不用品回収・遺品整理の開業に要る許可|古物商だけでは回収できない。一般廃棄物の許可、許可業者と組む形、運送と開業資金(計算機つき)

不用品回収・遺品整理の開業。家庭の不用品の回収に要るのは市区町村の一般廃棄物の許可で、産業廃棄物の許可だけ・古物商の許可だけ・遺品整理士(民間の資格)では回収できない(環境省「古物商の許可」では回収できません)。許可なしで回収を業にすると1,000万円以下の罰金・5年以下の拘禁刑(廃棄物処理法25条。法人は3億円以下)。神戸・長野・熊本・刈谷は新規の許可を出さない。許可業者と組む形もある(横浜市の説明) 古物商・古物市場・卸

「不用品回収 開業」「遺品整理 開業」「不用品回収 許可」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

家庭から出る不用品を、料金をもらって運び出し、処分するには、営業する市区町村長の「一般廃棄物収集運搬業」の許可か、市区町村の委託が要ります(廃棄物処理法7条1項)。環境省は、ご家庭の廃棄物について「「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できません。」と書いています。許可を持たずに業として行うと、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり)、法人は3億円以下の罰金です(25条1項1号・32条)。

ただし、この許可は「申請すれば取れる」とは言えません。許可の基準には「その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。」があり(7条5項2号)、神戸市は「現在は新規の許可は受け付けていません。」と書いています。長野市・熊本市・刈谷市も、新規の許可を原則として出さないと公式ページや手引に書いています。

そのため開業の形は、営業する市区町村が受け付けていれば自分で許可を取るか、許可業者と組むか、のどちらかになります。横浜市は、遺品整理業者が許可を持っていない場合、不用品を出す人と許可業者が直接契約する必要があり、その契約を遺品整理業者に任せることは可能だと説明しています(その区域・品目の許可業者が実際に収集運搬することが前提です。全国一律の要件かは未確認)。許可業者が、通常の収集運搬を無許可の事業者に再委託する形は、許可業者に「それぞれ他人に委託してはならない。」とする7条14項により、原則として認められません(法令上の特例を除く)。

物を買い取って売るなら、別に古物商の許可が要ります(古物営業法3条。警視庁の申請手数料は19,000円)。買い取らずに、無償や処分手数料を取って引き取った物を売るだけなら古物商の許可は要りませんが(千葉県警のFAQ)、その引き取りが廃棄物の収集運搬に当たるかは別に判定します。依頼者の家財を別の場所へ有料で運ぶなら運送の届出・許可が、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機には家電リサイクル法の決まりがかかります。遺品整理士は民間の資格で、どの許可の代わりにもなりません。

遺品整理で「儲かるか」は、遺品整理は儲かるのかの記事で扱っています。この記事は、開業の手続きと許可だけを、法令と国・自治体などの公式資料で確かめたものです。

知りたいこと 答え 章
不用品回収は許可なしで開業できる? 家庭の不用品を料金をもらって運び出し・処分するなら、市区町村長の一般廃棄物収集運搬業の許可か市区町村の委託が要る。無許可は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金 2章
古物商の許可だけで回収できる? できない。環境省は「「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できません。」と書いている 2章
一般廃棄物の許可は取れる? 市区町村しだい。神戸市・長野市・熊本市・刈谷市は新規の許可を原則として出さない。全国の数は確かめられなかった 3章
許可がないと開業できない? 許可業者と組む形がある(横浜市:その区域・品目の許可業者が収集運搬し、依頼者と許可業者が直接契約。その契約を遺品整理業者に任せることは可能)。許可業者が通常の収集運搬を無許可の事業者に再委託する形は、原則として認められない(7条14項) 4章
遺品を買い取るには? 古物商の許可(申請手数料19,000円、警視庁)。依頼者の家での売買は「行商」に含まれ、貴金属などは訪問購入の決まりがかかりうる 5章
軽トラックで運ぶのに届出は? 他人の家財を有料で運ぶなら、軽自動車は貨物軽自動車運送事業の届出、普通トラックは一般貨物の許可(営業所ごとに5両以上)。廃棄物処理業者が収集・処分と一体で運ぶ場合は要らないと国土交通省 6章
遺品整理士の資格は要る? 法律で求められる資格ではない(民間の資格)。許可の代わりにはならない。入会金30,000円・年会費8,000円 7章
開業資金は? 業種別の公的な数字は見つからなかった。日本政策金融公庫の調査(全業種)は平均975万円・中央値600万円 8章
自分の場合 必要な許可の判定、開業資金と月の固定費、1件の見積もりと残る額、許可業者との提携・下請けの比較を計算機で 9章

