韓国古着仕入れの記事は、たいてい「広蔵市場に行け」で終わります。
2026年現在、それだけでは足りません。日本人バイヤーが増えて有名スポットが最安ではなくなっていること、そしてほとんどの記事が物流と輸入コストを計算に入れていないことが理由です。
この記事の主張はひとつです。
見るべきは「仕入れ値」ではなく「日本到着原価」です。
そして日本到着原価の中で、唯一あなたが自分で計算できて、かつ明確な分岐点を持つ変数があります。梱包密度です。7章で扱います。
1. 日本到着原価とは何か
韓国で1,500円のコートを買ったとして、それが日本で売れる状態になるまでにかかる費用は、こうなります。
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| ① 商品代 | 現地での仕入れ値 |
| ② 渡航費按分 | 航空券・宿泊・現地交通 ÷ 仕入れ点数 |
| ③ 韓国内物流 | 集荷・梱包・圧縮 |
| ④ 国際輸送費 | 航空便または船便 |
| ⑤ 通関関連費 | 通関手数料・書類作成 |
| ⑥ 関税 | 品目により変動(6章) |
| ⑦ 輸入消費税 | (CIF+関税)×10% |
| ⑧ 日本国内配送 | 販売時の送料 |
| ⑨ 加工費 | 検品・洗濯・採寸・撮影・出品の作業時間 |
多くの記事は①しか見ていません。この記事は、②以降を順に計算します。
先に断っておくと、③④⑤は実額を書けません。業者・輸送方法・梱包形態・重量・容積・通関条件で変わるからです。7章で「なぜ書けないのか」と「では何を確認すればいいのか」を説明します。
2. まず ② 渡航費按分だけを計算する
ここは自分で確定できる数字なので、最初に出します。
2-1. 渡航費は点数で割られる
LCC往復4万円、宿2泊2万円、現地交通・食費1.5万円で、渡航費を7.5万円とします。冬物コート1着を1.5kgとして計算します。
| 持ち帰り手段 | 重量 | 着数 | 1着あたりの渡航費按分 |
|---|---|---|---|
| ハンドキャリー(LCC標準15kg) | 15kg | 10着 | 7,500円 |
| ハンドキャリー+追加5kg | 20kg | 13着 | 5,625円 |
| 50kg | 50kg | 33着 | 2,250円 |
| 100kg | 100kg | 67着 | 1,125円 |
| 200kg | 200kg | 133着 | 562円 |
この表は渡航費だけです。国際送料も関税も含まれていません。混同しないでください。
2-2. それでも、この時点で差が出ます
仕入れ1,500円のコートに、渡航費按分だけを乗せた場合です。
| 持ち帰り手段 | 商品代+渡航費按分 |
|---|---|
| ハンドキャリー15kg | 9,000円 |
| 100kg | 2,625円 |
| 200kg | 2,062円 |
ハンドキャリーの時点で、1,500円のコートの原価が9,000円になっています。ここに国際送料も関税も乗っていません。
つまり「2泊3日でスーツケースに詰めて帰る」というモデルは、低単価品では成立しません。持ち帰れる点数が渡航費を割りきれないからです。
2-3. だからハンドキャリーなら単価を上げる
| 状況 | 取るべき戦略 |
|---|---|
| 初回・ハンドキャリー | 高単価品に絞る。渡航費按分7,500円を吸収できる商材だけ |
| 継続・大量 | 低単価品も成立するが、7章の物流費を先に見積もること |
初回に「安いから」と低単価品をスーツケースに詰めるのが、最も典型的な失敗です。
2-4. LCCの重量制限
チェジュ航空やジンエアーなどのLCCは、受託手荷物の上限が15kgのことが大半です。コートやジャケットは1着1〜1.5kg。スーツケース自体の重さを引くと、実質10〜15着しか入りません。
重量オーバーの追加料金は1kgあたり1,000〜2,000円。追加オプションは必ずオンラインで事前購入してください。当日払いは割高です。
3. 仕入れ構造:旅行者として買うか、業者として買うか
3-1. 東廟(トンミョ)は、もう「最安」ではありません
東廟の蚤の市は、いまも韓国古着の中心地のひとつです。ソウル市の公式観光情報でも古着市場として案内されています。
ただし、日本人バイヤーが増えたことで「東廟=最安仕入れ」という構図ではなくなってきています。東廟だけを回ると、「日本から来た観光客」と同じ土俵に立つことになります。
3-2. 上流は「永登浦(ヨンドゥンポ)」の卸・倉庫
永登浦周辺には卸・倉庫系のルートがあります。観光客が入る場所ではなく、業者間取引の世界です。
韓国の古着卸には、仕入れ方式に呼び名があります。
- 초이스(チョイス):自分で1着ずつ選ぶ。単価は上がるが確実
- 까대기(カデギ):山や袋から掘る。単価は下がるが作業量が跳ね上がる
