査 令和7年度の卒業後の状況調査です。表73「総括」、表86「博士課程の状況別 卒業者数」、表87「博士課程の専攻分野別 入学年度別 卒業者数」を、政府統計の総合窓口(e-Stat)のファイルから読みました。令和7年3月に博士課程を出た人の、令和7年5月1日の状況です。中退は、文部科学省の「令和7年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」(以下 中退調査)です。

学校基本調査の「卒業者」には、博士の学位を取って修了した人と、満期退学した人の両方が入っています。表73の注記は「大学院の博士課程の卒業者には,所定の年限以上在学し,所定の単位を修得した後,学位を取らずに満期退学した者も含む。」です。この記事で「卒業者」と書くときは、この両方を合わせた数です。

表の数字を足したり割ったりした値には「計算」、条文や公式の説明を組み合わせて読んだところには「当てはめ」と書きました。

2. 満期退学・単位取得退学とは

2-1. 博士課程を修了する条件

博士課程は、大学院設置基準で標準修業年限が5年と決められ、前期2年と後期3年に分けることができます(4条)。修士課程を終えて博士後期課程に入った人の修了の条件は、大学院設置基準17条3項で、大学院に3年以上在学し、「必要な研究指導を受けた上、当該大学院の行う博士論文の審査及び試験に合格すること」です。優れた研究業績を上げた人は、在学期間を短くできます(同項ただし書)。

条件は「在学の年数」「研究指導」「博士論文の審査と試験に合格」の3つです。満期退学は、このうち在学の年数と、大学が決めた単位・研究指導は満たしたけれど、博士論文の審査と試験に合格しないまま退学した状態です(当てはめ)。修士の修了の条件と、修士論文の審査は修論がゴミ・成果なしでも修了できる?に書きました。

2-2. 満期退学の定義:統計の言葉

「満期退学」は、学校基本調査(国の統計)で使う言葉です。表86の注記は、次のとおりです。

「「卒業者のうち満期退学者」とは,所定の年限以上在学し,所定の単位を修得したが,博士の学位を取らずに卒業した者をいう。」

学校教育法・学位規則・大学院設置基準には「満期退学」「単位取得退学」という言葉は出てきません(この記事で読んだ条文の範囲)。

2-3. 単位取得退学・研究指導認定退学:大学ごとの呼び名

大学の規程や案内では、同じ状態を別の名前で呼んでいます。たとえば京都大学 文学研究科は「研究指導認定退学」、九州大学の研究科の内規は「単位修得退学」、慶應義塾大学の学位規程は「大学院博士課程における教育課程を終え,学位論文を提出しないで退学した者」と書きます。

どれも博士号を取らずに博士課程を離れるときの呼び名ですが、同じ中身とは限りません。成立の条件(在学年数・単位・研究指導)、退学のときに指導教員の研究指導の認定が要るかどうか、退学後に博士の学位を申請できる資格は、大学・研究科で違います(当てはめ)。京都大学 文学研究科は、課程博士として申請するには「研究指導認定退学後、3年以内」に論文を出すことを要件にしています。履歴書などに書くときは、自分の大学の規程の呼び名に合わせておくと、大学の書類と食い違いません(当てはめ)。

2-4. 満期退学と中退の違い、学位と在学年限

統計の扱いが違います。学校基本調査は満期退学者を博士課程の卒業者に含め、中退調査は「中退退学者には博士課程満期退学者を含まない。」としています。

満期退学では博士号は授与されません。持っている学位は、それまでに実際に取った学位(修士課程を修了していれば修士など)で、博士課程に在籍して退学したという履歴(学歴)とは別のものです。博士課程に入る経路は、修士課程の修了だけではありません(大学院設置基準17条3項は、修士の学位がある人のほか、同等以上の学力があると認められた人の入学も書いています)。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、中途退学した人を「それ以前に卒業又は修了した課程」の学歴で数えます(当てはめ)。大学院を途中で辞めたときの手続きと学費は大学院を辞めたい・中退したら就職は?に書きました。

