店舗せどりのやり方2026|「価格の歪み」で商品を分類し、店を選別して回る方法

店舗せどりのやり方と伸ばし方 せどり

店舗せどりの記事の多くは「おすすめの仕入れ先10選」と「必須ツール3選」で構成されています。それも必要な情報ではありますが、それを読んで店に行っても、たいていうまくいきません。

理由は単純で、そこに書かれているのは「どこに行くか」であって、「その店で何を見るか/何を見ないか」ではないからです。

この記事は後者を書きます。先に結論を置きます。

■ この記事の結論

①店舗せどりの利益源は4種類ある。「店舗価格とAmazon価格の差」はそのうちの1つにすぎず、いま最も競争が激しい場所です。

②商品は「ジャンル」ではなく「価格の歪みが発生する原因」で分類する。CDだから、ゲームだから、で仕入れ判断をしない。

③店は全部回らない。「この店は何が弱いか」を記録して、店ごとに見るジャンルを変えます。

④その記録が、そのまま拡張の地図になる。市内 → 県内 → 隣接県 → 全国遠征。遠征の成果は「その日の利益」ではなく「カルテが何店舗増えたか」で測ります。

順に説明します。


店舗せどりとは

店舗せどりは、実店舗で商品を仕入れて、Amazon・メルカリ・ヤフオクなどで販売して差益を得る手法です。ネット上で仕入れる電脳せどりと対比されます。

店舗せどり 電脳せどり
ライバル その店に来られる人だけ 全国(実質、日本中)
商品の状態 手に取って確認できる 写真と説明文のみ
付属品の確認 その場で開けて数えられる 届くまで分からない
移動コスト 大きい(最大の弱点) ゼロ
仕入れ可能な時間 店の営業時間内 24時間
価格情報の非対称性 残っている ほぼ無い

要点は最後の2行です。電脳せどりは移動コストがゼロな代わりに、価格情報が全員に共有されています。誰でも同じ検索結果を見られるので、うまみのある商品は瞬時に消えます。

店舗せどりは移動コストがかかる代わりに、「その店の棚にある商品の情報」は、その場にいる人しか持っていません。ここが唯一にして最大の優位性です。

逆に言うと、移動コストを払ってまで手に入れた情報優位を、活かせていない仕入れ方をしているなら、店舗せどりをやる意味がありません。


なぜ店舗せどりは「稼げない」と言われるのか

昔の店舗せどりは単純でした。

店頭価格3,000円 → Amazonで8,000円
これを見つけて仕入れる。以上。

これで成立していました。理由は、その価格差を調べられる人が少なかったからです。

今は違います。バーコードを読めば数秒で相場が出る。同じ棚を、同じツールを持った人が何人も見ています。

つまり「稼げない」と言われているのは店舗せどり全体ではなく、「価格差だけを探す店舗せどり」です。ここを分解します。


店舗せどりの利益源は4種類ある

ここがこの記事で一番重要な部分です。

利益の源泉 内容 現在の競争
A 店舗の値付けミス 店が相場より安く付けた 非常に激しい
B 市場間の価格差 店では安いが、別の販路では高い やや激しい
C 情報格差 店員も競合も、その価値を知らない 少ない
D 加工差益 自分が清掃・修理・検品・セット化して価値を上げる ほぼ無い

Aだけを狙うのが、いま最もきつい

Aは「誰が探しても同じ答えが出る」タイプの利益です。バーコードを読めば分かる。だから早い者勝ちになり、価格競争になり、利益率が下がります。

ツールを使えば使うほど、他のツールを使っている人と同じ答えにたどり着くという構造的な問題があります。

だからB・C・Dに移動する

B(市場間価格差)は、販路を複数持っていないと見えません。Amazonでは値がつかないがヤフオクでは高い、国内では安いがeBayでは高い。「どこで売るか」を知っている人だけが拾えます。

C(情報格差)は、知識がそのまま利益になる領域です。バーコードを読んでも答えが出ない、そもそもカタログが無い商品。「なぜこれが高いのか」を説明できる人だけが拾えます。

D(加工差益)は、価格差を「探す」のではなく「作る」領域です。ジャンクを整備する、欠品を埋める、バラをセットにする。これは他人に真似されません。

ツールで解けるのはAだけです。B・C・Dはツールでは解けません。そして解けないからこそ、そこに利益が残っています。


商品を「ジャンル」ではなく「歪みの発生源」で分類する

「CDだから」「ゲームだから」で仕入れ判断をしていると、いつまでも商品知識の暗記から抜けられません。

代わりに、なぜその商品に価格の歪みが生じるのかで分類します。

タイプ 代表商品 歪みの原因 利益源 優先度
① 廃盤型 CD・DVD・VHS・LD・ゲーム・古本 新品供給が消滅している C ★★★★★
② 知識型 カメラ・楽器・工具・オーディオ・専門機器 店員が価値を評価できない C ★★★★★
③ 状態型 ジャンク家電・ゲーム機・カメラ 清掃・修理で価値が変わる D ★★★★★
④ セット型 ホビー・ゲーム・工具・全巻セット バラ/セットで価格が別物 D ★★★★
⑤ 店舗処分型 ワゴン・在庫処分・閉店品 店舗側の都合 A ★★★

この分類の利点は、ジャンルを横断して同じ判断ができることです。

「廃盤で、新品供給が止まっていて、探している人がいる」——この条件を満たすなら、それがCDでもゲームでもプラモデルでも工具でも、同じように仕入れ候補になります。


すべての市場に共通する構造|代替されるものは安くなる

もう一段抽象化します。ここを掴むと、扱ったことのないジャンルでも判断ができるようになります。

市場 何に代替されたか 結果として残るもの
CD・音楽 サブスク(Spotify等) サブスクに無い盤/コレクション性のある盤
DVD・映像 動画配信(Netflix等) 配信されない作品/未ソフト化のVHS・LD
ゲーム DL販売・リマスター・移植 移植されない作品/DL販売が終了した作品
家電 現行の新製品 特殊用途・業務用・生産終了した高性能旧機種
電子書籍・図書館 絶版・専門書・図版が多く電子化されない本

