先に、この記事の立ち位置を書きます。
私は、フランスに古着を買い付けに行ったことがありません。
行ったことがない人間が、蚤の市の歩き方を書くべきではありません。この記事には、現地の体験談が1行も出てきません。
その代わり、行く前に決まってしまう部分を全部計算します。いくらかかるのか、何着買えば成立するのか、持ち帰れないものは何か。ここは行かなくても分かりますし、行く前に分かっていないと困る部分です。
先に、この記事の前の版を取り下げます
このページには以前、「【プロが完全解説】フランス古着買い付けの全て|未経験から始める仕入れマニュアル」という記事を置いていました。取り下げます。
| 旧版の問題 | なぜ悪いか |
|---|---|
| 「プロが完全解説」「現役バイヤーが語る」と書いていた | これがいちばん悪い点です。行ったことのない人間が、行った人のふりをしていました |
| 「利益率200%超えも夢じゃない」と書いていた | 資金も点数も条件も書かずに、数字だけを出していました |
| 卸業者として Kiliwatch と Guerrisol を挙げていた | どちらも卸業者ではありません。Kiliwatch Paris は公式に「Concept Store」を名乗る店で、Guerrisol は「Friperie en ligne」を掲げる小売のチェーンです。公式サイトにプロ向け卸の案内はありません(8章で書き直しました) |
| 関税・発送料金の「最新版」を数字で並べていた | 料金は変わります。数字を並べるより、確認先と計算方法を残すほうが長く使えます |
| ワシントン条約に一言も触れていなかった | これが実務としていちばん危ない抜けです。毛皮・爬虫類革・象牙ボタンは、手続きなしでは持ち帰れません(6章) |
1. この記事で書けること、書けないこと
先に線を引いておきます。
| この記事で | |
|---|---|
| 買付にいくらかかるか | 書きます。計算で出ます(2章) |
| 1着いくらまで払っていいか | 書きます。国内の手取りから逆算します(3章) |
| 関税と消費税はいくらか | 書きます。税関の一次情報で(4章・5章) |
| 持ち帰れないものは何か | 書きます。経済産業省の一次情報で(6章) |
| 資金がいくら止まるか | 書きます。他の業態と同じ計算です(7章) |
| 蚤の市の歩き方 | 書けません |
| 現地での価格交渉 | 書けません |
| 年代やディテールの見分け方 | 書けません |
| ディーラーとの付き合い方 | 書けません |
| 実際の買付事例 | 書けません。1件も載せていません |
下の5つを知りたい方は、実際に行っている方の記事を読んでください。この記事にはありません。
ただし、上の5つが分からないまま下の5つを覚えても、買付は成立しません。
2. 買付原価は、商品代ではありません
ここがこの記事の核心です。
蚤の市で30ユーロで買った服の原価は、30ユーロではありません。そこに、行くためにかかった費用が乗ります。
2-1. 1着あたりの原価は、この式で出ます
1着あたり原価 =(商品代 + 渡航関連費 + 国際送料 + 関税 + 消費税)÷ 仕入れた点数
注目してほしいのは、渡航関連費が分子にあって、点数で割られているところです。
| 性質 | 点数が増えると | |
|---|---|---|
| 商品代 | 点数に比例します | 1着あたりは変わりません |
| 国際送料 | 重量に比例します | 1着あたりはほぼ変わりません |
| 渡航関連費 | 固定です | 1着あたりが下がります |
航空券は、10着買っても200着買っても同じ値段です。だからこの費用は、点数で割った瞬間に効き方が変わります。
2-2. 点数を変えて計算します
以下はすべて仮定の数字です。自分の見積もりに置き換えてください。
| 前提 | 置いた数字 |
|---|---|
| 渡航関連費(航空券・宿泊・現地交通) | 20万円(固定) |
| 1着あたりの平均仕入値 | 3,000円 |
| 国際送料(重量に比例) | 1着あたり800円相当 |
| 関税 | 5.8%(中古の衣類のWTO協定税率。5章) |
| 消費税 | 10% |
| 仕入れた点数 | 買付にかかった総額 | 1着あたり原価 | うち渡航費の配賦 |
|---|---|---|---|
| 50着 | 421,122円 | 8,422円 | 4,000円 |
| 100着 | 642,244円 | 6,422円 | 2,000円 |
| 200着 | 1,084,488円 | 5,422円 | 1,000円 |
