ポスドクの末路はやばい?人数・年齢・給料・任期と次の職の統計(計算機つき)

ポスドクの末路は?NISTEPの調査(2021年度実績)でポスドク等は延べ13,657人・平均年齢38.0歳・40歳以上29.9%・任期「1年」45.9%・翌年度もポスドク等67.9%(1年後の内訳)、翌年度に大学教員を含む研究・開発職へ移った人17.2%、月額給与で最多は35万〜40万円未満の16.8%(全13,657人に占める割合) 生き方・キャリア

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ポスドク(ポストドクター等)とは、博士の学位を取った人や満期退学した人のうち、任期付きで大学や研究開発法人に採用されて研究をしている人で、教授・准教授・助教・助手や研究グループのリーダーなどの職にない人です(科学技術・学術政策研究所〔NISTEP〕の調査の定義)。2021年度は延べ13,657人、平均38.0歳で、40歳以上が29.9%でした。月額給与は「35万円以上40万円未満」が16.8%で最も多い一方、「機関からの給与なし」が16.9%、「15万円未満」が12.2%います。任期は「1年」が45.9%で最も多く、翌年度(2022年4月1日)もポスドク等を続けた人が67.9%、大学教員やその他の研究・開発職に移った人が17.2%でした(NISTEPの調査を政府統計の総合窓口〔e-Stat〕の表から読み、割合は計算)。

「ポスドクの末路」を一言でまとめられる公的な統計はありません。確かめられるのは、1年後にどうなったかの内訳です。続けた人が約3分の2、研究・開発職に移った人が約6分の1、移った先が「不明」の人が10.9%いて、数年後や10年後の行き先は、この調査からは分かりません。「機関からの給与なし」は機関から給与が出ていない人の数で、収入が0円という意味ではありません。フェローシップなど、機関以外からの収入がありうる人です(当てはめ)。

ポスドクと助教の違いは、法律上の職かどうかです。助教は学校教育法92条に定めのある大学教員の職で、NISTEPの定義は、助教などの職にある人をポスドク等から外しています。

知りたいこと 答え 章
ポスドクとは(意味) 博士の学位を取った人・満期退学した人のうち、任期付きで大学・研究開発法人に採用されて研究をしている人で、教授・准教授・助教・助手や研究グループのリーダーなどでない人(NISTEPの定義)。年齢の上限はない 2章
ポスドクと助教の違い 助教は学校教育法92条の大学教員の職。ポスドク等はその職にない研究者。特任助教は「助教」の職なので、この調査のポスドク等には入らないと読める(当てはめ) 2章
何人・何歳 2021年度 延べ13,657人(2018年度15,590人)。平均38.0歳、中央値35歳。40歳以上29.9%。理学37.2%・工学22.2% 3章
給料・年収 月額35万円以上40万円未満が16.8%で最多。30万円以上35万円未満16.4%、15万円未満12.2%、機関からの給与なし16.9%(収入0円という意味ではない)。調査は月額だけで、年収は調べていない。学振PDのフェローシップ型は研究奨励金 月額362,000円(令和9年度の支給予定額)、雇用PDは受入研究機関から給与 4章
任期 任期「1年」45.9%、3年未満の計77.0%(どちらも雇用関係なしを含む全13,657人に占める割合)。雇用関係なしと不明を除くと、3年未満は87.0%(計算)。契約できる最長期間は「10年以上」20.7%が最多 5章
ポスドクの末路(その後) 翌年度もポスドク等67.9%、大学教員やその他の研究・開発職へ17.2%、研究・開発職以外へ1.5%、移った先が不明10.9%。1年後の内訳で、それより先は分からない 6章
ポスドク問題・やばいと言われる理由 平均年齢の上昇(2018年度37.5歳→2021年度38.0歳)、任期の短さ、移った先の任期が分からない人の多さ。大学の本務教員に占める40歳未満は21.8%(令和7年度) 7章
無期転換 原則は同じ雇用主での有期契約の通算が5年を超えると申し込める。大学・研究開発法人の研究者等には10年の特例があるが、当たるかは職種・契約・業務で決まる。令和7年4月1日までの更新で通算10年を超えることになった6,903人のうち、無期契約598人と、申込権が生じて有期のまま続けた5,355人で計5,953人(86.2%、計算) 5章
自分の場合 分野・年齢ごとの人数と任期、月額から額面の年収と月額給与の階級、翌年度の行き先、続けた場合の年齢・ポスドク等をした年数と無期転換(概算)を計算機で 8章