博士後期課程にいられる年数(在学年限)には上限があります。東京大学は5年、京都大学・名古屋大学・九州大学・北海道大学は6年で、休学した期間は数えません。在学年限を超えると、東京大学は学生の身分を失い、名古屋大学・九州大学・北海道大学は除籍すると定めています。満期退学は在学年限まで居続けることではなく、在学年数と単位などの条件を満たしたところで、自分で退学を選ぶことです(当てはめ)。

3. 博士課程は人生終了か:卒業者16,278人を分けて見る

3-1. 満期退学は2割、人文・社会・教育では3〜5割弱

令和7年3月に博士課程を出た16,278人のうち、満期退学者は3,299人(20.3%)でした。前年(令和6年3月)は15,673人のうち3,355人(21.4%)です(計算)。設置者別では、国立19.5%、公立17.2%、私立23.4%です(計算)。

専攻分野 卒業者 うち満期退学者 満期退学の割合(計算)
人文科学 872人 405人 46.4%
社会科学 874人 302人 34.6%
理学 1,225人 221人 18.0%
工学 3,646人 562人 15.4%
農学 812人 138人 17.0%
保健 5,831人 968人 16.6%
教育 431人 169人 39.2%
芸術 171人 28人 16.4%
その他 2,376人 498人 21.0%
計(家政40人を含む) 16,278人 3,299人 20.3%

人文科学では、博士課程を出た人のほぼ半分が、学位を取らずに出ています。理学・工学・保健では2割弱です。同じ「博士課程」でも、分野によって出方がまったく違います。

3-2. 何年で出ているか:3年で出るのは4割弱

表87は、卒業者を入学した年度で分けています。3年制の博士後期課程を令和7年3月に出た11,166人(満期退学者を含む)のうち、3年(令和4年度入学)で出た人は4,158人(37.2%)、4年が28.6%、5年が12.1%、6年が8.9%、7年以上が10.6%です(計算)。

人文科学は3年で出た人が18.3%で、7年以上が28.5%です。社会科学は3年が22.5%、7年以上が26.6%です。理学は3年が54.9%、工学38.9%、農学44.7%です(計算)。満期退学は「所定の年限以上在学」が条件なので、3年で満期退学した人も「3年」に入っています。3年で学位を取った人の割合ではありません。また、37.2%は「その年の卒業者のうち3年前に入学した人の割合」で、入学した人が3年以内に修了する確率ではありません。

大学ごとの公表もあります。大学院は、研究科・専攻ごとに「当該大学院に入学した者のうち標準修業年限以内で修了した者の占める割合」を公表することになっています(学校教育法施行規則172条の2第3項1号)。入学した人を分母にした例として、東京大学の公表(令和8年3月31日現在)があります。2021年に博士後期課程に入った人のうち、標準修業年限以内に修了した人は人文社会系研究科10.0%、理学系研究科58.1%、工学系研究科52.5%です(休学期間を除いた在学期間で判定)。2026年3月末までに修了した人は、それぞれ31.4%、76.7%、76.5%です。志望する研究科の公表値は、その大学のサイトで確かめられます。

3-3. 中退は別に1年2,319人

中退調査では、令和7年度の博士課程の中途退学者は2,319人で、4月1日の在籍者の2.94%でした。休学者は8,481人(10.74%)です。満期退学者は含みません。中退者(令和7年度中、在籍者に対する割合)と満期退学者(令和7年3月の卒業者に含まれる数)は、年度も数え方の対象も違う統計なので、足し合わせずに別々に見てください。

3-4. 「人生終了」と言われる理由を、確かめられる数字で分ける

検索結果やAIの要約でよく挙がる理由は、ポストが足りない、お金がかかる、企業に評価されない、孤独になる、の4つです。それぞれ、公的な統計で確かめられる範囲を並べます。