1. 先に、この記事の資料について

この記事は、次の公式の資料だけで書いています。

  • 法令(e-Gov 法令検索):廃棄物処理法と施行令、古物営業法と施行規則、貨物自動車運送事業法、家電リサイクル法と施行令、小型家電リサイクル法、特定商取引法施行令。条文は2026年10月28日時点の現行のものです
  • 国の資料:環境省(Q&A・通知)、国土交通省(事務連絡・運輸局の案内)、経済産業省(家電リサイクル制度のFAQ)、消費者庁、警察庁・警視庁・岐阜県警
  • 市区町村:神戸市・長野市・熊本市・刈谷市・横浜市の公式ページと手引
  • 裁判所:最高裁判所の判決(裁判所ウェブサイト)
  • 統計・調査:国民生活センター、日本政策金融公庫、厚生労働省、内閣府
  • 遺品整理士認定協会のページは、その資格自体の説明にだけ使いました

開業支援の会社、フランチャイズの募集ページ、比較サイト、個人のブログ、Q&Aサイトは、出典にも数字の参考にもしていません。

数字は「出典の数字そのもの」と、「出典の数字を足したり掛けたりしただけの値(計算)」を分けて書きます。条文や資料を組み合わせて読んだところは「当てはめ」、資料から推し量ったところは「推定」、公式の資料で確かめられなかったところは「未確認」と書きます。許可が要るか、取れるかを最後に決めるのは、営業する市区町村・都道府県・警察署・運輸支局です。

2. 家庭の不用品を運び出して処分するには、一般廃棄物の許可が要る

2-1. 家庭から出る不用品は「一般廃棄物」

廃棄物処理法は、廃棄物を「ごみ、粗大ごみ、…その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの」とし(2条1項)、「「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。」と定めています(2条2項)。産業廃棄物は「事業活動に伴つて生じた廃棄物」のうち、燃え殻・汚泥・廃油・廃プラスチック類など政令で定める種類です(2条4項1号)。

家庭から出る不用品は事業活動に伴うものではないので、産業廃棄物には当たらず、一般廃棄物の側です(当てはめ)。遺品整理・家の片付けで出る不用品も同じです。

2-2. 運び出して処分するのを業とするなら、市区町村長の許可

一般廃棄物の収集・運搬を業として行う人は、「当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)」を「管轄する市町村長の許可を受けなければならない。」(7条1項)とされています。許可を出すのは市区町村で、業を行う区域ごとに、その区域の市区町村長の許可が要ります。有効期間は2年で、更新が要ります(施行令4条の5「二年とする。」)。

例外として、7条1項ただし書は「事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者」には許可を求めていません。ただし環境省の通知(令和5年2月3日)は、「それが再生利用されないと認められる場合には当該許可が必要」としています。家の片付けで出る物をまとめて引き取る形が、この例外に入ると言える資料は見つかりませんでした(当てはめ)。

2-3. 古物商・産廃の許可では回収できない

環境省は、無許可の回収業者についてのQ&Aで、「ご家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の「一般廃棄物処理業許可」や委託が必要です。「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できません。」と書いています。続けて「古物商の許可は、中古品等の売買を行うための許可です。」とも書いています。

許可・資格 出す人 何のための許可か 家庭の不用品の回収
一般廃棄物収集運搬業 市区町村長(7条1項) 一般廃棄物の収集・運搬を業として行う できる(許可を受けた市区町村の区域で)
産業廃棄物収集運搬業 都道府県知事(14条1項) 産業廃棄物の収集・運搬を業として行う できない(環境省)
古物商 都道府県公安委員会(古物営業法3条) 中古品の売買 できない(環境省)
遺品整理士 一般財団法人遺品整理士認定協会(民間) 協会が認定する資格 許可の代わりにならない(当てはめ)

2-4. 「無料回収」「買取」の形でも、廃棄物に当たることがある

環境省の通知「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について」(平成24年3月19日)は、廃棄物に当たるかを「その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態」「取引価値の有無及び占有者の意思等」を総合的に勘案して判断するとし、「無料で引き取られる場合又は買い取られる場合であっても」ただちに有価物とは判断できない、としています。年式が古い、通電しない、破損している、リコールの対象になっている、といった物は、廃棄物として扱う例に挙げています。

