「通勤時間の平均」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
通勤時間の平均は、どの統計を見るか(片道か往復か、平均か中央値か、誰を数えたか)で大きく変わります。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では、家計を主に支える人が雇われて働いている世帯の、その人の片道の通勤時間の中央値(真ん中の人の時間)は全国で28.1分、東京都で43.7分、最も長い神奈川県で47.8分、最も短い鳥取県で18.5分でした。よく見かける「片道約40分(往復約1時間20分)」は、総務省の社会生活基本調査(2021年)で、平日に通勤・通学をした10歳以上の人の行き帰りの合計79分を2で割った数字で、学生の通学も含みます。働いている人だけだと往復81分です。同じ統計で、片道1時間以上かかる人は全国で15.2%、東京都で23.3%、神奈川県・埼玉県・千葉県では3割を超えます。片道1時間半以上は全国で3.6%です。満員電車の目安になる東京圏の平均混雑率は、2025年度で143%でした。片道28.1分の通勤を年240日続けると、1年で約225時間、40年で約9,000時間(約375日)になります。通勤時間と幸福度の関係を直接示した日本の公的統計は見つかりませんでしたが、ニッセイ基礎研究所の調査(2020年)では、片道10分以内の人と比べて、30分までの人とは差が見えず、30〜60分の区分から幸福度が低く出て、長いほど低くなっていました。私は20年近く通勤のない働き方をしてきて、通勤の代わりに間取りを置いています。通勤するなら、片道30分のラインは家賃補助などあらゆる手段を使って守るべきだと考えています。住んでいる地域の中であなたの通勤が長い方から何%か、30分のラインをどれだけ超えているか、年間・一生の時間と時給に直した額を出す計算機を12章に置きました。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 通勤時間の平均は何分か | 片道の中央値は全国28.1分。通勤した日の往復の平均は、働いている人で81分 | 2章 |
| 都道府県で長いのは | 神奈川47.8分、千葉45.2分、埼玉44.0分、東京43.7分(片道の中央値)。最短は鳥取18.5分 | 3章 |
| 東京23区・大阪市・名古屋市・福岡市は | 東京23区41.9分、大阪市32.4分、名古屋市31.9分、福岡市28.6分。最長はさいたま市52.3分 | 4章 |
| 片道1時間・1時間半・2時間は長いか | 1時間以上は全国15.2%、首都圏の3県は3割超。1時間半以上は全国3.6%、2時間以上は0.8% | 5章 |
| 年齢・男女・働き方で違うか | 通勤した日の往復は男性88分、女性72分。平日に仕事をした人のうちテレワークをした人の通勤・通学は平均4分 | 6章 |
| 増えているか | 通勤した人の時間は2016年と2021年で同じ79分。通勤する人の割合は下がった | 7章 |
| 満員電車はどれくらいか | 東京圏の平均混雑率143%(2025年度)。コロナ前の163%より低いが、2020年度の107%から上がり続けている | 8章 |
| 片道30分を超えると幸福度は下がるか | 日本の調査では、片道10分以内と比べて30分までは差が見えず、30〜60分から低く、長いほど低い。長い通勤ほど欠勤が多いという海外の研究もある | 9章 |
| 一生でどれくらいか | 片道28.1分を年240日・40年で約9,000時間(約375日) | 10章 |
1. 先に、立場を書きます
私は会社員として通勤したことがありません。20年近く、自宅で働いてきました。通勤の代わりに間取りを置いていて、一人暮らしでも2LDK以上に住み、仕事の部屋と寝室を分けることで、家の中でも仕事と休みを切り替えています。通勤に近い経験は、古本の拠点を長野県佐久市に置いていたころに、東京の月島から車で週に1回往復していたことくらいです。
なので、この記事の数字は、総務省・国土交通省・内閣府・厚生労働省の公的な統計から取っています。通勤と幸福度・生産性の関係(9章)だけは、日本の公的な統計で直接示したものが見つからなかったので、研究所の調査と論文の数字を使い、そのことが分かるように書いています。
2. 通勤時間の平均は何分か:統計ごとに違う理由