1着あたりの仕入値は、3つとも同じ3,000円です。変わったのは点数だけで、それだけで原価が3,000円動きます。
50着しか買えなかった人と、200着買えた人とでは、同じ服の原価が8,422円と5,422円になります。
2-3. だから、順番が逆になります
普通は「1着いくらで買うか」を先に考えます。この計算では、それができません。
| 順番 | |
|---|---|
| 間違った順番 | 1着いくらで買うか決める → 何着買うか決まる |
| 正しい順番 | 何着買えるか決める → 1着いくらまで払っていいか決まる |
そして「何着買えるか」は、行ってみないと分かりません。ここが、この商売のいちばん難しいところです。
だから実務としては、行く前に「最低これだけ買えなければ成立しない」という点数を出しておくことになります。それが次の章です。
3. 1着いくらまで払っていいかを、国内から逆算する
買付原価が出たら、次は国内でいくらになるかです。ここも計算だけで出ます。
3-1. 手取りから引きます
手取り = 販売価格 ×(1 − 販売手数料率)− 国内送料
1着の利益 = 手取り − 1着あたり原価
販売手数料10%、国内送料800円として、2章の3パターンで計算します。
| 国内での販売価格 | 手取り | 50着(原価8,422) | 100着(原価6,422) | 200着(原価5,422) |
|---|---|---|---|---|
| 10,000円 | 8,200円 | −222円 | +1,778円 | +2,778円 |
| 12,000円 | 10,000円 | +1,578円 | +3,578円 | +4,578円 |
| 15,000円 | 12,700円 | +4,278円 | +6,278円 | +7,278円 |
左上を見てください。
50着しか買えず、平均1万円で売った場合、1着あたり222円の赤字です。
仕入れは3,000円で、1万円で売っています。数字だけ見れば3倍以上です。それでも赤字になるのは、渡航費が1着あたり4,000円乗っているからです。
これが「30ユーロで買って15,000円で売れた」という話の落とし穴です。その1着は本当に利益が出ています。ただし、同じ旅で他に何着買えたかを書かなければ、その数字は意味を持ちません。
3-2. 自分の数字を入れてください
| 書き込む | |
|---|---|
| 渡航関連費(航空券+宿泊+現地交通) | 円 |
| 買えると見込む点数 | 着 |
| 1着あたりの渡航費配賦(=上の2つを割る) | 円 |
| 国内での平均販売価格の見込み | 円 |
| 手取り(=販売価格×0.9 − 送料) | 円 |
| 1着に払える上限(=手取り − 渡航費配賦 − 送料 − 税) | 円 |
いちばん下が、現地で見るべき金額です。この数字を持たずに行くと、目の前の値札が高いのか安いのか判断できません。
3-3. 成立する最低点数を、先に出しておきます
上の表を逆に使うと、「何着買えなければ帰りの飛行機で赤字が確定するか」が出ます。
渡航関連費20万円、平均販売1万円(手取り8,200円)、1着仕入3,000円、送料800円、関税5.8%、消費税10%で計算すると、分岐点は53着です。52着以下なら、平均1万円で売り切っても赤字が確定します。
この点数を、行く前に紙に書いてください。そして現地で、その点数に届きそうかを毎日数えることになります。
4. 税金の計算に、何が入るか
2章と3章で「関税」「消費税」と書きました。中身を一次情報で確認します。
4-1. 課税の基礎になるのは、商品代だけではありません
税関の説明では、課税価格はこう決まります。
「その輸入貨物について現実に支払われた又は支払われるべき価格(現実支払価格)に、この価格に含まれていない運賃等(加算要素)の額を加えて、課税価格を計算する方法です。」
加算要素として挙げられているものの1つ目が、これです。
「輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他運送に関する費用」
さらに、容器の費用と包装に要する費用も加算要素に挙げられています。
| 課税価格に入るもの | |
|---|---|
| 商品の代金 | — |
| 日本に着くまでの運賃 | 入ります |
| 保険料 | 入ります |
| 容器の費用 | 入ります |
| 包装に要する費用 | 入ります |
送料が課税価格に入るので、送料が上がると税額も上がります。ここは見落としやすいところです。
4-2. 消費税は10%です
税関の資料に、税率の内訳が出ています。
| 標準税率 | |
|---|---|
| 消費税率 | 7.8% |
| 地方消費税率 | 2.2%(消費税額の22/78) |
