「Amazonで複数アカウントは作れるのか」で調べて来られた方に、先に結論を3行で書きます。
- 購入用のアカウントは、複数持てます。Amazonがアカウントの切り替え機能を用意しています
- 出品用のアカウントは、出品する地域ごとに1つが原則です。ただし条件を満たす場合の例外があります
- そして出品者にとっての本当の論点は「バレるか」ではありません。バレたときに何が起きるか、です
3つ目が、この記事で書きたいことです。
私はAmazonで出品していた期間があり、当時アカウントを分ける手続きも通しています。いまは中古品の買取・修理・販売が中心です。20年ほどこの商売を続けています。
購入用アカウントは、複数持って問題ありません
ここは短く済ませます。
Amazonにはアカウントの切り替え機能があり、複数のアカウントを持つこと自体は想定されています。仕事用と私用を分ける、配送先を分ける、といった使い方です。
ただし注意点が1つあります。Primeなどの特典を、複数アカウントで共有する目的で使うことはできません。特典の共有には、家族会員のような別の仕組みが用意されています。アカウントを増やして特典を増やす、という使い方は想定されていません。
購入用の話は、ここで終わりです。以下は全部、出品用アカウントの話になります。
出品用アカウントは、原則として1つです
ここから本題です。購入用とは扱いがまったく違います。
出品用アカウントは、出品する地域ごとに1つが原則とされています。そのうえで、例外が認められる条件が2つ示されています。
- ビジネス上の正当な理由があること
- すべてのアカウントが問題なく運用されていること
この2つは、両方とも満たす必要があります。理由があっても、どれか1つのアカウントに問題があれば成立しません。
「正当な理由」として挙げられている例
具体的に挙げられているのは、こういうものです。
- 複数のブランドを所有し、それぞれ独立した事業として運営している
- 異なる法人で商品を製造している
- 別々のアカウントを必要とするAmazonのプログラムに参加している
並べてみると、共通点が見えます。どれも「事業の実体が別々に存在している」ケースです。アカウントを分けたいのではなく、分かれている事業がそれぞれアカウントを必要としている、という順番になっています。
そして、ここに入っていないもの
読み違えが起きやすいのはここです。次の理由は、上の例のどれにも当たりません。
- 仕入用と出品用を分けたい
- 停止されたときに備えて、予備を持っておきたい
- 扱う商材のジャンルが違うので分けたい
- 評価を分けたい/新しく作り直したい
どれも運用上は理解できる動機ですが、「自分にとって都合がいい」は、正当な業務上の理由とは別のものです。事業の実体が分かれていないなら、条件を満たしていません。
私がやっていた頃は、承認制でした
ここは私の実体験なので、時期を明示して書きます。
私が出品していた頃は、個人と法人でなければ認められませんでした。そして認められない場合は、片方が閉鎖されるという運用でした。だから当時の感覚では「分けるなら法人を作るしかない」です。
いまは、事前の承認を必須とする書き方にはなっていません。条件を満たしているかどうかで判断される形に変わっています。
この違いは大きいので、数年前の解説記事を読んで判断しないでください。私自身、この記事を書き直すまで承認制のままだと思っていました。
そして同じ理由で、この記事の説明でも判断しないでください。ここは変わる部分です。実行する前に、最新の出品規約と出品者行動規範を自分で読んでください。
本題:バレるかどうかは、論点ではありません
この記事に来る方の多くは、実際には「バレるのか」を知りたいのだと思います。その気持ちのまま進むと、判断を間違えます。
理由を2つ書きます。
1. 判定の仕組みは公開されていません
Amazonが何をもって同一の運営者と判断しているかは、公表されていません。公表されていない以上、対策のしようがありません。
そしてこの記事では、その回避方法を書きません。書けばそれは規約をすり抜けるための手順になりますし、すり抜けられたかどうかは、止まるまで分からないからです。
2. バレなかった期間は、安全だった証拠になりません
ここが本質です。
止まっていない期間は「大丈夫だった」ではなく「まだ止まっていない」です。この2つは、外から見ると区別が付きません。そして区別が付かないまま、出品数と在庫は増えていきます。
順調に見えている期間の長さが、そのまま止まったときの損失の大きさになります。
いちばん重要な点:分けてもリスクは分散しません
複数アカウントを考える動機で、いちばん多いのはこれだと思います。
「片方が止まっても、もう片方が残る」
ここが成立していません。
1つのアカウントでポリシー違反が起きると、すべてのアカウントが停止される可能性があります。紐付いていると判断された時点で、まとめて扱われるからです。
つまりアカウントを分けることは、リスクを分ける行為ではありません。片方の問題がもう片方に伝わる経路を、1本増やす行為です。
保険のつもりで作ったものが、実際には共倒れの経路になっています。ここを取り違えたまま「念のため」で作るのが、いちばん危険な形です。
そのうえ、固定費だけが確実に増えます
止まる確率は下がりません。一方で、費用は確実に増えます。
大口出品なら月額が2つ分になります。価格改定ソフトや価格追跡ツールを両方で使うなら、そこも増えます。そして固定費が増えるということは、損益分岐点が上がるということです。