1. 先に、この記事の数字と、書いている人について

私は研究職にもポスドクにも就いたことがなく、大学院にも行っていません。この記事は、公的な調査と法令、大学・研究機関の公募要項と規程だけで書きます。

数字の中心は、NISTEP(文部科学省の科学技術・学術政策研究所)の「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2021年度実績)」です。2021年4月1日から2022年3月31日までに、大学・大学共同利用機関・研究開発法人などにポスドク等として在籍した人を全員数えた「延べ人数」で、対象の1,187機関の回収率は100%です。年齢・任期・月額給与・翌年度の状況は、e-Stat にある表1「分野別」のファイルを読んで集計しました。調査は3年ごとで、2024年度実績の結果は、2026年10月25日の時点でまだ公表されていません。

表の数字を足したり割ったりした値には「計算」、条文や公式の説明を組み合わせて読んだところには「当てはめ」と書きました。

2. ポスドクとは:意味と、助教との違い

2-1. NISTEPの定義

NISTEPの調査は、ポストドクター等を次のように定めています。「博士の学位を取得した者又は所定の単位を修得の上博士課程を退学した者(いわゆる「満期退学者」)のうち、任期付で採用されている者で、」(1)「大学や大学共同利用機関で研究業務に従事している者であって、教授・准教授・助教・助手等の学校教育法第92条に基づく教育・研究に従事する職にない者、又は、」(2)「研究開発法人等の公的研究機関(国立試験研究機関、公設試験研究機関を含む。)において研究業務に従事している者のうち、所属する研究グループのリーダー・主任研究員等の管理的な職にない者をいう。」

まとめると、博士の学位を持っているか満期退学していること、任期付きであること、大学では教授・准教授・助教・助手でないこと、研究開発法人では研究グループのリーダーなどの管理職でないこと、の4つです(当てはめ)。年齢の上限はありません。大学での呼び名は「特任研究員」「博士研究員」「研究員」などさまざまで、呼び名ではなく、この条件で数えています。博士号のない満期退学者も806人(5.9%)含まれています。

国の「ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドライン」(科学技術・学術審議会 人材委員会、令和2年)は、主な対象とするポスドクを「概ね40歳未満の者とすることが適当」としています。この記事の人数や年齢は、年齢の上限のないNISTEPの定義の数字です。

2-2. ポスドクと助教の違い

助教は学校教育法92条に定められた大学教員の職で、「助教は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」とされています。ポスドク等は、この職にない研究者です。任期の付いた「特任助教」も、職名が助教なので、NISTEPの定義ではポスドク等に入らないと読めます(当てはめ)。助教にも任期付きの人はいるので、任期の有無で分かれるわけではありません。

給与の目安として、賃金構造基本統計調査(令和7年)の職種「大学講師・助教(高専含む)」の年収の目安は712.2万円(平均41.6歳、月の給与×12+年間賞与、計算)です。ポスドクだけの区分はこの統計にありません。大学教員の職名と年齢は助教授と准教授の違いは?に、職名別の年収は准教授の年収はいくら?に書きました。

2-3. 雇われているポスドクと、フェローシップのポスドク

ポスドク等には、大学や研究開発法人に雇われて給与を受ける人と、受け入れ先と雇用関係がなく、研究奨励金などを受ける人(フェローシップ)がいます。任期の表で「雇用関係なし」は1,542人(11.3%)で、文部科学省の資料は、雇用関係なしのポスドク等の主な財源を「日本学術振興会特別研究員」「日本学術振興会外国人特別研究員」としています。