| 合計 | 10% |
そして消費税は、課税価格に関税を足した額にかかります。関税と消費税は別々に計算するものではありません。
4-3. 「1万円以下なら免税」には、大きな例外があります
税関の説明にはこうあります。
「課税価格の合計額が1万円以下の物品の輸入については、その関税及び消費税が免税されます。」
ただし、続きがあります。
「なお、課税価格の合計額が1万円以下の物品であっても、我が国の産業に対する影響その他の事情を勘案して、特に定められた物品については、免税適用になりませんので留意して下さい。」
その「特に定められた物品」として、税関が主なものを挙げています。
「革製のカバン、ハンドバッグ、手袋等、編物製衣類(Tシャツ、セーター等)、スキー靴、革靴及び本底が革製の履物類等」
4-4. これは、フランス古着とかなり重なります
| 免税にならないもの | フランス古着でいうと |
|---|---|
| 編物製衣類(Tシャツ、セーター等) | ニット、カーディガン、セーター |
| 革製のカバン、ハンドバッグ、手袋 | ヴィンテージのバッグ、レザーグローブ |
| 革靴、本底が革製の履物 | ヴィンテージシューズ |
ニットとバッグと靴は、1万円以下でも免税になりません。「少額なら税金はかからない」という理解で計画を立てると、ここでずれます。
そもそも買付の規模で送れば、課税価格の合計は1万円をはるかに超えます。この免税を前提にした計画は、最初から成り立ちません。
5. 中古の衣類の関税率は、決まっています
中古の衣類は、実行関税率表で1つの番号にまとまっています。
HS 6309.00-000 中古の衣類その他の物品
2026年1月1日版の実行関税率表から、この番号の税率を引きます。
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 基本 | 7% |
| WTO協定 | 5.8% |
| 特恵(GSP) | 無税 |
| 欧州連合(EU) | 無税 |
| 英国(UK) | 無税 |
| 単位 | KG(重量) |
5-1. EUの欄が無税になっています
日EU間の経済連携協定(EPA)の欄が、この品目では無税です。つまり、協定の税率を適用できれば関税は0になります。
2章の計算で、関税5.8%と関税0を比べるとこうなります。
| 点数 | 関税5.8%のとき | 関税0のとき | 1着あたりの差 |
|---|---|---|---|
| 50着 | 8,422円 | 8,180円 | 242円 |
| 100着 | 6,422円 | 6,180円 | 242円 |
| 200着 | 5,422円 | 5,180円 | 242円 |
1着あたり242円です。100着なら24,200円。効きますが、渡航費の配賦(1着2,000〜4,000円)に比べれば小さい。優先順位を間違えないでください。
5-2. ただし、協定の税率は自動では適用されません
EPAの税率を使うには、原産地に関する手続きが必要です。書類を出さずに輸入すれば、適用されるのはWTO協定税率のほうです。
中古の衣類の原産地をどう証明するのかは、品目によって基準が異なります。私はこの手続きをしたことがないので、書けるのはここまでです。実際に適用できるかどうかは、輸入する貨物ごとに税関に確認してください。
計画を立てる段階では、関税5.8%で計算しておくほうが安全です。0になったら、そのぶんが上振れになります。
6. 持ち帰れないものがあります
この章が、この記事でいちばん重要です。旧版には1行も書かれていませんでした。
6-1. ワシントン条約(CITES)
経済産業省のページに、こう書かれています。
「旅行中に見つけた素敵なお土産が、ワシントン条約で規制されている動植物が使われている製品の場合、日本への持ち込みが禁止されていたり、手続きを行う必要があったりします。」
ヴィンテージの衣類で、これに当たりうるものを挙げます。
| フランス古着でよくあるもの | |
|---|---|
| 毛皮のコート、ファーの襟・カフス | 種によって規制対象になります |
| ワニ革・ヘビ革・トカゲ革のバッグ、ベルト、靴 | 規制対象になります |
| 象牙のボタン | 特に注意が要ります(6-4) |
| べっ甲、珊瑚などの装飾 | 種によって規制対象になります |
毛皮とワニ革は、フランスのヴィンテージでは定番です。「古いものだから大丈夫」ではありません。
6-2. 手続きは、現地を出る前でないと取れません
ここがいちばん怖いところです。規制対象の貨物を輸入するには、こう書かれています。
| 必要なもの | いつ取るか |
|---|---|
