「オンライン古着屋は儲かるのか」で検索して来られた方に、先に結論を書きます。
儲かります。ただし実店舗とは、「儲かる/儲からない」の判定式そのものが違います。
実店舗の古着屋は、家賃と人件費が先に出ていくので、毎月「いくら売れば赤字にならないか」という損益分岐点が存在します。オンライン古着屋には、それがほぼありません。売れなければ売れないなりに、赤字にならずに止まっていられます。
その代わり、別の壁があります。オンライン古着屋の売上の上限は、自分が1か月に何点出品できるかで決まります。そしてこれが、古着という商材ではとりわけ削りにくい。
つまりオンラインと実店舗は、どちらが有利かという話ではなく、利益を止めている要素が違うということです。この記事は、その違いを整理したものです。無人店舗という第三の形態についても、同じ物差しで比べます。
この記事で扱わないこと
この記事は形態の比較に絞ります。数字が必要な方は、先に次の2本を読んでください。
- アパレルせどり・古着転売は儲からないのか|手数料と送料の実額で計算した……販売手数料、送料、1着あたりの手残り、時給換算、売れる率、税金の扱い、古物商許可。各社の公式料金表と公表データで実額を出しています
- 古着屋開業で9割が失敗する理由……実店舗を持つ場合の開業と廃業の話
本記事が扱うのは「形態ごとに、何が利益の上限を決めているか」だけです。同じ数字を二度出すことはしません。
なお私は、東京で修理と買取の実店舗を運営していたことがあります。古着専門ではありませんでしたが、中古品を仕入れて店頭で売るという構造は同じで、固定費が先に立つ経営がどういうものかは体験しています。そして最終的に売上の天井にぶつかって、店舗を持たない側へ移りました。この記事の見方は、その経験から来ています。
結論:損益分岐点が「ある」か「ない」かで、経営はまったく別物になる
3つの形態を並べると、違いは1行で説明できます。
| 実店舗 | オンライン | 無人店舗 | |
|---|---|---|---|
| 固定費 | 家賃・人件費・光熱費 | ほぼゼロ | 家賃・光熱費(人件費なし) |
| 損益分岐点 | 毎月存在する | 実質存在しない | 毎月存在する |
| 利益の上限を決めるもの | 来店客数 × 客単価 (=立地と商圏) |
自分の作業時間 | 陳列できる点数 (=店舗面積) |
| 販売開始までの手間 | ハンガーに掛ける | 撮影・採寸・説明文・出品 | ハンガーに掛ける |
| 「儲からない」の意味 | 赤字になる | 時給が低くなる | 赤字になる |
いちばん下の行が本質です。実店舗で「儲からない」は赤字を意味しますが、オンラインで「儲からない」は時給が低いという意味です。この2つを同じ言葉で語ると話が噛み合いません。
実店舗を運営していたときの感覚で言えば、固定費があるというのは、毎月1日に「今月これだけマイナスからスタートする」という数字が確定しているということです。売れない月があっても家賃は同じ額だけ出ていきます。だから経営の思考が「いくら売れば埋まるか」から始まる。
オンラインにはそれがありません。今月1点も売れなくても、出ていくのは在庫に寝ている資金だけです。事業として死ににくいという点で、これは圧倒的に有利な条件です。
ただし有利さには裏があります。
オンライン古着屋の天井は、自分の作業時間で決まる
実店舗で仕入れた服を売り場に出すのに必要な作業は、値札を付けてハンガーに掛けることです。1点あたり数十秒で終わります。100点仕入れても、売り場に並べる作業は1時間かかりません。
オンラインは違います。1点ごとに撮影し、採寸し、状態を確認して文章にし、出品します。親記事では、慣れた人でも1着30分程度と見積もっています。100点なら50時間です。
同じ100点を「売れる状態」にするのに、実店舗は1時間、オンラインは50時間かかる。これがオンライン古着屋の構造です。
古着は「1点もの」なので、商品ページを使い回せない
ここが、古着が他のジャンルより不利な理由です。
新品のアパレルを扱うなら、同じ型・同じ色・同じサイズの商品を何点も仕入れられます。商品ページは1回作れば、在庫が尽きるまで使い回せます。1点あたりの出品作業は、点数で割られていきます。
古着はそうなりません。同じ型でも、色あせ具合もダメージも1点ずつ違うので、撮影と状態記載は毎回ゼロからです。採寸も、同じサイズ表記でも年代やブランドで実寸が違うので省略できません。
つまりオンライン古着屋は、アパレル物販の中でも1点あたりの作業時間がもっとも削りにくい形態です。「オンラインは固定費がないから有利」というのは半分しか正しくありません。固定費を払っていない代わりに、変動費として自分の時間を払っています。