日本学術振興会の特別研究員PD(学振PD)は、令和9年度採用では受入研究機関によって2つに分かれます(募集要項)。受入研究機関が雇用制度(研究環境向上のための若手研究者雇用支援事業)を導入している機関なら「雇用PD」で、受入研究機関に雇用され、機関から給与を受けます。月ごとの基本給の設定額は研究奨励金の月額を下限とし、給与・諸手当・社会保険は雇用主の機関に確かめます。導入していない機関なら「フェローシップ型PD」で、学振から研究奨励金が直接支給されます。研究奨励金は税法上の給与所得として課税され、学振との雇用関係はないので、社会保険や年金は各自で対応します。

3. ポスドクの人数・年齢・分野

3-1. 人数:延べ13,657人

2021年度のポスドク等は延べ13,657人で、2018年度の15,590人から減りました。NISTEPは、新型コロナの影響で移動を伴う雇用が抑えられたことと、URAなどポスドク等以外の研究・開発職への道が増えたことを、減った理由として挙げています。

所属は大学が10,335人(75.7%)、研究開発法人が3,157人(23.1%)です(計算)。分野は理学5,085人(37.2%)、工学3,037人(22.2%)、保健2,209人(16.2%)、農学1,135人(8.3%)、人文970人(7.1%)、社会660人(4.8%)です。外国籍は4,525人(33.1%)でした。

博士課程を出てすぐにポスドク等になる人の数は、学校基本調査で別に分かります。令和7年3月に博士課程を出た16,278人(満期退学者を含む)のうち、ポストドクター等になった人は1,898人(11.7%、計算)でした。博士課程の進路の全体は博士課程は人生終了?にまとめています。

3-2. 年齢:平均38.0歳、40歳以上が29.9%

平均年齢は38.0歳(男性37.5歳、女性38.9歳)、中央値は35歳です。2018年度の平均37.5歳から上がりました。年齢の分布は次のとおりです。

年齢 人数 割合
29歳以下 1,810人 13.3%
30〜34歳 4,729人 34.6%
35〜39歳 2,909人 21.3%
40〜44歳 1,573人 11.5%
45〜49歳 933人 6.8%
50歳以上 1,583人 11.6%
年齢不明 120人 0.9%

40歳以上は4,089人(29.9%、計算)で、分野で差があります。40歳以上の割合は、保健40.6%・人文40.0%・その他36.1%・農学35.2%・社会32.4%・工学25.9%・理学23.6%です(計算)。博士課程を修了してからの年数では、5年以下が8,311人(60.9%)、21年以上が915人(6.7%)でした。

3-3. 分野別に並べると

分野 人数 40歳以上 任期1年 機関が社会保険料を負担 機関からの給与なし 月額15万円未満 翌年度もポスドク等
理学 5,085人 23.6% 38.9% 75.3% 14.6% 6.9% 70.7%
工学 3,037人 25.9% 56.4% 77.3% 8.4% 11.8% 64.6%
農学 1,135人 35.2% 44.6% 63.0% 15.9% 17.1% 67.4%
保健 2,209人 40.6% 55.8% 72.2% 10.7% 16.6% 69.9%
人文 970人 40.0% 36.1% 22.7% 48.1% 20.8% 66.7%
社会 660人 32.4% 36.1% 37.4% 40.5% 14.5% 62.4%
全分野の計 13,657人 29.9% 45.9% 67.4% 16.9% 12.2% 67.9%

割合はどれも、その分野のポスドク等の人数を分母にした計算です。人文・社会は「機関からの給与なし」と「機関が社会保険料を負担していない」人の割合が高くなっています。ただし、この2つと「雇用関係なし」「財源がフェローシップ」は別々の分類で、同じ人を数えたものとは限りません。人文・社会でフェローシップの人が多いとまでは、この表からは確定できません(推測にとどまります)。全分野の計には、その他424人と分野不明137人も入っています。