| 旅行先の国(輸出国)発行のCITES許可書 | 「輸出国から規制対象貨物を持ち出す前に取得する必要があります。」 |
| 経済産業大臣の輸入承認または事前確認 | 「税関申告よりも前に輸入承認または事前確認を受ける必要があります。」 |
| 税関申告 | — |
6-3. 不備があった場合は、こうなります
「不備があった場合、貨物を輸出国に返送又は『任意放棄』(所有権の放棄)しなければなりません。CITES許可書は、貨物が輸出国を出る前に取得される必要があり、経済産業大臣の輸入承認/事前確認は、税関申告の前になされる必要があります。」
言い換えます。
知らずに買って持ち帰ろうとすると、送り返すか、捨てるかの二択になります。そして許可書は、あとから取れません。
仕入値が返ってこないだけではありません。2章で計算したとおり、その1着には渡航費の配賦も乗っています。手元に残らない在庫は、原価まるごとの損です。
6-4. 象牙は、日付で決まります
ボタンや装飾に使われていることがあります。経済産業省の記載です。
| 扱い | |
|---|---|
| 条約適用日以降に取得した象牙製品 | 「輸入・輸出ともに禁止されています。」 |
| 条約適用日より前に取得した象牙製品(Pre-convention) | 「経済産業大臣の輸入承認を受けなければ日本に持ち込む(輸入する)ことはできません。」 |
条約適用日は種によって異なり、こう書かれています。
「アジアゾウは1975年6月30日以前、アフリカゾウは1976年2月25日以前が条約適用前(Pre-convention)取得です。」
1940〜50年代の服のボタンなら、日付としては条約適用前に入りえます。それでも輸入承認が要るということです。「古いから自由」ではありません。
6-5. 個人の特例は、商用の買付には当てはまらない可能性があります
個人向けの特例制度があることも、同じページに書かれています。
「個人が旅行や移動の際に持ち歩く衣類や書類、化粧品など私用に使うために必要なもの(携帯品)、仕事に必要な道具(職業用具)、新しい住居を持つために必要な物品(引越荷物)、旅行中に購入した物品(お土産品)については、それぞれの適用範囲に合致する場合にのみ、日本における輸出入承認の手続やCITES輸出許可書の手続は不要となります。」
「私用に使うために必要なもの」と書かれています。売るために仕入れたものが、この範囲に入るかどうかは、私が判断できることではありません。ここは必ず、経済産業省の野生動植物貿易審査室か税関に、自分のケースを説明して確認してください。
6-6. 実務としての結論
買う前に、素材を確認する。分からないものは買わない。
経済産業省も、同じことを書いています。
「お土産を買う前に、ワシントン条約で規制されている動植物が含まれているかどうか、販売店に確認しましょう。それを把握していないお店での購入を控えて、別のお店で買うことも考えてみてください。」
蚤の市で、出店者が素材の由来を把握しているとは限りません。把握していない相手から、規制対象になりうる素材のものを買わない。これがいちばん確実です。
7. 資金がいくら止まるか
ここまでで原価が出ました。次はそのお金が何日戻ってこないかです。
当サイトはどの記事でも、この2つで判断します。
利益率(仕入額に対して)と、回転日数。そして 利益 ÷ 拘束日数。
7-1. フランス古着は、拘束日数が長い側です
| 段階 | ここで進む日数 |
|---|---|
| 買付(渡航) | 数日〜1週間 |
| 発送・通関 | 数日〜 |
| 検品・洗濯・補修 | 1点ずつ |
| 撮影・採寸・説明文 | 1点ずつ。同じ商品が2つありません |
| 出品 | 1点ずつ |
| 売れるまで | ここがいちばん長い |
1点物であることが、そのまま作業量になります。100着なら、検品も撮影も採寸も出品も100回です。同じ商品が2つないので、作業を使い回せません。
7-2. 100着のケースで計算します
2章と3章の仮定(100着、1着原価6,422円、平均販売12,000円、1着利益3,578円)で置きます。
| 数字 | |
|---|---|
| 投下した資金 | 642,244円 |
| 総利益(売り切った場合) | 357,756円 |
| 仕入額に対する利益率 | 55.7% |
利益率55.7%は、かなり高い数字です。問題はここからで、これが何日かかるかによって、月あたりの金額がまったく変わります。
| 売り切るまで | 月あたりの利益 | 年に何回まわせるか | 年間 |
|---|---|---|---|
| 90日 | 119,252円 | 4回 | 1,431,024円 |