どれも同じ構造です。

代替されるものは安くなる。代替されないものだけが残る。

だから店舗せどりの仕入れ判断は、最終的にこの一文に集約されます。

「これは何かに代替されているか?」

代替されているならスルー。代替されていないなら調べる。これだけです。

各ジャンルの具体的な見方は、それぞれの記事にまとめています。


ポートフォリオを3階建てにする

とはいえ、廃盤・希少品だけを追いかけるとキャッシュフローが不安定になります。月に何本拾えるかが読めないからです。

そこで3つの層を混ぜます。

1階:高速回転 2階:廃盤・希少 3階:修理・再生
役割 キャッシュを作る 利益の本体 利益率を上げる
商材 現行ゲーム・家電・PC周辺機器・人気ホビー CD/DVD/VHS/LD・旧世代ゲーム・廃盤フィギュア・絶版プラモ・生産終了家電 ジャンクゲーム機・ジャンクカメラ・ジャンク家電
利益源 A・B C D
1点あたり利益 1,000〜3,000円 3,000〜30,000円 5,000〜20,000円
判断時間 5〜10秒 30秒〜数分 状態確認に数分

1階のルール:判断が5〜10秒で終わるものだけ

1階は「利益2,000円の商品を大量に拾う」という意味ではありません。迷わない商品だけを拾うという意味です。

型番を見れば分かる、色を見れば分かる、パッケージを見れば分かる。迷った時点でスルーしてください。1階で悩むと、2階と3階に使う時間が消えます。

3階が最も真似されにくい

ジャンクのゲーム機を3,000円で仕入れて、整備して15,000円で売る。ジャンクカメラを5,000円で仕入れて、清掃・整備して25,000円で売る。

これは価格差を「探した」のではなく、「状態を変えることで市場価格を変えた」ということです。

目利きはいずれ真似されますが、技術は真似されません。ゲーム機の整備についてはゲーム機修理の記事にまとめています。

注意:電気製品の分解・修理には知識が必要で、危険を伴う場合があります。また、整備品として販売する際は、行った作業内容と保証範囲を必ず明記してください。確認していない場合は「動作未確認ジャンク」と明記して売ること。ここを曖昧にするとトラブルになります。


店の選び方と回り方

店を選別する|「この店は何が弱いか」を探す

近所の店を全部回る、というやり方はしません。店を分類します。

店のタイプ 特徴 どう扱うか
値付けが強い店 相場を正確に反映。専門スタッフがいる 仕入れには使わない。相場の勉強と売り先として使う
値付けが弱い店 マニュアル的、または店主の感覚のみ 本命
ジャンクが豊富な店 ジャンクコーナーが広く、回転が悪い 3階(修理・再生)の供給元
古い在庫が残る店 商品が入れ替わらない。埃をかぶっている 2階(廃盤・希少)の宝庫
買取が強い店 持ち込みが多く、新しい在庫が常に入る 回転が速いので、訪問頻度を上げる

「良い店」より「偏った店」を探す

重要なのは、店には必ず得意分野と不得意分野があるということです。

  • 店A:最新商品の値付けは正確。→ 競合が多い。行かない
  • 店B:古い在庫が大量に残っている。→ 面白い
  • 店C:ゲームには詳しいが、DVDは適当。→ DVDだけ見る
  • 店D:家電は正確だが、工具は雑。→ 工具だけ見る
  • 店E:全体に甘いが遠い。→ 月1回、まとめて回る

探すべきは「良い店」ではなく「この店は何が弱いのか」です。


店舗カルテを作る

この「店ごとの弱点」を記録します。これが店舗せどりで最も価値のある資産になります。

店舗 ゲーム CD/DVD 家電 ジャンク ホビー この店で見るもの
A店 CD/DVD・ホビー
B店 ゲーム・家電
C店 ジャンク・ホビー
◎=値付けが正確(=仕入れにくい)/△=値付けが甘い(=狙い目)。記号の意味が直感と逆なので注意してください。「店が強い=自分は弱い」です。

ここに加えて、記録しておくと効く項目があります。

  • 値札シールの色と日付表記(入荷時期が読める)
  • 値下げのタイミング(何日で下げるか、何%下げるか)
  • ジャンクコーナーの位置と規模
  • ショーケースに何を入れているか(=店が何を「高い」と認識しているか)
  • 入荷が多い曜日・時間帯
  • 滞在時間と、その日の利益

半年ほど蓄積すると、店に入った瞬間に「今日はどの棚を見るか」が決まります。これが巡回の高速化に直結します。


期待値で考える|店舗せどり最大の罠は「移動時間」

ここは冷静に数字で考える必要があります。

まず「利益 ÷ 滞在時間」で店を評価する

滞在時間 平均利益 時間あたり 判断
A店 30分 8,000円 16,000円/時 継続
B店 60分 5,000円 5,000円/時 切る

売上でも利益額でもなく、時間あたりで見る。B店は利益が出ていますが、A店に2回行ったほうが儲かります。

そして本当に重要なのは、ルート全体で見ること

これが最大の罠です。

1店舗目まで移動30分 → 滞在30分
2店舗目まで移動40分 → 滞在30分
3店舗目まで移動50分 → 滞在30分
帰宅30分

合計4時間20分。各店で利益2,000円を1個ずつ拾って、利益6,000円。

時給に直すと約1,380円。

各店舗単体で見れば「利益2,000円が取れた」ので成功に見えます。でもルート全体で見ると失敗です。

評価すべきは店舗単体の期待値ではなく、ルート全体の期待値です。
(その日の合計利益)÷(移動時間+滞在時間+その後の出品・梱包時間)

この計算をすると、多くの人が「遠くの店に行くのをやめる」という結論になります。それが正しい。店舗せどりは移動時間を削れば削るほど利益率が上がります。

だからルートは生活動線に乗せる

  • 通勤・買い物・送迎の経路上にある店を優先する
  • 3〜5店舗を1つのルートにまとめる
  • そのルートを週1〜2回、定期的に回る
  • 「今日はどこに行こう」と毎回考えない。ルートは固定する

遠征は、「その日1日で複数店を高密度に回れる」場合だけにしてください。片道1時間かけて1店舗、は成立しません。


1店舗1ジャンル|巡回の設計

店舗カルテができたら、店ごとに見るジャンルを固定します。

見るもの 目標滞在
大型リサイクルショップ ジャンク家電・工具 15分
ゲーム専門店 ゲーム(旧世代・限定版) 15分
古本・CDショップ CD・DVD・VHS 10分
ハードオフ ジャンク・本体・周辺機器 15分
ホビー系 廃盤フィギュア・絶版プラモ 10分