4. ポスドクの給料・年収

4-1. 月額給与の分布

NISTEPの調査は2021年度から月額給与を調べています。分母はフェローシップ等の人を含む13,657人です。

月額給与 人数 割合
15万円未満 1,669人 12.2%
15万円以上20万円未満 416人 3.0%
20万円以上25万円未満 821人 6.0%
25万円以上30万円未満 1,110人 8.1%
30万円以上35万円未満 2,241人 16.4%
35万円以上40万円未満 2,293人 16.8%
40万円以上45万円未満 1,197人 8.8%
45万円以上50万円未満 615人 4.5%
50万円以上60万円未満 551人 4.0%
60万円以上 285人 2.1%
機関からの給与なし 2,314人 16.9%
不明 145人 1.1%

50万円以上60万円未満と60万円以上は、表の細かい階級を足した値です(計算)。「機関からの給与なし」2,314人は、機関から給与が出ていない人の数で、収入が0円という意味ではありません。フェローシップなど、機関以外からの収入がありうる人です(当てはめ)。機関から給与が出ている11,198人だけで見ると、35万円以上40万円未満は20.5%、20万円未満は18.6%です(計算)。NISTEPのレポート(STI Horizon、2024年)は、機関からの給与のない人を除いて、男女ともに1割を超える研究者が月額15万円以下の職に就いている点に「留意が必要である」と書いています。

調査は月額だけで、年収・賞与は調べていません。月額に手当や賞与の月割りを含むかの定義も、公表資料では確かめられませんでした。月額×12は年収の目安にはなりますが、賞与がある職ではその分が足りません。

4-2. 学振PDと公募の例

職・制度 給与の書き方(原文の要点) 月額×12(計算)
日本学術振興会 特別研究員PD(令和9年度採用)フェローシップ型PD:受入研究機関が雇用制度を導入していない場合 学振から研究奨励金を直接支給。「令和9(2027)年度の研究奨励金支給予定額は月額 362,000 円です。」(予定額で、変わることがある)。税法上は給与所得として課税。学振との雇用関係はなく、社会保険・年金は各自で対応 4,344,000円
日本学術振興会 特別研究員PD(令和9年度採用)雇用PD:受入研究機関が雇用制度を導入している場合 受入研究機関に雇用され、機関から給与。「月ごとの基本給の設定額は、研究奨励金の月額を下限とすることとしています。」給与・諸手当・社会保険は雇用主の機関に確かめる 4,344,000円以上(基本給の下限から計算)
理化学研究所 基礎科学特別研究員(2027年度) 「年俸制で550,000円/月(社会保険料、税込み)」。契約期間3年 6,600,000円
東京大学 理学系研究科物理学専攻 特任研究員(2026年10月の公募) 「業績・成果手当を含め月額360,000円程度(学歴、職歴等を考慮し決定)」 約4,320,000円
東京大学 工学系研究科 特任研究員(2026年の公募) 「月額40万円以上で、資格、能力、経験等に応じて決定」「退職手当、賞与は無し。」 4,800,000円以上
京都大学 特定研究員(就業規則) 「俸給月額は、25万円から120万円までの範囲で1万円単位の額とする。」経験と能力に応じて決める 3,000,000〜14,400,000円

どれも1つの例で、ポスドク全体の平均ではありません。決め方は、一律の額(学振PDのフェローシップ型・理研)、「月額○円程度・以上」を学歴や能力で決める(東京大学)、規程で範囲だけ決める(京都大学)、と分かれます(当てはめ)。学振PDの研究費(特別研究員奨励費)は、3年でA区分300万円以下などです。令和8年度の採用率は22.9%(申請1,544人・採用354人、計算)です。学振の研究奨励金と大学院生の支援は大学院の学費はいくら?に書きました。