| 120日 | 89,439円 | 3回 | 1,073,268円 |
| 180日 | 59,626円 | 2回 | 715,512円 |
同じ利益率55.7%が、月11.9万円にも5.9万円にもなります。変わっているのは日数だけです。
利益率ではなく、利益 ÷ 拘束日数で見るというのは、こういうことです。
この考え方の出どころは別の記事に、在庫がいま増えているかを測る方法はせどりでお金が残らない本当の理由に書きました。
7-3. 時給で見ると
| 作業時間 | 時給 |
|---|---|
| 50時間(1着30分) | 7,155円 |
| 90時間(渡航中の実働40時間を足す) | 3,975円 |
渡航中の時間を作業時間に入れるかどうかで、時給が倍近く変わります。入れてください。その時間は他のことに使えていません。
7-4. 4象限でいうと
| フランス古着の買付 | |
|---|---|
| 利益率 | 高い |
| 回転日数 | 長い |
| 競争 | 薄い(誰でも行けるわけではない) |
| 制約になるもの | 資金と、作業時間の両方 |
| 4象限でいうと | C(時間はかかるが、利益が大きい) |
せどりで儲かるジャンルは全部で書いたC象限です。参入障壁が資金なので競争は薄い。ただし、資金が用意できない人はそもそも入れません。
そして、Cだけに寄せると資金で詰まります。回転の速いものと組み合わせないと、次の渡航の資金が作れません。「フランス買付だけで生計を立てる」は、この計算では成立しにくいということです。
8. 「フランスへ行く」以外の入口
ここは旧版の訂正を含みます。
8-1. 旧版は、卸ではない店を卸として紹介していました
| 旧版の書き方 | 公式サイトの記載 | |
|---|---|---|
| Kiliwatch | 「卸業者(キロショップ)」の見出しの下 | 公式に「Concept Store」を名乗る店です |
| Guerrisol | 同上 | 「Friperie en ligne」を掲げる小売のチェーンです(16店舗)。プロ向け卸の案内は確認できませんでした |
どちらも小売です。「卸だからアポを取ろう」として行くと、店頭で困ります。訂正します。
8-2. プロ向けの卸は、実在します
私は使っていないので、公式サイトに書かれていることだけを書きます。
| 公式サイトの記載 | |
|---|---|
| Pawpick Vintage | 「grossiste en vêtements vintage」(ヴィンテージ衣料の卸)と明記。パリ近郊(Chambly)とモンペリエ近郊(Vendargues)に拠点。handpick用に1,000㎡超、常時110トンの在庫。買い方は1点ずつ選ぶhandpick、袋単位、圧縮ベール、箱単位。対象は古着店・リセラーなど事業者 |
| Friptadium | 「grossiste français de vêtements vintage au kilo」と明記。3kgから、最低注文数なし。Grade Aで「90%以上が非常に良い状態」。在庫は100%フランス国内、24〜48時間で発送 |
8-3. ただし、日本に送れるとは書かれていません
ここは重要なので、はっきり書きます。
Friptadiumの配送について、公式には「フランスとベルギーに配送する」とあります。日本への発送については、記載を確認できませんでした。
つまり、「フランスへ行かなくても、オンラインで卸から買えます」とは書けません。日本まで送ってもらえるかどうかは、業者ごとに違います。必ず、自分で問い合わせて確認してください。
そして、送ってもらえたとしても、4章から6章の話は全部そのままかかります。関税も消費税もワシントン条約も、輸入である以上は同じです。
8-4. 買い方ごとの性質
| 買い方 | 渡航費の配賦 | 選べるか | 1点あたりの単価 |
|---|---|---|---|
| 蚤の市・ブロカント | かかります | 自分で選べます | 交渉次第 |
| 現地の卸でhandpick | かかります | 選べます | 単価で決まっています |
| 袋・ベール・箱単位 | かかります | 選べません | 安い |
| オンラインで取り寄せ | かかりません | 選べません | — |
2章の計算に戻ると、いちばん下の行だけが渡航費ゼロです。1着あたり2,000〜4,000円の配賦が消えます。その代わり、自分で選べません。
渡航費を払うということは、「自分で選ぶ権利」を買っているということです。
だから3章の逆算が効いてきます。自分で選んだことによる上乗せが、1着あたり2,000〜4,000円を超えないなら、行く意味は数字の上ではありません。