だから、天井は先に計算できる
この構造には利点もあります。上限が計算で出せるということです。
月に使える作業時間を、1点あたりの作業時間で割れば、出品できる点数が出ます。そこに親記事の売れる率と1点あたりの手残りを掛ければ、その働き方で到達できる月の上限額が確定します。
この計算を最初にやっておくと、「もっと頑張れば増える」という曖昧な期待がなくなります。増やしたいなら、時間を増やすか、1点あたりの作業を減らすか、1点あたりの手残りを上げるかしかない。やる気で変わる部分はここには含まれていません。
そして最初にやるべきことは、1点あたりの作業時間をストップウォッチで実測することです。見積もりではなく実測です。ここが3分ずれると、月の上限が数万円単位で変わります。
セット販売・量り売りは、この作業時間への対処である
オンラインの古着で「◯点セット」「まとめ売り」「福袋」が多い理由は、趣向ではありません。1点あたりの作業時間と送料を、点数で割る操作だからです。
10点を1つの出品として売れば、撮影・説明文・梱包・発送が1回で済みます。50時間かかっていた100点が、5時間になる可能性があります。オンラインの最大の弱点に対する、最も直接的な対処です。
ただし副作用があります。
- 単価が下がります。まとめ売りは1点あたりの価格を下げないと成立しません
- 厚みが増えて送料が跳ねます。親記事のとおり、厚さ3cmを超えると送料は二段階で上がります。作業時間で得た分を送料で失うことがあるので、点数を決める前に送料表で確認してください
- 目利きが価格に反映されなくなります。1点ずつなら値付けできた良品が、セットの中に埋もれます
結論としては、単価が取れる型は1点ずつ、そうでないものをセットでという使い分けになります。全部をセットにすると、単価を下げる方向にしか進めなくなります。
無人店舗は、作業時間を家賃で買い取るモデル
ここまでの整理で見ると、無人古着店が何をしているかがはっきりします。
陳列すれば販売が始まる(=実店舗の利点)のに、人件費を払わない(=オンラインの利点)。撮影も採寸も商品説明も不要で、決済はセルフレジや精算機で完結します。オンライン古着屋の最大の弱点である「1点ごとの商品ページ作成」が、まるごと消えます。
言い換えれば、家賃という固定費を払って、作業時間を買い取っているモデルです。
ただし、作業がなくなるわけではありません
ここは誤解されやすいところなので、取材記事の事実を確認しておきます。
繊研新聞の取材によれば、ある無人古着店は週2回、月に1,200〜1,500点の商品入れ替えを行っています。品揃えの鮮度維持は実店舗と同様に欠かせない、とされています。
つまり出品作業が消えた代わりに、仕入れと陳列と入れ替えという別の作業が発生しています。月1,200〜1,500点を回すというのは、仕入れの規模としても相当なものです。「無人だから手がかからない」という理解は、事実と違います。
同じ記事では、24時間営業の店舗や、監視カメラを複数台設置している店舗の例が挙げられています。運営側からは「スモールビジネスで運営すれば淘汰されてしまうだろう」という趣旨の発言も出ており、多店舗展開を前提としたモデルとして語られています。
数字については、確認できたことと、できなかったこと
この分野は情報の出所に偏りがあるので、正直に書いておきます。
無人店舗の利益率や月商として出回っている数字は、運営会社が取材や募集資料の中で自己申告したものです。第三者が検証したデータではありません。
また、無人店舗のロス率(万引きによる損失)について、中立的な出典は確認できませんでした。数字を公表しているのは無人決済システムのベンダーとフランチャイズ本部で、いずれも「無人化は問題ない」と示す立場にあります。実際にどの程度のロスが出るのかは、公開情報からは判断できないというのが現状です。
無人店舗を検討するなら、この2点は自分で確かめる前提で見てください。作業時間を家賃で買うという構造自体は合理的ですが、その家賃がいくらで、ロスがどれだけ出るかが分からなければ、割に合うかどうかは計算できません。
結局、どれを選ぶか
「どれが儲かるか」ではなく、「自分のどの資源が余っているか」で決まります。
| 余っている資源 | 向いている形態 | 理由 |
|---|---|---|
| 時間 | オンライン | 固定費ゼロなので失敗しても死なない。時間を出品作業に変換できる |
| 資金(時間はない) | 無人店舗 | 家賃を払って作業時間を買う。ただし多店舗前提のモデルとして語られている |
| 目利きと接客 | 実店舗 | 1点ずつ説明して売れる。ただし固定費と商圏の制約を受ける |
