大学院に行くべきか?行く意味はあるか|院卒の月給は12万円高いが、その差の中身と、学部卒で2年早く働いた同期のその後(計算機つき)

大学院に行くべきか?行く意味はあるか|院卒の月給は12万円高いが、その差の中身と、学部卒で2年早く働いた同期のその後(計算機つき) 生き方・キャリア

「大学院 行くべきか」「大学院 行く意味」「大学院 進学 就職 どっち」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

平均で比べると、院卒の給料ははっきり高いです。厚生労働省の令和7年の調査で、月の所定内給与は大学院卒517.4千円、大学卒396.3千円で、差は月12万1,100円です。ただし、この差は「大学院に行ったから上がった分」だけではありません。大学院に進む人は国立大学の卒業者・理工系・男性に偏っていて(学部の卒業者のうち進学した人は、国立大学37.0%、私立大学6.5%)、働いている院卒の64.2%は従業員1,000人以上の会社にいます(大学卒は40.8%)。男性どうし・1,000人以上の会社どうしにそろえると、差は月7万3,500円に縮みます。残った差が大学院で身についた力なのか、もともとの違いなのかは、公表されている統計では切り分けられません。私の答えは、特待・飛び級(早期卒業・飛び入学・早期修了)クラスの適性があるなら行けばいいし反対もしない、それ以外なら今の社会では時間の無駄、です。理由は3つあります。入れた会社の部署が残る保証がないこと(2025年度に早期・希望退職の募集が分かった上場企業は46社・2万781人で、約7割が黒字の会社)、人を一番成長させるのは実務の経験だと考えていること、早く働き始めて早く積み立てを始めた時間が効くことです。S&P500(配当込み・円換算・税と手数料なし)に2008年4月から毎月1万円を積み立てると、2025年6月に元本207万円が約1,124万円、2年遅れて始めると約837万円でした。ただし、これは始めた時期がとてもよかった例で、同じ長さでも始めた月によって0.98倍から5.98倍まで違います。院の2年の費用、取り返す年数、2年早く積み立てを始めた差を出す計算機を8章に置きました。

この記事は、学部の学生が、卒業してすぐ修士課程に進むか、就職するかを決めるための話です。博士課程に進むかどうかと、社会人になってから大学院に通う話は扱いません。

知りたいこと 答え 章
大学院に行くべきか 私の答えは、特待・飛び級クラスの適性があるなら行けばいい。それ以外なら今の社会では時間の無駄 1章・7章
院卒の給料は本当に高いか 高い。令和7年で月517.4千円と396.3千円、差は月121.1千円(所定内給与、男女計)。ボーナスも院卒が年77.6万円多い 2章
その差は院に行ったからか それだけではない。進む人(国立・理工・男性)と働く先(大企業)に偏りがある。男性・1,000人以上にそろえると月73.5千円。残りは統計では切り分けられない 3章
院に行かないと行きたい会社に入れないか 開発職の入口は修士に寄っている(就職者のうち製造技術者(開発)は修士24.2%、学部2.2%)。ただ、入れた先の部署が残る保証はない(2025年度 上場46社・2万781人が早期・希望退職の対象) 4章
就職した同期はどうなったか 憧れの電機メーカーと音響メーカーに入った2人は、人員整理と部門閉鎖に当たった。僻地の寮から積み立てを始めた人が、20年近くたって一番強くなった 5章
2年早く働くと何が違うか 2008年4月から毎月1万円なら2025年6月に約1,124万円、2年遅れて始めると約837万円(S&P500、円・配当込み・税なし)。始めた時期がよかった例 6章
行っていい人の目安は 早期卒業(大学に3年)、大学院への飛び入学(大学に3年)、修士の早期修了(1年)。どれも「優秀な成績」「優れた業績」を大学が認めた人だけ 7章
自分の場合は 院の年数・学費・月給・院卒で増える額・積立の額と年利を入れると出る 8章