「通勤時間の平均」は、調べ方が違う統計がいくつもあり、片道か往復か、誰を数えたかで数字が大きく変わります。
| 統計 | 何の時間か | 全国(首都圏)の数字 |
|---|---|---|
| 住宅・土地統計調査(総務省、2023年) | 家計を主に支える人が雇われて働いている世帯の、ふだんの片道の通勤時間の中央値 | 片道28.1分 |
| 社会生活基本調査(総務省、2021年) | 平日に通勤・通学をした人の、その日の行き帰りの合計の平均 | 往復79分(10歳以上、通学を含む)/往復81分(働いている人) |
| 大都市交通センサス 第13回(国土交通省、2021年度) | 鉄道の定期券で通勤する人の、乗る駅から降りる駅までの片道の時間 | 首都圏32分、中京圏26分、近畿圏24分 |
| 大都市交通センサス 第12回(国土交通省、2015年) | 鉄道の定期券で通勤する人の、家を出てから勤め先に着くまでの片道の時間 | 首都圏67.7分、中京圏61.1分、近畿圏62.2分 |
ネットでよく見る「片道約40分」は、社会生活基本調査の往復79分を2で割った数字です。これは10歳以上で、学生の通学も含み、その日に通勤・通学した人だけの平均です。住宅・土地統計調査の28.1分は、家計を主に支える人のふだんの片道の時間の中央値で、「自宅・住み込み」(全国で2.3%)も含む区分から出した値です。片道か往復か、平均か中央値か、誰を数えたかが違うので、社会生活基本調査の数字とは直接比べられません。大都市交通センサスの第13回は、新型コロナの影響で駅でのアンケートをやめ、乗る駅から降りる駅までの時間だけを出しているので、家から駅までの時間が入っていません。第12回の67.7分と第13回の32分は測り方が違うので、通勤が短くなったという意味ではありません。
この記事では、自分の片道の通勤時間と比べやすい住宅・土地統計調査の片道の中央値を中心に使い、働いている人の往復は社会生活基本調査で補います。
3. 都道府県別の通勤時間
住宅・土地統計調査(2023年)の片道の中央値が長い順です。右端は、社会生活基本調査(2021年)で、平日に通勤した働いている人(15歳以上)の行き帰りの合計の平均です。
| 都道府県 | 片道の中央値 | 片道1時間以上 | 片道1時間半以上 | 通勤した日の往復の平均(有業者) |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 28.1分 | 15.2% | 3.6% | 81分 |
| 神奈川県 | 47.8分 | 32.9% | 8.1% | 106分 |
| 千葉県 | 45.2分 | 32.1% | 8.2% | 99分 |
| 埼玉県 | 44.0分 | 32.5% | 8.6% | 100分 |
| 東京都 | 43.7分 | 23.3% | 4.5% | 99分 |
| 奈良県 | 38.8分 | 27.3% | 5.5% | 89分 |
| 大阪府 | 36.2分 | 18.2% | 3.4% | 91分 |
| 兵庫県 | 34.3分 | 18.9% | 4.5% | 87分 |
| 京都府 | 29.1分 | 16.6% | 3.9% | 85分 |
| 愛知県 | 29.0分 | 12.3% | 2.2% | 80分 |
| 滋賀県 | 26.8分 | 14.8% | 4.0% | 75分 |
| 福岡県 | 26.8分 | 9.8% | 2.0% | 70分 |
| 宮城県 | 26.4分 | 8.3% | 1.8% | 75分 |
| 茨城県 | 25.9分 | 13.5% | 5.1% | 80分 |
| 広島県 | 25.5分 | 7.8% | 1.4% | 77分 |
| 栃木県 | 24.4分 | 8.2% | 3.1% | 70分 |
| 岡山県 | 24.4分 | 6.7% | 1.4% | 71分 |
| 三重県 | 24.2分 | 10.1% | 2.8% | 75分 |
| 岐阜県 | 23.9分 | 11.3% | 2.8% | 70分 |
| 群馬県 | 23.5分 | 7.3% | 2.6% | 68分 |
| 静岡県 | 23.1分 | 6.7% | 2.0% | 68分 |
| 沖縄県 | 22.9分 | 4.8% | 0.8% | 68分 |
| 香川県 | 22.4分 | 4.8% | 0.9% | 65分 |
