研究テーマが決まらない・思いつかない|卒論・修論はいつまでに決めるか、候補の比べ方、指導教員への相談とテーマ変更(計算機つき)

研究テーマが決まらない。確認した大学の公式資料では、題目届の締切から提出まで37〜101日(確認した9例、中央値64日=計算。テーマの締切ではない)、テーマの大筋を4年生の4〜7月に決める例がある、題目の変更は大学で違う、決まらない人の割合の統計はなし。アンケートなら倫理審査の期間も足す(最大3か月の例、大学で違う) 生き方・キャリア

「卒論 テーマ 決まらない」「研究テーマ 思いつかない」「修論 テーマ 決まらない」「研究テーマ はずれ」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

研究テーマを「いつまでに決めるか」は、確認した大学の日程では二段階になっている例があります。論文の題名を届け出る「題目届」は、確認した9例(卒論5例・修論4例)では、締切から論文提出期間の最終日まで37〜101日(約1.2〜3.3か月、中央値64日=計算)でした。一方、何を研究するかという「テーマの大筋」は、確認した大学の事例に、4年生の4〜7月に決めるものが複数あります(東京大学 工学部 都市工学科「連休前」、同志社大学 神学部 4月18日、神戸大学 国際人間科学部 5月20日、筑波大学 知識情報・図書館学類 着手発表 6月11日、國學院大學 文学部 第二次題目 7月6日)。大阪大学 外国語学部の資料のように10月に決める例も、國學院大學 文学部のように3年生の10月に第一次題目を出す例もあります。題目届の締切を「テーマを決める締切」と考えると、調べる時間が足りなくなります。

アンケート・インタビューなど人を対象とする調査をするテーマは、大学の倫理審査の期間を足して考えます。申請から承認までの期間は、この記事で見た7大学の案内で「少なくとも10日程度」(筑波大学の学類)から「最大で3ヵ月」(立教大学の学部)まであり、約1か月(岡山大学の研究科・立教大学の学部)から1〜2か月(お茶の水女子大学・埼玉大学)、2か月程度(同志社大学)と書く例が多いです。審査期間は大学や申請内容で違うので、指導教員・審査窓口に確認した期間で逆算します。学部生の卒論が審査の対象になるかも大学で違います。

テーマが決まらない学生がどれくらいいるかの全国の統計は見つかりませんでした。候補を比べる基準として大学の資料が挙げているのは、先行研究の量(多すぎても、まったくなくても研究しづらい)、指導教員が指導できる範囲、問いの大きさ、自分の関心、倫理審査です。「データが手に入るか」「提出までに終わるか」を比べる基準として書いた大学の資料は見つからず、この記事で足した基準です。はずれだと思うテーマを変えられるかは大学で違います。題名(題目)の変更を変更届と指導教員の承認で認める例はありますが、期限は提出の締切と同じ例から提出の14日前まで(慶應義塾大学 理工学研究科)までさまざまで、題目届の後は変えられない例(東京大学 教育学部)や、内容の変更を伴う修正を第二次題目の期間までに制限する例(國學院大學 文学部)もあります。題名の変更を手続きで認める例があっても、研究内容の変更まで認められるかは別に確かめる必要があります。

私は大学で卒業論文を書いておらず、研究室にも所属していません。この記事は、大学が公表している日程・規程・案内と、文部科学省などの公的な資料だけで書きます。

知りたいこと 答え 章
卒論のテーマはいつまでに決めるか 確認した大学には、大筋を4年生の4〜7月に決める例が複数ある(10月の例、3年生の10月の例も)。題目届は、確認した9例で締切から提出期間の最終日まで37〜101日。題目届の締切はテーマを決める締切ではない 2章
修論のテーマはいつまでに決めるか 修士1年の冬に題目届を出す例(同志社大学 法学研究科)、修士2年の5月に計画書を出す例(早稲田大学 社会科学研究科)、10〜11月に題目届を出す例(東北大学・東京大学・慶應義塾大学)がある 2章
卒論は書かないといけないか 法令では卒論を必修と定めていない(当てはめ)。卒論等を全部または一部の学部で必修にしている大学は694大学(令和4年度、公表の割合91.6%) 3章
研究テーマが思いつかない 大学の図書館・学部の資料に共通する順序は、関心を書き出す→先行研究を読む→小さく具体的な問いにする。先行研究は CiNii Research・J-STAGE・機関リポジトリで探せる 4章
候補をどう比べるか 大学の資料:先行研究の量・指導教員の範囲・問いの大きさ・関心・倫理審査。この記事で足した基準:データが手に入るか・提出までに終わるか 5章
生成AIにテーマを決めてもらってよいか 京都産業大学は、卒論のテーマ設定を生成AIに委ねることを「学びを損なう利用例」に挙げている。候補出しや文献探しには使える(筑波大学)が、出てきた情報は自分で確かめる。使い方は指導教員の方針に従う(京都大学) 4章
先輩や既存の論文と同じテーマはだめか 同じテーマを選ぶこと自体を盗用とした公式の文は見つからない。他人のアイディア・データなどを適切な表示なく使うのが盗用(文部科学省のガイドラインの定義)。先行研究を引いて違いを示す(当てはめ) 5章
指導教員にどう相談するか 候補と、調べた先行研究、集められるデータ、期間を持って行く(この記事の整理)。指導教員の指導できる範囲から絞る、と書く大学の資料がある 6章
はずれテーマを変えたい 題名の変更を手続きで認める例はあるが、期限は大学で違い、変えられない例、内容の変更を伴う修正を早く締め切る例もある。研究内容の変更まで認められるかは別に確かめる。人を対象とする調査なら倫理審査のやり直しも確かめる 7章
自分の場合 締切からの逆算、候補の評価表、指導教員への相談文、変える/続けるの比較を計算機で 9章