1. 先に、私の答えと立場

私は大学院に行っていません。大学(東京電機大学)は卒業研究が必修ではなく、研究室に所属しないまま卒業しました。就職もせず、学生のころから続けていた古本の売買で独立したので、会社員になったこともありません。短大から大学に編入した経路は、学歴ロンダリングの記事に書きました。

なので、給料や進路の数字は、厚生労働省・文部科学省の統計と法令で書きます。私の考えと、私が見た同期の話は、そうと分かる形で書きます。

大学院に行くべきかについて、私の答えはこうです。

「特待・飛び級クラスの適性があるなら、大学院に行ってもいいし、反対もしない。それ以外(凡人以下)なら、今の社会では時間の無駄だと本気で思っている。」

「院に行かないと行きたい会社に就職できない」と、よく言われます。私の考えでは、終身雇用は崩れていて、希望の会社に入れても、その部署がいつまで残るかは分かりません。人を一番成長させるのは実務の経験です。シミュレーションの世界に適性もないのに2年行っても、AIに淘汰される未来しか待っていない、と私は見ています。AIの話は私の見方で、統計で確かめたものではありません。

この考えは、院卒の平均の給料が高いことと反対の向きです。なので、先に平均の数字を隠さずに出し(2章)、その差の中身を分けて(3章)、そのうえで私の理由を数字で確かめます(4〜6章)。

2. 院卒の給料は、平均ではっきり高い

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査で、学歴別の月の賃金は次のとおりです。ここでの賃金は、6月分の所定内給与額の平均(残業代とボーナスを含まない、税を引く前の額)で、男女計、単位は千円です。

年齢 大学 大学院 差
20〜24歳 263.9 298.8 34.9
25〜29歳 296.4 335.0 38.6
30〜34歳 340.3 406.1 65.8
35〜39歳 382.2 466.6 84.4
40〜44歳 425.3 553.7 128.4
45〜49歳 458.4 617.8 159.4
50〜54歳 494.9 648.3 153.4
55〜59歳 529.1 676.2 147.1
60〜64歳 420.2 589.8 169.6
年齢計 396.3 517.4 121.1

年齢計で月121.1千円、40代後半からは月15万円前後の差があります。ボーナス(年間賞与その他特別給与額。調査の前年の1年間の額)も、大学1,357.0千円、大学院2,132.6千円で、院卒が年77.6万円多くなっています(同じ調査の一般労働者の表、民営事業所、企業規模計)。平均で比べる限り、院卒のほうが高いのは、はっきりしています。

この月給を64歳まで足し合わせた計算は、大学院の学費の記事にあります。所定内給与の仮想の累積額で、修士(24〜64歳)は学部卒(22〜64歳)より約5,089万円多く、国立の学費を差し引いたうえで累積の差がゼロになるのは35歳、という試算です。ただし、これは2025年に働いている人の年齢ごとの平均を並べたもので、同じ人が年をとったときの給料ではありません。ボーナス・在学中の生活費・税も入っていません。院に行けば給料がこれだけ上がる、という意味でもありません。その理由が、次の章です。

3. その差は、院に行ったから上がった分だけではない

院卒と大学卒の平均は、「同じ人が院に行ったか、行かなかったか」の比べではなく、別の人たちの集まりの比べです。どんな人が院に進み、どこで働いているかに、はっきりした偏りがあります。

まず、進む人の偏りです。文部科学省の学校基本調査で、令和7年3月に大学を卒業した584,304人のうち、進学者(大学院などへの進学)は70,226人(12.0%)でした。分け方ごとの進学率です(進学率は計算)。

分け方 卒業者 進学者 進学率
全体 584,304人 70,226人 12.0%
国立大学 96,272人 35,647人 37.0%
公立大学 32,421人 4,913人 15.2%
私立大学 455,611人 29,666人 6.5%
工学(国立大学) 27,943人 19,685人 70.4%
工学(私立大学) 53,921人 13,240人 24.6%
理学(全体) 17,863人 8,493人 47.5%
人文科学(全体) 81,577人 3,746人 4.6%
社会科学(全体) 189,030人 5,382人 2.8%
男性 309,287人 50,050人 16.2%
女性 275,017人 20,176人 7.3%