この2つで単価と作業時間が変わります。1章の⑨(加工費)に「掘る時間」を入れ忘れないでください。
3-3. 目指すのは「業者として買える状態」
旅行者として買うのではなく、韓国の古着業者として買える状態を作る。
東廟でCarharttを3万ウォンで買って日本で売る、を繰り返しても事業にはなりません。再現性がないからです。その日にたまたま何があったかで結果が変わります。
卸ルートを開拓すれば、1着あたりの仕入れが下がり、数量も読めるようになります。数量が読めるということは、7章の物流費が計算できるということです。
3-4. ベール買いは、まだやらない
中身が見えない圧縮梱包を丸ごと買う「ベール買い」は単価が激安になりますが、3〜5割が廃棄になることもあります。検品設備と保管面積がないと処理しきれません。
まずは1着ずつ選ぶ「ピック買い」で、何がいくらで売れるかという相場観を作ってください。
4. エリアは「目的」で分ける
| エリア | 役割 | 期待値 |
|---|---|---|
| 永登浦 | 卸・倉庫・上流仕入れ | ★★★★★ |
| 東廟 | 超低単価の異常値拾い+相場観測 | ★★★★★ |
| 黄鶴洞 | 古物・ミリタリー・レザー・雑貨 | ★★★★☆ |
| 広蔵市場 | ブランド・大量・相場確認 | ★★★☆☆ |
| 聖水 | トレンドの答え合わせ | ★★☆☆☆ |
| 弘大 | Y2K・ストリートの市場調査 | ★★☆☆☆ |
4-1. 東廟は「仕入れ場所」であり「市場調査装置」
必ず行きますが、大量仕入れを目的にしません。目的は4つです。
- 低単価の異常値を拾う
- 韓国人が何を捨て値で売っているかを見る
- 韓国市場のトレンドを読む
- 卸価格との比較材料を作る
ラックを見る順番はジャケット → スウェット → シャツ → パンツ → 小物。単価の高いものから見て、時間切れになっても損失が小さい順です。
見た瞬間に問うのは1つだけ。「この中で日本で5,000〜15,000円で売れそうなものは何着あるか」。1着ずつ悩んでいたら時間が尽きます。
4-2. 広蔵市場は初回の相場観づくり
地下鉄1号線「鍾路5街」駅8番出口から徒歩2分。2階の輸入古着商街です。
- コアタイム:11:00〜17:00
- 日曜は定休の店が多いため、仕入れは月〜土
- メイン通り:ディスプレイが綺麗でブランド品が並ぶ。単価は高め
- 奥の細道:山積みの店が多く、掘り出し物が出る。単価は安い
4-3. 黄鶴洞・新設洞は「掘る」場所
道路に服が山積みです。1着1,000〜5,000ウォン(約100〜500円)。必須装備は軍手、マスク、汚れてもいい服。
新設洞の奥には革製品やミリタリー放出系の業者が点在しますが、革製品は6章を読んでから手を出してください。
4-4. 聖水・弘大は「答え合わせ」
買い付けの主戦場にしません。キュレーションされた店なので単価が上がります。見るのは以下です。
- 今ソウルの若者はどんな色を着ているか
- どの年代の古着を高く評価しているか
- どんなシルエットをラックの前面に置いているか
ここで人気の型を覚え、東廟や卸で似たものを安く探す。リサーチ拠点としての使い方が正解です。
4-5. 東大門は新品の卸
apM PLACE や nu:zzon などのプロ向け卸売ビルは深夜(20:00〜翌5:00)営業。古着に合わせる小物やトレンド服を仕入れられますが、同色・同型で2〜3着以上という最低ロットの店が多く、小規模には向きません。
DDP周辺の夜の露店(通称「黄色いテント」)にはコピー品が大量に並びます。持ち込みも販売も違法です。トレンドリサーチの場所と割り切ってください。
5. 何を買うか:ブランドより「形」
5-1. 高級ブランドから入らない
Supreme、Burberry、Gucci、Prada を最初から狙わないでください。
- 偽物リスク:真贋を誤ればアカウント停止です
- 相場が高騰:全員が見ているので利幅が残りません
- 状態確認が難しい:高単価なぶん見落としの損失が大きい
5-2. Aランク:利益が出やすいブランド
Carhartt / Dickies / The North Face / Ralph Lauren / Levi’s / Champion / Patagonia / L.L.Bean / Columbia / adidas / Nike
優先する属性は、90s・00s/Made in USA/刺繍ロゴ/ビッグサイズ/特殊カラー/ワーク系/ナイロン系/フリース/スウェット/ジャケット。
韓国にはアメリカからのベールが大量に入るため、アメリカブランドの在庫が意外に豊富です。
5-3. しかし本命は「ブランド名が弱い商品」
ブランドAを5,000円で仕入れて10,000円で売る
より
ノーブランドを2,000円で仕入れて8,000円で売る方が、利益率は高い
探すのは「ブランド」ではなく「日本で売れるフォルム」です。