1. 先に、この記事の資料と、書いている人について

私は大学で卒業論文を書いておらず、研究室にも所属していません。そのため、テーマ決めの体験談は書きません。ここで書くのは、大学が公表している卒業論文・修士論文の日程や規程、図書館・ライティングセンターの案内、研究倫理審査の手引きと、文部科学省・科学技術・学術政策研究所(NISTEP)などの公的な資料から取った内容です。民間のQ&Aサイト・個人のブログ・論文の校正会社や就職支援会社のサイトは使っていません。

大学の日程は、2026年度(2027年3月卒業・修了予定)の版が取れたものはその版を、取れなかったものは2025年度以前の版を、年度を書いて並べました。ここに並べた大学は検索で公式資料が取れた大学で、全国の大学から選んだ標本ではありません。あなたの大学・学部・研究科の日程は、それぞれの案内で確かめてください。

記事で「計算」と書いた数字は、出典の日付や数字を引き算・割り算しただけのものです(日数は締切日どうしの差)。「当てはめ」と書いた部分は、公式資料の文を組み合わせたこの記事の読み取りで、そう書いた公式の文はありません。

2. テーマはいつまでに決めるか:題目届と「テーマの大筋」は別

2-1. 卒論・卒研の日程(大学の公式資料から)

大学・学部 版 テーマ・題目の届出 中間発表 提出
東北大学 文学部 2026年度 題目:2026年10月2日まで(指導教員に提出) ― 2027年1月5日
東京大学 教育学部 2026年度 題目:2026年11月24日〜12月1日(「今回提出後、「卒業論文題目」を変更することはできない」) ― 2027年1月4日〜1月7日
早稲田大学 文学部 2026年度秋学期 卒業論文題目届:2026年10月1日〜10月21日 ― 2026年12月7日〜12月10日
國學院大學 文学部 令和8年度 第一次題目(3年生):2026年10月1日〜10月31日/第二次題目(4年生):2026年6月1日〜7月6日 ― 2026年12月11日〜12月16日
神戸大学 国際人間科学部 2026年度 卒業研究届:2026年5月7日〜5月20日(「卒業研究題目について、指導教員とよく相談し、承諾を得ること。」) ― (この通知に記載なし)
東京大学 教養学部 2025年度 題目届:2025年11月4日〜11月21日(分科・コースによる) ― 2026年1月6日〜1月13日など(分科・コースによる)
大阪大学 外国語学部 2024年度(図書館の学習支援の資料) 研究テーマの決定「10 月中」、卒業論文受講届(題目と指導教員の登録)10月31日まで ― 1月6日〜1月20日
同志社大学 神学部 2025年度 想定題申請書:4月18日(指導教員のサインが必要) ― 12月1日〜12月11日
筑波大学 知識情報・図書館学類 2025年度 卒業研究着手発表:2025年6月11日(題目届の期限は別途公表) 2025年10月8日 2026年1月5日〜1月8日
東京大学 工学部 都市工学科 年度の記載なし 「連休前におよそのテーマと指導教員を決めて研究に着手し、」 ― 「翌年の2月までに卒業研究をまとめます。」
中部大学 工学部 都市建設工学科 年度の記載なし 6月「研究のテーマを提出します。」、9月「研究の計画を提出します。」 12月ごろ 1月末
慶應義塾大学(矢上キャンパスの案内。理工学部と読める) 2025年度 題目申告:2026年1月14日(修正は1月16日〜2月2日、指導教員の許可) ― (このページに記載なし)
会津大学 年度の記載なし 卒業論文タイトルの決定:春季 1月中旬 春季 10月中旬 原稿 1月下旬、完成原稿 2月下旬

2025年度以前の版の日付は、2026年度の日付ではありません。表の「―」は、その資料に記載がなかったものです。

2-2. 修論の日程

大学・研究科 版 題目届・計画書 題目の変更 提出
同志社大学 法学研究科 2026年度 1年次生の題目届:2025年12月15日〜2026年3月31日 修士論文題目変更届:秋学期の提出者は2026年12月11日〜2027年1月12日 (このページに記載なし)
早稲田大学 社会科学研究科 2026年度 修士論文計画書:2026年5月1日(全員提出) 計画書の後の「主題変更や副題追加など」は、指導教員の承認を受けて題目変更届を出した場合に限る ―
東北大学 文学研究科 2026年度 題目:2026年10月2日まで (記載なし) 2027年1月5日
東京大学 人文社会系研究科 2026年度 論文題目届:2026年10月1日〜10月5日(指導教員の承認を受けて提出) 論文の提出時に申し出る。「論文提出後の題目変更はできない。」 2026年12月2日〜12月8日
慶應義塾大学 理工学研究科 2026年度秋学期修了予定者 題目登録:2026年11月17日まで 「2027年2月12日(金)までに指導教員の承認を得てください。」 2027年2月26日
東京大学 教育学研究科 2026年度 題目等:2026年11月24日〜12月1日 (記載なし) 2027年1月4日〜1月7日
広島大学 先端物質科学研究科 年度の記載なし 題目届:3月修了は1月20日まで (記載なし) 2月14日まで

修士論文は、修士1年の冬(同志社大学 法学研究科)や修士2年の5月(早稲田大学 社会科学研究科)に、題目や計画を一度出させる研究科があります。大学院設置基準14条の2第1項は、大学院に「一年間の授業及び研究指導の計画をあらかじめ明示する」ことを求めていて、入学年度の初めに研究指導計画書を作らせる大学院もあります(藤女子大学大学院の例。「学生の入学年度当初において」作成)。

2-3. 計算:題目届の締切から提出の締切まで

例 題目届の締切 提出の締切 日数(計算)
卒論 東京大学 教育学部(2026年度) 2026年12月1日 2027年1月7日 37日
卒論 早稲田大学 文学部(2026年度) 2026年10月21日 2026年12月10日 50日
卒論 東京大学 教養学部(2025年度、超域文化科学分科) 2025年11月21日 2026年1月13日 53日
卒論 大阪大学 外国語学部(2024年度、受講届) 10月31日 1月20日 81日
卒論 東北大学 文学部(2026年度) 2026年10月2日 2027年1月5日 95日
修論 東京大学 教育学研究科(2026年度) 2026年12月1日 2027年1月7日 37日
修論 東京大学 人文社会系研究科(2026年度) 2026年10月5日 2026年12月8日 64日
修論 東北大学 文学研究科(2026年度) 2026年10月2日 2027年1月5日 95日
修論 慶應義塾大学 理工学研究科(2026年度秋) 2026年11月17日 2027年2月26日 101日