言われる理由 確かめられる数字 章
ポストが足りない 有期雇用4,238人(卒業者の26.0%)。ポストドクター等は2021年度に延べ13,657人、平均38.0歳で、翌年度もポスドク等を続けた人が67.9% 4章
お金がかかる 国立の博士後期3年で入学料と授業料1,889,400円(標準額)。学振DCの採用率は令和8年度DC1 11.2%・DC2 11.9% 6章
企業に評価されない 企業の評価そのものを測った公的な統計は、この記事では確かめていない。就職者の割合は工学69.8%・人文科学43.9%と分野で違う。賃金は大学院卒(修士を含む)が大学卒より高い 4章
孤独になる 孤独を測った公的な統計は見当たらない。博士課程の休学者は在籍者の10.74%(理由は大学院だけでは公表されていない) 3章

数字を見る限り、「人生終了」と一言でまとめられる状況ではありません。一方で、人文科学・社会科学・教育の満期退学の多さ、有期雇用と「左記以外の者」の多さは、進む前に知っておいてよい数字です。研究室がつらくて行けないときの考え方は研究室に行きたくない・つらいに、企業の研究職の向き不向きは研究職はやめとけ?に書きました。

4. 修了・満期退学後の進路

4-1. 分野別の就職者・無期雇用・有期雇用

令和7年3月の卒業者16,278人の5月1日の状況です。満期退学者を含みます。

専攻分野 就職者 無期雇用 有期雇用(1か月以上) 左記以外の者
人文科学 43.9% 22.5% 32.8% 38.6%
社会科学 52.9% 35.5% 21.6% 39.5%
理学 69.9% 42.4% 35.3% 20.5%
工学 69.8% 49.8% 23.2% 24.0%
農学 64.3% 44.1% 27.3% 26.2%
保健 82.3% 59.9% 26.3% 10.3%
教育 65.2% 46.9% 22.0% 29.5%
計 70.0% 48.4% 26.0% 22.0%

割合は、どれも卒業者に対する割合です(就職者の割合以外は計算)。就職者11,388人の内訳は、無期雇用7,873人、自営業主等257人、有期雇用のうち雇用契約期間1年以上かつフルタイム相当の3,219人、進学しながら就職した39人です。有期雇用4,238人のうち、1年以上・フルタイム相当でない1,019人は就職者に数えていません。就職者のうち無期雇用は69.1%です(計算)。

「左記以外の者」は、表の注記で「進学でも就職でもないことが明らかな者である(進学準備中の者,就職準備中の者,家事の手伝いなど)」とされています。5月1日の状況なので、その後に職に就いた人は分かりません。

4-2. 満期退学者だけの進路の統計はない

学校基本調査は満期退学者を卒業者に含めて数えていて、満期退学者だけの就職率は公表されていません。上の数字は、学位を取って修了した人と満期退学した人を合わせた値です。

NISTEP(科学技術・学術政策研究所)のポストドクター等の調査では、ポストドクター等を「博士の学位を取得した者又は所定の単位を修得の上博士課程を退学した者」のうち任期付で採用されている人と定義しています。満期退学者も、大学や研究機関の任期付きの研究員として数えられる立場です。ただし学振の特別研究員PDは博士の学位が条件なので、満期退学の時点では申請できません。

4-3. 修了後の雇用の変化:2012年度修了者の追跡

NISTEPの博士人材追跡調査は、2012年度に博士課程を修了した人(満期退学者も対象)を追いかけています。正社員・正職員の割合は、修了1.5年後56.9%、3.5年後64.5%、6.5年後75.8%でした。契約社員(嘱託を含む)・任期制研究員は28.4%、22.3%、15.2%と減っています。所得で最も多い層は、1.5年後が400万〜500万円未満(16.2%)、3.5年後が500万〜600万円未満(15.7%)、6.5年後が600万〜700万円未満(14.4%)でした。アンケートの回答者の割合で、全数ではありません。10年以上前に修了した人の追跡で、今の修了者に同じことが起きるとは限りません。

ポストドクター等は、2021年度に延べ13,657人で、平均38.0歳(中央値35歳)でした。翌年度(2022年4月1日)もポストドクター等を続けた人は67.9%、大学教員やその他の研究開発職に移った人は17.2%です。大学教員の職名と年齢は助教授と准教授の違いは?に、大学院生の就活は大学院生の就活はいつから?に書きました。