つまり、料金を取らない「無料回収」や、値段を付けて買い取る形にしても、取引価値がない物まで引き取れば、一般廃棄物の許可の話になります(当てはめ)。客観的に取引価値がある物だけを適法に買い取り、廃棄物の収集運搬をしない場合は、原則として一般廃棄物の許可は要りません(当てはめ)。ただし、使えるかどうかと廃棄物かどうかは同じではなく、上の要素で総合的に判断されます。取引価値がない物は、依頼者が市区町村の収集や許可業者に出します。処分費をもらって引き取る形が買取にならない理由は、買取ビジネスの仕組みと儲けの記事にも書いています。

2-5. 罰則:無許可の業者と、委託の基準に違反した事業者

行為 罰則の上限 条文
許可を受けずに、一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬や処分を業として行う 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり) 25条1項1号
上の違反が法人の業務として行われた場合の法人 3億円以下の罰金 32条1項1号
委託の基準が適用される事業者が、基準に違反して廃棄物の処理を他人に委託する(許可のない業者に頼むなど) 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金 25条1項6号(6条の2・12条)
許可業者が、収集運搬を他人に委託する(再委託) 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 26条1号(7条14項)

委託の基準が適用される事業者は、違反した委託で処罰されえます。家庭の依頼者に同じ罰則が適用されるかは、確認できませんでした(未確認)。横浜市は依頼する人に向けて「無許可業者による不用品の処分は法律違反です」と書いています。

3. 一般廃棄物の許可は、新規で出ない市区町村がある

3-1. 許可の基準

市区町村長は、申請が次の「各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ」許可してはならない、とされています(7条5項)。

  • 1号「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。」
  • 2号「その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。」
  • 3号 施設と申請者の能力が「その事業を的確に、かつ、継続して」行うに足りるものとして環境省令の基準に合うこと(要旨)

つまり、書類と設備がそろっていても、市区町村の収集で足りている、あるいは処理計画に合わない、と判断されれば許可は出ません(当てはめ)。環境省の資料も、一般廃棄物処理業の許可については「市町村に一定の裁量が与えられている」と書いています。

3-2. 新規の許可を出していない市の例

市 公式の文 ページ・手引の日付 理由として書いていること
神戸市 「現在は新規の許可は受け付けていません。」 2024年11月18日更新 記載なし
長野市 「一般廃棄物収集運搬業の新規許可は、原則として行いません。」 2026年1月28日更新 一般廃棄物処理計画にもとづく判断。人口あたりの許可業者数が「全国的に見ても突出して多い状況」(例外は市の許可方針に合う場合)
熊本市 「平成31年4月1日から新規許可を行いません。」 2022年6月20日更新 既存の許可業者で「十分に適正処理出来ていることから」
刈谷市(愛知県) 「原則、新規の申請は受け付けをしていません。」 令和7年11月改定の手引 記載なし(申請手数料は3,200円)

この4市は、公式ページで確かめられた例です。全国で新規の許可を止めている市区町村の数をまとめた統計は見つかりませんでした(未確認)。逆に、受け付けている市区町村もあると考えられます。営業する市区町村の廃棄物の担当課と申請の手引で、先に確かめます。

3-3. 最高裁の判決

最高裁判所第一小法廷の平成16年1月15日判決(平成14(行ヒ)312、一般廃棄物処理業不許可処分取消請求事件、破棄自判)は、判示事項に「既存の一般廃棄物収集運搬業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきていることを踏まえて市町村の一般廃棄物処理計画が作成されている場合にこれとは別にされた一般廃棄物収集運搬業の許可申請の内容の同計画適合性」を挙げています。既存の業者で足りていることを前提にした処理計画のもとで、新しい申請が計画に合うかが争われた判決です。

長野市・熊本市が新規の許可を出さない理由として書いていることも、処理計画と既存業者で足りていることです。新規の許可が出ないのは、市区町村の運用だけでなく、法律の許可の基準(処理計画への適合)に根があります(当てはめ)。

