ボラティリティは、「値動きの荒さ」を、1つの数字にしたものです。上がるか下がるかは、教えてくれません。どれくらい揺れるかだけを、教えてくれます。
私は、レバレッジ型の投資信託とETFを、自分のお金で持っています。同じ時期、同じ口座の中で、元本の何倍にもなった商品と、マイナス40%になった商品が、ならんでいます。どちらも、ボラティリティが高い商品です。
この記事では、意味と計算を先に書いて、そのあとで、実際の投資信託の数字、「2倍型のリターンが2倍にならない理由」、計算機、この数字の限界を書きます。
| この記事に書くこと | この記事に書かないこと |
|---|---|
| ボラティリティの意味、計算のしかた、読み方、限界 | どの商品を買うべきか、いつ買うべきか |
1. ボラティリティとは
ボラティリティ(volatility)は、価格の変動の大きさです。投資の世界では、ふつう、リターンの標準偏差を、1年あたりに直した数字を指します。投資信託の資料では、「リスク」「標準偏差」と書かれている欄が、これです。
- ボラティリティが高い:大きく上がることも、大きく下がることもある。
- ボラティリティが低い:上にも下にも、あまり動かない。
大事な点は、ボラティリティは、方向をふくまない、ということです。「リスクが高い」と聞くと、「損をしやすい」と読んでしまいます。正しくは、「結果のばらつきが大きい」です。
1-1. 2つの種類
| 種類 | 何から計算するか | 使われる場面 |
|---|---|---|
| ヒストリカル・ボラティリティ(HV) | 過去の実際の値動き | 投資信託の「リスク」の欄、過去の比較 |
| インプライド・ボラティリティ(IV) | オプションの価格から逆算した、市場の予想 | VIX指数(S&P500のオプションから計算される指数)など |
この記事では、投資信託の資料にのっている、HVのほうを扱います。
2. 計算のしかた
- 毎日(または毎月)のリターンを、ならべます。
- その標準偏差を、計算します。
- 1年あたりに直します。日次なら、1年の営業日数(およそ250)の平方根をかけます。月次なら、12の平方根をかけます。
たとえば、1日の標準偏差が1.5%なら、年率は、1.5 × √250 ≒ 23.7%です。逆に、年率24%の商品は、1日あたり、およそ1.5%ぐらい動くのがふつう、という意味になります。
なぜ、日数そのものではなく、平方根をかけるのか。毎日の動きが、おたがいに関係なく起きるなら、ばらつきは、日数の平方根に比例して広がるからです。この前提は、ランダムウォークとはに書きました。
2-1. 数字の読み方
値動きが、つり鐘の形に分布すると仮定します。すると、年率のリターンが10%、ボラティリティが20%の商品は、1年後の結果が、およそ3回に2回は「マイナス10%からプラス30%」の間に入る、と読めます。20回に19回は、「マイナス30%からプラス50%」の間です。
ただし、これは仮定の上の話です。実際の相場では、この幅を大きくこえる動きが、計算よりも、ずっと多く起きます。この点は、6章に書きます。
3. 実際の数字:2倍型は、値動きも2倍だった
投資信託の情報サイトにのっている、過去1年の数字です(基準日は2026年9月17日)。過去の実績で、将来を約束する数字では、ありません。
| 商品の種類 | 1年のリターン | 1年のリスク(ボラティリティ) |
|---|---|---|
| NASDAQ100に連動する投資信託(1倍) | 35.28% | 23.82 |
| NASDAQ100の2倍型の投資信託(為替ヘッジなし) | 54.66% | 49.83 |
| 2倍型 ÷ 1倍 | 約1.55倍 | 約2.09倍 |
ボラティリティは、ほぼ2倍になっています。設計どおりです。ところが、リターンは、2倍になっていません。1.55倍です。指数が大きく上がった1年でも、こうなります。
リターンをリスクで割った数字のくらべ方は、シャープレシオとはに書きました。
4. なぜ、リターンは2倍にならないのか
レバレッジ型の商品は、「1日の値動き」が、指数の2倍や3倍になるように作られています。1年の値動きが2倍になるようには、作られていません。この差が、ボラティリティが高いほど、大きくなります。
指数が、10%上がって、次に10%下がった場合を、計算します。
| 倍率 | 1回目 | 2回目 | 結果(はじめを100とする) |
|---|---|---|---|
| 1倍 | +10% | −10% | 99.0 |
| 2倍 | +20% | −20% | 96.0 |
| 3倍 | +30% | −30% | 91.0 |
指数は、ほぼ元にもどっています。それでも、2倍型は4%、3倍型は9%、へっています。目減りは、倍率に比例しません。倍率の2乗に、比例します。2倍型なら4倍、3倍型なら9倍です。