短丈ブルゾン/ボックスシルエット/ワイドデニム/フェードスウェット/ナイロンジャケット/ハーフジップ/企業ロゴ/カレッジロゴ/刺繍/変形デザイン/ミリタリー/ワークウェア
5-4. 判断は5階級で機械的に
| 階級 | 判断 |
|---|---|
| S | 仕入れ値・期待販売価格・回転率の3つが全部強い。絶対買う |
| A | 少し状態に難があっても売れる。基本買う |
| B | サイズ・色・年代が良ければ買う |
| C | 利益は薄いが、韓国市場の理解のために買う |
| D | ブランドだけ有名/状態が悪い/日本で需要が弱い/偽物リスク。買わない |
5-5. 「韓国だから安い」を仕入れ理由にしない
韓国で5,000ウォンでも、日本で3,000円でしか売れなければ意味がありません。逆に30,000ウォンでも、日本で15,000〜20,000円で売れるなら価値があります。
判断は「仕入れ値」ではなく「日本到着原価に対する期待粗利」です。
5-6. 重い商材ほど、7章の影響を受けます
ここは覚えておいてください。ダウン、厚手コート、フリース、レザーは、重くてかさばります。逆にTシャツ、シャツ、薄手スウェットは軽くて詰まります。
同じ100kgでも、何着入るかがまったく違う。それが1着あたりの物流費を決めます。7章で計算します。
6. 関税と輸入消費税:商用輸入の計算
制度は変更され得ます。品目分類・原産地・取引形態によって税率は変わります。実際の税率は必ず税関にご確認ください。この記事は税務・法務上の助言ではありません。
6-1. 個人使用と商用では、課税価格の計算が違います
ここを混同している記事が非常に多いので、先に整理します。
| 個人使用の輸入 | 販売目的の商用輸入 | |
|---|---|---|
| 課税価格 | 海外小売価格 × 60% | CIF(商品代+運賃+保険料) |
| 少額免税(課税価格1万円以下) | 適用される | — |
| 少額貨物の簡易税率 | 適用される | — |
あなたが転売目的で仕入れるなら、右側です。「小売価格×60%」で計算している記事は、個人輸入の話をしています。
そして革製の靴・鞄は、個人使用であっても少額免税の対象外です。
6-2. 革靴は「30%または1足4,300円のいずれか高い方」
革靴の関税率は30%または1足あたり4,300円のうち、いずれか高い方(協定税率)です。「1足4,300円の固定額」ではありません。低価格帯では4,300円側が効き、高価格帯では30%側が効きます。
商用輸入(CIF基準)で計算すると、こうなります。国際送料の按分を1足300円と仮定しました。
| 仕入値 | CIF | 30%分 | 適用関税 | 輸入消費税 | 到着原価 | 仕入値の何倍か |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1,500円 | 1,800円 | 540円 | 4,300円 | 610円 | 6,710円 | 4.47倍 |
| 3,000円 | 3,300円 | 990円 | 4,300円 | 760円 | 8,360円 | 2.79倍 |
| 5,000円 | 5,300円 | 1,590円 | 4,300円 | 960円 | 10,560円 | 2.11倍 |
| 10,000円 | 10,300円 | 3,090円 | 4,300円 | 1,460円 | 16,060円 | 1.61倍 |
| 約14,000円 | 14,333円 | 4,300円 | 4,300円 | 1,902円 | 20,925円 | 1.46倍(分岐点) |
| 30,000円 | 30,300円 | 9,090円 | 9,090円 | 3,939円 | 43,329円 | 1.44倍 |
CIF 14,333円が分岐点です。これを下回ると、いくら安く買っても1足4,300円が効きます。
黄鶴洞で1,500円の革靴を10足仕入れた場合、到着原価は1足6,710円。仕入値の4.47倍です。
初心者は革靴を避けてください。扱うなら分岐点を超える高単価品だけです。
6-3. 衣類の場合
ニット製品は素材比率で税率が変わります。インボイスに素材(Cotton 100% など)を正確に記載してください。記載が曖昧だと不利な区分で査定される可能性があります。
輸入消費税は(CIF+関税)×10%です。関税にも消費税がかかる点を忘れないでください。
6-4. 特恵関税は、韓国では使えません
中古の衣類(HS6309.00)の特恵欄は無税です。ただし、韓国はその対象から外れています。
大韓民国は、平成12年4月1日に特恵を卒業しています。(税関「特恵卒業(除外)国・地域一覧」)
| 欄 | 税率 | 韓国で使えるか |
|---|---|---|
| 基本 | 7% | — |
| WTO協定 | 5.8% | 使えます |