9. 判定表
| 判定 | 条件 | 扱い |
|---|---|---|
| ◎ | 国内相場が確認できる+3章の上限より安い+状態が良い+規制素材でない | 買います |
| ○ | 上限より安いが、国内相場が推定にとどまる | 点数を絞って買います |
| △ | 利益は出そうだが、いつ売れるか読めない | 7章の日数を計算してから。資金に余裕があるときだけ |
| × | 素材に毛皮・爬虫類革・象牙・べっ甲・珊瑚が含まれる(可能性を含む) | 買いません。手続きなしでは返送か任意放棄になります(6章) |
| × | 出店者が素材の由来を把握していない | 買いません |
| × | 「フランス製だから」以外に高い理由を説明できない | 買いません |
| × | 渡航費の配賦を足すと、国内の手取りを超える | 買いません。ここがいちばん見落とされます |
| × | 重い、かさばる(送料は課税価格にも乗ります) | 買いません |
| × | シミ・虫食い・破れがあり、直す時間を計算していない | 買いません。1点ずつの作業になります |
10. 古物商許可について
旧版には「絶対必須!『古物商許可証』の取得方法と注意点」という項目がありました。書き方を改めます。
まず条文です。
古物営業法 第2条第1項
「この法律において『古物』とは、一度使用された物品(…)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。」
中古の衣類は、この定義に当たります。問題は、海外で買い付けたものだけを日本で売る場合に、許可が必要かどうかです。
ここは解釈が分かれるところで、私が断定できる話ではありません。
旧版が悪かったのは、「絶対必須」と言い切りながら、根拠を示していなかった点です。実務としての結論はこうなります。
| やること | |
|---|---|
| 日本国内でも中古品を仕入れる予定がある | 許可が要ります。迷う余地がありません |
| 海外で買い付けたものだけを売る | 所轄の警察署(生活安全課)に、自分の取引を具体的に説明して確認してください |
許可が必要になる条件と、申請にかかる費用は古物商許可はせどりに必要かにまとめました。
11. 行く前に決めておくこと
| # | 決めること | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 1 | 渡航関連費を、航空券・宿泊・現地交通まで足して1つの数字にする | 2章 |
| 2 | 何着買うつもりかを決める。そして1で出した額を割る | 2章 |
| 3 | 国内の平均販売価格の見込みを出す。実際に売れている価格で | 3章 |
| 4 | 1着に払える上限を出す。この数字を紙に書いて持っていく | 3-2 |
| 5 | 成立する最低点数を出す。これを下回ったら赤字が確定します | 3-3 |
| 6 | 関税5.8%と消費税10%を計算に入れる。送料も課税価格に入ります | 4章・5章 |
| 7 | 毛皮・爬虫類革・象牙は買わないと決めておく。現地で迷わないために | 6章 |
| 8 | 売り切るまでの日数を仮に置いて、月あたりの利益を出す | 7章 |
| 9 | その金額で、その日数、資金が止まっていいかを判断する | 7章 |
| 10 | ここまでやって成立しないなら、行きません | — |
10番が結論です。この10項目は、全部日本にいるうちに終わります。そして終わらせた結果「行かない」になる人が、たぶん少なくありません。
それは失敗ではありません。20万円の渡航費を払う前に分かった、というだけのことです。
12. まとめ
- 私はフランスに買い付けに行ったことがありません。だからこの記事には、蚤の市の歩き方も、交渉も、目利きも、実際の買付事例も出てきません
- 代わりに、行く前に決まる部分を全部計算しました。ここは行かなくても分かりますし、分かっていないと困る部分です
- 買付原価は商品代ではありません。渡航関連費が固定費として乗り、それが点数で割られます
- 同じ1着3,000円の服が、50着なら原価8,422円、200着なら5,422円になります。変わったのは点数だけです
- だから順番が逆になります。「1着いくらで買うか」ではなく、「何着買えるか」が先に決まらないと、いくらまで払っていいかが決まりません
- 50着で平均1万円だと、1着222円の赤字です。3,000円で仕入れて1万円で売っても、渡航費が4,000円乗るからです。分岐点は53着でした
- 「30ユーロが15,000円で売れた」に意味を持たせるには、同じ旅で何着買えたかを書く必要があります