| 長崎県 | 22.3分 | 5.8% | 1.3% | 70分 |
| 佐賀県 | 22.0分 | 7.2% | 1.8% | 65分 |
| 山梨県 | 21.9分 | 6.3% | 2.2% | 65分 |
| 熊本県 | 21.9分 | 5.4% | 1.2% | 68分 |
| 富山県 | 21.8分 | 3.5% | 0.8% | 63分 |
| 徳島県 | 21.7分 | 4.7% | 0.8% | 63分 |
| 和歌山県 | 21.6分 | 7.9% | 3.1% | 66分 |
| 福島県 | 21.4分 | 5.1% | 1.4% | 67分 |
| 長野県 | 21.4分 | 5.1% | 1.3% | 68分 |
| 石川県 | 21.2分 | 3.6% | 0.9% | 62分 |
| 山口県 | 20.9分 | 4.8% | 1.3% | 66分 |
| 高知県 | 20.9分 | 3.6% | 0.9% | 64分 |
| 大分県 | 20.9分 | 4.8% | 1.2% | 65分 |
| 新潟県 | 20.8分 | 3.8% | 0.9% | 61分 |
| 岩手県 | 20.4分 | 5.0% | 1.7% | 65分 |
| 北海道 | 20.2分 | 4.2% | 0.8% | 64分 |
| 青森県 | 20.1分 | 5.3% | 1.5% | 63分 |
| 福井県 | 20.0分 | 3.7% | 1.0% | 62分 |
| 秋田県 | 19.7分 | 4.1% | 1.0% | 62分 |
| 鹿児島県 | 19.3分 | 4.7% | 1.1% | 61分 |
| 愛媛県 | 19.1分 | 3.5% | 1.0% | 58分 |
| 山形県 | 18.9分 | 3.6% | 1.0% | 55分 |
| 島根県 | 18.8分 | 3.6% | 0.8% | 63分 |
| 宮崎県 | 18.7分 | 3.9% | 1.2% | 57分 |
| 鳥取県 | 18.5分 | 3.1% | 1.0% | 59分 |
(片道1時間以上・1時間半以上の割合は、時間が分からない世帯を除いて計算)
上位は神奈川県・千葉県・埼玉県・東京都の首都圏で、次が奈良県・大阪府・兵庫県の近畿です。東京都より、隣の3県のほうが長くなっています(どこへ通っているかは、この統計では分かりません)。片道の中央値が20分前後の県が多く、首都圏の半分以下です。
4. 東京23区・大阪・名古屋・福岡など大都市の通勤時間
同じ住宅・土地統計調査で、東京23区と政令指定都市です。
| 市・区部 | 片道の中央値 | 片道1時間以上 | 片道30分未満(自宅・住み込みを含む) |
|---|---|---|---|
| さいたま市 | 52.3分 | 39.8% | 28.1% |
| 横浜市 | 50.9分 | 35.8% | 24.8% |
| 川崎市 | 49.2分 | 28.9% | 25.0% |
| 千葉市 | 47.0分 | 36.0% | 32.8% |
| 相模原市 | 45.2分 | 35.1% | 36.7% |
| 東京23区 | 41.9分 | 17.0% | 31.3% |
| 神戸市 | 41.2分 | 23.5% | 35.6% |
| 堺市 | 40.0分 | 22.3% | 38.7% |
| 大阪市 | 32.4分 | 10.9% | 46.1% |
| 名古屋市 | 31.9分 | 12.4% | 47.1% |
| 京都市 | 30.0分 | 16.2% | 50.0% |
| 仙台市 | 28.8分 | 7.7% | 52.9% |
| 福岡市 | 28.6分 | 8.4% | 53.3% |
| 札幌市 | 28.0分 | 6.0% | 54.9% |
| 広島市 | 28.0分 | 8.7% | 54.5% |
| 北九州市 | 26.4分 | 7.9% | 58.7% |
| 岡山市 | 25.2分 | 6.9% | 62.0% |
| 浜松市 | 24.5分 | 5.7% | 64.0% |
| 熊本市 | 24.5分 | 5.7% | 63.8% |
| 新潟市 | 23.9分 | 4.2% | 66.8% |
| 静岡市 | 23.0分 | 7.0% | 69.2% |