| 特恵 | 無税 | 使えません(卒業済み) |
そして、税率の欄が使えるかどうかとは別に、原産地の問題があります。税関は原産地規則をこう説明しています。
「原産地規則とは、貨物の原産地(=物品の「国籍」)を決定するためのルールのことです。」(税関)
韓国で買っても、その服が韓国で作られたとは限りません。買った国と、物品の国籍は別です。
実行関税率表には、経済連携協定ごとの欄も並んでいます。ただし、どの欄が使えるかは原産地で決まり、原産地を示せなければ、その欄は使えません。
原価計算では、WTO協定の5.8%を見込んでおくのが安全です。
6-5. 日本には、いくらで入ってきているか
国連ComtradeでHS6309(中古の衣類その他の物品)の日本の輸入を引きます。2025年です。
| 相手国 | 金額(USD) | 数量(kg) | 1kgあたり |
|---|---|---|---|
| 世界計 | 88,180,036 | 9,134,675 | 9.65 USD |
| アメリカ | 44,712,068 | 3,070,093 | 14.56 USD |
| タイ | 13,532,092 | 1,266,073 | 10.69 USD |
| マレーシア | 309,984 | 933,521 | 0.33 USD |
| 韓国 | 292,739 | 556,546 | 0.53 USD |
| 韓国の位置 | |
|---|---|
| 数量 | 世界計の約6.1% |
| 金額 | 世界計の約0.33% |
| 1kgあたり | 0.53 USD。世界計9.65 USDの約18分の1です |
商業ベースで日本に入ってきている韓国の中古衣類は、重量あたりで見ると最も安い部類です。3-1で書いた「東廟はもう最安ではありません」は、この構造の中での話になります。
参照:税関「実行関税率表 第63類」/税関「特恵卒業(除外)国・地域一覧」/税関「原産地規則とは」/国連Comtrade
7. 【最重要】物流費は「kg単価」だけでは計算できません
ここまで読んで「では実際いくらかかるのか」と思ったはずです。
正直に書きます。この記事に「カーゴ100kgで◯円」と書くことはできません。そしてそれは、調べれば分かるのに隠しているのではなく、そもそも一律の料金表が存在しない領域だからです。
7-1. なぜ一律で書けないのか
見積もりを左右する変数が、これだけあります。
- 実重量と容積のどちらで課金されるか
- 箱数と梱包形態
- 航空便か船便か
- 韓国内の集荷場所
- 日本側の届け先
- 商用貨物としての通関方法
- 圧縮を業者に頼むか自分でやるか
実際、韓国の仕入れ代行では「商品代に対する手数料+送料は実費請求」という体系が一般的です。送料が固定でないから、手数料と分けて請求されるわけです。
したがって「100kgならいくらですか」と聞くだけでは、正確な答えは返ってきません。
7-2. ただし、あなたが自分で計算できる変数がひとつあります
それが梱包密度です。ここがこの記事で最も実用的な部分です。
国際輸送では、実重量と容積重量を比較して、大きい方(Chargeable Weight)で課金されます。これは概念上の話ではなく、実際に航空会社の燃油サーチャージも Chargeable Weight を基準に kg 単位で設定されています。
容積重量の計算式は、航空貨物では次の形が使われることがあります。
容積重量(kg) = 縦(cm) × 横(cm) × 高さ(cm) ÷ 6,000
ただしこの「6,000」という係数は普遍値ではありません。業者やサービスによって異なり、÷5,000が使われることもあります。以下は÷6,000を試算条件とした場合の計算です。
この式を逆算すると、1kg = 6,000cm³ = 0.006m³。つまり分岐点となる梱包密度が出ます。
【試算条件:係数÷6,000の場合】梱包密度 166.7 kg/m³
これを下回ると容積重量で課金される(=空気に金を払う)
これを上回ると実重量で課金される
7-3. 圧縮の効果には、上限があります
実重量100kgの古着を送る場合で計算します。
| 梱包状態 | 密度 | 容積 | 容積重量 | 課金される重量 | 実重量比 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゆるい手詰め | 110 kg/m³ | 0.91 m³ | 151.5kg | 151.5kg | 1.52倍 |
| 普通の手詰め | 140 kg/m³ | 0.71 m³ | 119.0kg | 119.0kg | 1.19倍 |
| 分岐点 | 166.7 kg/m³ | 0.60 m³ | 100.0kg | 100.0kg | 1.00倍 |
| 簡易圧縮 | 250 kg/m³ | 0.40 m³ | 66.7kg | 100.0kg | 1.00倍 |