9例の日数を並べると37・37・50・53・64・81・95・95・101日で、真ん中の値は64日(約2か月)です(計算)。確認した9例では、題目届の締切から論文提出期間の最終日まで37〜101日(約1.2〜3.3か月)でした。全国の大学の標準ではありません。計算機1の題目届の初期値60日は、この中央値を丸めた値です。

2-4. 「テーマの大筋」はもっと前に決める例がある

題目届とは別に、何を研究するかの大筋を決める時期を書いた資料があります。

  • 東京大学 工学部 都市工学科:「4月に各教員がテーマ例を掲示した上で」相談の場を設け、「学生は、連休前におよそのテーマと指導教員を決めて研究に着手し、」研究室での指導を通じて「テーマを深めながら」2月までにまとめる
  • 同志社大学 神学部(2025年度):想定題申請書が4月18日(指導教員のサインが必要)
  • 神戸大学 国際人間科学部(2026年度):卒業研究届が5月20日まで(題目は指導教員と相談して承諾を得る)
  • 中部大学 工学部 都市建設工学科:6月に「研究のテーマを提出します。」、9月に「研究の計画を提出します。」
  • 筑波大学 知識情報・図書館学類(2025年度):卒業研究着手発表が6月11日
  • 國學院大學 文学部(令和8年度):第二次題目が7月6日まで。3年生の10月に第一次題目

当てはめると、テーマを決める時期は二段階になっている例があります。1段目は何を研究するかの大筋で、確認した大学の事例には4年生の4〜7月に決めるものが複数あります(大阪大学 外国語学部の資料のように10月の例、國學院大學 文学部のように3年生の10月から届ける例もあります)。2段目は論文の題名を届ける題目届で、確認した9例では締切から論文提出期間の最終日まで37〜101日です。東京大学 都市工学科の「およそのテーマ」を決めてから研究しながら深める、という書き方のように、最初から完成した題名を求めている例ばかりではありません。題目届の締切までテーマを決めなくてよい、という意味ではありません。

大阪大学 外国語学部の資料(図書館の学習支援の資料、2024年度)は、10月に研究テーマを決め、11月〜12月中旬に先行研究を集め、年内に集中して書き、正月から1月中旬に書き直して1月20日に出す、という流れを示しています。テーマを決めてから提出まで約3か月で、この資料ではテーマを決めた後に先行研究を集める順番になっています。

2-5. 中間発表は提出の約3か月前の例

中間発表を日程に入れている例では、筑波大学 知識情報・図書館学類(2025年度)が提出の92日前(10月8日→1月8日、計算)、会津大学が10月中旬(原稿は1月下旬)、中部大学が12月ごろ(提出は1月末)でした。中間発表を論文提出の条件にしている例もあります(神戸大学 大学院工学研究科 博士課程前期課程「学生は,発表会において発表を行ったことの認定を受けた後でなければ学位論文を提出することができない。」)。中間発表でテーマと計画を話す以上、テーマは中間発表より前に決まっている必要があります(当てはめ)。テーマが固まらないまま中間発表・進捗報告が来るときの話し方は、研究室の発表がつらいに書きました。

締切が近く、間に合わないと留年するのか、1日に何字書けばよいかは、卒論がやばい・終わらないで確かめられます。

3. そもそも卒論は必修か、修論は何を満たせばよいか

3-1. 卒論は法令上の必修ではない(当てはめ)

大学設置基準32条1項は「卒業の要件は、百二十四単位以上を修得することのほか、大学が定めることとする。」と定め、21条3項は、卒業論文・卒業研究などの授業科目を置く場合の単位数の定め方を書いています。卒業論文を置くことを義務づけた条文は見つかりませんでした。当てはめると、学部の卒論・卒研を書くかどうかは、大学・学部の教育課程で決まります。

実際には、卒業論文等を授業科目として設けている大学が743大学、全部または一部の学部で必修にしている大学が694大学(令和4年度、公表の割合は91.6%)です。これは大学の数で、学生の割合ではありません。必修でない例として、東京大学 経済学部は「必修ではないが、多くの学生がこれを提出することが期待されている。」と書き、合格すれば4単位(選択科目)です。卒論が必修でない学部で、書かない道を考えるときは、ゼミ・研究室に入らないとどうなる?も見てください。

3-2. 修士は「研究指導」と「論文の審査」が修了の条件

大学院設置基準16条1項は、修士課程の修了の要件を、2年以上の在学と30単位以上に加えて「必要な研究指導を受けた上、当該修士課程の目的に応じ、当該大学院の行う修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格すること」と定めています。14条の2第2項は、学位論文の評価の基準を「学生に対してその基準をあらかじめ明示する」ことを求め、学校教育法施行規則172条の2第3項2号は、その基準の公表を求めています。

当てはめると、修士1年生は、自分の研究科が公表している学位論文の評価基準を、テーマを選ぶ前の「何を満たせば合格か」の材料にできます。評価基準の項目の例と、成果が出なかったときの扱いは、修論がゴミ・成果なしでも修了できる?にまとめました。「特定の課題についての研究の成果」は、研究科・専攻が学則などで用意している場合だけの選択肢で、テーマが決まらない人が途中から切り替えられるかを書いた公式資料は見つかりませんでした。

