ハインリッヒの法則は、大きな事故1件の裏に、軽い事故29件と、ヒヤリとした出来事300件がある、という「1:29:300」の経験則です。
この数字が「古い」と言われるのは、その通りです。元になったのは1920年代の労働災害のデータで、元データは公開されておらず、あとから検証できません。事故の多くを労働者個人の不注意のせいにした点も、後の研究者から批判されています。数字と原因の切り分け方は、100年前のものです。
ただ、私は「大きな1件が来る前に、小さな予兆が積み上がる」という骨組みだけは、自分の商売で本当に起きたと思っています。私は無在庫転売でその予兆を先に見て、締め出される前に商売を別の場所へ避難させました。この記事は、法則の限界を確認したうえで、その骨組みを自分の実例で使う話です。
出典:H.W.ハインリッヒの数字は本人の著作で示されたもの。原因論への批判は労働安全の分野で一般に指摘されている点です。
結論:数字は古い。でも「予兆の積み上がり」は自分の商売で当たった
先に私の立場を書きます。
- 1:29:300という比率そのものは、今の自分の仕事に当てはめる意味はない。元データが検証できず、業種も時代も違うからです。
- でも「大きな1件の前に、小さな警告が何度も来ている」という骨組みは、無在庫転売をやめる前に、私の身に実際に起きた。
- 予兆が見えている間は、準備できる時間がある。私はその間に、商売を規約の緩い場所へ移し、教えていた人にも同じことをさせた。
つまり、ハインリッヒの法則は「300件を数えてピラミッドを作る道具」ではなく、「小さな警告を、無視せずに大きな一手の合図として読む道具」として使えた、という話です。
私が見た予兆:無在庫転売が締め出される前に起きたこと
私は昔、中国輸入(AliExpress)を仕入れ元にした無在庫転売をやっていました。ヤフオク、Yahoo!ショッピング、メルカリ、STORES、BASE、そして自社のWooCommerce。売れているものを調べて出品し、注文が入ってから仕入れて送る形です。規約違反にあたるので、今はやっていません。
締め出しは、ある日いきなり来たわけではありませんでした。先に、小さな警告がいくつも来ていました。
予兆1:レゴ本家から商標権侵害の警告メール
レゴ互換品はよく売れる商材だったので、レゴに特化したショップを作りました。しばらくして、レゴ本家から「やめてほしい」という趣旨の、商標権侵害の警告メールが届きました。
これは「1件の重大事故」ではありません。店が消されたわけでも、訴えられたわけでもない。でも、今の売り方のどこかが踏んではいけない線に触れている、という合図でした。
予兆2:購入者からの「届かない」というクレーム
無在庫は、注文が入ってから海外に発注するので、どうしても発送が遅くなります。すると購入者から「まだ届かない」というクレームが増えていきます。これも1件ずつは小さい。返金や再送で収まります。でも、件数が増えるほど、プラットフォームの評価やアカウントの体力を削っていきます。
予兆3:プラットフォームからの警告が続いた
STORESでは、本体に「発送が遅い」というクレームがまとまって入り、STORESから何度も警告を受けました。ヤフオクやメルカリでは、無在庫の運用で利用制限や停止を食らったこともあります。
この段階で、私は「近いうちに、このやり方はプラットフォーム側のルールで続けられなくなる」と読みました。実際そのあと、無在庫転売は各所で締め出される方向に進んでいきました。
予兆が見えている間に、準備する
ハインリッヒの法則が実務で役に立つのは、ここだと思います。300件のヒヤリを数えることではなく、予兆が出ている「まだ大事になっていない期間」に、次の手を打つことです。
私がやったのは、プラットフォームに依存しない自社EC(WordPress+WooCommerce)への移動でした。
- 順張りで回転が落ちた商品を、先にWooCommerceへ移した。指名検索が入るほど需要のある商品なら、自社ECでも売れる。
- 自社ECなら、他の出品者と値下げ競争にならず、発送期日も自分で決められる。クレームが来ても、規定の範囲内なら「海外倉庫からの出荷」と説明できる。
- 売れているヤフオクのページをAIに分析させて販売ページの文章を強化し、商材のブランド名で競争せずに集客できる形にした。
- 同じことを、私が教えていた人にもさせた。腕時計に特化した店を作った人は、うまく移行できた。
締め出しという「1件」が来たとき、私も教えた人も、すでに逃げ場を作り終えていました。予兆を無視して、プラットフォーム1本のまま突っ込んでいたら、アカウントと一緒に商売ごと消えていたと思います。
無在庫転売そのものの規約・法令の整理は無在庫販売は違法か|規約と法令に、今から自社ECで売るなら何をするかは無在庫転売で売れない時に見る記事とWooCommerceのインストールと初期設定に分けて書いています。
この法則の使い方・使えない使い方
| 使い方 | |
|---|---|
| 使えない使い方 | 「1:29:300」の比率を、自分の業種にそのまま当てはめて計算する。元データは検証できず、時代も業種も違う |
| 使えない使い方 | 事故や失敗を、全部「担当者の不注意」で片付ける。原因を個人に寄せすぎるのは、法則が批判されている点そのもの |
| 使える使い方 | 小さな警告(クレーム、警告メール、利用制限)を、大きな一手を打つ合図として読む |
| 使える使い方 | 予兆が出ている「まだ大事になっていない期間」に、逃げ場や次の柱を先に作る |
数字を信じるのではなく、警告を数えるのでもなく、「小さな警告が続いているなら、大きな変化が近い」という一点だけを持ち帰れば、100年前の法則でも十分に使えます。
よくある質問
ハインリッヒの法則は古いのですか?
数字については古いです。元になったのは1920年代の労働災害のデータで、元データは公開されておらず検証できません。事故の原因を個人の不注意に寄せた点も批判されています。一方で「大きな問題の前に、小さな予兆が積み上がる」という骨組みは、今でも使えると私は考えています。
1:29:300はそのまま信じていいですか?
比率をそのまま自分の仕事に当てはめる意味はありません。業種も時代も違います。数える対象ではなく、「小さな警告が続いているかどうか」を見る合図として使うのがいいと思います。
ビジネスでどう使えばいいですか?
クレーム、警告メール、利用制限のような小さな警告が続いたら、大きな変化が近いと読んで、予兆が出ている間に次の柱を作ることです。私は無在庫転売の予兆を見て、締め出される前に自社ECへ移りました。