最も長いのは、さいたま市の52.3分、横浜市50.9分、川崎市49.2分で、首都圏の市が並びます。東京23区は41.9分で、周りのさいたま市・横浜市・川崎市・千葉市より短くなっています。大阪市32.4分、名古屋市31.9分、福岡市28.6分と、ほかの大都市は東京23区より10分以上短い数字です。
5. 片道1時間・1時間半・2時間は長いか
片道の通勤時間が、どのくらいの人の割合になるかです(住宅・土地統計調査、2023年)。
| 地域 | 30分未満(自宅・住み込みを含む) | 30分〜1時間 | 1時間〜1時間半 | 1時間半〜2時間 | 2時間以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全国 | 53.8% | 30.9% | 11.6% | 2.8% | 0.8% |
| 東京都 | 31.5% | 45.2% | 18.8% | 3.8% | 0.7% |
| 東京23区 | 31.3% | 51.7% | 14.6% | 2.0% | 0.5% |
| 神奈川県 | 30.7% | 36.4% | 24.7% | 6.8% | 1.3% |
| 埼玉県 | 37.8% | 29.7% | 23.9% | 7.1% | 1.5% |
| 千葉県 | 35.5% | 32.3% | 23.9% | 6.7% | 1.6% |
| 大阪府 | 42.2% | 39.6% | 14.9% | 2.7% | 0.7% |
| 愛知県 | 52.1% | 35.6% | 10.1% | 1.7% | 0.5% |
| 福岡県 | 57.2% | 33.0% | 7.8% | 1.4% | 0.5% |
| 北海道 | 72.8% | 23.0% | 3.3% | 0.5% | 0.4% |
ここでの割合は、家計を主に支える人が雇われて働いている世帯の、その人の通勤時間で、家族のほかの人は入っていません。全国では、片道30分未満の人が半分を超え、片道1時間以上は15.2%です。片道1時間半以上は3.6%、2時間以上は0.8%しかいません。片道1時間は全国では長い方の15%に入りますが、神奈川県・埼玉県・千葉県では3人に1人が1時間以上で、珍しくはありません。片道1時間半以上は、首都圏の3県でも8%前後です。
「通勤時間は何分までが許容範囲か」「理想は何分か」を決めた公的な基準はありません。自分の時間が住んでいる地域の中で長い方から何%に当たるかは、12章の計算機で確かめられます。幸福度との関係では、日本の調査で片道30分を超えた区分から幸福度が低く出ていて、9章にまとめました。
6. 年齢・男女・働き方で違うか
社会生活基本調査(2021年)で、平日に通勤した働いている人の行き帰りの合計の平均です。
| 年齢 | 男女計 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 15〜24歳 | 87分 | 86分 | 88分 |
| 25〜34歳 | 84分 | 87分 | 81分 |
| 35〜44歳 | 79分 | 86分 | 70分 |
| 45〜54歳 | 79分 | 88分 | 68分 |
| 55〜64歳 | 81分 | 92分 | 65分 |
| 全体 | 81分 | 88分 | 72分 |
男性は年齢が上がっても往復90分前後で、女性は35歳以降に短くなります。働き方では、平日に仕事をした人のうち、テレワーク(在宅勤務)をした人の通勤・通学の時間は平均4分で、しなかった人の1時間7分より約1時間短くなっていました(どちらも通勤しなかった人を含む平均。テレワークをした人は6.7%)。
7. 通勤時間は増えているか
社会生活基本調査で、平日に通勤・通学をした10歳以上の人の行き帰りの合計の平均は、2011年74分、2016年79分、2021年79分でした。通勤した人の時間は2016年と変わっていません。一方で、平日に通勤・通学をした人の割合は、2011年51.6%、2016年52.5%、2021年48.7%と下がっています。この数字は学生の通学も含みます。働いている人(有業者)だけで見ると、平日に通勤した人の往復の平均は2011年75分、2021年81分で、平日に通勤した人の割合は71.7%から65.4%に下がりました。2021年10月の調査はコロナの時期に当たり、その影響も考えられますが、この統計だけでは理由は分かりません。