4. 研究テーマが思いつかないとき:大学の資料が書く探し方

4-1. 関心→先行研究→小さく具体的な問い

大学の図書館・学部が公開している資料の書き方を並べると、順序はおおむね共通しています。

  • 琉球大学附属図書館(ラーニング・サポートデスク):「思いついたものをマインドマップや付箋紙を用いる KJ 法などで整理してみましょう。」「基本的に 1 つの論文に1つの問いを立てます。」「その問いは小さく具体的なものにしましょう。」
  • 立命館大学 国際関係学部(IRナビ):「「日本外交」だけでは研究テーマとしては漠然としすぎています。」「単に「面白そうだから」「興味があるから」では論文として成立しません。」。どのような研究がなされ、どの部分が十分に考察されていないかを把握すること(バックグラウンドリーディング)を「決定的に重要」とし、「いきなり研究テーマを設定しようとして行き詰まる学生は少なくありません。」
  • 立教大学図書館(レポート・論文のFAQ):「問いを見つけるには、できるだけ細かい箇所に着目するのがコツです。」「タイトルは基本的には本文を書き上げてから考えましょう。」(レポートについてのFAQで、卒論専用ではありません)
  • 大阪大学 総合図書館:テーマを決める段階の文献探しを「自分の研究テーマを設定していく・絞っていくための大きな手掛かりとなる」と書いています

検索で上位に出てくる民間の解説の「関心を書き出す→先行研究を読む→隙間を探す→1文の問いにする」という流れは、大学の資料の書き方とも合っています。大学の資料が付け加えているのは、問いを小さくすること、先行研究を先に読むこと、そして指導教員の助言を受けながら進めること(立命館大学「担当指導教員のアドバイスを受けながら進めてください。」)です。

4-2. 先行研究を探す場所

探す場所 運営 公式の説明
CiNii Research 国立情報学研究所 「図書、研究データ、それらの成果を生み出した研究者、そして研究プロジェクトの情報などを包括して探索することが可能です。」。「博士論文」のタブで、大学のリポジトリで公開されている博士論文と国立国会図書館が所蔵する博士論文をまとめて検索できる(国立国会図書館の案内)
J-STAGE 科学技術振興機構 「国内の2,400を超える発行機関が、4,000誌以上のジャーナルや会議録等の刊行物を」公開。「J-STAGEで公開されている9割以上の記事は、無料で記事を閲覧できます。」
国立国会図書館の博士論文 国立国会図書館 「大正12(1923)年9月以降の国内博士論文を所蔵しています。」。平成25年4月1日からは博士論文はインターネットで公表されることになり、電子の博士論文は国立国会図書館デジタルコレクションで利用できる
機関リポジトリ(IRDB) 国立情報学研究所 国内の大学などの学術機関リポジトリのデータを集めたデータベース。2026年3月31日時点で対象のリポジトリ833、公開コンテンツ4,664,661件(うち本文あり3,580,534件)

当てはめると、先行研究の「量」を見るには、CiNii Research(論文・博士論文)と J-STAGE を検索し、紀要や大学の刊行物は各大学の機関リポジトリを見ます。修士論文が国立国会図書館や CiNii Research の博士論文のタブに入るとは書かれていないので、先輩の修士論文・卒業論文は自分の大学の図書館・研究室で確かめてください。

4-3. データが手に入るかを先に見る場所

既にある統計を使うテーマなら、候補を決める前に、使いたい項目・地域・年が公開されているかを確かめられます。

  • e-Stat(政府統計の総合窓口):「日本の政府統計に関する情報のワンストップサービスを実現することを目指した政府統計ポータルサイトです。」
  • RESAS(内閣府 地方創生推進室):「産業構造や人口動態、人の流れなどのデータを集約し、可視化するシステムです。」
  • e-Govデータポータル(デジタル庁):行政機関などが持つ公共データのうちオープンデータとして提供するもののカタログ

立命館大学 国際関係学部の「データ収集の仕方」は「データ収集以前に、あるいはデータ収集をしながら、関心テーマの絞り込みあるいは具体化も同時にすすめます。」と書いています。

4-4. 構想の相談先:ライティングセンター

問いの立て方・絞り方は、大学のライティングセンターに相談できる場合があります。広島大学のライティングセンターは対象に「卒業論文、修士論文、博士論文」と「文章を書く前の構想段階」を挙げています。東京大学(駒場)のアカデミック・ライティングのサポートは「テーマ構想から完成稿の作成まで、様々な段階でのご相談に応じます。」と書いています(対象は課程・分野で決まっています)。上智大学のライティング・ラボは「研究指導は行いません。研究指導については自身の指導教員にご相談ください。」と書いています。テーマの可否を決めるのは指導教員で、ライティングセンターは考えを整理する場です(当てはめ)。

4-5. 生成AIにテーマを考えてもらってよいか

文部科学省の大学向けの周知(令和5年7月13日)は、生成AIの出力をそのまま使ってレポートなどを作ることを「一般に不適切と考えられる」とし、出力に著作物の内容が含まれていた場合に「意図せずとも剽窃に当たる可能性がある」と書いています。「卒業論文」という語はなく、その後の大学向けの新しい周知は、この記事で調べた範囲では見つかりませんでした。方針は大学ごとです。

  • 京都産業大学(2026年7月10日):「卒業論文のテーマ設定や、「自分が何に興味を持つべきか」…といった学習の目的や欲求の決定までを生成AIに委ねてしまう。」を、成績評価上の不正行為ではないが「学びを損なう利用例」に挙げています。一方で、ブレインストーミングやアイデア出し、論点の整理、情報収集などに使うことは有効としています
  • 筑波大学(令和6年10月22日、学生向け):「研究の方向性を定めたり、関連文献を探索する上で有効ですが、情報の信頼性は自分で確認する必要があります。」
  • 京都大学(令和8年3月11日):「論文執筆に当たっては、担当教員・指導教員が示す生成AI利用方針に従うこと。」

広島大学の調査(2025年3月の卒業・修了者2,899人に聞き、回答282人・回答率9.7%。1大学の調査)では、卒論・修論を書いた276人のうち生成AIを使った人が128人(46.4%、計算)で、そのうち「アイデア出し、壁打ちなど構想の高度化」に使った人は31.2%でした。指導教員から生成AIについて「特に話はなかった」は68.1%です。当てはめると、テーマの候補出しや文献探しに生成AIを使うかは、先に指導教員の方針を聞いておくのが確実で、出てきた文献は実在と中身を自分で確かめます。テーマを決めること自体を生成AIに任せる使い方は、この記事では勧めません。