4-4. 賃金:大学院卒と大学卒

賃金構造基本統計調査(令和7年)の所定内給与額(月額、男女計)は、大学院卒が517.4千円、大学卒が396.3千円です。年齢別に見ると、30〜34歳で大学院406.1千円・大学340.3千円、40〜44歳で553.7千円・425.3千円、50〜54歳で648.3千円・494.9千円です。ただし「大学院」は修士と博士を合わせた区分で、博士だけの賃金はこの統計にありません。満期退学した人は、修士を修了していれば「大学院」で数えられます(当てはめ)。どの職種・業界の人が含まれているかで差が出るので、博士課程に進めば賃金がこれだけ上がる、という意味ではありません。研究職の年収の比べ方は研究職の年収はなぜ低い?に書きました。

国は博士を増やす方針です。文部科学省の「博士人材活躍プラン」(令和6年3月)は、大目標を「2040年における人口100万人当たりの博士号取得者数を世界トップレベルに引き上げる(2020年度比約3倍)」としています。NISTEPの科学技術指標2024では、日本の人口100万人当たり博士号取得者数は2021年度で126人、韓国344人、英国342人、ドイツ330人です。

5. 満期退学から学位を取れる期限

5-1. 大学・研究科の規程の例

満期退学したあとに博士論文を出す扱いは、大学・研究科ごとに違います。原文を確かめた例を並べます。

大学・研究科 退学後の期間 原文
東京大学 人文社会系研究科 3年 論文提出資格に「博士課程に3年以上在学し、所定の単位を修得のうえ退学した者で、論文提出時において3年を経過しない者。」(令和8年度の案内)
京都大学 文学研究科 3年 「研究指導認定退学後、3年以内に学位論文を提出することが「課程博士」申請の要件です。」「3年を過ぎると資格は失効」
早稲田大学 法学研究科 3年 「退学した日から起算して3年以内に限り、法学研究科運営委員会等の許可を得て、課程博士扱いとして博士論文を提出し、試験を受けることができます。」
北海道大学(学位規程) 1年(手数料) 単位を修得したのみで退学した人が博士の学位を申請するとき、「退学してから1年以内に学位論文を提出するときは、論文審査手数料を納付することを要しない。」
大阪大学(学位規程) 研究科が定める年限 単位を修得し研究指導を受けて退学した人が博士論文を出したときは、「各研究科で定める年限内に限り、学力の確認を行わないことがある。」

期間も扱いも、大学によって違います。課程を経た博士(課程博士)として扱う研究科もあれば、論文を出して審査を受ける博士の手続きで、試験や手数料を軽くする大学もあります。全国一律の「満期退学後3年」という決まりはありません(当てはめ)。退学する前に、自分の研究科の学位規程と案内で、年数・申請資格・論文の受付月・退学のときに要る認定を確かめてください。

5-2. 期限を過ぎたら:論文博士

学位規則4条2項は、大学が「当該大学の定めるところにより、大学院の行う博士論文の審査に合格し、かつ、大学院の博士課程を修了した者と同等以上の学力を有することを確認された者」に博士の学位を授与できると定めています。いわゆる論文博士です。出すかどうか、手続き、審査料は大学が定めます。早稲田大学 法学研究科の案内は、退学後3年以内に論文を出せなかった人も、論文博士として学位を申請できると書いています。

5-3. 学振DCは満期退学で辞退

日本学術振興会の特別研究員の手引は、特別研究員DCが「採用期間を残して満期退学する場合は、分野を問わず特別研究員の採用を辞退する必要があります」としています。DCを受けながら満期退学を考えるときは、辞退の時期と研究奨励金の扱いも確かめてください。

6. 在学年数と学費・支援

国立大学の大学院の授業料の標準額は年535,800円、入学料は282,000円です(国立大学等の授業料その他の費用に関する省令)。大学は標準額の120%まで額を決められます。博士後期課程を3年で出ると、入学料と授業料で1,889,400円です(計算。免除・減額を除く)。私立大学の博士後期課程の令和7年度入学者の初年度の平均は、授業料610,798円・入学料191,055円でした(文部科学省の調査)。