都道府県では、平日に通勤・通学をした人の往復の平均が、神奈川県 2011年100分→2016年105分→2021年100分、東京都 90分→94分→95分、大阪府 78分→85分→87分でした。
8. 満員電車:混雑率はどれくらいか
国土交通省は、三大都市圏の主な区間で、最も混む1時間の平均混雑率を毎年出しています。2025年度は東京圏143%、大阪圏117%、名古屋圏126%でした。
| 年度 | 東京圏 | 大阪圏 | 名古屋圏 |
|---|---|---|---|
| 1975年度 | 221% | 199% | 205% |
| 2008年度 | 171% | 130% | 139% |
| 2019年度 | 163% | 126% | 132% |
| 2020年度 | 107% | 103% | 104% |
| 2023年度 | 136% | 115% | 123% |
| 2025年度 | 143% | 117% | 126% |
混雑率の目安は、100%で座席につくか吊革やドア付近の柱につかまれる、150%で肩が触れ合わない程度、180%で肩が触れ合いやや圧迫感がある、200%で体が触れ合い相当圧迫感がある、とされています。2025年度に混雑率が高かった区間は、東京圏の主な区間で日比谷線(三ノ輪→入谷)163%、東西線(木場→門前仲町)160%、総武線快速(新小岩→錦糸町)160%、東海道線(川崎→品川)159%でした。東京圏の混雑率はコロナ前の163%より低いものの、2020年度の107%から毎年上がっています。
9. 片道30分を超えると幸福度・生産性は下がるか
通勤時間の長さと幸福度の関係を直接示した日本の公的な統計は見つかりませんでした。公的な統計で近いものは、次の2つです。
- 内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」では、東京圏に住み、2019年から通勤時間が減った人(115人)で、健康状態の満足度が0.26ポイント上がっていました。生活全体の満足度は、通勤時間が増えた人と減った人で差が見られませんでした。人数の少ない調査で、通勤時間が減ったことが健康の満足度を上げたという因果関係までは示していません
- 厚生労働省の「過労死等防止対策白書」(2016年版)の調査では、睡眠が足りていない人が理由に「通勤時間が長いため」を挙げた割合が18.7%でした
そこで、この章だけは研究所の調査と論文の数字を使います。日本では、ニッセイ基礎研究所が2020年2〜3月に、全国の18〜64歳の雇われて働いている人5,594人にインターネットで聞いた調査があります。幸福度を0〜10点で答えてもらい(平均5.9点)、健康状態・通勤手段・年収・性別・年齢・結婚しているかをそろえたうえで、片道の通勤時間の区分ごとに、片道10分以内の人と比べた差を出しています。
| 片道の通勤時間 | 10分以内の人と比べた幸福度の差(0〜10点) | 統計的な確かさ |
|---|---|---|
| 在宅勤務 | 0.00点 | 差があるとは言えない |
| 10〜30分 | マイナス0.08点 | 差があるとは言えない |
| 30〜60分 | マイナス0.19点 | 10%水準(弱い) |
| 60〜90分 | マイナス0.25点 | 5%水準 |
| 90分以上 | マイナス0.45点 | 1%水準 |
(ニッセイ基礎研究所「通勤時間と幸福度の関係」2020年の付録表から。調査は緊急事態宣言の前で、在宅勤務の人は約1%です)
片道30分までの人は10分以内の人と差が見えず、30分を超えた区分から幸福度が低く出て、60分、90分と長くなるほど差が大きくなっています。ただし、30分を超えたところで急に下がるという形ではありません。区分は30分ごとで、30〜60分の差はまだ弱い確かさです。統計的な確かさはどれも10分以内の人と比べたもので、10〜30分と30〜60分のあいだに確かな差があるかは示されていません。10〜30分で差が見えないことも、30分までなら影響がないという意味ではありません。
アラブ首長国連邦で、会社員と自営業の人を含む5,476人を調べた研究(2023年)では、片道15分未満の人と比べて、幸福度の指標(WHO-5)が低い状態になるオッズ比が、15〜30分で1.26、31〜60分で1.70、60分超で2.24と、30分より手前から少しずつ上がっていました。オッズ比は、当てはまる人の割合が何倍になるかとは違います。日本の調査とは幸福度の測り方が違うので、数字は直接比べられません。どちらも一時点の調査で、通勤が長いせいで幸福度が下がったという因果関係までは示していません。