4-3. 同じ年齢の大学院卒と比べる

賃金構造基本統計調査(令和7年)の所定内給与額(月額、男女計)は、大学院卒の30〜34歳で406,100円、35〜39歳で466,600円です。所定内給与は残業代などの時間外手当と賞与を除いた額で、「大学院」は修士と博士を合わせた区分です。職種も業界も混ざっているので、ポスドクの給与がいくらであるべきかを示す数字ではありません。8章の計算機の2で出す差額も、給与の定義も集団も違う参考比較で、同じ条件の賃金差ではありません。研究職全体の年収の比べ方は研究職の年収はなぜ低い?にまとめています。

5. 任期と無期転換

5-1. 任期は「1年」が45.9%

任期の長さは、1年未満1,992人(14.6%)、1年6,270人(45.9%)、1年以上3年未満2,260人(16.5%)、3年以上5年未満1,194人(8.7%)、5年以上374人(2.7%)、雇用関係なし1,542人(11.3%)、不明25人でした(区分の合計は計算)。任期3年未満の計は10,522人で、雇用関係なしの人を含む全13,657人に占める割合は77.0%、雇用関係なし1,542人と不明25人を除いた12,090人に占める割合は87.0%です(計算)。2018年度の公表値は67.6%ですが、区分の比較可能性は確かめられていません(未確認)。

一方、更新を含めて契約できる最長期間は「10年以上」が2,828人(20.7%)で最も多く、「5年以上6年未満」が1,664人(12.2%)でした。1年ごとの契約でも、更新して長く在籍できる職があります。国のガイドラインは「各ポストについては3年から5年程度の任期の確保が望まれる」としています。

主な雇用財源は、運営費交付金などの基盤的経費等が4,452人(32.6%)、競争的研究費が3,688人(27.0%)、それ以外の外部資金が2,559人(18.7%)、フェローシップが1,583人(11.6%)です。機関が社会保険料を負担しているのは9,205人(67.4%)でした。

5-2. 無期転換:大学・研究開発法人の研究者は10年

労働契約法18条は、同じ雇用主との有期労働契約の通算が5年を超えた人が申し込むと、期間の定めのない契約(無期契約)に転換すると定めています。大学・研究開発法人と有期契約を結んだ研究者等は、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2で、この5年が「十年」に読み替えられます。大学の教員等の任期に関する法律7条にも、任期を定めた教員等についての同じ読み替えがあります。研究者等には、研究開発の補助をする人も含まれます。フェローシップ型の学振PDのように雇用関係がない場合は、労働契約法の無期転換の対象にならないと読めます。雇用PDとして受入研究機関に雇用されている場合は、その雇用契約で考えます(当てはめ)。契約と契約の間に6か月以上(直前の契約が1年未満のときは、その長さに応じた短い期間以上)の空白があると、それより前の期間は通算しません(18条2項)。

10年の特例に当たるかは、「大学・研究開発法人の研究職」かどうかだけで機械的に決まるものではなく、職種・契約・業務(共同研究開発への従事など)で決まります。厚生労働省の「研究者等に対する無期転換ルールについて」で確かめてください。申し込める権利が生じる時期は、契約期間と更新日で決まり、通算が10年(原則は5年)を超えることになる契約を結んだり更新したりするときが基準です。

文部科学省の「研究者・教員等の雇用状況に関する調査」(令和7年度、令和7年5月1日現在)は、大学・研究開発法人で、令和6年4月1日時点で有期契約だった10年特例の対象者のうち、令和7年4月1日までの更新で通算10年を超えることになった研究者・教員等6,903人の状況を調べています。無期労働契約を結んだ人が598人(8.7%)、無期転換を申し込める権利が生じて有期のまま続けた人が5,355人(77.6%。そのうち実際に申し込んだ人は472人)で、この2つを合わせると5,953人(86.2%、計算)です。労働契約を終了した人は950人(13.8%)で、全員が雇止めというわけではなく、うち定年退職以外が710人です。ポスドクだけの数ではありません。京都大学の特定研究員の就業規則は、契約期間を「通算10年の期間を限度として、更新することができる」と定めています。