テーマ決め以外の場面も含めて、大学ごとの生成AIの方針と使い方ごとの書き方、AIを使ったことの記載の文面は、卒論でChatGPT・生成AIは使っていい?にまとめました。

5. 候補の比べ方

5-1. 大学の資料が挙げる基準

基準 大学の資料の書き方
先行研究の量 「膨大な数の先行研究があるテーマ、全く先行研究のないテーマ、私的な興味や学問的関心のないテーマは研究しづらい。」(大阪大学 外国語学部の卒業論文スケジュールの資料)。先行研究がないテーマに決める場合は「本当にそのテーマに決めていいのかをまずは先生に相談したほうがいいでしょう。」(学習院大学図書館)
指導教員が指導できる範囲 「指導教官が指導してくださる範囲の中で興味のある分野をおおまかに絞る」(大阪大学 外国学図書館の学生チームの資料、2015年)。調査・研究方法は「担当指導教員のアドバイスを受けながら」(立命館大学 国際関係学部)
問いの大きさ 「その問いは小さく具体的なものにしましょう。」(琉球大学附属図書館)、「できる限り具体的なテーマを設定することが、しっかりした分析につながります。」(立命館大学 国際関係学部)
自分の関心 関心のないテーマは研究しづらい(大阪大学の資料)。ただし「興味があるから」だけでは論文として成立しない(立命館大学)
倫理審査 卒業研究で質問紙調査・インタビュー・被験者実験をする場合は「調査や実験前に」承認を得る必要があり、期間は「少なくとも 10 日程度」(筑波大学 知識情報・図書館学類の卒業研究のてびき)。5-3

複数の候補があるときは「それぞれを卒論のテーマとして選ぶメリットとデメリットを紙に思いつく限り書き出し」、「悩む期間は最低限にし、勇気を持って決めてしまいましょう。」と書いた資料もあります(大阪大学 外国学図書館の学生チームの資料、2015年。古い資料で、作成者が職員か学生スタッフかは確かめられていません)。

5-2. この記事で足した基準:データが手に入るか、提出までに終わるか

「データ・資料が手に入るか」「提出までに終わるか」を、候補を比べる基準として明記した大学の公式資料は見つかりませんでした(近いのは、データ収集とテーマの絞り込みを同時に進めると書いた立命館大学、先行研究の「使用しているデータ」を整理すると書いた琉球大学の資料です)。この2つは、2章の日程と5-3の倫理審査の期間から、この記事で足した基準です。計算機2の評価表もこの2つを含めて並べますが、どの候補を選ぶかは決めません。

5-3. アンケート・インタビューなら倫理審査の期間を足す

大学・委員会 学生の研究は対象か 申請から承認・結果まで
筑波大学 知識情報・図書館学類(卒業研究のてびき) 卒業研究で質問紙調査・インタビュー・被験者実験をする場合は調査・実験の前に承認 「少なくとも 10 日程度」
岡山大学 大学院教育学研究科 申請できるのは研究科の教員と大学院生(学部生の記載なし) 原則毎月1回開催。「通常審査については1か月,迅速審査については3週間程度を見込んでいる」
立教大学 コミュニティ福祉学部 研究者・大学院生・学部学生に「十分な時間的余裕をもって申請すること」を勧める 最初の結果まで「約1カ月前後」、「最大で3ヵ月間に及ぶこともある」
学習院大学(2026年度) 日程表に記載なし 年7回。申請の締切から結果通知(最短の日付)まで45〜49日(計算)
お茶の水女子大学(人文社会科学研究) 「学生であっても、研究活動に従事する場合は本倫理審査の対象者に含まれます。」(教育を主目的とするものは対象外) 「1回の審査には最長で3~4週間」、修正の回数によっては「承認までに1~2ヶ月」。研究開始の1か月前までに申請
埼玉大学 学部生・大学院生が主体の研究は、指導教員が申請するかを判断(申請者は常勤教職員) 「約1~2か月程度」
同志社大学 学部生が指導教員のもとで行う侵襲の伴わない研究は原則として申請対象ではない(申請は任意) 「申請から承認まで 2カ月程度」

学部生の卒論が審査の対象になるかは大学で違います(筑波大学の学類は調査・実験の前に承認が要り、同志社大学は原則として対象外)。当てはめると、アンケート・インタビューを使う候補は、審査の期間を日程に足して考えます。審査期間は大学や申請内容で違い、立教大学 コミュニティ福祉学部のように最大3か月の例もあるので、指導教員・審査窓口に確認した期間で「調査を始めたい日」から逆算して申請日を決め、その前にテーマと調査の計画が決まっている必要があります。対象かどうか分からないときは、指導教員に先に確かめてください。計算機1は、「わからない」を選ぶと審査が要るものとして日程を出します。

健康・病気・医療・ゲノムについての知識を得る目的の研究は、国の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の対象になりえます。この記事の基準時点(2026年10月)で施行されているのは令和5年3月27日に一部改正された指針で、令和8年8月27日に一部改正された指針が2026年12月1日に施行される予定です。対象の定義の文は、両方の版で同じ形です(この記事で見た範囲)。定義は、傷病の成因の理解や予防方法の改善などを通じて「国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの回復若しくは生活の質の向上に資する知識を得ること」などを目的とする活動です。当てはめると、健康と関係のない意識・行動の調査はこの定義に当たりませんが、大学独自の倫理審査の対象にはなりえます。どちらに当たるかを決めるのは大学の委員会です。

5-4. 先輩や既存の論文と同じテーマはだめか

文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」は、盗用を「他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。」と定義しています。同じガイドラインのFAQは、学位論文そのものの不正はガイドラインの対象ではないとしつつ、学位論文をもとにした論文が雑誌などで公表された場合は「その限りではありません」と書いています。卒論・修論の不正は各大学の規程で扱われます。