日本学術振興会の特別研究員DCの研究奨励金は、令和9年度に新しく採用される人で月額227,000円(支給予定額)、令和8年度に採用された人は月額200,000円です。採用期間はDC1が3年、DC2が2年です。採用率は令和8年度でDC1 11.2%(申請5,637人のうち採用634人)、DC2 11.9%(申請8,609人のうち採用1,026人)でした(計算)。申請者は令和5年度のDC1 3,991人から増えています。

JSTのSPRING(次世代研究者挑戦的研究プログラム)は、令和9年度の公募要領で、研究奨励費(生活費相当額)を「180 万円~240 万円/年・枠」で設定するとしています。学振DCとSPRINGは重複して受けられません。DCの研究奨励金は給与所得、SPRINGの研究奨励費は雑所得として課税されます。7章の計算機の4は、採用され、その期間続けて受けたと仮定した額面の試算です。修士・博士の学費の総額、奨学金の返済と免除は大学院の学費はいくら?に詳しく書きました。

7. 計算機:修了・満期退学・中退の比率/修了・満期退学後の進路/満期退学から学位を取る期限/在学年数と学費・支援

4つは別々に使えます。

  • 1. 修了・満期退学・中退の比率:専攻分野を選ぶと、令和7年3月の卒業者に占める満期退学者の割合、3年制の博士後期課程の卒業者が何年で出たか、博士課程の中退率を出します
  • 2. 修了・満期退学後の進路:専攻分野を選ぶと、就職者・無期雇用・有期雇用・左記以外の者などの人数と割合を出します。満期退学者だけの進路の統計はありません
  • 3. 満期退学から学位を取る期限:退学した年月と、規程の年数(3年・1年・その他)を入れると、規程の年数を足した参考年月と、そこまでの月数を出します。論文の提出期限ではありません。退学日・申請資格・論文の受付月は研究科で確かめてください。年数は大学・研究科で違い、全国一律の決まりはありません
  • 4. 在学年数と学費・支援:入学時の年齢・在学年数・設置者・支援を受ける年数を入れると、修了時の年齢、入学料と授業料の合計、学振DC・SPRINGを受けた場合の研究奨励金の額面合計と、そこから入学料・授業料だけを引いた額(税・社会保険料・生活費を引く前)を出します。採用され、その期間続けて受けたと仮定した試算で、採用率も並べます

修了・満期退学・中退の比率/修了・満期退学後の進路/満期退学から学位を取る期限/在学年数と学費・支援

入れた数字は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている値は入力の例です。4つは別々に使えます。

1. 修了・満期退学・中退の比率

2. 修了・満期退学後の進路

3. 満期退学から学位を取る期限

4. 在学年数と学費・支援

初めから入っている例では、1は全分野の計で、満期退学は20.3%、3年制の博士後期課程を3年で出た人は37.2%です。2は全分野の計で、就職者70.0%、有期雇用26.0%、左記以外の者22.0%です。3は2026年3月に退学して規程が3年の場合で、規程の年数を足した参考年月は2029年3月です(提出期限ではありません)。4は24歳で国立の博士後期課程に3年在学する場合で、修了時27歳、入学料と授業料は1,889,400円、DC1に採用されて3年受け続けたと仮定すると研究奨励金の額面は8,172,000円です(いずれも計算)。

8. よくある質問

博士課程に進むと人生終了ですか?

そう言える統計はありません。令和7年3月の博士課程の卒業者16,278人のうち、就職者は70.0%です(満期退学者と一定の有期雇用を含む、5月1日の状況で、入学者の就職成功率ではありません)。一方で、満期退学が20.3%、有期雇用が26.0%、進学でも就職でもない「左記以外の者」が22.0%いて、人文科学・社会科学では満期退学が3〜5割弱です。有期雇用のうち3,219人は就職者と重なるので、これらの割合は足せません(3章・4章)。

満期退学とは何ですか?

博士課程に所定の年限以上在学し、所定の単位を修得したけれど、博士の学位を取らずに退学することです。学校基本調査は「所定の年限以上在学し,所定の単位を修得したが,博士の学位を取らずに卒業した者」と定義しています(2章)。

単位取得退学と満期退学は違いますか?