- 中古の衣類はHS 6309.00。基本7%、WTO協定5.8%、EUの欄は無税です。ただし協定の税率は自動では適用されません。計画は5.8%で立てておくほうが安全です
- 送料と保険料は課税価格に入ります。送料が上がると税額も上がります
- 「1万円以下は免税」には例外があります。革製のカバン・ハンドバッグ・手袋、編物製衣類(Tシャツ、セーター等)、革靴。ニットとバッグと靴が入っています
- 毛皮・爬虫類革・象牙は、手続きなしでは持ち帰れません。CITES許可書は貨物が輸出国を出る前でないと取れず、不備があれば返送か任意放棄です
- その1着には渡航費の配賦も乗っています。手元に残らない在庫は、原価まるごとの損になります
- 4象限でいえばC(時間はかかるが利益が大きい)。利益率55.7%でも、売り切るのに180日かかれば月5.9万円です
- 渡航費を払うということは、「自分で選ぶ権利」を買うということです。自分で選んだことによる上乗せが1着2,000〜4,000円を超えないなら、数字の上では行く意味がありません
- Kiliwatch と Guerrisol は卸業者ではありません。旧版の誤りです
最後に1つ。この記事は「フランス古着はやめておけ」という話ではありません。
利益率55.7%という数字は、他の業態ではなかなか出ません。ちゃんと成立する商売です。ただし成立させる条件が、思っているより点数と日数に寄っている。それを行く前に知っておいてほしい、というだけの記事です。
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| 中古を1点ずつ扱うということ | 中古せどりの勝ち方 |
| 1点ずつの作業を人に渡す | メルカリの外注化 |
| 利益率と回転率の実測値 | せどりの利益率と回転率|20年3業態の実測値で出した目安 |
| どこから始めるか決まっていない | 初心者の館 |
この記事で参照した情報源
| 内容 | 出典 |
|---|---|
| HS 6309.00「中古の衣類その他の物品」基本7%/WTO協定5.8%/EU無税 | 税関 実行関税率表(2026年1月1日版)第63類 |
| 課税価格の決定方法(現実支払価格+運賃・保険料等の加算要素) | 税関 カスタムスアンサー 1403 |
| 消費税7.8%+地方消費税2.2%=10% | 税関 カスタムスアンサー 1111 |
| 課税価格1万円以下の免税と、その適用除外(革製のカバン・手袋、編物製衣類、革靴等) | 税関 カスタムスアンサー 1006 |
| ワシントン条約:CITES許可書は輸出国を出る前に取得/不備があれば返送または任意放棄/象牙の条約適用日 | 経済産業省 知っていますか?ワシントン条約 お土産編 |
| ワシントン条約 規制対象貨物の輸入承認手続き | 経済産業省 ワシントン条約(CITES) |
| 古物の定義(古物営業法第2条第1項) | e-Gov法令検索 古物営業法 |
| 「grossiste en vêtements vintage」/handpick・袋・ベール・箱/事業者向け | Pawpick Vintage |
| 「grossiste français de vêtements vintage au kilo」/3kgから/Grade A/配送はフランスとベルギー | Friptadium |
| 「Concept Store」(旧版が卸として挙げていた店) | Kiliwatch Paris |
| 「Friperie en ligne」(旧版が卸として挙げていた店) | Guerrisol |
この記事の数字について
本文中の渡航関連費・仕入値・販売価格・点数・日数は、すべて計算のための仮定です。実際の数値は、時期・為替・扱う商品・自分の作業速度によって変わります。必ず自分の見積もりに置き換えてください。筆者の実績値ではありません。渡仏買付の経験がないためです。
関税率・消費税率・免税の適用除外は、本記事の執筆時点で公式に確認できたものです。税率も制度も改正されます。EPAの税率が適用できるかどうかは、輸入する貨物ごとに異なります。実行の前に、必ず最新の原典を確認し、税関に相談してください。
ワシントン条約の規制対象は種によって異なり、日本以外の国が独自により厳しい規制を課している場合もあります。個別の判断は、経済産業省の野生動植物貿易審査室および税関にご確認ください。古物営業法の適用については所轄の警察署、税務については税理士にご相談ください。
本記事は特定の収益を保証するものではありません。
最終更新:2026年8月31日

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