ジャカルタの Pasar Senen、バンドンの Pasar Cimol Gedebage。
インドネシアには巨大な中古衣料市場があり、価格は驚くほど安い。それは事実です。
ただ、この記事は結論から書きます。
インドネシアの古着を仕入れて日本へ持ち帰る、という計画は立てないでください。
インドネシアは中古衣料の輸入を禁止しており、2025年に規則を更新して取締りを強化しています。市場に商品が並んでいることと、それを合法的な商流として設計できることは別です。
ただし、これは「インドネシアに仕入れ価値がない」という意味ではありません。
古着以外なら、規制の外にあります。そしてインドネシアは、ファッション産業そのものが大きい国です。この記事では、どこに壁があり、どこが通れるのかを分けて書きます。
※制度は変更され得ます。実際の輸出入は必ず現地の通関業者と日本側の輸入者双方でご確認ください。この記事は法的助言ではありません。
1. まず、壁の位置を正確に知る
1-1. インドネシアは中古衣料の輸入を禁止しています
一般向けの中古品は厳しく制限されており、古着や中古の袋類などは輸入禁止です。「新品ではない物品(barang dalam keadaan tidak baru)」の輸入管理は、2025年商業大臣規定第24号で定められています。
日本側の公的資料でも、インドネシアはぼろ及びくずの輸入が禁止されている国として整理されています。
そして政府は取締りを継続しており、2025年以降さらに強化しています。
1-2. 「税金を払えばいい」ではありません
ここを誤解しないでください。
インドネシア政府は、税金を払っても中古衣料の輸入が合法になるわけではないという立場を示しています。関税の問題ではなく、そもそも輸入が認められていない品目だということです。
1-3. フィリピンとは、規制の強さが違います
この記事シリーズでは、フィリピンでも同じ論点を扱いました。ただし、状況が違います。
| フィリピン | インドネシア | |
|---|---|---|
| 根拠法 | RA 4653(1966年) | 商業大臣規定(2025年) |
| 状況 | 法改正の議論が続いている | 規則を更新して取締り強化中 |
| 市場の扱い | 自治体が営業許可を出している | 摘発が公表されている |
インドネシアの方が、規制が新しく、動いています。「古い法律が空文化している」という状況ではありません。
1-4. だから、この記事は古着から離れます
市場を見に行く価値はあります。ただし「安い古着を買って帰る」という前提で渡航計画を立てないでください。
渡航費を払って、持ち帰れないものを見て帰るのでは意味がありません。買えるものを先に決めてから行くべきです。
2. インドネシアの渡航費按分
2-1. 位置を確認する
LCC往復6万円、宿3泊2.5万円、現地移動1.5万円で、渡航費を10万円とします。
| 仕入れ点数 | 1点あたりの按分 |
|---|---|
| 50点 | 2,000円 |
| 100点 | 1,000円 |
| 250点 | 400円 |
| 500点 | 200円 |
2-2. 7カ国での位置
1点400円の按分にするのに必要な点数です。
| 仕入れ先 | 渡航費の目安 | 必要点数 |
|---|---|---|
| 台湾 | 40,000円 | 100点 |
| フィリピン | 70,000円 | 175点 |
| 韓国 | 75,000円 | 188点 |
| インドネシア | 100,000円 | 250点 |
| タイ | 150,000円 | 375点 |
| マレーシア | 250,000円 | 625点 |
| アメリカ | 400,000円 | 1,000点 |
インドネシアは中位です。渡航費そのものは重くありません。問題は点数ではなく、何を買うかにあります。
3. 【本題】古着以外なら、規制の外です
ここからが、この記事の実質的な内容です。
3-1. 何が対象になるか
| カテゴリ | 中古衣料の輸入規制 | 備考 |
|---|---|---|
| 古着・中古衣料 | 該当する | この記事では扱いません |
| 新品のローカルブランド | 該当しない | 本命 |
| デッドストック・アウトレット | 該当しない | 本命 |
| 生地・テキスタイル | 該当しない | 別途規制の確認が必要 |
| 革小物・バッグ・靴(新品) | 該当しない | 同上 |