国立大学の卒業者は卒業者全体の16.5%ですが、進学者の50.8%を占めます(計算)。大学院に進む人の半分は、国立大学の出身です。どの大学に入れたかという違いは、院に行く前からあります。

次に、働く先の偏りです。同じ賃金の調査の労働者数から計算すると、働いている大学卒のうち従業員1,000人以上の会社にいるのは40.8%、大学院卒は64.2%です。男性の割合も、大学卒67.5%、大学院卒82.0%です。大きい会社ほど、また男性ほど、平均の給料は高く出ます。

この偏りをそろえていくと、差はこう変わります(所定内給与、千円)。

比べ方 大学 大学院 差
男女計・企業規模計 396.3 517.4 121.1
男性・企業規模計 429.6 534.8 105.2
女性・企業規模計 327.4 438.2 110.8
男性・1,000人以上 484.5 558.0 73.5
女性・1,000人以上 353.2 467.8 114.6
男性・1,000人以上・30〜34歳 391.2 433.5 42.3
男性・1,000人以上・40〜44歳 523.4 604.4 81.0

男性どうし・1,000人以上の会社どうしにそろえると、差は121.1千円から73.5千円に縮みます。30〜34歳にそろえると42.3千円です。一方で、女性どうしでは、1,000人以上にそろえても114.6千円の差が残ります。ここまでそろえても、差はゼロにはなりません。

残った差には、出身大学、専攻した分野、就いた職業、本人がもともと持っていた力の違いが混ざっています。賃金の調査には出身大学も本人の力も載っていないので、残った差のうちどれだけが「大学院で身についた力」なのかは、この統計では切り分けられません。同じ人が院に行った場合と行かなかった場合を比べた公的な統計も、見つけられませんでした。研究職に絞った比べ方は、研究職の年収の記事に書いています。

4. 「院に行かないと行きたい会社に入れない」と、入った先の椅子

「院に行かないと行きたい会社に入れない」は、行きたい会社がメーカーの開発職なら、割合の上では本当です。学校基本調査で、令和7年3月に修士を修了して就職した人と、学部を卒業して就職した人の職業を比べます(割合は就職者に占める割合で、計算)。

職業 修士(就職者60,674人) 学部(就職者449,638人)
専門的・技術的職業 47,624人(78.5%) 185,379人(41.2%)
うち製造技術者(開発) 14,694人(24.2%) 9,759人(2.2%)
うち研究者 3,905人(6.4%) 541人(0.1%)
うち情報処理・通信技術者 9,553人(15.7%) 39,559人(8.8%)

修士の就職者の4人に1人が開発の技術者で、学部では2.2%です。ただ、人数で見ると、開発の技術者になった学部卒は9,759人いて、修士と合わせた24,453人の39.9%です(博士・専門職学位課程は入れない計算)。院に行かないと開発職に就けない、というわけでもありません。院生の就活の日程と、分野ごとの院卒の就職先は、大学院生の就活の記事にまとめました。

私が問題にしているのは、入ったあとです。東京商工リサーチ TSRデータインサイトの集計では、2025年度(2025年4月〜2026年3月)に早期・希望退職の募集が分かった上場企業は46社、募集人数は2万781人で、前年度(8,326人)の約2.5倍でした。2009年度以降で4番目の多さです。

項目 2025年度
募集が分かった上場企業 46社(前年度51社)
募集人数 2万781人(前年度8,326人)
直近の決算が黒字の企業 32社(69.5%)
黒字企業の募集人数 1万6,908人(81.3%)
いちばん多い業種 電気機器 15社(32.6%)

同じ集計は、賃上げが広がるなかで「将来性が乏しい事業部門の大胆な見直しや新規事業への進出が不可欠になっている」とし、中高年を対象にした募集が加速したと書いています。募集した会社の約7割は、直近の決算が黒字でした。また、東京商工リサーチが4月に行ったアンケートでは大企業の59.1%が生成AIを組織的に活用していて、今後は事務職・管理職を対象にした「AIウォッシング」の広がりも懸念される、としています。

