「千の顔を持つ英雄 要約」「モノミスとは」「ヒーローズジャーニー」「神話の法則」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
『千の顔をもつ英雄』(1949年)は、神話学者ジョーゼフ・キャンベルが世界中の英雄の神話を比べて、「日常を出る(出立)→試練をくぐる(イニシエーション)→何かを持って帰る(帰還)」という共通の流れ(モノミス)があると論じた本です。よく言う「17段階」は、この3つの章の中の節の数です。この英雄の旅(ヒーローズジャーニー)を、ディズニーで働いていたクリストファー・ボグラーが、書き手向けに12のステージに整理しました。その本の最初の日本語版の題が『神話の法則』です。
| 呼び名 | 何のことか |
|---|---|
| 千の顔をもつ英雄 | キャンベルの本(1949年)。邦訳の新訳版は早川書房のハヤカワ文庫NF(2015年、上下2冊)。邦題の表記は「もつ」 |
| モノミス(単一神話) | キャンベルが、ジェイムズ・ジョイスから借りた言葉。どの文化の英雄の話にも共通する型のこと |
| 17段階 | 本の第1部「英雄の旅」の、出立(5)・イニシエーション(6)・帰還(6)の節の数 |
| ヒーローズジャーニー(英雄の旅) | キャンベルが論じた、英雄がたどる旅の型の呼び名。元の本の中には出てこず、のちにキャンベル自身が使うようになった(キャンベル財団の説明)。ボグラーの12ステージを指して使われることも多い |
| 12ステージ・神話の法則 | ボグラーが書き手向けに整理した型。著書『The Writer’s Journey』の第2版の邦訳が『神話の法則』(2002年)、25周年記念版の邦訳が『作家の旅』(2022年) |
この記事では、本の要約と12ステージの説明のあとで、私自身が古本の転売を始めた経緯を、この型に当てはめた例を出します。作り話の例ではなく、実際に私の発信で使っている筋です。最後に、ページの中で書き込めるテンプレートを置きました。
先に、正直に書きます。私は『千の顔をもつ英雄』を読み切れていません。読んでほしいのは、ボグラーの『神話の法則』のほうです。いま買うなら、新しい訳の『作家の旅』をすすめます。理由は1章に書きます。
1. 先に、立場を書きます
私は中古品の売買を20年近く続けてきた出品者で、いまは講座や個別指導を売っています。この型は、自己紹介と、メール講座の登録ページを作るときの土台にしています。
1-1. 『千の顔をもつ英雄』は、上巻で投げた
2016年5月29日に、『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上』(ハヤカワ文庫NF)を買いました。実務に使うために、理論の部分の解説を期待していました。ところが、上下2冊の分量で、訳も冗長で、何が言いたいのかを探すのが大変でした。読むのが苦痛なほどで、眠くなって読み進められず、途中で投げました。
だから、この記事の要約は、本文ではなく、早川書房の書籍ページ、大学図書館の目録(CiNii)とアメリカ議会図書館の目次、キャンベル財団(Joseph Campbell Foundation)の説明で書いています(2026年10月9日に確認)。本文の細部は扱っていません。
1-2. 読んでほしいのは『神話の法則』(いまは『作家の旅』)
ボグラーの本は、2002年の『神話の法則』と、2022年の『作家の旅』の両方を読みました。いま本棚に残っているのは『作家の旅』です。こちらのほうが読みやすいので、買うなら『作家の旅』をすすめます。ただ、売る文章や物語づくりの話では、いまも「神話の法則」という呼び名で語られることが多く、2つの呼び名は並んで出てきます。
1-3. 会ったことのない人に、神話の法則だけで売ってきた
私は、スタート地点からゴールまでの一貫した流れを、神話の法則の流れに沿って作ります。登録ページ(LP)も、ステップメールも、全部です。AIがなかったころは、神話の法則だけで、一度も会ったことのない人たちに売ってきました。そのころの規模は、メルマガの登録が月に100人前後、売上は月80万円から150万円ほどで推移していました。
私は、フォトショップもプレミアも使えません。LPには画像をほとんど使わず、文字が中心の2万字から5万字の手紙(セールスレター)です。それが読まれて、買われてきました。デザインや動画の技術が足りない分を、神話の法則で突破してきた、というのが実感です。