| アクセサリー・雑貨 | 該当しない | 同上 |
「中古衣料の輸入禁止」は、インドネシアが中古衣料を輸入することへの規制です。新品の商品を日本へ輸出することは、別の話になります。
ただし品目ごとに別の規制がある可能性があります。生地、革製品、化粧品などは、日本側の輸入規制も含めて個別に確認してください。
3-2. インドネシアはファッション産業が大きい国です
ここが見落とされている点です。
インドネシアにはローカルのファッションブランドが非常に多くあります。バンドンは特に、若者文化とファッション産業の集積地として知られています。
つまり、こういうゲームができます。
日本でまだ認知されていないブランドを発掘する。
これは古着の「掘る」とは性質が違います。古着は一点物を探す作業ですが、ブランドの発掘は、見つけた後に継続して仕入れられます。
3-3. 損益分岐を計算する
新品のローカルブランドを仕入れる場合の計算です。渡航費按分400円(2-1の250点想定)、販売手数料10%、国内送料650円で試算します。
| 現地価格 | 仕入れ(円) | 按分込み | 必要売価 | 必要倍率 |
|---|---|---|---|---|
| Rp 50,000 | 470円 | 870円 | 1,689円 | 3.59倍 |
| Rp 100,000 | 940円 | 1,340円 | 2,211円 | 2.35倍 |
| Rp 200,000 | 1,880円 | 2,280円 | 3,256円 | 1.73倍 |
| Rp 400,000 | 3,760円 | 4,160円 | 5,344円 | 1.42倍 |
| Rp 800,000 | 7,520円 | 7,920円 | 9,522円 | 1.27倍 |
※1ルピア≒0.0094円で試算。為替は必ず確認してください。
Rp50,000(約470円)の商品は、3.59倍で売ってようやくゼロです。低単価品は、他の国と同じく成立しません。
狙うべきはRp200,000以上の帯です。倍率1.73倍以下なら、現実的に狙えます。
4. それでも中古市場を見る理由
古着を買わないなら、Senen や Gedebage に行く意味はあるのか。あります。ただし目的が変わります。
4-1. 見るのは「売れ残っているもの」
日本人が「これ安い」と思った商品ではありません。
現地の販売員が値段を下げても売れていない商品を見る。
そこから、インドネシアの需要と供給の偏りが読めます。売れ残っているカテゴリは、供給過多です。そして供給過多ということは、そのカテゴリの新品市場も飽和している可能性が高い。
3-2で「日本でまだ認知されていないブランドを発掘する」と書きましたが、どのカテゴリで探すべきかは、中古市場が教えてくれます。
4-2. インドネシア人が何を選んでいるかを見る
バンドンの Gedebage では、現在も海外ブランドの中古衣料を扱う店舗が並んでいますが、以前ほどの活況ではないと報じられています。
これ自体が情報です。規制強化が市場に影響しているなら、供給は今後さらに細ります。古着ルートに依存しない判断が、より正しくなります。
4-3. 修理需要を見る
中古市場では、状態の悪い商品が大量に出ています。そこで見るのは「これは日本で売れる」ではなく、「どういう壊れ方が多いか」です。
- ファスナー破損
- ボタン欠損
- 裾・ポケットの破れ
- ステッチ切れ
- レザーの傷
- バッグの持ち手・金具
- ソール摩耗
ただし、これを理由にインドネシアへ渡航する必要はありません。同じ観察は日本国内でもできます。あくまで「行ったついでに見る」ものです。
5. どこへ行くか
5-1. ジャカルタ → バンドン
初回はこの2都市で十分です。
| 都市 | 役割 |
|---|---|
| ジャカルタ | 市場構造の把握、卸・問屋、価格の基準づくり |
| バンドン | ローカルブランド、ファッション産業の集積 |
5-2. ジャカルタ:Pasar Senen
輸入中古衣料の集積地として知られる市場です。ここは買う場所ではなく、見る場所と位置づけてください。
4-1の通り、見るのは売れ残りです。そして価格帯、ブランド、年代、状態、欠損の傾向を記録します。
5-3. バンドン:ここが本命
Pasar Cimol Gedebage には中古衣料の集積がありますが、バンドンの本当の価値はそこではありません。