| 機械圧縮 | 350 kg/m³ | 0.29 m³ | 47.6kg | 100.0kg | 1.00倍 |
| 業務用ベール | 450 kg/m³ | 0.22 m³ | 37.0kg | 100.0kg | 1.00倍 |
削減率で見ると、こうなります。
| どこまで圧縮するか | ゆるい手詰めからの削減率 |
|---|---|
| 普通の手詰めまで | 21.4% |
| 分岐点(166.7 kg/m³)まで | 34.0% |
| 簡易圧縮まで | 34.0%(変わらない) |
| 機械圧縮まで | 34.0%(変わらない) |
ここが要点です。
圧縮は「送料を下げる操作」ではありません。「容積課金から実重量課金に切り替える操作」です。そして切り替わった瞬間に、効果が止まります。
7-4. 過圧縮は、純粋な損です
分岐点を超えて圧縮しても、送料は1円も下がりません。一方で、次のコストは確実に発生します。
- ダウンジャケット:長期圧縮で羽が潰れ、完全には戻りません
- コート・ニット:型崩れと深いシワ
- 復元の作業時間:帰国後にスチームで戻す工程が増えます(1章の⑨)
つまり166.7 kg/m³を超えた圧縮は、送料が下がらないのに商品価値と作業時間だけを削ります。
圧縮を勧める記事は多くありますが、どこまで圧縮すれば足りるかを書いた記事は見当たりません。ここを知っているかどうかで、同じ手間の結果が変わります。
7-5. ただし、係数は業者に確認してください
÷6,000は一般的な係数ですが、業者によっては÷5,000を使います。
| 容積係数 | 分岐点となる密度 |
|---|---|
| ÷6,000 | 166.7 kg/m³ |
| ÷5,000 | 200.0 kg/m³ |
係数が違えば目標密度が変わります。見積もり時に必ず確認してください。
7-6. そして「1kgあたり」ではなく「1着あたり」に変換する
同じ100kgを送っても、何着入っているかで1着あたりの物流費が変わります。
国際送料を仮に10万円としたとき、こうなります。
| 点数 | 1着あたりの国際物流費 |
|---|---|
| 50着(重い商材中心) | 2,000円 |
| 70着 | 1,429円 |
| 100着 | 1,000円 |
| 150着 | 667円 |
| 200着(軽い商材中心) | 500円 |
同じ重量でも4倍の差が出ます。5-6で「重い商材は7章の影響を受ける」と書いたのは、これが理由です。
7-7. 「何kgからカーゴか」は固定できません
「50kg以上ならカーゴ」という目安をよく見ますが、これは正確ではありません。判断はこの不等式です。
(カーゴ総費用 ÷ カーゴで送る点数)<(ハンドキャリー総費用 ÷ 持ち帰れる点数)
だから、こういうことが起きます。
- 30kgしかなくてもカーゴが勝つ場合:高単価品で、手荷物追加料金が高いとき
- 70kgあってもカーゴが想定ほど安くない場合:箱が大きく容積重量が跳ね、梱包費もかかるとき
重量だけで決めないでください。決めるのは重量ではなく密度と点数です。
7-8. 【実測プロトコル】現地で7つ測れば、全部計算できます
ここまでの計算は、すべて仮定値です。ですが、あなたは自分の実測値でこれを埋められます。業者に見積もりを取る前に、現地で以下を測ってください。
| 測るもの | 道具 |
|---|---|
| ① 総仕入額 | レシートの合計(ウォン→円換算) |
| ② 総点数 | 数える |
| ③ 総重量 | 吊り下げ式はかり |
| ④ 梱包後の縦・横・高さ | メジャー |
| ⑤ 箱数 | 数える |
| ⑥ 集荷場所 | ホテルか市場か |
| ⑦ 配送先 | 日本の都道府県 |
この7つから、以下がすべて出ます。
実測例:35kg / 80着 / 箱 60×80×70cm
| 導出項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 総容積 | 0.6 × 0.8 × 0.7 | 0.336 m³ |
| 梱包密度 | 35 ÷ 0.336 | 104.2 kg/m³ |
| 容積重量 | 336,000 ÷ 6,000 | 56.0 kg |
| 課金される重量 | 実35kg と 容積56kg の大きい方 | 56.0 kg(実重量の1.60倍) |
| 1着あたり重量 | 35 ÷ 80 | 438 g |
| 1着あたり容積 | 0.336 ÷ 80 | 0.0042 m³ |
この状態は、実重量35kgなのに56kg分の料金を払っています。21kg分は空気です。
密度104.2 kg/m³は分岐点166.7を下回っているので、圧縮余地があります。どこまで圧縮すればいいかも計算できます。
目標容積 = 35kg ÷ 166.7 = 0.210 m³(現在の63%)