経済産業研究所の森川正之氏の論文(2018年、2017年11月のインターネット調査、10,041人)では、男女を合わせた推計で、通勤時間が長い人ほど仕事の満足度が低いという結果でした。ただし、男女別に分けるとどちらも統計的に確かとは言えません。生活の満足度とは、はっきりした関係は見られませんでした(女性だけ弱い関係)。同じ調査で、往復の通勤が1時間増えるのと勤務時間が1時間増えるのとでどちらが嫌かを聞くと、働いている人では、通勤が増える方が嫌という人が55.3%、勤務時間が増える方が嫌という人が25.1%でした(働いていない人も含めると54.4%と23.9%)。
生産性では、ドイツで1999〜2007年に約7,100人の働く人を追った研究(van Ommeren・Gutiérrez-i-Puigarnau、2009年)があります。同じ人の通勤距離が変わったときの欠勤を比べて、通勤距離が10%長いと欠勤が約0.7%多いという推計でした。全員の通勤がほぼゼロなら欠勤は平均で約16%少ないという数字は、この推計から出した仮の計算です。通勤時間ではなく距離の研究で、欠勤は仕事の量や質を直接測ったものではなく、生産性の代わりに使った指標です。ドイツの結果が日本にそのまま当てはまるかは確かめていません。
ほかの海外の研究では、ドイツの約1万9,000人の追跡調査(Stutzer・Frey、2008年)で、片道1時間の通勤で生活満足度が約0.2点(0〜10点)低く、アメリカ・テキサス州の働く女性909人の調査(Kahneman・Krueger、2006年)では、19の活動のうち朝の通勤の気分が最も低いという結果でした。詳しくは東京の家賃は高すぎる?の記事に書きました。
まとめると、通勤が長いほど幸福度が低く、欠勤が多いという結果は、日本でも海外でも出ています。日本の調査で差が見え始めるのは、片道30分を超えた区分からです。一方で、30分を境に急に変わるとはどの研究も示しておらず、日本の調査での差の大きさは0〜10点で0.2〜0.45点ほどです。
10. 通勤時間は、1年と一生でどれくらいか
片道の中央値で、年240日出勤した場合の計算です。
| 地域(片道の中央値) | 1年 | 40年 |
|---|---|---|
| 全国(28.1分) | 約225時間(約9.4日) | 約8,990時間(約375日) |
| 東京都(43.7分) | 約350時間(約14.6日) | 約13,980時間(約583日) |
| 神奈川県(47.8分) | 約382時間(約15.9日) | 約15,300時間(約637日) |
| 鳥取県(18.5分) | 約148時間(約6.2日) | 約5,920時間(約247日) |
(日数は時間を24で割ったもの)
神奈川県の中央値の人は、鳥取県の中央値の人より、40年で約9,400時間、24時間で割って約390日長く通勤している計算です。どちらも真ん中の人の数字で、同じ人が引っ越したときの変化ではありません。
11. 私の考え
私は20年近く、通勤のない働き方をしてきました。通勤の代わりに間取りを置いていて、一人暮らしでも2LDK以上に住み、仕事の部屋と寝室を分けることで、家の中でも仕事と休みを切り替えています。
通勤するなら、片道30分のラインは、家賃補助などあらゆる手段を使って守るべきだと私は考えています。このラインを超えると、仮に家を買えても、広い場所に住めても、生産性が下がることで全てが台無しになると考えるからです。9章で見たように、日本の調査でも、幸福度の差が見え始めるのは片道30分を超えた区分からでした。ただし、30分を超えると生産性が下がることを直接確かめた研究は見つけていません。9章の生産性の研究は、通勤距離と欠勤の関係を見たもので、30分という境目は調べていません。
ただ、このラインは首都圏では簡単ではありません。家計を主に支える人が雇われて働いている世帯で見ると、片道30分未満(自宅・住み込みを含む)の人は、全国では53.8%ですが、東京都では31.5%、神奈川県では30.7%です(5章の表。9章の幸福度の調査とは対象が違います)。家賃補助は会社によって出るかどうかが違い、厚生労働省の「就労条件総合調査」(2025年)では、何かの手当を出している会社のうち、住宅手当などを出している会社は45.7%(全部の会社に対しては41.7%)、通勤手当などは90.2%(同82.5%)でした。実際にもらっている人の平均は、住宅手当などが月1万8,700円、通勤手当などが月1万2,700円です(2024年11月分、常用労働者30人以上の民営企業)。