バンドンはインドネシアのファッション・若者文化の中心地です。ローカルブランドのショップ、ファクトリーアウトレット、生地の集積が同じ都市にあります。
3-2で書いた「日本でまだ認知されていないブランドの発掘」は、ここでやります。
5-4. 現地で確認すべきこと
ブランドを見つけたら、商品より先に以下を聞いてください。
- 日本への発送に対応しているか
- 最低ロット
- 卸価格の有無
- 継続供給が可能か
- ブランドとしての権利関係(正規に扱えるか)
ここが噛み合わないブランドは、どれだけ商品が良くても継続取引になりません。そして継続できなければ、渡航費10万円が毎回かかります。
6. 輸出と輸入の実務
制度は変更され得ます。実際の申告は必ず税関にご確認ください。この記事は税務・法務上の助言ではありません。
6-1. インドネシアからの輸出
新品商品であっても、商業貨物として輸出するには手続きが必要です。「買って手荷物で持ち帰る」と「商業貨物として輸出する」は別です。
継続取引を目指すなら、現地の輸出業者・通関業者と、日本側の輸入者の双方で確認してください。
6-2. 日本での輸入
販売目的の商用輸入では、課税価格はCIF(商品代+運賃+保険料)が基準です。個人使用の計算とは違います。
そして品目によって税率が変わります。「インドネシア産だから一律◯%」という書き方をしている情報は信用しないでください。
なお日本とインドネシアの間にはEPAがありますが、適用には原産地規則を満たす必要があります。「インドネシアで買った」ことと「インドネシア原産である」ことは別です。
6-3. 品目ごとの規制
3-1で「古着以外なら規制の外」と書きましたが、品目ごとに別の規制があります。
- 化粧品:日本語の成分表示がない海外化粧品の国内販売には規制があります
- 食品:販売目的の輸入には届出が必要になる場合があります
- 革製品:関税の扱いが衣類と異なります
- 電気製品:PSEの問題があります
扱う品目が決まったら、その品目で個別に確認してください。
7. 3泊4日のルート
DAY 1:ジャカルタ(市場構造の把握)
Pasar Senen を含む中古市場を回ります。買いません。
見るのは価格帯、ブランド、年代、状態、そして4-1の「売れ残っているもの」です。
DAY 2:ジャカルタ(卸・問屋)
新品の卸・問屋を回ります。ここで価格の基準を作ります。バンドンで見る商品が「安いのか高いのか」を判断するための材料です。
DAY 3:バンドン(本命)
ローカルブランド、ファクトリーアウトレット、ショップを回ります。
5-4の4項目(日本発送・最低ロット・卸価格・継続供給)を、見つけたブランドすべてに聞いてください。
DAY 4:バンドン → ジャカルタ
持ち帰るものを絞り、以下を測ります。
- 総仕入れ額
- 総点数
- 総重量
- 渡航費の実額
- 連絡先を交換したブランド数
最後の項目が最も重要です。インドネシアの価値は1回の仕入れ量ではなく、継続供給の相手を見つけられるかにあります。
8. 向いている人・向いていない人
8-1. 向いていない人
- 安い古着を大量に持ち帰りたい人 ← 規制で成立しません
- 1回の渡航で元を取りたい人
- 低単価品で数を稼ぎたい人(3-3の通り3.59倍必要)
- 継続取引を作る気がない人
8-2. 向いている人
- まだ日本で知られていないブランドを探せる人
- 単価Rp200,000以上の帯を扱える人
- 継続供給の交渉ができる人
- 輸出入の手続きを自分で調べられる人
8-3. 結論
インドネシアは「古着を買いに行く国」ではありません。
「まだ日本に来ていないブランドを見つけに行く国」です。
そして後者は、1回の渡航で完結しません。継続取引を作れなければ、渡航費10万円が毎回かかります。
9. 7カ国の比較
| 必要点数 | 主役の変数 | 最大の壁 | |
|---|---|---|---|
| 台湾 | 100点 | 回転数 | 低単価品 |
| フィリピン | 175点 | 選別速度 | 輸出・法規制 |
| 韓国 | 188点 | 物流密度 | 物流費 |
| インドネシア | 250点 | ブランド発掘 | 中古衣料の輸入規制 |
| タイ | 375点 | S+A率 | B品率 |
| マレーシア | 625点 | 選別率と点数 | 固定費 |
| アメリカ | 1,000点 | 選別率×修理 | 距離と物流 |
7カ国を並べると、こうなります。
| 国 | 調べた結果 |