「全ジャンルを全店舗で見る」のをやめるだけで、巡回時間は半分以下になります。

店Cのゲーム棚は値付けが正確だと分かっているなら、そこは見ません。見ても仕入れられないからです。それが分かっているだけで、10分が浮きます。


店内での3点巡回|10分で抜ける

店に入ってから見る場所を、3つに限定します。

① ショーケース・レジ裏

店が「これは高い」と認識して隔離した商品です。ここを見る目的は2つあります。

  • 相場より安く放置されている高額品を探す。店が「高い」と認識していても、相場より数千円〜数万円安いことがあります
  • その店が何を「高い」と思っているかを知る。ここに入っていないカテゴリこそが、その店の弱点です

②の使い方のほうが重要です。ショーケースにゲームしか入っていない店は、CD・DVD・ホビーの値付けが甘い可能性が高い。

② ジャンクコーナーの「理由付き動作品」

ジャンク棚で探すのは、壊れている物ではありません。

「本体キズあり」「箱なし」「ケーブル欠品」「説明書なし」といった理由だけで大幅に値引きされているが、機能そのものは正常な商品です。

  • ケーブル欠品 → 汎用ケーブルを付ければ動作品になる
  • 箱なし → そもそも箱を必要としない購入者もいる
  • キズあり → 清掃で改善する場合がある
  • 「動作未確認」 → 店が確認していないだけで、動くことがある

ここが利益源Dの入口です。「価格を戻せる欠点かどうか」で判断してください。

③「未開封」「新品」シールが貼られた型落ち品

旧世代の周辺機器、限定版メディア、実用系の教材。未開封のまま長期滞留している商品は、値下げの対象になりやすい一方で、供給が止まっているぶん相場が上がっていることがあります。

この3箇所だけ見れば、1店舗10分で抜けられます。


値札を読む

これは地味ですが、無駄な検索をゼロに近づける技術です。

読むもの 分かること
シールの色 多くの店が入荷月ごとに色を変えています。色を見れば滞留期間が分かる
日付・管理番号の表記 入荷日。直近入荷か長期滞留かの判別
値下げスタンプ・二重線 値下げ済み=店が「売れない」と判断した商品
手書きの値札 マニュアルではなく人の判断で付けた価格。歪みやすい
値札の貼り方の雑さ その店の運用レベルの目安になる

店ごとにルールが違うので、これも店舗カルテに記録してください。「この店の黄色シールは3ヶ月以上前の入荷」と分かるようになると、棚を見る速度が変わります。


全頭検索をやめる|スクリーニングフィルターを作る

店舗せどりの生産性を決めるのは、検索の速度ではなく「検索しない能力」です。

棚にゲームが100本並んでいるとき、100本を検索するのではなく、5本だけ検索する。この5本を選ぶ基準が「スクリーニングフィルター」です。

フィルターの作り方

基本形はこうです。

ジャンル × 世代 × メーカー/IP × 状態 × 価格帯

具体例です。

商材 フィルター(これに全部当てはまったら検索)
ゲーム PS2 × 現行機に移植なし × ホラー/ADV/シューティング/キャラゲー × 箱説あり × 500〜2,000円
CD ゲーム/アニメサントラ × 2000年代以前 × 廃盤 × 帯あり × 500〜2,000円
DVD OVA/特撮/舞台 × 配信なし × BOXまたは全巻 × 500〜1,500円
VHS 90年代ドラマ × 全巻セット × 未DVD化 × カビなし × 〜1,000円
ジャンク家電 生産終了モデル × 通電確認可 × 欠品が汎用品で埋まる × 〜3,000円

このフィルターを作ること自体が、そのまま競争力になります。他人のリストを借りている限り、他人と同じ商品しか拾えません。仕入れ全般の考え方はせどりの仕入れの記事にもまとめています。

フィルターは店ごとに変える

店舗カルテと組み合わせます。

「A店はCD/DVDが甘い」→ A店ではCD・DVDのフィルターだけを持って入る。ゲーム棚は見ない。

これで滞在時間が短縮され、しかもヒット率は上がります。


仕入れ基準|利益密度で考える

階層 1点あたりの見込み利益 備考
1階(高速回転) 1,000円以上 ただし判断が5〜10秒で終わるものだけ
2階(廃盤・希少) 3,000円以上 できれば5,000円以上
3階(修理・再生) 5,000円以上 作業時間があるので下回るなら見送る

「利益密度」という考え方

金額だけでなく、大きさ・重さあたりの利益で見てください。

大型家電 小型・高単価品
1点の利益 5,000円 5,000円
持ち帰り 車が埋まる カバンに入る
保管 部屋を占領 棚1段
梱包 30分+資材費 3分
送料 数千円 数百円
破損リスク 高い 低い

同じ5,000円でも、手元に残る額と使う時間が全く違います。

メディア類、小型ゲーム、カメラ、カートリッジ、専門機材の小物。小型・高単価・高利益率に絞ることで、保管・梱包・発送の労力が劇的に減ります。

大型商材は、地域内で直接引き渡しができる場合か、1点の利益が2万円を超える場合だけにするのが現実的です。


商圏を広げる|市内 → 県内 → 隣接県 → 全国

ここまでは「近所の店をどう効率よく回るか」の話でした。ここからは、その先にある拡張の話をします。

先に断っておくと、これは「移動時間が最大の敵」という前の章と矛盾しません。移動時間は今も敵です。だからこそ、移動時間を払ってでも取りに行く価値があるかを、行く前に計算するという話になります。

なぜ広げる必要があるのか|商圏は必ず枯れる

店舗カルテが完成すると、しばらくは効率が上がり続けます。どの店で何を見るかが決まり、滞在時間が減り、ヒット率が上がる。

ただしこれには天井があります。

同じ商圏を回り続けると、「自分が拾ったあとの棚」を見に行くことになります。新しく入荷した分しか候補がない。つまりその商圏の期待値は、店舗の入荷速度が上限になります。

これが「商圏が枯れる」という状態です。腕が落ちたわけではなく、回収し終えただけです。

商圏が枯れたサイン

感覚ではなく、数字で判断してください。

指標 枯れているサイン
1店舗あたりの仕入れ点数 以前の半分以下になった
空振り率 訪問しても1点も買えない日が3回に1回を超える
既視感 「この商品、前回も見た」が棚の大半を占める
ルート全体の時給 3ヶ月前と比べて明確に下がっている
訪問間隔 週2回行っても新しい在庫が入っていない

この状態になったとき、選択肢は3つあります。

  1. 扱う商材を増やす(同じ店の、見ていなかった棚を見る)
  2. 商圏を広げる(この章の話)
  3. 買取に回る(店を回るのをやめて、持ってきてもらう)

