転売と卸売の違いは、仕入れ経路だけです。卸から仕入れれば真っ当になる、飽和しない、せどりより未来がある——このどれも、経路の違いからは出てきません。
私は2015年に、人に教えるための検証として、1ヶ月かけて100〜120社の卸と契約し、送られてきたカタログをすべてAmazonの相場と突き合わせました。検証したのは家電や車部品など、Amazonで販売できる商材の卸です。
結論を先に書きます。初期の取引条件では利益が出ません。ただし、そこから進む道はあります。順番に書きます。
転売と卸売、何が違うのか
違いは仕入れ先です。それだけです。
| 仕入れ先 | 価格の決まり方 | |
|---|---|---|
| 転売・せどり | 小売店、個人、フリマなど | 小売価格から自分で探す |
| 卸売からの仕入れ | 卸業者、メーカー | 掛率で提示される |
ここから「卸のほうが真っ当だ」という結論は出ません。誰かが困っているかどうかは、仕入れ先ではなく仕入れ方で決まるからです。定価で買える人の手から人気商品を奪えば、それが卸経由であっても批判されます。
そして「卸なら飽和しない」も成立しません。理由は後述しますが、枠が有限であるという点で、卸はせどりよりむしろ閉じています。
100〜120社と契約して、カタログを全件突き合わせた
2015年、私は人に教えるためのノウハウ検証として、実際に卸を開拓しました。テレアポとメールで1週間ほどのうちに100社以上と接触し、契約しています。契約自体は難関ではありませんでした。
その後1ヶ月かけて、送られてきたカタログをAmazonの相場と1件ずつ突き合わせました。当時は無料で使えたモノレートというサービスで調査しています(同サービスは現在は終了しています)。
結果は明快でした。提示された初期の条件では、利益の出る商品がほとんどありません。
※接触から契約までの具体的な手順は、別記事に分けています。
100社の名簿の元にしたのはネッシーとスーパーデリバリーの出店業者です。サイトの中で買わずに、会社名を拾って外から営業した手順は「ネッシーは仕入れ先ではなく名簿です」に書きました。
なぜ最初は利益が出ないのか
掛率が取引実績に連動するからです。初回の条件は、どの業者でもほぼ一番悪いところから始まります。
つまり卸の価格表は、固定された仕入れ値の一覧ではありません。量を積んだ先にしか、利益の出る位置がない構造になっています。
ここを理解せずにカタログだけを見ると、「卸は思ったより安くない」で終わります。実際、私の検証の一次的な結論はそれでした。しかしこれは価格が高いのではなく、まだ自分がその価格帯にいないというだけです。
条件の良い卸は、すでに新規を締め切っている
もう一つ、検証して分かったことがあります。利益の出る条件を出してくれる卸ほど、新規の受付を止めていることがあります。
個人の仕入れ業者との契約が増えると、枠を閉じる業者があります。後から申し込んでも、枠がないと断られる。
これが意味するのは、先に入った人の席が埋まっているだけで、構造はせどりとまったく同じだということです。「卸は飽和しない」と言われますが、飽和しないのではなく、飽和が見えないだけです。店舗の棚と違って、埋まっている様子が外から見えません。
そして私にとって決定的だったのは、仮に良い条件の卸を見つけても、それを人に教えられないことでした。教えた分だけ枠が埋まり、教えた相手も自分も条件を失います。教えられない手法は、手法として不完全です。だから私はこれを広げませんでした。
それでも進む道はある — 実績を作って条件交渉する
ここまでを読むと「卸はやめておけ」に見えると思いますが、そうではありません。初期条件が悪いのは、初期条件が悪いというだけの話です。
旨味の大きいメーカーと取引する場合、最初は利益トントン、あるいは多少の赤字でも無理に取引する価値があります。取引実績を作ることで、条件交渉のテーブルに乗れるからです。
実績が積み上がれば、半年ごとに条件を見直す交渉ができるようになります。つまり初期の赤字は損失ではなく、仕入れ条件への投資です。
この設計ができるかどうかが、卸を続けられる人と、カタログを見て諦める人の分かれ目です。1回の取引の利益で判断すると、必ず後者になります。
ただしこの道を選ぶと、実績が積み上がるまでの期間、赤字と在庫を抱え続けることになります。ここで詰まる人が多いところです。仕入れ値を下げる方向には、こうした時間的な制約がついて回ります。単価を上げる方向を先に知っておくと、どちらに賭けるかの判断が早くなります。
私が降りた理由は、卸がダメだからではない
最後に、私自身がこの道を選ばなかった理由を書きます。卸に問題があったからではありません。在庫を持つビジネスそのものが嫌になっていたからです。
店舗で仕入れて売っていた頃は、その先がないことがしんどい。個人からの買取に移ると、後ろめたさは消えますが夜中に呼び出される労働集約が来る。そして卸の検証をしていた頃には、在庫を抱えて価格差を取るという構造そのものから出たくなっていました。
だから、この記事は「卸はやめておけ」でも「卸なら安泰」でもありません。卸は稼げます。ただし実績を作る期間が必要で、枠は先着で埋まり、その間ずっと在庫を持ちます。この3つを引き受けられるかどうかが判断基準です。
よくある質問
卸売と転売の違いは何ですか?
仕入れ先だけです。卸業者から仕入れるか、小売や個人から仕入れるかの違いであり、稼げるかどうかや批判されるかどうかとは直接の関係がありません。
卸から仕入れれば利益は出ますか?
初期の条件では出にくいです。掛率は取引実績に連動するため、量を積んだ先にしか利益の出る位置がありません。1回の取引だけで判断しないでください。
卸は飽和しないというのは本当ですか?
本当ではありません。個人との契約が増えると新規を締め切る業者があり、枠は有限です。外から見えないだけで、埋まっている点はせどりと同じです。
赤字でも取引したほうがよいのですか?
旨味の大きいメーカーに限れば、実績づくりとして選択肢になります。実績が積み上がれば条件交渉ができるため、初期の赤字は仕入れ条件への投資になります。
卸とせどり、どちらが向いていますか?
在庫と時間を引き受けられるなら卸です。実績が積み上がるまでの期間、赤字と在庫を抱え続ける前提があるためです。そこが難しければ別の方向を検討してください。
※本記事の掛率、契約条件、新規受付の運用は、私が2015年当時に実際に交渉した範囲での記述です。業者ごとの方針は変更されるため、実際の条件は各業者にご確認ください。また記事中のモノレートは現在終了しているサービスです。

コメント