6. ポスドクの末路:翌年度の行き先

6-1. 翌年度(2022年4月1日)の状況

2021年度のポスドク等13,657人が、2022年4月1日にどうしていたかです。

状況 人数 割合
変更なし(同じ機関で同じポスドク等の職) 7,513人 55.0%
同じ機関内で、ポスドク等のまま雇用財源・研究室を変更 1,112人 8.1%
同じ機関内で、ポスドク等以外の職に変更 1,056人 7.7%
その機関から転出 3,810人 27.9%
不詳・死亡 166人 1.2%

職種を変えた人と転出した人の計4,866人の行き先は、研究・開発職3,007人(うち別の機関でのポスドク等653人、大学教員1,350人、大学教員以外の研究・開発職506人、研究補助者・技能者など323人、その他の研究・開発職168人、派遣型7人)、研究・開発職以外202人、その他170人、不明1,487人でした。

並べ直すと、ポスドク等を続けた人は9,278人(67.9%)、大学教員やその他の研究・開発職に移った人は2,354人(17.2%)、研究・開発職以外に移った人は202人(1.5%)、移った先が不明の人は1,487人(10.9%)です(計算。NISTEPの公表値67.9%・17.2%と一致)。2018年度は、続けた人71.2%、研究・開発職に移った人13.0%でした。

移った先の任期は、テニュアトラック97人、任期あり997人、任期なし685人、不明2,947人です。不明が多いので、移った人のうち任期なしの職に就いた割合は、この表からは確定できません。年齢別の行き先も公表された表にありません。分野別の値は8章の計算機の3で出せます。

6-2. 学振PDの就職状況(選抜を通った人)

日本学術振興会の特別研究員PDは、「常勤の研究職」(民間企業の研究職を含む)に就いている割合が、採用終了直後69.4%、1年後76.5%、5年後78.7%、10年後91.1%です(令和5年4月1日現在、不明者等を除いて計算した値)。採用率が2割余りの選抜を通った人の数字で、ポスドク全体の進路ではありません。また、経過年ごとに別の年度の終了者(直後は令和4年度、1年後は令和3年度、5年後は平成29年度、10年後は平成24年度の終了者)を集計した割合で、同じ人の就職率が上がっていく推移とは限りません。

6-3. ポスドクの前の職

2021年度のポスドク等の採用前の職業は、博士課程の学生4,030人(29.5%。自分の機関の博士課程2,215人、他の機関1,815人)、ポスドク等3,482人(25.5%)、大学教員1,389人(10.2%)などでした。採用前の職業がポスドク等だった人は3,482人(25.5%)で、何回目のポスドク等かは、この表からは分かりません。別の統計では、令和6年度に大学教員に採用された12,041人のうち、採用前が「研究所等のポストドクター」だった人は647人(5.4%、計算)です(学校教員統計調査 令和7年度 中間報告)。研究職を続けるかどうかの判断材料は研究職はやめとけ?に書きました。

7. 「ポスドク問題」「ポスドクはやばい」と言われる理由を、数字で分ける

「ポスドク問題」という言葉の決まった定義は公的資料にありません。文部科学省の第7期科学技術・イノベーション基本計画の説明資料は、第1期の施策として「ポスドク1万人計画」を挙げています。いま確かめられる数字で、よく言われることを分けます。

  • 年齢が上がっている:平均年齢は2018年度37.5歳から2021年度38.0歳に上がり、40歳以上が29.9%です。国のガイドラインは、主な対象とするポスドクを「概ね40歳未満」とし、「1、2か所程度でポストドクターを経験した後、30代半ばまでの3年から7年程度で次のステップへと進んでいくことが望ましい」としています。3年から7年程度は、ポスドクとして経験する期間の目安です
  • 任期が短い:任期1年が45.9%、3年未満が77.0%です(雇用関係なしを含む全体に占める割合。雇用関係なしと不明を除くと、3年未満は87.0%、計算)。ただし最長で10年以上契約できる人も20.7%います
  • 給料が低い:月額15万円未満が12.2%いる一方、最多は35万円以上40万円未満(16.8%)です。分野で差が大きく、人文では15万円未満が20.8%です
  • 次のポストがない:翌年度に大学教員やその他の研究・開発職に移った人は17.2%で、67.9%はポスドク等を続けています。大学の本務教員に占める40歳未満の割合は21.8%(令和7年度、学校教員統計調査)で、第6期基本計画が将来の目標とした「3割以上」に届いていません
  • 行き先が分からない:移った先が不明の人が1,487人(10.9%)います。数年後の行き先を追った公的な統計は、この調査にはありません