この集計は、上場企業のうち募集の中身が確認できたものだけで、対象に院卒が何人いたかは分かりません。それでも、黒字の大きな会社でも部門ごと人を減らす年がある、ということは数字に出ています。希望の会社に入れることと、その部署で働き続けられることは別です。部署の廃止は学部卒にも同じように起こります。私が言いたいのは、学部卒なら安全ということではなく、院の2年で手に入れた「希望の会社に入る切符」も、部署が消えればその効き目が消えるということです。

5. 私が見た同期たち

ここからは、私が大学の同期で見た話です。統計ではありません。

1人目は、大手の電機メーカーに就職した人です。学部卒です。私は大学でオーディオ部にいたので、オーディオに直接関係のある会社は、私から見ても憧れの就職先でした。ところが、入社した直後には、その会社ではすでに人員整理が始まっていました。音響の部門に配属されたかまでは分かりませんが、その時期に入った人はとてもしんどそうでした。

2人目は、音響メーカーに就職した人です。こちらも学部卒です。部門閉鎖で、入社前にやりたかったオーディオの部門がなくなりました。

3人目は、当時はイケてない就職先に見えた人です。こちらも学部卒で、2008年4月に入社し、1年目から静岡の僻地に配属されて会社の寮に入りました(私は9月卒業だったので、半年先に社会に出た彼の時期をよく覚えています)。まわりからは憐れまれていました。でも、寮なので家賃がかかりません。田舎で娯楽がないので、散財もしません。入社した直後から、S&P500の積立を始めました。始めて半年でリーマン・ショックが来ています。今は大きな含み益があり、家の頭金も、結婚資金も問題ありません。始めてすぐに最悪の暴落をくぐったので、ギリシャショックやコロナショックが来ても焦らず、淡々と続けて資産が増えました。

20年近くたって、財産を作り、どこでもやっていける強い力を持っているのは、3人目だと私は見ています。

院に行った同期もいます。大手金融系のシンクタンクに入りました。ダメな選択だったとは言いません。ただ、私の見方では、あそこは学部卒でもぶっちゃけ入れる会社です。

これは私が見た数人の話で、一般化はできません。電機メーカーと音響メーカーの2人も、僻地の1人も学部卒なので、同じ人が院に行った場合と比べた例でもありません。電機メーカーや音響メーカーで今も楽しく働いている人もいるはずですし、地方の寮に入っても積み立てをしなかった人もいるはずです。私が言いたいのは、就職した時点の「いい会社」と「かわいそうな配属」が、20年たつと入れ替わることがある、ということです。新卒で地方に配属されたり、部署を閉じられて転勤を言われたりしたときに断れるか、断って辞めた場合の失業給付はどうなるかは、転勤の拒否の記事に判例でまとめました。

6. 2年早く働き始めて、2年早く積み立てを始めた差

3人目の同期が毎月いくら積み立てていたかは知りません。なので、毎月1万円の場合で、S&P500の過去の数字を計算します。

計算のしかたです。Robert J. Shiller の公開データ(S&P500の月平均の株価と配当)で配当を再投資した指数を作り、FRED(セントルイス連邦準備銀行の統計データベース。原資料は米連邦準備制度理事会)のドル円の月平均で円に直しました。毎月1万円ずつその月の値段で買ったとして、配当込みのデータがある最後の月(2025年6月)の評価額を出しています。税・手数料は入れていません。指数そのものを買えたと置いた概算で、特定の投資信託の成績ではありません。

始めた月 積み立てた月数 元本 2025年6月の評価額 倍率
2008年4月(学部卒で就職した月) 207か月 207万円 約1,124万円 5.43倍
2010年4月(2年遅れ。修士を出てから始めた場合) 183か月 183万円 約837万円 4.57倍
差 24か月 24万円 約287万円 ―

最初の2年に入れた24万円の分が、2025年6月には約287万円の差になっています。1年あたりに直すと(内部収益率)、2008年4月からの積立は年17.5%でした。