この順番で検討してください。①が一番安上がりで、③が一番強い。②の遠征はコストがかかるので、①を試し尽くしてからです。この点は章の最後でもう一度触れます。


4段階の拡張ロードマップ

Stage 1
市内
Stage 2
県内
Stage 3
隣接県
Stage 4
全国遠征
片道移動 〜30分 1〜2時間 2〜4時間 それ以上
形態 生活動線に組み込む 日帰り 日帰り〜1泊 2〜7泊
頻度 週1〜2回 月2〜4回 月1〜2回 月1回以下
1回の店舗数 3〜5 5〜8 5〜8 1日5〜6 × 日数
1回の経費目安 ほぼゼロ 5,000〜15,000円 1〜3万円 3〜10万円
1回の目標粗利 2万円以上 5万円以上 15万円以上
必要な体制 店舗カルテ 車または公共交通 現地発送の段取り 現地発送+宿+資金
次に進む条件 市内が枯れた 県内の主要店をカルテ化した 県内・隣接県で安定して黒字
※経費・利益は移動手段と商材で大きく変わります。自分の実績で必ず上書きしてください。

Stage 1:市内|ここを飛ばさない

いきなり遠征に行きたくなりますが、市内で結果が出ない人が県外で結果を出すことはありません。問題は商圏ではなく、目利きかフィルターのほうにあるからです。

この段階でやることは、店舗カルテを完成させることだけです。「どの店の、どのジャンルが甘いか」が言えるようになったら卒業です。

Stage 2:県内|日帰りで、経費を意識し始める

ここから初めて「移動にコストがかかる」という感覚が必要になります。

  • ガソリン代・高速代・駐車場代を、その日の利益から引いて評価する
  • 1日で回る店を先に決めてから出発する。「行ってから考える」は必ず赤字になります
  • 県庁所在地より、その周辺の中規模都市のほうが競合が薄いことが多い

Stage 3:隣接県|現地発送を覚える段階

ここで最初の壁が来ます。積載量です。

仕入れが増えると車に載り切らなくなり、載せられる量が上限になってしまいます。だから現地から発送する段取りを覚える必要があります。これができると、仕入れ量の上限が「車の大きさ」から「資金」に変わります。

移動手段については店舗せどり向けの車の選び方と、車を持たない場合の車なしせどりの記事もどうぞ。

Stage 4:全国遠征|1回を「事業の1プロジェクト」として扱う

複数泊の遠征になると、もう思いつきでは行けません。経費が数万円かかるので、行く前に損益分岐を計算する必要があります。

次の章がその計算です。


遠征の損益分岐点|行く前に計算する

経費の内訳

項目 日帰り 1〜2泊
交通費 2,000〜8,000円 1〜2万円
宿泊費 5,000〜8,000円
食費 2,000円前後 3,000〜6,000円
現地発送費 数千円 5,000〜15,000円
経費合計の目安 5,000〜15,000円 2.5〜5万円

判断の式

見込み粗利 ≧ 経費 × 3

これを下回るなら行かない、という基準を置いてください。経費の3倍にしているのは、①仕入れが読み通りにいかない ②現地で相場が変わる ③帰宅後の出品・梱包に時間がかかる、という3つの誤差を吸収するためです。

具体的に当てはめます。1〜2泊で経費25,000円なら、見込み粗利75,000円が最低ライン。これが取れる見込みがないなら、その遠征は行くべきではありません。

行く前に確認すること

  • その地域に、狙う商材を扱う店が何軒あるか(地図で先に数える)
  • 1軒あたりどれくらいの粗利を見込むか(自分の市内平均を基準にする)
  • 店舗数 × 平均粗利 が、経費の3倍を超えるか
  • 営業時間・定休日(これを確認せずに行って空振りするのが最も多い失敗

この計算をすると、遠征の大半が「行かない」という結論になります。それでいい。行く価値のある遠征だけを選別するための計算です。


遠征の実務|最低限これだけ

ルートは3本用意する

  • メインルート:本命の店を最短でつなぐ
  • サブルート:メインが空振りだったときの代替
  • 予備:時間が余ったとき/渋滞で予定が崩れたとき

Googleマイマップに店舗・営業時間・定休日をピン留めしておくと、現地で迷いません。

1日5〜6店舗。10店舗は組まない

遠征でよくある失敗が過密スケジュールです。「せっかく来たから」と10店舗以上を詰め込むと、1店舗あたりが雑になって、結局どこも取りこぼします。

1日5〜6店舗が現実的な上限だと考えてください。移動時間と、現地での発送作業の時間も必要です。

時間帯を使い分ける

  • 開店直後:在庫が最も揃っている。競合も少ない
  • 閉店間際:値下げ・在庫整理が入っていることがある

現地発送を前提に組む

  • 梱包資材(エアパッキン・段ボール・テープ)を持参する
  • 初日の夜、または2日目の朝に一度発送してしまう
  • これをやらないと車の積載量が仕入れ量の上限になります

その場で記録する

遠征先の店は、次に来るのが半年後かもしれません。記憶に頼らず、その場でカルテを書いてください。

  • 店名・場所・営業時間
  • ジャンル別の値付けの甘さ(◎△の記号で)
  • 値札シールのルール
  • ショーケースに何が入っていたか
  • 買ったもの・買わなかったもの
  • 滞在時間とその店での粗利

よくある失敗

失敗 対策
営業時間・定休日を確認せず空振り 出発前に公式サイトか電話で確認。最も多く、最ももったいない失敗
スケジュールが過密で全部が雑になる 1日5〜6店舗に絞る
車に載り切らない 現地発送を前提に組む
資金が途中で尽きる 現金・カードなど複数の支払い手段を用意
帰宅後に商品を放置して相場が下がる 帰宅直後の出品を最優先にする。遠征は「帰ってから」が本番
繁忙期に宿が取れない 先に宿を押さえてから日程を決める

遠征の本当の目的は、その日の利益ではない

ここが最も伝えたい部分です。

遠征を「その日いくら儲かったか」で評価すると、たいてい割に合いません。経費が重いからです。

では何のために行くのか。店舗カルテを増やすためです。

遠征の成果は「その日の粗利」ではなく「カルテが何店舗増えたか」で測る。

市内のカルテが県内に広がり、隣接県に広がり、やがて「どの地域の、どのタイプの店が、何の値付けに弱いか」というデータベースになります。

これができると、何が起きるか。

  • 初めて行く土地でも、店の外観と品揃えを見た時点で「ここは何が甘いか」の見当がつく
  • 出張・帰省・旅行のついでに、ゼロから調べずに寄る店を決められる
  • 「この地域は全体的にCDの値付けが甘い」といった地域単位の傾向が見えてくる
  • 再訪の優先順位を、感覚ではなく過去の実績で決められる