4. 開業の形は3つ:自分で許可を取る・許可業者と組む・下請けに入る

形 使えるか 処分の契約 根拠
自分で一般廃棄物の許可を取る 市区町村が受け付けていて、基準に合えば 自分が依頼者と契約し、運び出して処分する 7条1項・5項
許可業者と組む その区域・品目の許可業者が実際に収集運搬し、依頼者と許可業者が直接契約する形が成り立つ場合に使える(全国一律の要件かは未確認) 依頼者と許可業者が直接契約(その契約を遺品整理業者に任せることは可能) 横浜市の説明
許可業者の下請けとして収集運搬だけを請ける 原則として使えない(法令上の特例を除く) ― 7条14項(再委託の禁止)
許可も委託もなく、料金を取って回収する 使えない ― 7条1項・25条1項1号

4-1. 許可業者と組む形(横浜市の説明)

横浜市資源循環局の「遺品整理や家の片付けを業者に依頼する際の注意点」(2024年9月27日更新)は、依頼する人に向けて次のように書いています。

  • 遺品整理業者が一般廃棄物収集運搬業の許可を持っていない場合は、許可業者に不用品の処分を依頼する
  • 「不用品を出す方と「一般廃棄物収集運搬業許可業者」が直接契約する必要があります(遺品整理業者にこの契約を委任することは可能です)。」
  • 家財などの買取を行う場合は「古物商の許可が必要です」
  • 「無許可業者による不用品の処分は法律違反です」

ここから読める形は、整理・仕分け・梱包・清掃と、取引価値がある物の買取は自分がやり、処分は、その区域・品目の許可業者と依頼者の直接契約にする、というものです(当てはめ。横浜市の説明で、全国一律の要件かは未確認)。依頼者から見ると、払う先が2つ(自分と許可業者)になります。見積もりのときに、どこまでが自分の作業で、どこからが許可業者の料金かを分けて示します。

家の中での仕分け・清掃・梱包そのものを許可の対象とする条文は、この記事で読んだ範囲では見当たりませんでした(当てはめ)。許可の話になるのは、出た不用品を運び出して処分するところからです。

4-2. 下請けとして収集運搬だけを請ける形は、原則として認められない

7条14項は、一般廃棄物収集運搬業者に対し、収集・運搬を「それぞれ他人に委託してはならない。」と定めています。許可業者が、通常の収集運搬を無許可の事業者に再委託する形は、原則として認められません(法令上の特例を除く)。違反は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(26条1号)。

許可業者の作業員として雇われて働くことと、自分の事業として下請けに入ることは別の話です。前者は事業の開業ではないので、この記事の対象外です。

4-3. フランチャイズに加盟して始める場合

フランチャイズに加盟して始めても、一般廃棄物の許可・古物商の許可・運送の届出が要るかは、加盟とは別に、自分の事業の中身で決まります(当てはめ)。加盟金やロイヤリティの見方は、買取フランチャイズの費用の記事で、買取の場合を例に計算しています。

5. 買い取って売るなら古物商の許可

5-1. 古物商の許可と手数料

古物(一度使用された物品など)を売買する営業を営もうとする人は、都道府県公安委員会の「許可を受けなければならない。」とされています(古物営業法2条・3条)。許可を受けずに営むと、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(31条)。

警視庁の案内では、申請先は「主たる営業所の所在地を管轄する警察署(防犯係)」、手数料は「19,000円」です。標準処理期間は、例として岐阜県警が「古物商の許可申請:40日以内」と書いています。取るまでの条件と費用は古物商許可はせどりに必要かにまとめています。

一方、買い取らずに引き取った物を売るだけなら、古物商の許可は要りません。千葉県警のFAQは「全く無償で引き取ってきたもの、あるいは、逆に処分手数料等を徴収して引き取ったものを売る場合は、古物商の許可は必要ありません。」としています。ただし、その引き取りが廃棄物の収集運搬に当たるかは別の話で、2章の一般廃棄物の許可の判定が残ります。

横浜市・熊本市・国民生活センター(見守り新鮮情報 第525号、2025年10月30日)は、遺品を買い取る業者について、古物商の許可を確かめるよう依頼する人に案内しています。

5-2. 依頼者の家での買取:行商と訪問購入

警察庁の「古物営業法等の解釈運用基準」(令和8年5月14日)は、「取引の相手方の住所又は居所において行う古物の売買」も行商に含まれるとしています。許可を申請するときの行商の欄の書き方は、警察署で確かめます。