住む場所を変えるかどうかは、満足度ではなく差引で決めます。12章の計算機で、通勤時間を時給で換算した額と、短くするために上がる家賃を並べたのは、その差引を数字で見るためです。
12. 計算機:あなたの通勤時間は長いか
住んでいる地域と片道の通勤時間を入れると、その地域の中であなたの通勤が長い方から何%に当たるかと、片道30分のラインをどれだけ超えているかを出します。出勤日数と年数、年収を入れると、1年・このあとの年数でかかる時間と、時給に直した額も出します。引っ越しで通勤が短くなる分と家賃の差を入れると、浮いた時間1時間あたりいくらで時間を買うことになるかを比べます。
あなたの通勤時間は長いか:住む地域の中での位置と、年間・一生の時間
入れた数字は、このページの中で計算に使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている数字は入力の例です。自分の数字に置き換えてください。
初めから入っている例(東京都、片道60分、年240日、20年、年収500万円)では、東京都の中で通勤が長い方から上位約23.3%で、1年で480時間、20年で9,600時間です。片道60分は30分のラインを30分超えていて、30分に収めると往復で1年240時間短くなります。片道20分短くなる家に家賃が月2万円上がって引っ越すと、浮いた時間1時間あたり約1,500円で、時給約2,604円より安い値段で時間を買う計算になります。ただし引っ越し後も片道40分で、30分のラインは超えたままです。
13. よくある質問
通勤時間の平均は何分ですか?
雇われて働いている人の片道の通勤時間の中央値は、全国で28.1分です(住宅・土地統計調査、2023年)。平日に通勤した働いている人の行き帰りの合計の平均は81分です(社会生活基本調査、2021年)。「片道約40分」という数字は、通学も含む往復79分を2で割ったものです(2章)。
東京の通勤時間の平均は?
片道の中央値は東京都で43.7分、東京23区で41.9分です。平日に通勤した働いている人の往復の平均は、東京都で99分でした(3章・4章)。
片道1時間の通勤は長いですか?
家計を主に支える人が雇われて働いている世帯で見ると、全国では片道1時間以上の人は15.2%で、長い方です。ただし、神奈川県・埼玉県・千葉県では3人に1人が1時間以上かかっています(5章)。
通勤1時間半・2時間は?
片道1時間半以上は全国で3.6%、2時間以上は0.8%です。首都圏の3県でも、1時間半以上は8%前後です(5章)。
通勤時間の許容範囲・理想は何分ですか?
公的に決められた基準はありません。日本の調査では、片道10分以内の人と比べて、30分までの人とは幸福度の差が見えず、30分を超えた区分から低く出ています(9章)。私は、通勤するなら片道30分のラインを家賃補助などあらゆる手段を使って守るべきだと考えています(11章)。
通勤時間が30分を超えると幸福度は下がりますか?
ニッセイ基礎研究所の調査(2020年)では、片道10分以内の人と比べた幸福度(0〜10点)が、30〜60分でマイナス0.19点、60〜90分でマイナス0.25点、90分以上でマイナス0.45点でした。30分で急に下がるのではなく、長いほど低くなる形で、一時点の調査なので因果関係までは示していません(9章)。
通勤時間が長いと生産性は下がりますか?
ドイツの研究(2009年)では、同じ人の通勤距離が10%長いと欠勤が約0.7%多いという推計で、全員の通勤がほぼゼロなら欠勤は平均で約16%少ないという仮の計算でした。欠勤で見た結果で、仕事の量や質を直接測ったものではなく、通勤時間ではなく距離の研究です。日本で生産性との関係を直接示した公的な統計は見つかりませんでした(9章)。
車通勤の平均時間は?
交通手段別の通勤時間の平均は、この記事で使った公的な統計では見つかりませんでした。住宅・土地統計調査の通勤時間は、ふだん使っている交通手段での時間で、車の人も電車の人も合わせた数字です。地方の県で片道の中央値が20分前後と短いのは、この合わせた数字です(3章)。
満員電車の混雑率はどれくらいですか?