海外でポスドクをする道として、日本学術振興会の海外特別研究員は、滞在費・研究活動費が「年額約520万円~800万円」(派遣先で違う)、期間が2年です。2022年4月1日に海外に移っていた人は626人でした。ポスドクの結婚・家族についての公的な統計は見つからなかったので、この記事では扱いません。

修士・博士の学生で、研究を続けるかどうかに迷っている段階なら研究に向いてない?も参考になります。

8. 計算機:ポスドクの人数・年齢・任期の統計/給料・年収の試算/次の職に移る割合/続けた場合の年齢と無期転換

4つは別々に使えます。

  • 1. ポスドクの人数・年齢・任期の統計:分野と年齢を選ぶと、その分野・年齢の人数と割合、年齢の分布、任期の長さ、機関が社会保険料を負担している割合、満期退学の人数を出します。年齢と任期を掛け合わせた表は公表されていません
  • 2. 給料・年収の試算:月額と賞与の有無を入れると、額面の年収(税・社会保険料を引く前。賞与が分からないときは月額×12の参考額)、ポスドク調査で入れた月額が入る階級と、その階級より下の階級の人数、同じ年齢の大学院卒の所定内給与との差(参考比較)を出します。同じ階級の中の順位は分かりません。手取りは出しません
  • 3. 次の職に移る割合:分野を選ぶと、翌年度の状況と、移った人の職業・任期を出します。年齢別の内訳は公表されていません
  • 4. 続けた場合の年齢と無期転換:年齢・学位からの年数・ポスドク等をした年数・雇われ方・同じ雇用主での通算の契約年数を入れると、続けた場合の年齢、ガイドラインの「3年から7年程度」との比較、無期転換の5年・10年の当てはめ(概算)を出します。当てはまるかは雇用主と契約書で確かめてください

ポスドクの人数・年齢・任期の統計/給料・年収の試算/次の職に移る割合/続けた場合の年齢と無期転換

入れた数字は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている値は入力の例です。4つは別々に使えます。

1. ポスドクの人数・年齢・任期の統計

2. 給料・年収の試算

3. 次の職に移る割合

4. 続けた場合の年齢と無期転換

初めから入っている例では、1は全分野の30〜34歳で4,729人(34.6%)です。2は学振PD(フェローシップ型)の研究奨励金の月額362,000円で、額面の年収は4,344,000円、月額給与の階級は「35万円以上40万円未満」(この階級より下の階級の人は6,257人)です。3は全分野の計で、ポスドク等を続けた人67.9%です。4は35歳・学位から5年・ポスドク等をした年数3年・大学の有期契約で通算3年の場合で、3年続けると38歳、ポスドク等をした年数は6年でガイドラインの「3年から7年程度」の範囲です。10年特例に当たれば通算10年まであと7年(42歳ごろ)、当たらなければ5年まであと2年(37歳ごろ)です(いずれも計算・概算)。

9. よくある質問

ポスドクとは何ですか?意味を教えてください。

博士の学位を取った人や満期退学した人のうち、任期付きで大学や研究開発法人に採用されて研究をしている人で、教授・准教授・助教・助手や研究グループのリーダーなどの職にない人です(NISTEPの調査の定義)。年齢の上限はなく、2021年度は延べ13,657人でした(2章・3章)。

ポスドクと助教の違いは?

助教は学校教育法92条に定められた大学教員の職で、ポスドク等はその職にない研究者です。特任助教は職名が助教なので、NISTEPの調査のポスドク等には入らないと読めます(当てはめ)。助教にも任期付きの人がいるので、任期の有無の違いではありません(2-2)。

ポスドクの給料・年収はいくらですか?