そこまで圧縮すると課金重量は35kgになり、37.5%削減されます。
そしてそれ以上圧縮しても、削減率は37.5%のまま変わりません。
逆に、測った密度が既に166.7を超えていたら、圧縮作業はやめてください。送料は下がらず、羽潰れと型崩れだけが増えます。
7-9. 「1着あたり」だけでなく「物流費率」も見る
見積もりが出たら、もう1つ計算してください。
物流費率 = 物流費 ÷ 仕入総額
なぜこれが必要かというと、「1着625円」という数字だけでは、それが安いのか高いのか判断できないからです。
| ケースA | ケースB | ケースC | |
|---|---|---|---|
| 点数 | 80着 | 80着 | 80着 |
| 物流費 | 50,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
| 物流費 ÷ 着 | 625円 | 625円 | 625円 |
| 仕入総額 | 300,000円 | 150,000円 | 600,000円 |
| 物流費率 | 16.7% | 33.3% | 8.3% |
1着あたりは全部625円で同じです。しかしBは仕入総額の3分の1を物流費に払っており、Cは12分の1しか払っていません。
つまり同じ送料でも、扱う単価によって意味がまったく違います。低単価品ばかりを大量に運ぶと、1着あたりが安く見えても物流費率が跳ね上がる。
これが、5-6で「重い商材ほど不利」と書いたことの本当の意味です。重さではなく、単価に対する物流費の比率で見てください。
7-10. 見積もりの取り方
「古着100kgです、いくらですか」では正確な見積もりは出ません。以下を伝えてください。
| 項目 | 伝える内容 |
|---|---|
| 品目 | 中古衣類(古着) |
| 用途 | 日本国内で販売する商用貨物 |
| 実重量 | ◯kg |
| 点数 | 約◯着 |
| 梱包後サイズ | ◯cm × ◯cm × ◯cm × ◯箱 |
| 集荷場所 | ソウル市◯◯区 |
| 配送先 | 日本 ◯◯県 |
| 希望 | 航空便/船便それぞれの総額 |
そして以下を「分けて」出してもらってください。合計だけ聞くと比較できません。
- 韓国内集荷費
- 梱包費・圧縮費
- 国際送料(容積係数は÷6,000か÷5,000か)
- 通関手数料
- 関税・輸入消費税の取り扱い(立替か別請求か)
- 日本国内配送費
この形で複数業者に投げれば、初めて比較できます。そして自分の梱包密度が分岐点を超えているかどうかも、このやり取りで確認できます。
8. 渡航前の準備
8-1. アプリ3つ
- NAVER Map:韓国版の地図。日本のGoogleマップは徒歩ルートが正確に出ません
- Papago:翻訳。画像翻訳が最強です。洗濯タグをカメラで写せば素材が一瞬で分かります(6-3のインボイス記載にも使えます)
- Kakao T:配車。荷物が増えた時の命綱
8-2. 決済は現金が王様
韓国はキャッシュレス先進国ですが、古着の卸市場では現金が基本です。「現金なら安くする」という文化が根強く残っています。カードは使えないか手数料を上乗せされることが大半です。
両替は日本の空港より現地の公認両替所の方がレートが良い傾向にあります。生活費や交通費はプリペイドカードに分けておくと管理しやすくなります。
8-3. 持っていくもの
- 軍手・マスク(黄鶴洞・新設洞で必須)
- メジャー(現地で採寸できれば帰国後の作業が減ります)
- はかり(携帯用の吊り下げ式。7章の密度計算に使います)
- 汚れてもいい服
はかりは意外に効きます。その場で重量が分かれば、持ち帰り手段を旅程の途中で切り替えられます。
9. 3泊4日のルート
DAY 1:永登浦(調査)→ 東廟(実践)
午前:永登浦。買い物より「誰が何を持っているか」を調べます。良さそうな業者が見つかったら、Instagram / KakaoTalk / 電話番号を交換。
午後:東廟。判断はブランド名ではなく日本での販売価格で。
夜:ホテルで全部並べて検品。汚れ、穴、偽物疑い、サイズ、年代、タグ、生地、臭い、リペア可能性を確認します。
DAY 2:卸ルート攻略(ここが本番)
朝9時〜昼前を狙ってください。新入荷と選別を見られる時間帯です。
作るべきは値引きではなく立場です。「日本に輸出している」「今後も毎月買う」。1回の値引きより、継続取引の関係の方が最終的な単価を下げます。
DAY 3:東廟+黄鶴洞(ハンティング)
東廟で低価格品を大量に見たあと、黄鶴洞へ。ミリタリー、ワーク、レザー、古いバッグ、雑貨など、一般的なヴィンテージショップとは違うものが出ます。
DAY 4:聖水・弘大 → 最後に東廟へ戻る
トレンドの答え合わせをしたあと、もう一度東廟に戻ってください。