同じテーマを選ぶこと自体を盗用とした公式の文は見つかりませんでした。当てはめると、問題になるのは、他人のアイディアやデータを「適切な表示なく」使うことです。先輩の卒論や既存の論文と近いテーマを選ぶときは、それを先行研究として引用し、対象・時期・方法・問いのどこが違うのかを示すことになります。先行研究と同じ問いにならないようにするためにも、先に先行研究を読むことが役に立ちます(4-1)。

6. 指導教員にどう相談するか

6-1. 大学の資料が書く相談の位置づけ

大学の資料は、テーマを決める過程で指導教員に相談することを前提にしています。題目届に指導教員の承認・署名・承諾を求める例が多く(東京大学 人文社会系研究科・神戸大学 国際人間科学部・國學院大學 文学部・同志社大学 神学部など)、國學院大學 文学部は「指導教員の許可を得ずに提出した場合は無効となります。」と書いています。先行研究がないテーマは「まずは先生に相談したほうがいいでしょう」(学習院大学図書館)、先生が卒論として成立するのは難しいと言ったテーマに固執するのは「かなり危険です」(大阪大学 外国学図書館の学生チームの資料、2015年)という書き方もあります。

6-2. テーマの決め方は分野で違う

学部生・修士がテーマを自分で決めたか、指導教員から与えられたかの全国の統計は見つかりませんでした。博士課程については、NISTEP の調査(2011年度に国内59大学の博士課程を修了した人、回答2,636人。古い調査)が「指導教員が博士論文のテーマを提示する割合は自然科学系では半数を超え、人文・社会系では1割以下に留まります。」と書いています。人文・社会科学では「学生自身が興味・関心を持ったテーマをもとに教員からのアドバイスを受けて決定した者が最も多く約 7 割」でした。博士の数字で、学部・修士の割合ではありませんが、分野によってはテーマが研究室で示されることがある、という見方の材料になります。

6-3. 相談に持っていくもの(この記事の整理)

指導教員との面談の回数の全国の統計は見つかりませんでした(大学の定めの例として、早稲田大学 教育学部は卒業論文について「指導教員から少なくとも 3 回以上の指導」を求めています)。公式資料の書き方を組み合わせると、相談の前に用意するとよいものは次のとおりです(当てはめ)。

  • 候補(1〜3個)と、それぞれを1文の問いにしたもの
  • 候補ごとに見つけた先行研究(CiNii Research・J-STAGE で探したもの)の数と代表的なもの
  • 使うデータ・資料と、その入手先(公開統計か、自分で集めるか)
  • アンケート・インタビューを使うなら、倫理審査が要るかどうかの質問
  • 自分の大学の題目届・中間発表・提出の日付

文面は計算機3で作れます。指導教員に相談しにくい・返信が来ないときは、教授・指導教員と合わないに、確認の日程と文面、相談先をまとめました。

7. はずれテーマ:変えるか、続けるか

7-1. 題目(題名)の変更の手続きの例

大学・学部/研究科 手続き・承認 期限 変更できる範囲
同志社大学 神学部(卒論、2025年度) 想定題 変更届。指導教員の署名、「神学部教授会の承認を経て変更となります。」 論文提出の締切と同じ 記載なし
慶應義塾大学(矢上、卒論、2025年度) 題目修正期間に修正。「指導教員の許可を得る必要があります。」 2026年1月16日〜2月2日 記載なし
國學院大學 文学部(卒論、令和8年度) 題目は事前に指導教員の承認 内容の変更を伴う修正は、第二次題目の提出期間(6月1日〜7月6日)まで 第2次題目提出期間以降は「意味・内容の変更を伴う題目の修正・変更はできません」
東京大学 教育学部(卒論、2026年度) ― ― 題目届の後は変更できない
東京大学 人文社会系研究科(修論、2026年度) 論文の提出時に申し出る 論文の提出時まで。提出後は変更できない 記載なし
慶應義塾大学 理工学研究科(修論、2026年度) Webで変更し、指導教員の承認 2027年2月12日(提出の締切2月26日の14日前=計算) 記載なし
同志社大学 法学研究科(修論、2026年度) 修士論文題目変更届 変更届の期間が別に決まっている(秋学期の提出者は2026年12月11日〜2027年1月12日) 記載なし
同志社大学 経済学研究科(修論、2026年度) 論文題目変更届(論文の種類を変えるときは論文審査変更届) 論文の提出と同じ2027年1月13日 論文の種類も変更できる
早稲田大学 社会科学研究科(修論、2026年度) 指導教員の承認を受けて題目変更届 題目変更届の提出期限(日付はこの文書に記載なし) 「主題変更や副題追加など」
熊本大学 社会文化科学教育部(修論、令和2年度。古い) 指導教員の承認(署名)を得て題目変更届 12月1日〜12月8日 「副題の追加及び変更を含む」
慶應義塾大学 文学研究科(修論、2019年度。古い) ― ― 題目届の後の変更は「原則として認められません」

当てはめると、題名(題目)の変更を変更届と指導教員の承認で認める例はありますが、期限は大学でさまざまです(同志社大学 神学部・経済学研究科は論文提出の締切と同じ、東京大学 人文社会系研究科は論文の提出時に申し出、慶應義塾大学 理工学研究科は提出の14日前まで、同志社大学 法学研究科は変更届の期間が別に決まっている)。題目届の後は変えられない例(東京大学 教育学部、慶應義塾大学 文学研究科の2019年度)や、内容の変更を伴う修正を第二次題目の提出期間までに制限する例(國學院大學 文学部)もあります。副題の追加も変更に当たる例があります(熊本大学・早稲田大学 社会科学研究科)。

ここで並べたのは題名の変更の手続きです。題名の変更を手続きで認める例があっても、研究内容(対象・方法・問い)を大きく変えてよいか、それで提出に間に合うかは別のことで、研究内容の変更まで認められるかは、指導教員と学部・研究科に別に確かめる必要があります。自分の学部・研究科の題目変更の定めと期限を先に確かめてください。