貴金属・ブランド品・時計・着物などを依頼者の家で買い取るときは、特定商取引法の訪問購入の決まり(書面の交付、8日間のクーリング・オフ、その間の物品の引渡しの拒絶など)がかかりえます。自動車、携行が容易でない家電、家具、書籍、有価証券、CD・DVDなどの記録物は、訪問購入の規制の対象外です(特定商取引法施行令34条)。その住居で契約することを自分から求めた人への訪問購入には、一部の規定が適用されません(特定商取引法58条の17第2項1号)。ただし、査定を頼まれただけで「請求」に当たるとは限らないので、消費者庁の解説で確かめます。

5-3. 1万円未満でも記録が要る品目

古物営業法施行規則16条2項は、1万円未満の取引でも相手の確認などを省けない古物として、自動二輪車・原動機付自転車、エアコンの室外ユニット、家庭用のゲームソフト、CD・DVDなど、電線、金属製のグレーチング、書籍を挙げています。家の片付けで出やすい物が並んでいます。台帳の考え方は古物台帳の記事に、古物商の許可のほかに罰則のある法律はせどり・転売は違法?の記事にまとめています。

6. 車で運ぶとき:運送の届出・許可と、家電4品目

6-1. 他人の家財を有料で運ぶなら、運送の手続き

区分 手続き 条件の例 無許可の罰則
一般貨物自動車運送事業(普通トラックなど) 国土交通大臣の許可(3条) 「営業所1つにつき車両数は5両以上であること」(中国運輸局)、標準処理期間は「3~5カ月」、法令試験は「30問中8割の正解で合格」(関東運輸局) 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(70条)
貨物軽自動車運送事業(軽トラック・軽バンなど) 届出(36条) 「1両から始めることができます。」(近畿運輸局)。営業所ごとに貨物軽自動車安全管理者の選任と講習(令和6年10月1日公布の制度改正) この記事では確かめていない(未確認)

一方、国土交通省の事務連絡(令和8年3月16日、京都府の周知ページに掲載)は、廃棄物処理業者が契約にもとづいて収集・処分と一体で行う運搬について、「委託等契約に基づく業務の一環として行われる運搬行為」は運送事業の許可等が要らず、「収集又は処分を伴わない廃棄物の運搬行為のみを行う場合」は許可等が要る、としています。京都府のページは、令和8年4月1日施行の改正(違法な「白トラ」に運送を頼んだ荷主などへの規制の強化)についての通知だと書いています。

遺品・家財を運ぶことが運送事業に当たるかを、直接説明した公式の資料は見つかりませんでした(未確認)。買い取った物(自分の物)を運ぶのは「他人の需要に応じ」た運送ではなく、依頼者の家財を新居や倉庫へ有料で運ぶのは運送の定義に当たりうる、と考えられます(推定)。迷うときは運輸支局で確かめます。

6-2. 家電4品目

家電リサイクル法の対象は、エアコン、テレビ(ブラウン管式・液晶式・有機EL式・プラズマ式)、冷蔵庫と冷凍庫、洗濯機と衣類乾燥機の4品目です(施行令1条)。買い替えのときなどは、小売業者に引き取る義務があります(9条)。

経済産業省の家電リサイクル制度のFAQは、許可や市区町村の委託を確かめられない不用品回収業者には「廃家電の4品目を引き渡さないようにしてください」と呼びかけています。家庭から4品目を引き取るにも、一般廃棄物の許可か市区町村の委託が要ります。家電リサイクル法にもとづく小売業者の運搬には特例があり、小売業者が自分で運ぶ場合は廃棄物処理法の収集運搬業の許可が要らず、小売業者から委託を受けて運ぶ場合は産業廃棄物・一般廃棄物のどちらかの許可で運べます(同FAQ 小売業者向けQ8・Q26)。

小型家電リサイクル法の認定を受けた事業者は、認定を受けた計画の範囲で、許可なしに小型家電の収集運搬などを行えます(13条1項)。主務大臣の認定を受ける制度で、開業したばかりの業者が家庭の不用品全般を回収する代わりにはなりません(当てはめ)。

7. 遺品整理士と、消費者トラブルの相談

7-1. 遺品整理士は民間の資格

遺品整理士は、「一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する資格」です。法律にもとづく資格ではなく、協会が独自に認定する民間の資格です(協会の説明からの判断)。費用は入会金「30,000円」、年会費「8,000円(1年間有効)」で、初年度は38,000円です(計算。ほかの費用の有無は未確認)。受講資格は「特にございません。」と協会のFAQにあります。