ただし、この数字はそのまま一般化できません。理由は3つです。

1つ目は、始めた時期が結果としてとてもよかったことです。2008年4月に始めると、半年後にリーマン・ショックが来て、その安い時期に毎月買い続けることになります。円で見たS&P500(配当込み)は、2009年2月に高値から48.2%下がっていました。1971年1月以降の各月に始めて、同じ207か月だけ積み立てた448通りを比べると、倍率の真ん中は2.39倍、いちばん低いのは0.98倍(1992年1月に始めた場合)、いちばん高いのは5.98倍(2007年11月に始めた場合)でした。2008年4月に始めた5.43倍は、448通りの中で8番目です。

2つ目は、円安の分が入っていることです。ドル円の月平均は、2008年4月の約103円から、2025年6月の約144円になりました。ドルのままで数えると、倍率は3.69倍です。

3つ目は、途中の下げです。評価額が元本を下回ったのは、2008年7月〜2009年9月、2010年7〜9月、2011年8〜11月でした。いちばん深かったのは2009年2月で、元本11万円に対して評価額は約7.9万円(0.71倍)です。そこから先は、2020年3月(コロナショック)に評価額が高値から20.4%下がったときでも、元本の2.1倍ありました。始めてすぐに最悪の時期をくぐったので、その後の下げで焦らずに続けられた、という3人目の同期の話は、この数字と合っています。

なので、この計算で言いたいのは「2008年に始めれば5倍になった」ではありません。積み立てに使える時間は、働き始めた月から始まる、ということです。学部卒は院卒より2年早く給料をもらい始め、2年早く積み立てを始められます。いつ始めるのが得だったかは後からしか分かりませんが、2年早く始めた人は、その2年の分だけ長く持っていられます。8章の計算機では、年利を自分で入れて、2年の差を出せます。子どもが生まれたときから親が教育費の運用を始める話は、給付型奨学金とZEN大学の記事に書きました。

7. 行っていい人の目安と、私の考え

私が「行っていい」と考える特待・飛び級クラスがどれくらいの線かを、制度で見ておきます。大学には、学年を飛ばしたり、早く終えたりする制度が法令で決まっています。

制度 条件(法令の要旨) 短くなる年数
大学の早期卒業 大学に3年以上在学し、卒業の要件の単位を「優秀な成績」で修得したと大学が認めること(学校教育法89条) 学部4年が3年に
大学院への飛び入学 大学に3年以上在学し、大学院を置く大学の定める単位を「優秀な成績」で修得したと認められること(学校教育法102条2項、施行規則159条) 学部を卒業せずに大学院へ
修士の早期修了 「優れた業績を上げた者」は大学院に1年以上在学すれば足りる(大学院設置基準16条) 修士2年が1年に
大学への飛び入学 高校に2年以上在学し、大学の定める分野で「特に優れた資質」があると認められること(学校教育法90条2項、施行規則153条)。令和8年度に実施しているのは10大学、これまでの入学者は累計161人(令和8年7月時点、文部科学省) 高校を卒業せずに大学へ

早期卒業、大学院への飛び入学、修士の早期修了で何人が出たかは、学校基本調査に区分がなく分かりません。修士の早期修了の要件の例(学会発表や査読付きの論文など)は、修士と博士の違いの記事に大学の規程で並べました。どれも「優秀な成績」「優れた業績」を大学が認めた人だけで、例外の側です。

一方で、3章のとおり、国立大学の工学では卒業者の7割が進学します。周りがみんな行くから行く、は平均の話で、適性の話ではありません。

ここからは私の考えです。

この記事で特待・飛び級の線を目安にするのは、自分で「研究に向いている」と思うことではなく、大学が制度で「優秀」と認めるかどうかで、研究の適性を外から確かめられる数少ない物差しだからです。この線を越えるくらいの人なら、大学院に行けばいいと思っています。反対もしません。専攻にこだわっていいのは、このくらいの位置の人だと考えています。