1回の遠征の利益は消えますが、カルテは残ります。そして次回以降のすべての判断が速くなる。これが遠征に経費を払う理由です。

だからフォーマットを最初から統一する

これは早い段階で決めておいてください。記録の形式がバラバラだと、あとから横断比較ができません。

市内の3店舗を記録するときも、最終的に全国100店舗を比較することを想定した項目で取る。あとから統一し直すのは、ほぼ不可能です。


ただし、遠征しないという選択もある

最後にバランスを取っておきます。

商圏が枯れたときの選択肢は3つある、と最初に書きました。遠征はそのうち最もコストが高い選択肢です。

選択肢 コスト 効果 おすすめ順
①商材を増やす ほぼゼロ(知識の習得のみ) 同じ店の、見ていなかった棚が候補になる 1番目
②商圏を広げる(遠征) 高い(時間・交通費・宿泊費) 店の数が増える 3番目
③買取に回る 中(許可・集客の手間) まだ市場に出ていない在庫にアクセスできる 2番目

いま市内でCDしか見ていないなら、同じ店のDVD棚とゲーム棚とジャンク棚を見るほうが、県外に行くより圧倒的に安上がりです。移動ゼロで候補が3倍になります。

そして③の買取は、そもそも「店を回る」という前提から降りる選択です。押し入れの中身にアクセスできるようになると、商圏が枯れるという問題自体が消えます。

①を試し尽くして、③の準備をしながら、その途中で②を挟む。これが順番として無理がありません。遠征だけを先にやると、経費だけがかさみます。


ツール・法律・実務

ツールとアプリは何をしてくれて、何をしてくれないか

店舗せどりのツールは必要です。ただし「何のために使うか」を理解して使わないと、他の全員と同じ商品にたどり着くだけになります。

主なツール・アプリ

ツール 役割
Keepa Amazonの価格推移・出品者数・ランキング推移の可視化。「今の価格」ではなく「価格の履歴」を見るためのもの
せどりすと(iOS)/せどろいど(Android) バーコードスキャンで商品情報と相場を呼び出す
モノトレーサー等の相場サイト Amazon相場・ランキングの確認
ヤフオクの落札相場 実際に金が動いた価格。カタログの無い商品はこれが頼り
メルカリのSOLD検索 直近の実需と回転の確認

設定や使い方はせどりツールの記事せどりアプリの記事にまとめています。

ツールが答えられること・答えられないこと

ツールが答えられる ツールが答えられない
今いくらで売れているか なぜこの商品が高いのか
過去の価格推移 これから供給が止まるかどうか
出品者が何人いるか カタログが存在しない商品の価値
ランキング(回転) 付属品が揃っているかどうかの影響
手数料込みの利益額 清掃・修理でいくら価値が戻るか

左列は利益源Aの領域です。右列がB・C・D

つまりツールは1階の判断を高速化するための道具であって、2階と3階の判断はできません。そこは自分の知識と技術でやるしかない。そして、だからこそそこに利益が残っています。

Keepaの正しい使い方

Keepaで見るべきは「今の価格」ではありません。

  • 価格が安定しているか、乱高下しているか(乱高下=価格競争が起きている)
  • 出品者数の推移(増えているなら参入が続いている)
  • ランキングのギザギザ(=実際に売れたタイミング。何個売れているかの目安になる)
  • 過去に在庫切れの期間があるか(=供給が細っている商品)

「価格差があるか」ではなく「この商品の供給と需要はどうなっているか」を読む道具だと思ってください。


店舗せどりは違法なのか

ここは正確に書きます。よく検索されている割に、誤解が多い部分です。

※以下は一般的な法令情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は所轄の警察署・税務署、または専門家にご確認ください。法令・運用は改正されます。

結論:転売そのものは原則として合法

適法に購入した物を売ることは、原則として違法ではありません。ただし「許可が必要な場合」と「規制されている商材」があります。ここを外すと、合法な行為が一気に違法になります。

① 古物商許可

最も重要なのがこれです。

ケース 許可
中古品を仕入れて転売する 必要
リサイクルショップ・ブックオフ等からの仕入れ 必要
メルカリ・ヤフオクの個人出品者からの仕入れ
(たとえ「未使用品」でも)
必要
自分が使うために買った物を売る 不要
無償で譲り受けた物を売る 不要
自ら海外で買い付けて輸入した物を売る 不要
新品を小売店で買って転売する 解釈が分かれます(下記)

古物営業法上の「古物」とは、①一度使用された物品、②使用されない物品で使用のために取引されたもの、③これらに手入れをしたもの、を指します。

②の「使用のために取引されたもの」を、警察庁の解釈基準は「自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入等されたもの」と説明しています。

ここから新品転売の扱いが割れます。「小売店から転売目的で買った新品は、使用目的で取引されていないので古物ではない=許可不要」という整理が広く行われている一方、「営利目的で反復継続して売買している時点で必要」という見解もあります。

行政解釈の主流は「不要」側です(流通過程の小売店から転売目的で買った新品は、使用目的で取引されていないので古物に当たらない、という整理)。ただしこの点を明確に断言する公式文書は、こちらでは確認できませんでした。

そして実務上、店舗せどりで新品だけを扱い続けるのはまず不可能です。迷うくらいなら取ってください。19,000円で、この論点そのものが消えます。

許可が必要になる境界線

警察庁の解釈基準では、「営業」とは「営利の目的をもって同種類の行為を反復継続して行うこと」とされています。

また「一つ一つの行為について現実に積極的な利得のあることを必要とせず、一連の行為を包括的にみて利益をあげ得るものであることだけで十分」とも書かれています。個々の取引が赤字でも関係ありません。

愛知県警のQ&Aは、こう明記しています。

「自己使用といいながら、実際は転売するために古物を買って持っているのであれば、許可を取らなければなりません」

「何個から」「いくらから」という数値基準は法令にはありません。営利目的と反復継続、この2つで判断されます。

申請の実務

項目 内容
申請先 主たる営業所を管轄する警察署(生活安全課・防犯係)経由で公安委員会
手数料 19,000円(不許可でも返還されません)
標準処理期間 おおむね40日(土日祝を除く運用の自治体が多く、実感は1.5〜2ヶ月)
主な書類 許可申請書、略歴書、本籍記載の住民票、誓約書、身分証明書(本籍地の市区町村発行)、URLの使用権限疎明資料
罰則 無許可営業は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(2025年6月施行の改正刑法で懲役・禁錮は拘禁刑に一本化)