近似の式で書くと、長い目で見た成長率は、「倍率 × 指数の平均リターン − 倍率の2乗 × ボラティリティの2乗 ÷ 2」になります。うしろの引き算の部分が、ボラティリティによる目減りです。実際の商品では、ここに、信託報酬と、レバレッジをかけるための金利のコストが、さらに乗ります。
逆に、指数が、あまり揺れずに、一方向に上がりつづけた期間は、2倍型のリターンは、2倍をこえます。複利が、味方になるからです。つまり、レバレッジ型の成績は、「指数がどこまで上がったか」だけでなく、「どれくらい揺れながら上がったか」で、決まります。
この話のつづきは、「TQQQはやめとけ」と言われる理由と、レバナスの記事に書きました。
4-1. 計算機:ボラティリティによる目減りの目安
1日あたりの値動きの目安:—
ボラティリティによる目減り(1倍 → 入力した倍率):—
長い目で見た成長率の近似(コストと金利をのぞく):—
はじめに入っている数字は、計算のための仮の値です。予想では、ありません。この式は近似で、信託報酬、金利のコスト、税金、為替を、ふくみません。倍率を3や4に変えて、成長率が、倍率を上げたのに下がる場所があることを、確かめてください。
5. 私の口座で起きていること
私は、2026年9月の時点で、レバレッジ型の商品を、いくつか持っています。元本に対する評価額で見ると、日経平均とNASDAQ100のレバレッジ型は、大きなプラスです。同じ口座の中で、韓国の指数の2倍型はマイナス40%、半導体の3倍型はマイナス36%です。
同じ人が、同じ考え方で、同じ時期に買って、この差です。ボラティリティが高い、というのは、こういうことです。当たった商品だけを見れば、うまい人に見えます。外れた商品だけを見れば、へたな人に見えます。どちらも、同じ性質の、表と裏です。
私が守っているのは、1つだけです。借りたお金では、やりません。信用取引も、していません。ぜんぶ、事業でかせいだ手持ちのお金です。マイナス40%の商品があっても、生活と仕事が変わらないのは、このためです。金額の決め方の考え方は、破産確率とはと、ケリー基準とはに書きました。
6. ボラティリティという数字の限界
6-1. 上への動きも、下への動きも、同じ「リスク」に数える
大きく上がった月も、ボラティリティを、上げます。持っている人にとって、うれしい揺れと、困る揺れを、区別しません。
6-2. 過去の数字である
HVは、過去の値動きから出した数字です。静かな相場がつづいたあとは、低く出ます。そして、低く出ているときに買った人が、そのあとの大きな動きに、ぶつかります。
6-3. つり鐘の形を、前提にしている
「3回に2回は、この幅に入る」という読み方は、つり鐘の形の分布を、前提にしています。実際の相場は、すそが、もっと厚いです。計算上は「何万年に1回」の動きが、何年かに1回、起きます。くわしくは、テールリスクとはに書きました。
6-4. 途中の道のりを、教えてくれない
同じボラティリティでも、「毎日こまかく揺れる商品」と、「ふだんは静かで、年に1回だけ大きく落ちる商品」が、あります。持っている人の体験は、まったく、ちがいます。最大下落率(ドローダウン)を、あわせて見る必要があります。
7. まとめ
- ボラティリティは、リターンの標準偏差を、年率に直した数字です。方向は、ふくみません。
- 日次の標準偏差に、√250をかけると、年率になります。
- 実際の2倍型の投資信託は、1年のボラティリティが約2.09倍、リターンは約1.55倍でした(2026年9月17日基準の過去1年)。
- ボラティリティによる目減りは、倍率の2乗に比例します。
- レバレッジ型の成績は、「どこまで上がったか」と「どれくらい揺れたか」の両方で、決まります。
- ボラティリティは、過去の数字で、すその厚さと、途中の道のりを、教えてくれません。
関連記事
- シャープレシオとは
- テールリスクとは
- ランダムウォークとは
- 「TQQQはやめとけ」と言われる理由
- QLDとTQQQの比較
- 破産確率とは
- 72の法則とは|計算式・早見表・計算機。月利10%の物販が、複利で31倍にならなかった理由
- ドルコスト平均法とは|しくみと計算機、一括投資との比較。私が積立だけ負けなかった理由は、買値ではなかった
【免責と、利益相反の開示】この記事は、用語の説明を目的としたもので、特定の金融商品の購入や売却を、すすめるものではありません。筆者は、記事の中でふれた種類の商品(指数連動型、レバレッジ型の投資信託とETF)を、自分のお金で保有しています。数字は、記載した基準日の過去の実績で、将来の成果を約束するものではありません。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。

コメント