2025年度の平均混雑率は、東京圏143%、大阪圏117%、名古屋圏126%です。150%は肩が触れ合わない程度、180%は肩が触れ合いやや圧迫感がある、という目安です(8章)。
14. まとめ
- 片道の通勤時間の中央値は全国28.1分、東京都43.7分、最長の神奈川県47.8分、最短の鳥取県18.5分(2023年)
- 「片道約40分」は、通学も含む往復79分を2で割った数字。働いている人の往復は81分(2021年)
- 片道1時間以上は全国15.2%、首都圏の3県は3割超。1時間半以上は全国3.6%(家計を主に支える人の通勤時間)
- 東京23区41.9分、大阪市32.4分、名古屋市31.9分、福岡市28.6分。最長はさいたま市52.3分
- 通勤した人の時間は2016年と2021年で変わらず、通勤する人の割合が下がった
- 東京圏の平均混雑率は2025年度143%で、2020年度から上がり続けている
- 日本の調査では、片道10分以内と比べて30分までは幸福度の差が見えず、30分を超えた区分から低く、長いほど低い(差は0〜10点で0.2〜0.45点ほど。因果関係までは示していない)
- 片道28.1分を年240日・40年で約9,000時間(約375日)
- 私は、通勤するなら片道30分のラインを家賃補助などあらゆる手段を使って守るべきだと考える。自分は通勤の代わりに間取りを置き、住む場所は満足度ではなく差引で決める
15. 出典
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」第127-1表 住宅の所有の関係、1か月当たり家賃別家計を主に支える者の通勤時間別主世帯数及び通勤時間中位数(e-Stat)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040210071&fileKind=0
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説」(通勤時間)https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/yougo.pdf
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/gaiyoua.pdf
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」第68-2表・第69-2表・第70-2表(都道府県別・有業者・年齢別の行動者平均時間)(e-Stat)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032224185&fileKind=0
- 総務省統計局「平成28年社会生活基本調査 生活時間に関する結果 結果の概要」(表7-2 都道府県別通勤・通学の行動者平均時間)https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou2.pdf
- 総務省統計局「平成23年社会生活基本調査 47都道府県 通勤・通学時間が長い!?ランキング」https://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/rank/rank3.html
- 国土交通省「第13回 大都市交通センサス」集計・分析業務 報告書(図5-20 平均所要時間)https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001717224.pdf
- 国土交通省「第12回 大都市交通センサス調査(概要版)」https://www.mlit.go.jp/common/001178977.pdf
- 国土交通省「都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和7年度実績)」https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000139.html
- 内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/report06.pdf
- 厚生労働省「平成28年版 過労死等防止対策白書(平成27年度年次報告)〔概要〕」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/gaiyou_10.pdf
- 厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査の概況」(第17表・第18表 諸手当)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/dl/gaikyou.pdf
- 岩﨑敬子「通勤時間と幸福度の関係 ―在宅勤務拡大で幸福度は高まるか?―」ニッセイ基礎研究所、2020年https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65027_ext_18_0.pdf?site=nli
- 森川正之「長時間通勤とテレワーク」RIETI Discussion Paper Series 18-J-009、2018年https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/18j009.pdf
- Jos van Ommeren, Eva Gutiérrez-i-Puigarnau「Are Workers with a Long Commute Less Productive? An Empirical Analysis of Absenteeism」Tinbergen Institute Discussion Paper TI 2009-014/3https://papers.tinbergen.nl/09014.pdf
- Hira Abdul Razzak ほか「A cross-sectional study: exploring the relationship between commuting time and subjective wellbeing in the UAE」Frontiers in Built Environment, 2023https://www.frontiersin.org/journals/built-environment/articles/10.3389/fbuil.2023.1257198/text
- Alois Stutzer, Bruno S. Frey「Stress that Doesn’t Pay: The Commuting Paradox」Scandinavian Journal of Economics, 2008https://wwz.unibas.ch/fileadmin/user_upload/wwz/00_Professuren/Stutzer_Politische_Oekonomie/Publications/Stutzer_Frey_CommutingStress_SJEa.pdf
- Daniel Kahneman, Alan B. Krueger「Developments in the Measurement of Subjective Well-Being」Journal of Economic Perspectives, 2006https://kahneman.scholar.princeton.edu/document/6
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