取扱品目は最初から広めに申請してください。「機械工具類」「道具類」「事務機器類」「衣類」あたりを取っておくと、扱う商材を広げたときに追加申請が要りません。

② 許可を取った後の義務(見落とされがち)

義務 内容
標識の掲示 営業所ごとに、公衆の見やすい場所に掲示。縦8cm×横16cm、紺色地に白文字、金属またはプラスチック等
ウェブサイトへの掲示 2024年4月1日施行。氏名・名称、許可した公安委員会名、許可証番号をサイト上に掲載する義務。ただし「常時使用する従業員が5人以下」または「自ら管理するウェブサイトを持たない」場合は免除(=フリマアプリ出品のみで自社サイトを持たない個人は対象外になり得ます)。インターネット取引を行う特定古物商は免除の対象外
取引の記録(帳簿) 年月日、品目・数量、特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、本人確認方法を取引の都度記録。最終記載から3年間保存。不記載・虚偽記載は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
本人確認 買い受け時に相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認。対価総額1万円未満は原則免除
1万円未満でも確認が必要な品目 自動二輪車・原付(部品含む)/家庭用ゲームソフト光ディスク(CD・DVD・BD等)書籍
2025年10月1日からエアコン室外機、電気温水機器のヒートポンプ、電線、金属製グレーチングが追加
行商 申請書で「行商する」を選択。営業時は許可証を携帯し、求められたら提示
仮設店舗 催事等で営業する場合、営業日の3日前までに管轄警察署へ届出(手数料無料)
不正品の申告 盗品等の疑いがあるときは直ちに警察官に申告する義務

CD・DVD・ゲームソフト・書籍は、1万円未満でも本人確認と帳簿記載が必要です。この記事で扱ってきた商材はほぼ全部が該当します。買取を始めるなら必ず押さえてください。

③ 許認可が必要な商材

商材 必要なもの 備考
酒類 通信販売酒類小売業免許/一般酒類小売業免許(所轄税務署) 登録免許税3万円。通販免許では国産大手メーカーの酒は扱えません(課税移出数量3,000kl未満の製造者に限定)。無免許販売は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
医薬品 薬局開設許可/店舗販売業許可等+特定販売の届出 ネット販売には実店舗が必要。要指導医薬品は長らく対面のみでしたが、2026年5月1日施行の改正薬機法で、薬剤師によるビデオ通話等のオンライン服薬指導を要件に条件付きで解禁されました(緊急避妊薬などの「特定要指導医薬品」は引き続き対面のみ)。いずれにせよ、市販薬をフリマで転売する行為は無許可販売に当たり得ます
食品 営業許可または営業届出(保健所) 2021年改正で届出制度が創設。常温保存可能な包装済み食品(菓子・カップ麺・ペットボトル飲料等)をそのまま転売するだけなら届出不要。要冷蔵・要冷凍、小分けは対象
化粧品 国内品をそのまま販売=不要/自ら輸入する場合は製造販売業+製造業許可 海外コスメの並行輸入転売は薬機法上のハードルが非常に高い
中古家電 PSEマークの確認 電気用品安全法上、PSE表示のない電気用品は販売・陳列が禁止。中古品も規制対象というのが従来の経産省の立場。個人の出品者が「販売事業者」に当たるかは解釈が分かれますが、事業として反復するなら対象と考えるのが安全
コンタクトレンズ 高度管理医療機器等販売業・貸与業許可 度なしのカラコンも2009年から高度管理医療機器。営業所管理者の設置が必要
無線機器 技適マークの確認 技適なし機器の使用は電波法違反(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)。販売行為自体の適法性は解釈が分かれますが、技適の有無は必ず商品説明に明記すべきです

④ チケット不正転売禁止法

2019年6月施行。すべてのチケットが対象ではありません。対象になる「特定興行入場券」は、次をすべて満たすものです。

  1. 興行主等が同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示している
  2. 日時・場所および入場資格者または座席が指定されている
  3. 販売時に購入者の氏名・連絡先を確認する措置を講じ、その旨を明示している

そのうえで「興行主の同意なく、業として、販売価格を超える価格で」譲渡する行為が禁止されます。罰則は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科。不正転売目的での譲受けも同じ罰則です。

⑤ 偽ブランド品

商標権侵害は10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、または併科(法人は3億円以下の罰金)。非親告罪です。

そして2022年10月1日施行の改正商標法・意匠法(および関連する水際措置)で、輸入の扱いが変わりました。海外の事業者が郵送等で国内に持ち込む行為が侵害と明確化され、税関はこう案内しています。

「個人で使用する場合であっても、海外の通販サイトで購入した場合など、海外の事業者から送付される物品が商標権又は意匠権を侵害する模倣品である場合は輸入できません」(税関)

従来あった「個人使用目的なら輸入できる」という整理がなくなりました(個人使用目的の場合は税関で没収されるにとどまり、罰則の対象ではありません)。海外から安く仕入れる場合は特に注意してください。

⑥ 特定商取引法・景品表示法の表示義務

ネットで継続的に販売する場合、個人であっても特商法上の「販売業者」に該当し得ます。該当すると、氏名(名称)・住所・電話番号等の表示義務(いわゆる「特定商取引法に基づく表記」)が生じます。

消費者庁のガイドラインでは、該当性の目安として次のような数値が示されています。

区分 目安
全カテゴリ共通 過去1ヶ月に200点以上、または一時点で100点以上を新規出品/落札額が1ヶ月100万円以上/1年1,000万円以上
CD・DVD・PCソフト 同一商品を一時点で3点以上
家電製品等 同一商品を一時点で5点以上
ブランド品/健康食品/チケット等 該当する商品を一時点で20点以上(※こちらは「同一商品」の限定なし)
※これは特商法上の「販売業者」該当性の目安であり、古物商許可の要否とは別の基準です。混同しないでください。

景品表示法では、「新品未使用」「正規品」「限定品」といった表示や、二重価格表示(「定価○○円→△△円」)が典型的なリスクです。実態と違う表示をしないこと。

⑦ 「買うこと」自体が問題になるライン

店頭で普通に買う行為は、それ自体が違法とはいえません。買い占めを一般的に禁止する法律も、現時点では確認できません(マスク・消毒液の転売規制は2020年8月に解除済みです)。