7-2. 変えるときに一緒に確かめること

  • 人を対象とする調査を新しく始めるなら、倫理審査を申請し直す期間(5-3:大学や申請内容で違い、最大3か月の例もある。指導教員・審査窓口に確かめる)
  • 研究内容の変更まで認められるか(題名の変更の手続きとは別に、指導教員と学部・研究科に確かめる)
  • 題目届・計画書を出し直す必要があるか(同志社大学 法学研究科は、次年度に提出する場合は題目届を出し直す)
  • 修了が延びる場合の扱い:旧 東京工業大学の取扱いは、修士課程の在学期間を延長する事由に「指導教員の転任等に伴い研究内容の変更が生じた場合」などを挙げ、延長願は原則として審査申請の前に出すとしています(現行かは確かめられていません)
  • テーマだけでなく研究室・指導教員ごと変えたい場合は、研究室の変更の手続き(新旧の指導教員の承認など)になります。例は研究室配属に落ちたら?にまとめました

7-3. テーマを変えた人の割合は分からない

「テーマを変えた学生の割合」「変えても間に合った割合」の統計は見つかりませんでした。変えるか続けるかの判断は、残りの日数、変える範囲(同じ分野で対象・方法・問いを狭めるか、まったく別のテーマにするか)、大学の変更の期限、指導教員の意見で決まります(当てはめ)。計算機4は、これらを選ぶと、手続きの例と、変える場合・続ける場合に確かめることを並べます。どちらにするかは決めません。

テーマが決まらないまま研究室に行くのがつらくなっている、休学も考えているときは、研究室に行きたくない・つらいに、休んだときの扱いと相談先を書きました。

8. 数字で見る:テーマが見つからないという声

テーマが決まらない学部生・修士の割合の全国の統計は見つかりませんでした。近い数字として、NISTEP の修士課程の追跡調査(2021年度の修士修了者・修了予定者、対象125,028人のうち有効回答17,525人・14.0%、2022年1〜3月調査)では、博士課程に進まず就職を選んだ人(就職先が決まった人・就職活動中の人)が挙げた理由のうち、「博士論文に値する研究テーマが見つけられない」が16.2%でした。

博士課程ではなく就職を選んだ理由(2021年度の修士修了者・修了予定者のうち就職を選んだ人、複数回答と読める) 割合
経済的に自立したい 66.2%
社会に出て仕事がしたい 59.9%
博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない 38.4%
修了後の就職が心配である 31.1%
博士論文に値する研究テーマが見つけられない 16.2%
研究室環境が好ましくない(競争が激しい、ストレスが多い、過酷等) 15.4%

この16.2%は、修士全体の割合ではなく、就職を選んだ人が理由の一つに挙げた割合です。「修士の16.2%がテーマを見つけられない」とは読めません。

学部の最終学年については、文部科学省の全国学生調査(令和7年度、最終学年の回答153,162人)で、卒業論文・卒業研究・卒業制作にかける1週間の時間が「0時間」の学生が14.3%、0時間と1〜5時間を合わせると40.2%(計算)でした。0時間が卒論のない学生か、その時期に作業していない学生かは区別できません。この調査に、テーマ決めや研究指導の面談についての設問はありません。

テーマが見つからないのは研究そのものが合わないからではないか、と考えたときは、研究に向いてない?で、修士・博士を出た人の進路と、博士に進まなかった理由を並べています。

9. 計算機:締切から逆算する日程/テーマ候補の評価表/指導教員への相談文/テーマを変える判断

4つは別々に使えます。

  • 1. 締切から逆算する日程:提出の締切、卒論か修論か、データの集め方(文献・公開データだけ/アンケート・インタビューなど人を対象とする調査/人を対象としない実験・測定)、倫理審査が要るかを入れると、テーマを決める日、倫理審査の申請日、データを集め始める日、中間発表、題目届の目安を並べます。初期値の根拠は欄ごとに違います。題目届の60日は、2-3の9例の中央値64日を丸めた値です。中間発表の90日と倫理審査の60日は入力例で、大学の標準日程ではありません(中間発表は筑波大学の学類の92日、倫理審査は5-3の例を参考にした値)。データ集めと執筆にかける日数も、自分の計画で入れる欄です(初期値は例)。どの欄も、自分の大学の値・指導教員や審査窓口に確かめた値に直してください。倫理審査は、最大3か月(約90日)の例で数えた申請日もあわせて出します
  • 2. テーマ候補の評価表:候補を最大3つ、先行研究の量・データの入手・期間・指導教員の専門・問いの大きさ・関心で選ぶと、候補を並べた表と、候補ごとに次にやることを出します。点数や合否は出しません
  • 3. 指導教員への相談文:宛名、課程、時期、候補の数、困っている点、面談かメールかを選ぶと、相談のメールの文面と、持っていくものを出します
  • 4. テーマを変える判断:課程、時期、変えたい理由、変える範囲、人を対象とする調査かを選ぶと、大学の題目(題名)変更の手続きの例と、研究内容の変更は別に確かめること、変える場合・続ける場合に確かめることを並べます。どちらにするかは決めません

日付は「2027-01-12」「2027/1/12」「2027年1月12日」、全角の数字でも読めます。日付が読めないとき、提出の締切が今日か今日より前のときは、日程を出しません。結果は、入れた値と、この記事で見た大学の資料の例だけによる目安です。あなたの大学の日程・手続きは、大学の案内で確かめてください。

締切から逆算する日程/テーマ候補の評価表/指導教員への相談文/テーマを変える判断

入れた値は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている値は入力の例です。4つは別々に使えます。

1. 締切から逆算する日程

2. テーマ候補の評価表

候補1

候補2

候補3

3. 指導教員への相談文

4. テーマを変える判断

初めから入っている例は、ページを開いた日から150日後が提出の締切で、アンケート・インタビューを使う卒論、倫理審査が要るかは分からない場合です(提出の締切は、ページを開いた日の端末の日付から入れています)。この初期値で計算機1は、今日がテーマと調査の計画を固めて倫理審査を申請する目安の日、と出ます。これは初期値から逆算した計算例で、実際に申請できる日や、申請に必要な準備が整うことを示すものではありません。

10. よくある質問

卒論のテーマはいつまでに決めればいいですか?