それ以外の人にとって、院の2年は時間の無駄だと本気で思っています。理由は1章の3つです。入れた会社の部署が残る保証はない(4章)。人を一番成長させるのは実務の経験で、同じ2年なら、研究室より仕事の現場のほうが力がつく。早く働き始めた人は、早く積み立てを始められる(6章)。会社の給料も、会社の業績と一人あたりの生産性が上がらなければ上がらない、というのが私の見方で、それは昇給の平均の記事に書きました。どの会社に入れたかより、どこで実務を積むかと、どれだけ早く働き始めるかのほうが、20年後の差になると考えています。

例外として、行く価値があると考える大学院がもう一つあります。研究のためではなく、学歴を取りに行く大学院です。たとえばZEN大学のような通信制の大学から、ストレートで東京大学などの大学院に進めるなら、学歴のロンダリングとしてありだと考えています(費用は給付型奨学金とZEN大学の記事に、私自身のロンダリングの経路は学歴ロンダリングの記事に書きました)。このクラスの大学院でないなら、別に行かなくていいと考えています。

逆に、いちばんイケてないと思うのは、東京電機大学のような中堅の大学に入って、思考停止でそのまま院に進むことです。東京電機大学は私の出身校なので、自分の大学の名前で言っています。

ただ、修士の2年と実務の2年で身につく力を比べたデータは、見つけられませんでした。私の考えは、研究室にも会社にもいたことのない私の価値判断で、2章の平均の数字とは反対の向きです。修士の2年で、実験の計画や解析を身につけて研究職に就いた人から見れば、別の答えになるはずです。研究を続けるか離れるかの材料は研究に向いてないと感じたときの記事に、院に入ってから合わないと分かったときのことは大学院の中退の記事に書きました。

8. 院の2年の費用と、取り返す年数、積み立ての差を出す計算機

院に行く年数、学費、学部卒で働いていれば得た月給、院卒になって毎月多くもらえる額、積立の額と年利を入れると、①院の費用(学費+働かなかった間の給料)②その差額で取り返す年数 ③統計の年齢ごとの差で数えた場合に追いつく年齢 ④学部卒と院卒で積み立てを始める年がずれた差、を出します。初期値は、国立大学の標準額(国立大学等の授業料その他の費用に関する省令2条)と、令和7年賃金構造基本統計調査の所定内給与(男女計)です。私立の大学院の学費は、大学院の学費の記事で大学ごとに確かめられます。

院に行く年数と学費

院卒になって多くもらえる額

積み立て

前提:学部卒は22歳から働き、院卒は院の年数のあとから働くとします。給料はボーナス・税・社会保険料・昇給の差を入れていません。年利は毎年同じとし、税・手数料・物価は入れていません。

初期値のままだと、院の2年の費用は7,687,200円(学費1,353,600円+働かなかった2年の所定内給与6,333,600円)、月38,600円の差で取り返すのに16.6年、統計の年齢ごとの差で数えると追いつくのは35歳、毎月1万円を年3%で60歳まで積み立てた場合の2年の差は約72万円です。

9. よくある質問

大学院に行く意味はありますか?

平均の給料で見れば、院卒は大学卒より月121.1千円高く(令和7年、所定内給与、男女計)、お金の面での意味はあります。ただ、その差には進む人と働く先の偏りが入っていて、男性・1,000人以上の会社どうしでは73.5千円です。大学院で身についた力の分がいくらかは、統計では切り分けられません(2章・3章)。私の考えは、特待・飛び級クラスの適性があるなら行けばいい、それ以外なら時間の無駄、です(7章)。

院卒と学部卒の生涯賃金の差はいくらですか?

所定内給与の年齢ごとの平均(令和7年)を64歳まで足すと、修士は学部卒より約5,089万円多い計算です(大学院の学費の記事の試算)。ボーナス・在学中の生活費・税を含まず、別の人たちの平均を並べたもので、院に行けばこれだけ増えるという意味ではありません。

大学院に行かないと、メーカーの研究職・開発職には入れませんか?