1日目と4日目では、同じラックの見え方が変わっているはずです。3日間で相場観が更新されているからです。ここで拾えるものが、この旅で最も精度の高い仕入れになります。
10. 帰国後の販売
10-1. メルカリのタイトル構成
[ブランド/アイテム] + [トレンド/ジャンル] + [サイズ感] + [希少性]
×「韓国で買った 青いスウェット」
○「【日本未発売】90s 韓国古着 スウェット 紺 Y2K オーバーサイズ 一点物」
使える語:Y2K/00s/テック系/グランジ/韓国ストリート/オーバーサイズ/ビッグシルエット/ドロップショルダー/短丈/クロップド/現地仕入れ/一点物
5-3で「形で探す」と書きましたが、買い手も形で検索します。
10-2. 臭いを消す
韓国の市場や倉庫の古着には独特の匂いが付いています。これがクレームの最大要因です。一度洗濯し、スチームアイロンで熱をかけて脱臭してください。
説明文に「ホームクリーニング済み・スチームアイロン済み」と書くだけで、清潔感が伝わります。7-4で圧縮しすぎた場合、この工程が倍に増えます。
10-3. 実寸を1cm単位で書く
海外のLサイズは日本のXL以上であることも多く、タグの表記サイズはあてになりません。着丈・身幅・肩幅・袖丈を測って記載してください。
ただしこの採寸時間も原価です。1着5分でも100着なら8時間以上。1章の⑨に入れてください。
10-4. 毛玉を取る
電動毛玉取り機で数分処理するだけで見違えます。この5分が販売価格を1,000〜2,000円押し上げます。時間単価としては最も効率の良い作業です。
11. 最終的に目指す形
韓国の古着流通網に入り、日本で売れる商品の発注先を作る。
- 渡航して、東廟・広蔵・黄鶴洞で相場観を作る
- 永登浦の卸を探し、業者と連絡先を交換する
- 帰国して販売する
- 売れた商品のデータを韓国側にフィードバックする
- 次回は「これを探してくれ」に変える
4番と5番に到達すると、ゲームが変わります。現地で探す時間がゼロになり、渡航そのものが不要になる可能性も出てきます。
そのとき、2章で計算した渡航費の按分が消えます。残るのは7章の物流費と6章の税金だけ。ここまで来て初めて、韓国古着は事業として計算できる商売になります。
12. まとめ
- 見るべきは仕入れ値ではなく日本到着原価です。商品代+渡航費按分+韓国内物流+国際輸送+通関+関税+輸入消費税+国内配送+加工費。
- ハンドキャリー(LCC15kg・約10着)だと、渡航費按分だけで1着7,500円。1,500円のコートが、この時点で原価9,000円になります。
- 物流費に一律の料金表は存在しません。実重量、容積、箱数、梱包、集荷、通関条件で変わるからです。
- ただし自分で計算できる変数がひとつあります。梱包密度166.7 kg/m³です。これを下回ると空気に金を払い、上回ると実重量課金に切り替わります。
- そして圧縮の効果はそこで止まります。過圧縮は送料を1円も下げないまま、羽潰れ・型崩れ・復元作業だけを増やします。
- 同じ100kgでも、50着なら1着2,000円、200着なら500円。重い商材ほど不利になります。
- 革靴は避けてください。関税は30%または1足4,300円の高い方で、CIF 14,333円が分岐点。1,500円の革靴は到着原価6,710円、仕入値の4.47倍です。
- そして現地で7つ測れば、この記事の計算は全部あなたの実数で埋まります。総仕入額・総点数・総重量・梱包後サイズ・箱数・集荷場所・配送先。ここから密度も、課金重量も、1着あたり物流費も、物流費率も出ます。
最後に、判断の式
ここまでの全部を1本にすると、こうなります。
1着あたり日本到着原価 = (商品代 + 渡航費 + 韓国内物流 + 国際送料 + 通関費 + 関税 + 輸入消費税 + 加工費)÷ 販売可能点数
そして仕入れ判断は、これです。
期待販売価格 − 日本到着原価 − 販売手数料 − 販売時送料 − 不良・返品の期待損失 = 期待利益
「販売可能点数」であって「仕入れ点数」ではありません。売り物にならなかった分も、原価を背負っています。
【持ち帰った後の話】
海外仕入れでいちばん多い失敗は、目利きではありません。「売れるとは思ったが、売れるまでが長かった」です。
10万円で仕入れて20日で売れるなら、その10万円は年に18回働きます。
同じ10万円で60日かかるなら、年に6回しか働きません。
利益率が同じでも、年間の粗利は3倍違います。
そして韓国仕入れは、1回の量が多くなります。100kgで100着送れば、100着ぶんの検品・洗濯・採寸・撮影・出品が待っています。売れる速度を読まずに買えば、資金も時間も全部在庫に変わります。
だから私は、仕入れる前に日数を出します。出品中の件数と、その期間に売れた件数さえ数えれば、計算できます。
「過去に売れているか」と「何日で売れるか」は、まったく別の情報です。
よくある質問
韓国古着仕入れは儲かりますか?