確認した大学の事例には、何を研究するかの大筋を4年生の4〜7月に決めるものが複数あります(東京大学 工学部 都市工学科は「連休前」、國學院大學 文学部は第二次題目が7月6日)。大阪大学 外国語学部の資料のように10月に決める例、國學院大學 文学部のように3年生の10月に第一次題目を出す例もあります。論文の題名を届ける題目届は、確認した9例で、締切から論文提出期間の最終日まで37〜101日でした。題目届の締切はテーマを決める締切ではありません。自分の大学の日程は学部の案内で確かめてください。

修論のテーマはいつまでに決めればいいですか?

修士1年の冬に題目届を出す研究科(同志社大学 法学研究科:2025年12月15日〜2026年3月31日)、修士2年の5月に計画書を出す研究科(早稲田大学 社会科学研究科:2026年5月1日)、10〜11月に題目届を出す研究科(東北大学 文学研究科・東京大学 人文社会系研究科・慶應義塾大学 理工学研究科)があります。大学院は1年間の研究指導の計画をあらかじめ示すことになっているので(大学院設置基準14条の2)、入学したときに指導教員と計画を確かめるのが早道です(当てはめ)。

研究テーマが思いつかないときは、何から始めればいいですか?

大学の図書館・学部の資料は、関心を書き出して整理し(琉球大学)、先行研究を読んで何が十分に考察されていないかを把握し(立命館大学)、小さく具体的な問いにする(琉球大学・立命館大学)という順序で書いています。先行研究は CiNii Research・J-STAGE・機関リポジトリで探せます。

研究テーマがはずれだとどうなりますか?

「はずれテーマ」を定義した公式の資料はなく、はずれのテーマを選んだ人がどうなったかの統計も見つかりませんでした。題名(題目)の変更を変更届と指導教員の承認で認める例はありますが、期限は大学で違い、題目届の後は変えられない例もあります(7章)。研究内容の変更まで認められるかは、題名の変更とは別に確かめる必要があります。仮説が否定された・データが得られなかったときの評価の扱いは、修論がゴミ・成果なしでも修了できる?に、大学の評価基準の例を並べました。

書きやすいテーマはありますか?

「書きやすいテーマ」を示した公式の資料は見つかりませんでした。大学の資料が研究しづらいと書くのは、先行研究が膨大なテーマ、まったくないテーマ、関心のないテーマです(大阪大学の資料)。公開されている統計や資料で足りるテーマは倫理審査の期間がかからない分、日程が組みやすい、というのはこの記事の当てはめです。

生成AIにテーマを考えてもらってもいいですか?

大学ごとの方針によります。京都産業大学は卒論のテーマ設定を生成AIに委ねることを「学びを損なう利用例」に挙げ、筑波大学は研究の方向性を定めたり関連文献を探したりするのに有効だが「情報の信頼性は自分で確認する必要があります」と書いています。京都大学は指導教員の示す方針に従うことを求めています。使う前に指導教員の方針を確かめ、出てきた文献は実在と中身を自分で確かめてください。

先輩の卒論と同じテーマでもいいですか?

同じテーマを選ぶこと自体を盗用とした公式の文は見つかりませんでした。盗用は、他人のアイディア・データ・論文などを「適切な表示なく」使うことです(文部科学省のガイドラインの定義)。先輩の卒論を先行研究として引用し、どこが違うかを示すことになります(当てはめ)。扱いは大学の規程と指導教員の判断によります。

アンケートを使うテーマは、いつまでに決めればいいですか?

倫理審査の申請から承認までは、この記事で見た大学の例で約1か月から2か月程度と書く例が多く、最大3か月の例もあります(5-3)。審査期間は大学や申請内容で違うので、指導教員・審査窓口に確認した期間で、調査を始めたい日から逆算して申請日を決めます。学部生の卒論が審査の対象かは大学で違うので、指導教員に先に確かめてください。計算機1で、提出の締切からの逆算ができます。

11. まとめ

  • テーマを決める時期は二段階になっている例がある。確認した大学には、何を研究するかの大筋を4年生の4〜7月に決める例が複数ある(10月の例、3年生の10月の例も)。題目届は、確認した9例で締切から提出期間の最終日まで37〜101日(中央値64日=計算)
  • 卒論を必修と定めた法令はない(当てはめ)。卒論等を全部または一部の学部で必修にしている大学は694大学(令和4年度)。修士は研究指導と論文(または特定の課題)の審査が修了の条件で、評価基準は公表されている
  • 思いつかないときは、関心を書き出す→先行研究を読む→小さく具体的な問いにする。先行研究は CiNii Research・J-STAGE・機関リポジトリで探す
  • 候補を比べる基準は、先行研究の量・指導教員の範囲・問いの大きさ・関心・倫理審査(大学の資料)と、データが手に入るか・提出までに終わるか(この記事で足した基準)
  • アンケート・インタビューを使うなら、倫理審査の期間を足す。期間は大学や申請内容で違い(約1か月〜2か月程度と書く例が多く、最大3か月の例も)、指導教員・審査窓口に確認した期間で逆算する。学部生の卒論が対象かも大学で違う
  • 生成AIにテーマを決めさせることを「学びを損なう利用例」とする大学がある。使い方は指導教員の方針に従う
  • はずれだと思うテーマは、題名の変更を手続きで認める例はあるが、期限は大学で違い、変えられない例もある。研究内容の変更まで認められるかは別に確かめる。テーマが決まらない人の割合・変えた人の割合の全国の統計はない

12. 出典

13. あわせて読む

 

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