そのうえで、最初に選ぶならオンライン一択だと考えています。理由は単純で、3つの中で唯一、間違えても固定費で死なないからです。
実店舗を持つと、商材が合わなかったと分かった時点でも家賃は発生し続けます。撤退にも費用がかかります。オンラインなら、合わないと分かった時点で在庫を処分すれば終わりです。失敗の値段が違いすぎます。
そして、オンラインで1点あたりの作業時間と手残りを実測した経験は、そのまま無人店舗や実店舗の採算計算に使えます。順序として、先に数字を取れる形態から入るのが安全です。
オンライン古着屋を始める順番
- 古物商許可を取る。仕入れて売る以上、必須です。手続きと無許可のリスクは親記事で整理しています
- 販路を1つに決める。複数に広げるのは、1つで回転が成立してからです。各社の手数料と送料の実額も親記事にあります
- 10点だけ出品して、1点あたりの作業時間を実測する。ここが全ての計算の基礎になります
- 月の上限額を計算する。使える時間 ÷ 1点あたり作業時間 × 売れる率 × 1点あたり手残り
- その上限が目標に届かないなら、仕入れを増やす前に設計を変える。点数を増やしても時間が足りません
4番で出た数字が目標に届かないまま仕入れを増やすと、在庫だけが増えます。先に天井を知っておくというのが、この形態でいちばん効く準備です。
仕入れ先について
国内の古物市場、卸、海外買い付けとルートは分かれます。海外買い付けの原価計算は地域ごとに条件が違うので、それぞれ別に整理しています。
よくある質問
オンライン古着屋は儲かりますか?
儲かりますが、判定の仕方が実店舗と違います。実店舗は固定費を超えるかどうかで黒字か赤字かが決まります。オンラインは固定費がほぼないので赤字にはなりにくく、代わりに「時給がいくらになるか」で評価することになります。1点あたりの手残りの計算方法は親記事にあります。
無人古着屋のほうが儲かりますか?
構造としては、オンラインの弱点(1点ごとの出品作業)を家賃で解決しているモデルです。ただし作業がなくなるわけではなく、繊研新聞の取材では週2回・月1,200〜1,500点の商品入れ替えを行っている店舗の例が出ています。また利益率や月商として出回っている数字は運営会社の自己申告であり、ロス率の中立的なデータは確認できませんでした。家賃とロスが分からなければ、割に合うかは計算できません。
副業でも成立しますか?
形態としては最も副業向きです。固定費がないので、稼働できない月があっても損失が出ません。ただし売上の上限が作業時間で決まるので、週に何時間出品作業に使えるかを先に決めて、そこから月の上限額を逆算してください。時間を決めずに始めると、想定と実績がずれた理由が分からなくなります。
実店舗を持たずに「古着屋」を名乗っていいですか?
屋号を名乗ることに制限はありません。ただし仕入れて売る以上、古物商許可は形態にかかわらず必要です。
セット販売にしたほうがいいですか?
単価が取れる型は1点ずつ、そうでないものをセットで、という使い分けを推奨します。セット販売は1点あたりの作業時間と送料を分割できますが、単価が下がり、厚みが増えて送料区分が変わることがあります。作業時間で得た分を送料で失っていないか、点数を決める前に確認してください。
まとめ
- オンラインと実店舗は、どちらが有利かではなく、利益を止めている要素が違う。実店舗は固定費と商圏、オンラインは自分の作業時間
- 実店舗の「儲からない」は赤字、オンラインの「儲からない」は時給が低いという意味。同じ言葉で語ると話が噛み合わない
- 同じ100点を売れる状態にするのに、実店舗は陳列だけ、オンラインは1点ごとに撮影・採寸・説明文・出品が必要になる
- 古着は1点ものなので商品ページを使い回せない。アパレル物販の中でも1点あたり作業時間が最も削りにくい形態
- セット販売・量り売りは、その作業時間と送料を点数で割る操作。ただし単価が下がり、厚みで送料区分が変わる
- 無人店舗は、家賃を払って作業時間を買い取るモデル。ただし商品入れ替えという別の作業が残り、利益率の数字は運営会社の自己申告、ロス率の中立的データは確認できなかった
- 最初に選ぶならオンライン。3つの中で唯一、間違えても固定費で死なない
- 始める前にやるべきことは、10点出品して1点あたりの作業時間を実測し、月の上限額を先に確定させること
オンライン古着屋は、固定費を払わない代わりに自分の時間を払う商売です。その交換レートを最初に測っておけば、あとは増やすか、変えるか、やめるかの判断だけになります。測り方が分かっていないまま量を増やすことが、この形態でいちばん起きやすい失敗です。

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