ボトルネックとは、全体の流れの中で、いちばん処理がおそく、全体の速さを決めてしまっている、1か所のことです。びんの首(ネック)が細いと、中身は、その細さの分しか、出てきません。びんの胴をどれだけ太くしても、出てくる量は、変わりません。仕事でも、工場でも、パソコンでも、同じことが、起きます。
先に、書いておきます。私は、中古のブランド品を、週に50点から150点、仕入れて、直して、売っていました。手を動かす工程は、人をふやせば、広がりました。けれど、人をふやしても広がらない場所が、べつに、ありました。この記事は、「どこを直しても、むだな場所」と、「そこだけ直せば、全体が動く場所」の、見分け方を、書きます。
この記事では、意味と理論を先に書いて、そのあとで、計算機、私の例、直し方の手順を書きます。
1. ボトルネックとは
1-1. 意味と、例
| 場面 | ボトルネックの例 |
|---|---|
| 工場 | 5つの工程のうち、1つの機械だけが、おそい。その前に、仕掛かりの山が、できる |
| 事務の仕事 | 部長の承認が、週に1回しか、出ない。書類が、そこで、止まる |
| 店 | 料理は速いのに、レジが1台しかなく、列ができる |
| パソコン | 計算する部品は速いのに、記憶する部品がおそくて、全体が、もたつく |
| 道路 | 3車線が、1車線になる場所。渋滞は、そこから、始まる |
1-2. 理論:制約理論(TOC)
ボトルネックを中心にすえた経営の考え方が、イスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラットの、制約理論(TOC)です。1984年の小説『ザ・ゴール』で、広まりました。中心にある主張は、3つです。
- 全体の成果は、いちばん弱い1か所で、決まる:くさりの強さは、いちばん弱い輪で、決まります。
- ボトルネックでない場所を速くしても、全体は、速くならない:むしろ、ボトルネックの前に、在庫の山を作るだけです。
- ボトルネックで失った1時間は、全体で失った1時間:ほかの場所の1時間とは、重さが、ちがいます。
小説の中に、有名な場面が、あります。子どもたちの、ハイキングの列です。列は、どんどん、長くのびていきます。原因は、いちばん歩くのがおそい、1人の子でした。主人公は、その子を、列の先頭に出して、荷物を、みんなで分けて持ちます。列は、のびなくなり、全体の速さが、上がりました。
2. 計算機:どこを直せば、全体が、動くか
4つの工程の、1時間あたりの処理数を、入れてください。はじめの数字は、中古品を直して売る仕事を、例にした、仮の数字です。
工程1(仕入れ) 工程2(修理)
工程3(撮影・出品) 工程4(梱包・発送) (1時間あたりの件数)
全体の処理数:
ボトルネック:
ボトルネックを直したあと、次につまる場所と、そのときの上限:
はじめの数字だと、全体は、1時間に3件。ボトルネックは、工程2の修理です。ためしに、工程3を、6から12に、上げてみてください。全体は、3件のまま、変わりません。工程2を、3から7に上げると、全体は、6件になります。7件には、なりません。ボトルネックが、工程3に、うつったからです。ボトルネックは、直すと、消えるのでは、なく、べつの場所へ、動きます。
3. 私の例:つまっていたのは、どこか
3-1. 1点に、45分
ブランド品を売っていたころの、1点あたりの作業の時間です。撮影が20分、出品が15分、梱包が10分。合わせて、45分です。週に100点なら、これだけで、75時間に、なります。これに、直す時間が、のります。
直す時間は、品によって、大きく、ちがいました。財布の引手の交換なら、10分から15分です。革の染め直しは、2時間以上、かかりました。色が作れない。調整に、時間がかかる。染め直しの品が1点まざると、その1点が、引手の交換の8点分以上の時間を、持っていきます。
染め直しは、専門の工房を作らないとむりだと、思いました。修理に、工業用のミシンがいる品も、ありました。外注すると、赤字です。そういう品は、直さずに、損を切って、そのまま売りました。時間のかかる作業を速くするのでは、なく、流れに、入れない。ボトルネックへの対処は、「そこを速くする」だけでは、ありません。「そこを通る仕事を、へらす」も、同じ効果が、あります。
3-2. 人をふやしても、つまる場所は、べつに、あった
作業は、アルバイトに、手伝ってもらっていました。時給2,000円で、週に3日、1日3時間ぐらいです。家族を、社員として、雇っていた時期も、あります。