見るべきは仕入れ値ではなく日本到着原価です。商品代に加えて、渡航費按分、韓国内物流、国際輸送、通関、関税、輸入消費税、国内配送、加工費が乗ります。ハンドキャリー(LCC15kg・約10着)だと渡航費按分だけで1着7,500円かかるため、1,500円のコートでも原価9,000円になります。低単価品をスーツケースで持ち帰るモデルは成立しにくいということです。
カーゴ業者の料金はいくらですか?
一律の料金表は存在しません。実重量と容積のどちらで課金されるか、箱数、梱包形態、航空便か船便か、集荷場所、通関方法などで変わるためです。実際、韓国の仕入れ代行では「手数料+送料は実費請求」という体系が一般的です。見積もりを取る際は、集荷費・梱包費・国際送料・通関費・国内配送費を分けて出してもらってください。
古着は圧縮すれば送料が安くなりますか?
ある地点までは安くなり、それ以降は変わりません。国際輸送では実重量と容積重量の大きい方で課金され、容積重量は縦×横×高さ÷6,000で計算されます。逆算すると分岐点は梱包密度166.7 kg/m³です。これを下回ると容積重量で課金されますが、上回ると実重量課金に切り替わり、それ以上圧縮しても料金は下がりません。なお業者によっては係数が÷5,000のこともあり、その場合の分岐点は200 kg/m³です。
圧縮しすぎるとどうなりますか?
送料は下がらないまま、商品価値と作業時間だけが削られます。ダウンジャケットは長期圧縮で羽が潰れて完全には戻らず、コートやニットは型崩れと深いシワが出ます。帰国後にスチームで戻す工程も増えます。分岐点である166.7 kg/m³を超えた圧縮は、純粋な損です。
何kgからカーゴを使うべきですか?
重量では決まりません。「カーゴ総費用÷カーゴの点数」が「ハンドキャリー総費用÷持ち帰れる点数」を下回るかどうかです。30kgでも高単価品で手荷物追加料金が高ければカーゴが勝ちますし、70kgでも箱が大きく容積重量が跳ねれば想定ほど安くなりません。決めるのは重量ではなく密度と点数です。
革靴は仕入れてもいいですか?
初心者は避けてください。革靴の関税は「30%または1足4,300円のいずれか高い方」で、低価格帯では4,300円側が効きます。商用輸入の課税価格はCIF(商品代+運賃+保険料)で計算し、分岐点はCIF 14,333円です。仕入値1,500円の革靴なら到着原価は約6,710円、仕入値の4.47倍になります。なお革製の靴・鞄は少額免税の対象外です。
実際の物流費が分からないまま仕入れて大丈夫ですか?
現地で7つ測れば自分で計算できます。総仕入額、総点数、総重量(吊り下げ式はかり)、梱包後の縦横高さ(メジャー)、箱数、集荷場所、配送先です。ここから梱包密度、課金される重量、1着あたり重量と容積が出るので、見積もりを受け取った時点で1着あたり物流費と物流費率まで確定できます。測らずに送ると、何が高かったのか次回に活かせません。
物流費率とは何ですか?
物流費 ÷ 仕入総額です。「1着あたり625円」という数字だけでは、安いのか高いのか判断できません。同じ625円でも、仕入総額15万円なら物流費率33.3%、60万円なら8.3%です。低単価品を大量に運ぶと1着あたりは安く見えても、仕入額に対する比率は跳ね上がります。
関税の課税価格はどう計算しますか?
個人使用と商用で違います。個人使用は海外小売価格×60%ですが、販売目的の商用輸入はCIF(商品代+運賃+保険料)が基準です。転売目的で仕入れるなら後者です。「小売価格×60%」で計算している記事は個人輸入の話をしているので、そのまま当てはめないでください。輸入消費税は(CIF+関税)×10%で、関税にも消費税がかかります。


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