2021年度の月額給与は「35万円以上40万円未満」が16.8%で最も多く、「30万円以上35万円未満」が16.4%です。「15万円未満」も12.2%いて、「機関からの給与なし」が16.9%です(収入0円という意味ではありません)。調査は月額だけで年収は調べていません。月額×12で見ると、35万円なら420万円、40万円なら480万円です(計算。賞与は含みません)。学振PDは、フェローシップ型なら研究奨励金が月額362,000円(令和9年度の支給予定額)、雇用PDなら受入研究機関から給与が出て、基本給の月額は研究奨励金の月額が下限です(4章)。

ポスドクの末路はどうなりますか?

1年後の内訳なら分かります。2021年度のポスドク等のうち、翌年度もポスドク等を続けた人が67.9%、大学教員やその他の研究・開発職に移った人が17.2%、研究・開発職以外に移った人が1.5%、移った先が不明の人が10.9%です。数年後・10年後の行き先を追った公的な統計はこの調査にはありません(6章)。

ポスドクは何歳までできますか?

法律の年齢の上限はありません。2021年度のポスドク等の40歳以上は29.9%で、50歳以上も1,583人います。国のガイドラインは主な対象とするポスドクを「概ね40歳未満」とし、ポスドクとして経験する期間は「3年から7年程度」を目安にしていますが、決まりではありません。実際に何年続けられるかは、任期と、更新を含めた契約の最長期間で決まります(3章・5章)。

ポスドクは無期雇用になれますか?

原則は、同じ雇用主での有期契約の通算が5年を超えると無期転換を申し込めます。大学・研究開発法人の研究者等には10年の特例がありますが、当たるかは職種・契約・業務で決まります。申込権が生じる時期は、契約期間と更新日で決まります。令和7年度の文部科学省の調査では、令和7年4月1日までの更新で通算10年を超えることになった研究者・教員等6,903人のうち、無期契約を結んだ人と、申込権が生じて有期のまま続けた人が計5,953人(86.2%、計算)、労働契約を終了した人が950人(うち定年退職以外710人)でした。フェローシップ型の学振PDのように雇用関係がない場合は対象にならないと読めます(5-2)。

ポスドクはやばいと言われるのはなぜですか?

数字で確かめられるのは、40歳以上が29.9%で平均年齢が上がっていること、任期1年が45.9%であること、月額15万円未満が12.2%いること、翌年度に大学教員などに移る人が17.2%であることです。一方、月額35万円以上が4,941人(36.2%。機関から給与が出ている人の中では44.1%、計算)いて、最長10年以上契約できる人も20.7%います。分野によって大きく違うので、自分の分野の数字で見てください(7章)。

10. まとめ

  • ポスドク(ポストドクター等)は、博士の学位を取った人・満期退学した人のうち、任期付きで大学・研究開発法人に採用されて研究をしている、教授・准教授・助教・助手などでない人。2021年度は延べ13,657人
  • 平均38.0歳、40歳以上29.9%。保健・人文では4割
  • 月額給与は35万円以上40万円未満が16.8%で最多。15万円未満12.2%、機関からの給与なし16.9%(収入0円という意味ではなく、フェローシップなど機関以外からの収入がありうる)。年収は調べていない
  • 任期1年が45.9%、3年未満77.0%(雇用関係なしを含む全体に占める割合。除くと3年未満87.0%)。最長で10年以上契約できる人が20.7%
  • 翌年度もポスドク等67.9%、大学教員やその他の研究・開発職へ17.2%、行き先不明10.9%。それより先は分からない
  • 無期転換は原則5年、大学・研究開発法人の研究者等は10年の特例(当たるかは職種・契約・業務で決まる)。通算10年を超えることになった6,903人のうち、無期契約か申込権が生じた人は5,953人(86.2%)
  • 助教は学校教育法92条の大学教員の職で、ポスドク等はその職にない研究者

11. 出典

12. あわせて読む

 

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