どれも博士号を取らずに博士課程を離れるときの呼び名です。満期退学は統計の言葉、単位取得退学・単位修得退学・研究指導認定退学は大学の規程や案内の言葉です。成立の条件・研究指導の認定・退学後の学位申請の資格は、大学・研究科で違います(2章)。

満期退学したら最終学歴は何になりますか?

満期退学では博士号は授与されません。持っている学位はそれまでに実際に取った学位(修士課程を修了していれば修士など)で、博士課程に在籍して退学した履歴とは別です。賃金構造基本統計調査は、中途退学した人を「それ以前に卒業又は修了した課程」で数えます(2章。当てはめ)。

満期退学したあとに博士号は取れますか?

大学・研究科の規程にある期間内に論文を出せば、審査を受けられる道があります。東大 人文社会系研究科・京大 文学研究科・早大 法学研究科の例では退学後3年です。論文の受付月や申請資格は研究科で確かめてください。期間を過ぎても、論文博士として申請できる大学があります(5章)。

博士課程の就職率はどれくらいですか?

令和7年3月の卒業者で70.0%です。満期退学者と、雇用契約期間1年以上かつフルタイム相当の有期雇用を含む、卒業した年の5月1日の状況で、入学した人が就職に成功する確率ではありません。分野別では保健82.3%、理学69.9%、工学69.8%、社会科学52.9%、人文科学43.9%です(4章)。

博士課程は何年で修了できますか?

博士後期課程の修了の条件は3年以上の在学ですが、令和7年3月に3年制の博士後期課程を出た人のうち、3年前に入学した人は37.2%(満期退学を含む)でした。人文科学では18.3%で、7年以上かかった人が28.5%です。これはその年の卒業者の内訳で、入学した人が3年以内に修了する確率ではありません。入学者を分母にした例では、東京大学の2021年入学の博士後期課程で、標準修業年限以内に修了した人は人文社会系研究科10.0%・工学系研究科52.5%、2026年3月末までに修了した人は31.4%・76.5%です(3章)。

博士課程の学費と生活費はどうしていますか?

国立の博士後期3年で、入学料と授業料は1,889,400円です(標準額)。学振DC(月額227,000円、令和9年度採用)やSPRING(研究奨励費 年180万〜240万円)がありますが、DCの採用率は令和8年度で11%台です。研究奨励金は額面で、税・社会保険料・生活費は別にかかります(6章)。

9. まとめ

  • 博士課程に進むと人生終了、と言える統計はない。令和7年3月の卒業者16,278人のうち就職者は70.0%(満期退学者と一定の有期雇用を含む、5月1日の状況。入学者の就職成功率ではない)
  • 満期退学は卒業者の20.3%。人文科学46.4%、教育39.2%、社会科学34.6%で、理学・工学・保健は2割弱
  • 満期退学(単位取得退学)は、所定の年限以上在学し単位を修得したが、博士の学位を取らずに退学すること。統計では卒業者に含め、中退には数えない。博士号は授与されず、持っている学位はそれまでに取った学位。成立の条件や退学後の学位申請の資格は大学・研究科で違う
  • 3年制の博士後期課程の卒業者のうち3年前に入学した人は37.2%(満期退学を含む。入学者が3年で修了する確率ではない)。人文科学は18.3%で、7年以上が28.5%
  • 有期雇用が卒業者の26.0%、左記以外の者が22.0%。有期雇用のうち3,219人は就職者と重なるので、70.0%・26.0%・22.0%は足し合わせられない。満期退学者だけの進路の統計はない
  • 満期退学後に学位を取れる期間は大学・研究科で違う。例は退学後3年(東大 人文社会系・京大 文学研究科・早大 法学研究科)。論文の受付月・申請資格も研究科で確かめる。過ぎても論文博士の道がある大学がある
  • 国立の博士後期3年で入学料と授業料1,889,400円。学振DCは月額227,000円(令和9年度採用、額面)だが、採用率は令和8年度でDC1 11.2%・DC2 11.9%

10. 出典

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