ただし詐欺罪が成立した実例があります。

転売目的であることを秘してチケットを申し込み、販売会社に「転売目的ではない」と誤信させて取得した事案で、詐欺罪により懲役2年6月・執行猶予4年の判決が出ています(神戸地裁 2017年)。

ポイントは「販売者が転売目的の購入を明示的に排除していて、それを偽って買った」という点です。単に転売目的で買っただけで常に詐欺になるわけではありませんが、偽名・複数名義・虚偽申告といった積極的な手段を使うと一気にリスクが上がります。

店の「お一人様1点まで」は契約上のルールなので直ちに刑事罰にはなりませんが、破れば出入り禁止になります。長く続けるつもりなら、そもそも守るべきです。


税金|確定申告とインボイス

確定申告の「20万円ルール」を正確に

会社員が副業でせどりをする場合、よく言われる「20万円」には、正確に押さえるべき点が4つあります。

  1. 20万円は「所得」であって「売上」ではありません。売上 − 仕入原価 − 送料 − 販売手数料などの必要経費 = 所得です
  2. 前提条件があります。①1か所から給与を受けている、②年末調整が済んでいる、③給与収入2,000万円以下。2か所以上から給与を受けている場合は計算式が変わります
  3. 20万円「超」で申告が必要。20万円ちょうどは不要です
  4. 医療費控除や住宅ローン控除で確定申告をする場合、20万円以下の所得も申告に含める必要があります。「なかったことになる」規定ではありません

住民税は別です

ここが最も見落とされます。

「市民税・県民税には、所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があります」(名古屋市の説明より)

所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、市区町村への住民税申告は必要です。逆に、所得税の確定申告をすれば市区町村へデータが回るので、別途の住民税申告は不要になります。

インボイス制度|2026年10月が節目

免税事業者から仕入れた場合の控除割合(経過措置)が、令和8年度税制改正で細分化されました。

期間 控除割合
〜2026年9月30日 80%
2026年10月1日〜2028年9月30日 70%
2028年10月1日〜2030年9月30日 50%
2030年10月1日〜2031年9月30日 30%
2031年10月1日〜 控除不可

せどらーにとっての実務的な意味を整理します。

  • 売り先が一般消費者中心(メルカリ・ヤフオク・Amazon B2C)なら、免税事業者のままでも実害は小さい。消費者は仕入税額控除をしないためです
  • 売り先に法人・個人事業主が含まれる場合、インボイスを出せないと相手の控除が制限されるため、値引き交渉や取引回避のリスクがあります
  • 仕入れ側:メルカリ・ヤフオクの個人出品者からの仕入れは、原則としてインボイスが入手できません
  • ただし古物商には特例があります。古物商が、適格請求書発行事業者でない者から、その者の使用に係る古物を、棚卸資産として買い受ける場合は、帳簿の保存だけで仕入税額控除が可能とされています。これは古物商許可を取る実利の一つです(要件が細かいので、適用の可否は税理士か税務署にご確認ください)

また、個人事業者向けの「2割特例」は2026年分(令和8年分)が最後で、令和8年度改正により2027年分・2028年分は「3割特例」が新設されています。該当しそうな方は税理士か税務署に確認してください。


販路

販路 向いている商材 コメント
Amazon カタログがある流通品(1階) 回転が速い。ただしカテゴリによって出品許可の壁があります(出品制限の記事
メルカリ 小型・中単価・写真が効く商材 回転が最速。状態説明で価格が変わる
ヤフオク 希少品・カタログの無い商品・高額品 落札相場が見られるのが最大の利点。2階の主戦場
eBay 日本製ビンテージ・レトロゲーム・カメラ 単価が国内を上回ることがある。送料と関税の設計が必要
専門店買取 目利きに自信がない品 下値の確認先。「最悪これで売れる」が分かると判断が速くなる
地域内の直接引き渡し 大型家電・オーディオ・大型ホビー 送料と破損リスクがゼロになる

Amazonだけに依存しないでください。利益源Bは、複数の販路を持っていないと存在しないからです。同じ商品でも、Amazonで500円、ヤフオクで8,000円ということが普通に起きます。


やってはいけないこと

店を全部回る

移動時間が利益を食います。ルート全体の期待値で判断し、生活動線に乗せてください。

全ジャンルを全店舗で見る

店ごとに得意・不得意があります。店舗カルテを作って、その店で見るジャンルを固定してください。

全頭検索する

検索速度ではなく「検索しない能力」が生産性を決めます。スクリーニングフィルターを作ってください。

ツールが出した価格差だけで仕入れる

それは利益源Aで、最も競争が激しい場所です。ツールで解ける問題は、他の全員も解けます。

大型・低単価の商材を大量に抱える

保管・梱包・送料・破損リスクで利益が消えます。利益密度で判断してください。

市内で結果が出ていないのに遠征する

問題は商圏ではなく、目利きかフィルターのほうにあります。市内で結果が出ない人が県外で結果を出すことはありません。経費が増えるだけです。

損益分岐を計算せずに遠征する

見込み粗利が経費の3倍を超えないなら行かない。この計算をすると、遠征の大半は「行かない」という結論になります。

遠征で1日10店舗以上を組む

「せっかく来たから」と詰め込むと、1店舗あたりが雑になって全部取りこぼします。1日5〜6店舗が上限です。

遠征から帰って商品を放置する

相場は動きます。遠征は「帰ってから」が本番で、帰宅直後の出品が最優先です。

1階で悩む

高速回転の商材は判断5〜10秒で終わるものだけ。迷ったらスルーです。そこで悩むと2階と3階の時間が消えます。

古物商許可を取らずに中古を扱う

無許可営業は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。19,000円をケチる理由がありません。

許可を取って終わりにする

標識の掲示、ウェブサイトへの掲示(2024年4月施行)、帳簿の記録と3年保存、本人確認。ここまでが義務です。特にCD・DVD・ゲーム・書籍は1万円未満でも記録が要ります。

許認可が必要な商材を知らずに扱う

酒・医薬品・食品・化粧品・コンタクトレンズ・中古家電(PSE)。「知らなかった」は通りません。

住民税の申告を忘れる

所得税の20万円ルールは住民税には適用されません。


よくある質問

Q. 店舗せどりは違法ですか?

転売そのものは原則合法です。ただし中古品を仕入れて売るなら古物商許可が必要で、酒・医薬品・食品・化粧品などには別途の許認可が要ります。チケットは不正転売禁止法、偽ブランド品は商標法の対象です。「許可を取って、規制商材を避ける」だけで、ほとんどの問題は消えます。