この資格があっても、一般廃棄物の許可・古物商の許可の代わりにはなりません(当てはめ)。依頼する人から見て、許可とは別のものです。

7-2. 消費者トラブルの相談

サービス 相談件数(国民生活センター) 公表
不用品回収サービス 2018年度 1,354件/2019年度 1,457件/2020年度 1,788件/2021年度 2,231件 2022年11月2日
遺品整理サービス 2013年度 73件/2014年度 109件/2015年度 90件/2016年度 114件/2017年度 105件 2018年7月19日

国民生活センターは「2025年度 全国の消費生活相談の状況」(2026年8月5日)も公表していますが、この表と同じ定義(不用品回収サービス・遺品整理サービス)の件数は確かめられませんでした(未確認)。不用品回収の公表の題は「市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!」で、助言に「一般廃棄物処理業の許可業者を探す」を挙げています。消費者庁も2022年6月1日、「お得な定額パック」などの表示をして、作業のあとにウェブサイトに書いていなかった処分費用などを請求していた事業者について注意喚起をしています。

国民生活センターの見守り新鮮情報 第525号(2025年10月30日)は、遺品整理を頼むときの注意として「無許可事業者による不用品の処分は法律違反となり」と書き、見積書を取ることや古物商許可証を確かめることを案内しています。依頼する人が確かめるように言われているのは、許可・見積もりの内訳・古物商許可証です。開業する側から見れば、この3つを先にそろえて見せられるかが、選ばれる前提になります(当てはめ)。

8. 開業資金と需要の公的な数字

8-1. 開業資金

不用品回収・遺品整理だけの開業資金をまとめた公的な統計は見つかりませんでした(未確認)。全業種では、日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」が、開業費用を「平均値は975万円、中央値は600万円」としています(公庫の融資を受けた開業1年以内の企業が対象)。同じ調査で、採算が「黒字基調」は67.0%、「赤字基調」は33.0%でした。

手続きの費用のうち公式に確かめられたのは、古物商の申請手数料19,000円(警視庁)、産業廃棄物収集運搬業の新規申請手数料81,000円(東京都。講習会の修了証が要る)、一般廃棄物収集運搬業の申請手数料3,200円(刈谷市。ただし新規の受付は原則なし)です。一般廃棄物の手数料は市区町村ごとに違い、全国の相場は確かめられませんでした(未確認)。

8-2. 需要の目安

厚生労働省の人口動態統計(2025年、確定数)は、死亡数を「1,589,533 人で5年ぶりに減少」としています。内閣府の高齢社会白書(令和7年版)では、65歳以上の一人暮らしは2020年に6,717千人(国勢調査)、2050年の推計は10,839千人です。

これは需要の手がかりで、市場の大きさではありません。遺品整理・不用品回収の市場規模や、業者の数をまとめた公的な統計は見つかりませんでした(未確認)。どれだけの人が業者に頼むかも、この数字からは分かりません。

9. 計算機:必要な許可の判定/開業資金と月の固定費/1件の見積もりと残る額/許可業者との提携・下請けの比較

4つは別々に使えます。

  • 1. 必要な許可の判定:運び出し・処分の形、買取、事業者の片付け、家財の運送、家電4品目、市区町村の新規受付を選ぶと、一般廃棄物・古物商・産業廃棄物・運送の要否と、確かめる窓口を出します(当てはめ)
  • 2. 開業資金と月の固定費:初期費用と月の固定費、売上が立つまでの月数から、開業のときに用意する額の目安と、固定費をまかなう件数を出します
  • 3. 1件の見積もりと残る額:処分を依頼者と許可業者の直接契約にするか、自分が許可を持って処分するかを選び、見積もり・処分費・人件費などから、依頼者が払う総額と1件で手元に残る額を出します。家電4品目の料金などの立て替えは、払う額と依頼者から受け取る額を分けて入れ、回収できない分だけが残る額に響きます
  • 4. 許可業者との提携・下請けの比較:自分で許可を取る・許可業者と組む・下請け・無許可の4つの形の可否と、自分で許可を取る形と許可業者と組む形について、依頼者の年間総支払額・自社の年間売上・自社の年間費用・自社の年間の残りを同じ定義で比べます

初めから入っている数字は入力の例で、相場ではありません。

必要な許可の判定/開業資金と月の固定費/1件の見積もりと残る額/許可業者との提携・下請けの比較

入れた値は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている数字は入力の例で、相場ではありません。4つは別々に使えます。

1. 必要な許可の判定

2. 開業資金と月の固定費

3. 1件の見積もりと残る額

4. 許可業者との提携・下請けの比較

10. よくある質問

不用品回収は、資格や許可なしで開業できますか?