毎月いくら出ていくと、いくらの売上が必要になるのか。この関係は計算で出せます。実際の数字を入れて計算できるようにしたものをAmazon刈り取りの損益分岐点を計算した記事に置きました。アカウントを増やす前に、増えた固定費で分岐点がどこまで動くかを見てください。
では、どうするのが現実的か
条件を満たしていないのに分けたい、という状況なら、選べる道は2つです。
A. 分けずに、1つを止められないように運用する
予備を作るより、こちらのほうが確実です。停止の原因になりやすいものは、事前に潰せます。
- 真贋調査で求められる書類を用意できる仕入先から買う……小売店の領収書では要件を満たさない場合があります
- 1つの商品に在庫を寄せすぎない……その商品が止まると全部止まります
- 顧客対応の指標を落とさない……出荷遅延やキャンセル率は自分で管理できる範囲です
- 知的財産権の申し立てを受けやすいブランドを避ける……扱う前に調べられます
どれも、アカウントを増やすより先にできることです。停止された場合に何が起きるかはAmazonのアカウント停止について書いた記事にまとめています。
B. 事業の実体を先に分ける
どうしても分ける必要があるなら、順番が逆です。
アカウントを分けてから理由を用意するのではなく、分かれた事業が先にあって、その結果としてアカウントが必要になるという形にする。上に挙げた例は全部その形をしています。
この順番を作れないなら、それは分けるべき状況ではありません。
他のプラットフォームでは扱いが違います
ここは間違えやすいところです。複数アカウントの可否は、プラットフォームごとにまったく違います。Amazonで通る考え方が、他で通るとは限りません。
ヤフオクやフリマアプリでの扱いはヤフオクの複数アカウントについて書いた記事にまとめました。本人確認の仕組みが絡む分、Amazonとは論点が変わります。
よくある質問
複数アカウントはどうやってバレるのですか
判定の材料は公開されていません。そして公開されていない以上、対策を立てることもできません。この記事で回避方法を書かないのはそのためです。バレる確率を下げる工夫より、条件を満たす形にするか、分けないかのどちらかを選んでください。
家族が同じ家からAmazonで出品する場合はどうなりますか
それぞれが独立した事業として運営しているなら、事業の実体が分かれている形にはなります。ただし判断するのはAmazonです。実質的に1人が両方を運営しているなら、住所が同じかどうか以前の問題になります。
個人と法人なら2つ持てますか
私が出品していた頃は、その形でなければ認められませんでした。ただし現在の条件は「個人か法人か」ではなく「ビジネス上の正当な理由があるか」と「すべてのアカウントが問題なく運用されているか」です。法人を作ったこと自体が理由になるわけではありません。
止まったアカウントの代わりに、新しく作り直せますか
停止されたアカウントの所有者が新しいアカウントを開設することは、認められていません。新規開設が制限される場合もあります。作り直しは復旧の手段になりません。
使っていないアカウントは削除したほうがいいですか
使う予定がないなら、残しておく理由はありません。ただし出品履歴や取引が残っている場合、削除の前に確認が必要です。手続きはAmazonのヘルプに沿って進めてください。
アカウントを分けると、評価やレビューはリセットされますか
新しいアカウントは評価ゼロから始まります。そして、それは利点ではありません。評価が少ない出品者は、同じ商品でも売れにくくなります。評価を捨てて分けるのは、資産を捨てて経路を1本増やす行為です。
まとめ
- 購入用アカウントは複数持てる。ただしPrime等の特典を共有する目的では使えない
- 出品用アカウントは、出品する地域ごとに1つが原則。例外の条件は「ビジネス上の正当な理由がある」と「すべてのアカウントが問題なく運用されている」の2つ
- 正当な理由の例は複数ブランドの独立運営/異なる法人での製造/別アカウントを要するAmazonのプログラム。どれも事業の実体が先に分かれている
- 「仕入用と出品用を分けたい」「停止に備えたい」は、この例のどれにも当たらない
- 私が出品していた頃は承認制で、個人と法人でなければ片方が閉鎖された。いまは条件で判断される形に変わっている
- 判定の仕組みは公開されていない。止まっていない期間は「大丈夫だった」ではなく「まだ止まっていない」
- 1つのアカウントの違反で、すべてが停止され得る。だから分けてもリスクは分散しない
- 分けると固定費だけが確実に増え、損益分岐点が上がる。止まる確率は下がらない
- 現実的な道は「分けずに1つを止められないように運用する」か「事業の実体を先に分ける」のどちらか
複数アカウントが安心につながるように見えるのは、数が増えると分散したように感じるからです。ただしここでは、増えているのは選択肢ではなく、止まる理由のほうです。
1つを止められないように運用できない人が、2つを止められないように運用することはできません。増やす前に、いま持っている1つが止まる理由を潰してください。
Sources:Amazon出品者フォーラム(sellercentral.amazon.co.jp)に掲載されている出品者利用規約の複数アカウント条項/Amazon出品サービス「料金プラン」

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