割合では修士に寄っています。令和7年3月の就職者のうち、製造技術者(開発)は修士で24.2%、学部で2.2%、研究者は修士で6.4%、学部で0.1%です。人数では、開発の技術者になった学部卒は9,759人いて、修士と合わせた中の39.9%です(4章)。入れたあとにその部署が残るかは別の話です。

文系で大学院に行く意味はありますか?

学部の卒業者のうち進学した人は、人文科学4.6%、社会科学2.8%です。修士を修了した人のうち就職した人は、人文科学56.3%、社会科学67.1%で、修士全体の78.2%より低くなっています(令和7年3月、計算)。就きたい仕事が修士を条件にしているかを、先に確かめておくことになります。

大学院か就職か、迷ったらどうすればいいですか?

私なら、早期卒業・大学院への飛び入学・早期修了のような線を、自分が越えられるかをまず確かめます。越えられないなら、就職します。8章の計算機で、院の2年の費用、取り返す年数、2年早く積み立てを始めた差を、自分の数字で出せます。

院に入ってから合わないと思ったら、どうなりますか?

大学院を中退しても、最終学歴は大学卒のままです。退学の手続きと学費、新卒の採用枠に応募できるか、中退と休学の比べ方は、大学院の中退の記事に書きました。

10. まとめ

  • 平均では院卒の給料ははっきり高い。令和7年の所定内給与は大学院517.4千円、大学396.3千円で、差は月121.1千円。ボーナスも年77.6万円多い。
  • その差は院に行ったから上がった分だけではない。進学率は国立大学37.0%・私立大学6.5%、男性16.2%・女性7.3%で、院卒の64.2%が1,000人以上の会社にいる(大学卒40.8%)。男性・1,000人以上にそろえると差は73.5千円。残りは統計では切り分けられない。
  • 開発職の入口は修士に寄っている(就職者のうち製造技術者(開発)は修士24.2%、学部2.2%)。ただ、2025年度は上場46社・2万781人が早期・希望退職の対象になり、約7割は黒字の会社だった。
  • 私が見た同期では、憧れの電機メーカーと音響メーカーに入った2人は人員整理と部門閉鎖に当たり、僻地の寮から積み立てを始めた人が20年近くたって一番強くなった。数人の例で、一般化はできない。
  • S&P500(円・配当込み・税なし)に2008年4月から毎月1万円なら、2025年6月に約1,124万円、2年遅れて始めると約837万円。ただし448通りの中で8番目によかった時期で、同じ長さでも0.98倍から5.98倍まで違う。
  • 私の考えは、特待・飛び級(早期卒業・飛び入学・早期修了)クラスの適性があるなら行けばいいし反対もしない、それ以外なら今の社会では時間の無駄。修士の2年と実務の2年を比べたデータはなく、私の価値判断。

11. 出典

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転職しても、買い手が別の一社に変わるだけ。
構造は変わりません。
必要なのは努力の量でも我慢でもなく、
会社以外に
「自分の判断にお金を払う相手」
を一つ持つこと。
月3万円で構いません。
それだけで、組織との距離の取り方が変わります。
動かない録画機器を1,000円以下で仕入れ、
中古ドライブ(部品代2,000円)に交換。
ついでに容量を増やして15,000円で販売。
── 20年の現場から、実例の一部
この無料講座で扱う内容
  • 壊れた商品のどこに価格差が眠るのか
    「歪みの4類型」
  • 手数料・送料・作業時間まで含めた
    「1件の利益計算式」
  • 絶対に手を出してはいけない
    「除外リスト7項目」
  • 6日目には、元手ゼロで
    今週できる実践ワーク(約70分)
※手を動かさずに稼ぐ方法をお探しの方には向きません。
そのことも講座内で明記しています。
20年
現場での実践
全14通・2週間。
1通3〜5分で、通勤中にも読み切れる分量です。
まずは14通の無料講座で、
「第二の買い手」という考え方を確認してください。
登録30秒・無料・いつでも解除できます


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※後半に有料商品のご案内があります。
第1通の冒頭で明記します。

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