家庭の不用品を料金をもらって運び出し・処分するなら、営業する市区町村長の一般廃棄物収集運搬業の許可か、市区町村の委託が要ります(廃棄物処理法7条1項)。許可を持たずに業として行うと、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金です(25条1項1号)。家の中での仕分け・清掃・梱包だけ、あるいは取引価値がある物の買取だけで、処分は依頼者と許可業者の直接契約にする形もあります(4章)。

古物商の許可があれば、不用品回収ができますか?

できません。環境省は「「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できません。」と書いています。古物商の許可は中古品の売買のための許可です。

無料回収なら許可は要りませんか?

料金を取らなくても、取引価値がない物まで引き取れば廃棄物に当たりうる、というのが環境省の通知(平成24年3月19日)の考え方です。「無料で引き取られる場合又は買い取られる場合であっても」ただちに有価物とは判断できない、としています(2-4)。

一般廃棄物の許可は、どうすれば取れますか?

営業する市区町村の廃棄物の担当課に、新規の受付があるかを先に確かめます。許可の基準には、市区町村による収集運搬が困難であること、一般廃棄物処理計画に適合することなどがあり(7条5項)、神戸市・長野市・熊本市・刈谷市は新規の許可を原則として出さないと書いています(3章)。

許可業者の下請けになればいいのでは?

許可業者は収集運搬を「それぞれ他人に委託してはならない。」(7条14項)ので、許可業者が通常の収集運搬を無許可の事業者に再委託する形は、原則として認められません(法令上の特例を除く)。横浜市が示すのは、その区域・品目の許可業者と依頼者が直接契約し、その契約を遺品整理業者に任せる形です(全国一律の要件かは未確認)。

遺品整理士の資格は必要ですか?

法律で求められる資格ではありません。一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する民間の資格で、許可の代わりにはなりません。費用は入会金30,000円と年会費8,000円です(7-1)。

軽トラックで運ぶのに、届出は要りますか?

依頼者の家財を、処分ではなく別の場所へ有料で運ぶなら、軽自動車は貨物軽自動車運送事業の届出、普通トラックは一般貨物自動車運送事業の許可が要る形です。廃棄物処理業者が契約にもとづいて収集・処分と一体で運ぶ場合は、運送の許可等は要らないと国土交通省の事務連絡(令和8年3月16日)にあります。遺品・家財の運搬そのものを説明した公式の資料は見つかりませんでした(6-1)。

遺品整理は儲かりますか?

この記事は開業の手続きと許可を扱っていて、儲かるかは扱っていません。お金の出どころは遺品整理は儲かるのかに書いています。

11. まとめ

  • 家庭の不用品を料金をもらって運び出し・処分するには、市区町村長の一般廃棄物収集運搬業の許可か市区町村の委託が要る(7条1項)。古物商・産廃の許可では回収できない(環境省)
  • 無料回収・買取の形でも、取引価値がない物まで引き取れば廃棄物に当たりうる(平成24年3月19日の環境省通知)。使えるかどうかと廃棄物かどうかは同じではない
  • 無許可で業として行うと5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金。委託の基準が適用される事業者は、違反した委託で処罰されうる(家庭の依頼者への適用は未確認)
  • 許可の基準に処理計画への適合があり、神戸市・長野市・熊本市・刈谷市は新規の許可を原則として出さない
  • 開業の形は、自分で許可を取るか、許可業者と組むか(その区域・品目の許可業者と依頼者の直接契約、その契約を任されることは可能。横浜市の説明)。許可業者が通常の収集運搬を無許可の事業者に再委託する形は、原則として認められない(7条14項)
  • 買い取って売るなら古物商の許可(申請手数料19,000円)。無償や処分手数料を取って引き取った物を売るだけなら不要(千葉県警)だが、引き取りが廃棄物の収集運搬に当たるかは別。依頼者の家での売買は行商に含まれ、貴金属などは訪問購入の決まりがかかりうる
  • 他人の家財を有料で運ぶなら運送の届出・許可。家電4品目は、許可や委託を確かめられない業者に渡さないよう経済産業省が呼びかけている
  • 遺品整理士は民間の資格で、許可の代わりにならない
  • 開業資金と市場規模の業種別の公的な数字は見つからなかった。死亡数は2025年に1,589,533人

12. 出典

13. あわせて読む

 

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