|---|---|
| 韓国 | 物流と競争を計算すると、簡単ではない |
| タイ | 安さだけでは利益にならない |
| マレーシア | 小ロットでは固定費を吸収できない |
| アメリカ | 供給量は圧倒的だが、1,000点規模が必要 |
| 台湾 | 少量なら成立する。ただし低単価品は無理 |
| フィリピン | 安い ukay はある。しかし輸出という壁 |
| インドネシア | 古着は規制で買えない。ただし新品なら別の道がある |
「海外なら安く仕入れられる」という前提が、7カ国すべてで違う理由から崩れています。
10. まとめ
- インドネシアは中古衣料の輸入を禁止しており、2025年に規則を更新して取締りを強化しています。
- 「税金を払えばいい」ではありません。そもそも輸入が認められていない品目です。
- だから古着を買って帰るという前提で渡航計画を立てないでください。
- ただし新品・デッドストック・ローカルブランドは規制の外です。ここが本命になります。
- 損益分岐はRp200,000以上の帯。Rp50,000の商品は3.59倍で売ってようやくゼロです。
- 渡航費10万円、250点で1点400円の按分。7カ国の中では中位です。
- そして最も重要なのは、継続供給の相手を見つけられるか。1回の渡航では完結しません。
【持ち帰った後の話】
海外仕入れでいちばん多い失敗は、目利きではありません。「売れるとは思ったが、売れるまでが長かった」です。
10万円で仕入れて20日で売れるなら、その10万円は年に18回働きます。
同じ10万円で60日かかるなら、年に6回しか働きません。
利益率が同じでも、年間の粗利は3倍違います。
インドネシアで「まだ日本に来ていないブランド」を見つけたとき、最初に確認すべきはここです。そのブランドは、日本で何日で売れるのか。認知されていないということは、検索されないということでもあります。
だから私は、仕入れる前に日数を出します。出品中の件数と、その期間に売れた件数さえ数えれば、計算できます。
「過去に売れているか」と「何日で売れるか」は、まったく別の情報です。
よくある質問
インドネシアの古着を仕入れて日本で売れますか?
おすすめしません。インドネシアは中古衣料の輸入を禁止しており、2025年に規則を更新して取締りを強化しています。市場に商品が並んでいることと、それを合法的な商流として設計できることは別です。政府は「税金を払っても中古衣料の輸入が合法になるわけではない」という立場を示しています。
Pasar Senen や Gedebage に行く意味はありますか?
買う場所ではなく、見る場所として意味があります。特に「現地の販売員が値段を下げても売れていない商品」を見ることで、需要と供給の偏りが読めます。売れ残っているカテゴリは供給過多であり、その情報は新品ブランドを探す際の判断材料になります。
では、インドネシアで何を仕入れればいいですか?
新品のローカルブランド、デッドストック、アウトレット品です。中古衣料の輸入規制は「インドネシアが中古衣料を輸入すること」への規制なので、新品は対象外です。インドネシアはローカルのファッションブランドが非常に多く、特にバンドンが集積地です。日本でまだ認知されていないブランドを発掘するというゲームができます。
いくらの商品を狙えばいいですか?
Rp200,000以上の帯です。渡航費按分400円、販売手数料10%、国内送料650円で計算すると、Rp50,000(約470円)の商品は3.59倍で売ってようやく損益ゼロですが、Rp200,000なら1.73倍、Rp800,000なら1.27倍です。低単価品は他の国と同じく成立しません。
何点くらい仕入れれば成立しますか?
250点で1点あたり400円の按分になります。渡航費10万円(LCC往復6万・宿3泊2.5万・現地移動1.5万)で計算した場合です。台湾の100点、フィリピンの175点より重く、タイの375点、マレーシアの625点より軽い中位です。
ジャカルタとバンドン、どちらへ行くべきですか?
両方です。ジャカルタで市場構造と価格の基準を作り、バンドンでローカルブランドを探します。バンドンはインドネシアのファッション・若者文化の中心地で、ローカルブランドのショップ、ファクトリーアウトレット、生地の集積が同じ都市にあります。


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