手を動かす工程は、人をふやせば、広がります。けれど、広がらない場所が、2つ、ありました。1つは、場所です。作業場は、自宅でした。在庫が、家をしめて、暮らしの質が、下がりました。倉庫や事務所を借りると、月に30万円から50万円以上、かかります。そこで、規模を大きくするのを、あきらめました。もう1つは、お金です。仕入れに使えるお金には、上限があります。在庫が売れるまで、そのお金は、次の仕入れに、使えません。私は、仕入れてから1週間以内に売り切ることを、目標にしていました。
計算機で言えば、工程2を直したら、次のボトルネックが、工程の外(場所と、お金)に、出てきた形です。ボトルネックは、作業の工程の中にあるとは、かぎりません。
3-3. いまは、AIで、流れる量を、上げている
いまの私が、いちばん気にしている数字は、一定の時間に、どれだけの仕事が流れるか(スループット)です。メールの講座や教材は、以前は、数か月から、年の単位で、かかっていました。いまは、AIどうしをつないで、1か月ほどです。
ここで、ボトルネックは、動きました。以前は、「書く」が、いちばんおそい工程でした。いま、書くのは、AIです。おそいのは、AIにわたす材料、つまり、私自身の経験と、その文脈のほうです。材料を持っていない人が、AIだけで、強い物語を作ることは、できません。道具で1つの工程を速くすると、次にためされるのは、道具では速くならない工程です。
3-4. 1日12本の、わく
小さな例を、もう1つ。検索エンジンに、「このページを、見に来てください」とたのむ機能には、1日に使える回数に、上限が、あります。私のサイトでは、12本前後です。記事を書く速さは、それより、ずっと、速い。
だから、このわくは、新しい記事には、使いません。新しい記事は、ほうっておいても、見に来てもらえます。わくは、昔の記事を直したときにだけ、使います。制約理論で言う、「ボトルネックを、徹底的に、活用する」です。ふやせない資源は、いちばん効く場所にだけ、使います。
4. 直し方の、5つの手順
ゴールドラットが示した、手順です。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 見つける | どこが、ボトルネックか。手前に、仕事の山ができている場所を、さがす |
| 2. 徹底的に、活用する | お金をかける前に、いまの能力を、使い切る。ボトルネックを、休ませない。ボトルネックに、不良品や、やらなくていい仕事を、流さない |
| 3. ほかの全部を、ボトルネックに、合わせる | ボトルネックより速く作らない。速く作った分は、在庫の山に、なるだけ |
| 4. 能力を、上げる | ここで、はじめて、人や、機械や、お金を、入れる |
| 5. 1にもどる | ボトルネックは、べつの場所へ、動いている。前のやり方に、しがみつかない |
- 見つけ方:「いちばんいそがしい人」が、ボトルネックとは、かぎりません。見るのは、「その手前で、何が、どれだけ、待っているか」です。
- いちばん多い、まちがい:直しやすい場所を、直すこと。成果は、0です。計算機で、たしかめてください。
- 2と3は、お金が、かからない:多くの人は、いきなり4(人をふやす、道具を買う)から、始めます。順番が、逆です。
- 人が、ボトルネックのとき:その人にしかできない仕事と、ほかの人でもできる仕事を、分けます。ほかの人でもできる仕事を、その人から、はがします(考え方は、比較優位の記事)。
- 自分が、ボトルネックのとき:1人で仕事をしていると、たいてい、そうです。同時にいくつもかかえると、切りかえの分だけ、さらに、細くなります(マルチタスクの記事)。
5. まとめ
- ボトルネックとは、全体の速さを決めている、いちばんおそい1か所です。
- ボトルネックでない場所を速くしても、全体は、速くなりません。在庫の山が、できるだけです。
- ボトルネックは、直すと、べつの場所へ、動きます。作業の工程の外(場所、お金、自分の経験)に、出ることも、あります。
- 私は、外注すると赤字になる修理は、速くするのでは、なく、流れに入れないことで、対処しました。1日12本の登録のわくは、昔の記事を直したときにだけ、使っています。
- 手順は、見つける、使い切る、ほかを合わせる、能力を上げる、1にもどる、の5つ。お金をかけるのは、4番目です。

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