Q. 新品だけを扱うなら古物商許可は要りませんか?

この点は解釈が分かれます。「転売目的で小売店から買った新品は古物に当たらない」という整理が広く行われている一方、営利目的の反復継続なら必要という見解もあります。そして実務上、新品だけを扱い続けるのはほぼ不可能です。迷うなら取ることをおすすめします。所轄警察署の防犯係に事前相談するのが確実です。

Q. 店舗せどりと電脳せどり、どちらがいいですか?

目的が違います。電脳は移動コストがゼロな代わりに情報優位がありません。店舗は移動コストと引き換えに情報優位を得られます。実務的には、店舗で2階・3階の商材を拾い、電脳で1階を回すという併用が現実的です。

Q. ツールは何を入れればいいですか?

最低限、Keepa(価格・出品者数の推移)バーコードスキャンアプリ、それにヤフオクの落札相場です。ただしツールで解けるのは利益源Aだけなので、それだけで戦おうとしないでください。詳細はツールの記事へ。

Q. 店舗せどりで稼げません。何が悪いのでしょうか?

多くの場合、次のどれかです。①ツールが出した価格差だけを探している(利益源Aのみ)②店を全部回って移動時間に利益を食われている ③全頭検索で滞在時間が長い ④1点あたりの利益が小さすぎる。まずルート全体の時給を計算してみてください。数字を見ると、どこを直すべきかがはっきりします。より一般的な原因についてはせどりで儲からない理由の記事もどうぞ。

Q. おすすめの店舗はどこですか?

「どのチェーンか」より「その店舗の値付けが甘いか」のほうが重要です。同じチェーンでも店舗によって全く違います。まず近所を数回まわって店舗カルテを作ってください。それが自分だけの「おすすめ店舗リスト」になります。

Q. 何から始めればいいですか?

ジャンクコーナーと、値札が手書きの棚から見てください。ここは店の値付けが最も雑になる場所です。商材は、CDDVD/VHSゲームのどれか1つに絞ってください。全部同時は失敗します。

Q. 遠征せどりは儲かりますか?

条件付きで儲かります。判断基準は「見込み粗利 ≧ 経費 × 3」です。1〜2泊で経費25,000円なら、見込み粗利75,000円が最低ライン。この計算をすると、遠征の大半は「行かない」という結論になります。行く価値のあるものだけを選別するための計算です。

Q. どのタイミングで商圏を広げるべきですか?

数字で判断してください。訪問しても1点も買えない日が3回に1回を超える/1店舗あたりの仕入れ点数が以前の半分以下/棚の大半が「前回も見た」商品——これが商圏が枯れたサインです。ただし広げる前に、まず同じ店の見ていない棚(=扱う商材を増やす)を試してください。移動ゼロで候補が増えるので、遠征より圧倒的に安上がりです。

Q. 遠征の成果はどう評価すればいいですか?

その日の粗利ではなく、店舗カルテが何店舗増えたかで測ってください。1回の利益は消えますが、カルテは残って次回以降のすべての判断を速くします。そのため記録のフォーマットは最初から統一しておいてください。あとから揃え直すのはほぼ不可能です。

Q. 副業の場合、いくらから確定申告が必要ですか?

会社員で年末調整が済んでいる場合、給与以外の「所得」が20万円を超えたら所得税の確定申告が必要です。売上ではなく所得(=売上−経費)である点に注意。そして20万円以下でも住民税の申告は必要です。


まとめ

【考え方】

  • 利益源は4つ。A(値付けミス)/B(市場間価格差)/C(情報格差)/D(加工差益)
  • ツールで解けるのはAだけ。だからAは競争が激しい。B・C・Dへ移動する
  • 商品はジャンルではなく「歪みの発生源」で分類する(廃盤型/知識型/状態型/セット型/店舗処分型)
  • すべての市場に共通する構造は「代替されるものは安くなる。代替されないものだけが残る」
  • ポートフォリオは3階建て(回転でキャッシュ/廃盤で利益/修理で利益率)

【回り方】

  • 店は全部回らない。「この店は何が弱いか」を記録して店舗カルテにする
  • 評価は店舗単体ではなくルート全体の期待値。移動時間が最大の敵
  • 1店舗1ジャンル。ルートは生活動線に乗せて固定する
  • 店内はショーケース/ジャンクの理由付き動作品/未開封の型落ち品の3点だけ。10分で抜ける
  • 全頭検索をやめ、スクリーニングフィルターを作る。100本から5本に絞る
  • 仕入れは利益密度で判断する。小型・高単価に寄せる

【広げ方】

  • 商圏は必ず枯れる。サインは空振り率3回に1回超/仕入れ点数が半減/棚の既視感
  • 拡張は市内 → 県内 → 隣接県 → 全国遠征の4段階。市内で結果が出ない人が県外で出すことはない
  • 遠征の判断は「見込み粗利 ≧ 経費 × 3」。これを下回るなら行かない
  • 1日5〜6店舗が上限。ルートはメイン・サブ・予備の3本。現地発送を前提に組む
  • 遠征の成果は「その日の利益」ではなく「カルテが何店舗増えたか」。記録フォーマットは最初から統一する
  • ただし枯れたときの選択肢の順番は①商材を増やす → ②買取に回る → ③遠征。遠征が一番コストが高い

【守ること】

  • 中古を扱うなら古物商許可(19,000円・約40日)。無許可は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 許可後も標識・ウェブ掲示・帳簿3年保存・本人確認が義務。CD/DVD/ゲーム/書籍は1万円未満でも記録が必要
  • 酒・医薬品・食品・化粧品・コンタクト・中古家電は別途の許認可や規制がある
  • 所得税の20万円ルールは住民税には適用されない

最後に一つだけ。

店舗せどりで一番価値のあるスキルは、商品知識でも検索の速さでもありません。「その店で何を見ないかを決められること」です。

見るべきものを増やすのは誰でもできます。見ないものを決めるには、その店と、その商材と、自分の時間単価を理解している必要がある。そこまで来ると、店舗せどりは「店を回る作業」ではなく「歪みを探す設計」に変わります。

店舗別の各論として、ハードオフせどりは禁止?神店舗と塩店舗を買取カウンターで見分けるを書きました。店を選ぶ判断は仕入れ側ではなく売り手側から見ると一発で分かります。

セカンドストリートについてはセカストせどりは儲からない?私が取れなかった理由に、店の構造と値札の読み方を分けて書きました。

会員制の店についてはコストコせどりは儲かる?に、年会費と交通費の損益分岐を計算機つきで書きました。

 

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