いまは神話の法則以外の型も使っていて、全体の組み立てはAIに任せています。それでも、ほかのスキルや知識が足りなくても、神話の法則と、主張を裏付ける経験があれば突破できる、と私は考えています。
2. 『千の顔をもつ英雄』の要約
2-1. どんな本か
キャンベル財団の説明では、『千の顔をもつ英雄』(The Hero with a Thousand Faces)は1949年にボーリンゲン叢書の17番目として出た、キャンベルが1人で書いた初めての長い本です。英雄の神話を研究して、どの文化の英雄の話にも共通する型(モノミス)があると論じました。
日本語の新訳版(早川書房、2015年12月、倉田真木・斎藤静代・関根光宏訳、上下2冊)の目次は、次のとおりです。
| 部 | 中身 |
|---|---|
| プロローグ | モノミス―神話の原形 |
| 第1部 英雄の旅 | 出立、イニシエーション、帰還、鍵 |
| 第2部 宇宙創成の円環 | 流出、処女出産、英雄の変貌、消滅 |
| エピローグ | 神話と社会 |
よく紹介される「英雄の旅」は第1部で、第2部は世界の始まりと終わりの神話の話です。要約で17段階だけを見ると、本の後半があることが抜け落ちます。
2-2. ひとことで言うと
キャンベル財団が、本の中から引いている一文です(訳は私)。
英雄は、ふだんの世界から、超自然の不思議な領域へ冒険に出る。そこで途方もない力に出会い、決定的な勝利を得る。英雄は、その不思議な冒険から、仲間に恵みを与える力を持って帰ってくる。
2-3. モノミスとは
モノミス(monomyth、単一神話)は、キャンベルが作家ジェイムズ・ジョイスから借りた言葉です。キャンベル財団の説明では、どの文化の英雄の話にも共通する、話の芯になる型を指します。
その芯は、「分離(出立)→イニシエーション→帰還」の3つです。キャンベルはこれを、成人の儀式のような通過儀礼の流れを大きくしたもので、モノミスの核の単位だと書いています。財団は、この3つは英雄の旅に必ずあるが、それぞれの中の細かい段階は、全部がそろうわけではないと説明しています。
2-4. 第1部の17の節(よく言う「17段階」)
アメリカ議会図書館の目次(2008年の版)で、第1部の3つの章の節は、次の17です。日本語は、節の名前を私が訳したもので、新訳版の訳語とは違うことがあります。
| 章 | 節(原文) | 日本語(訳は私) |
|---|---|---|
| 出立 | 1. The Call to Adventure | 冒険への呼びかけ |
| 2. Refusal of the Call | 呼びかけの拒否 | |
| 3. Supernatural Aid | 超自然の助け | |
| 4. The Crossing of the First Threshold | 最初の境界を越える | |
| 5. The Belly of the Whale | 鯨の腹の中 | |
| イニシエーション | 6. The Road of Trials | 試練の道 |
| 7. The Meeting with the Goddess | 女神との出会い | |
| 8. Woman as the Temptress | 誘惑する女 | |
| 9. Atonement with the Father | 父との和解 | |
| 10. Apotheosis | 神格化 | |
| 11. The Ultimate Boon | 究極の恵み | |
| 帰還 | 12. Refusal of the Return | 帰還の拒否 |
| 13. The Magic Flight | 魔法の逃走 | |
| 14. Rescue from Without | 外からの救出 | |
| 15. The Crossing of the Return Threshold | 帰りの境界を越える | |
| 16. Master of the Two Worlds | 2つの世界の主 | |
| 17. Freedom to Live | 生きる自由 |
第1部には、このあとに第4章「鍵(The Keys)」があります。番号の1〜17は、章をまたいで私が通しで振ったものです。
2-5. 読むときの注意:全部の神話に、この順番で出てくるわけではない
キャンベル財団は、17の節を「すべての英雄神話に、決まった順番で出てくる手順」と読むのは、キャンベルの言いたかったことではない、と説明しています。冒険の山場も、聖なる結婚、父との和解、神格化、霊薬を盗み出す、の4つのどれになるかは話しだいだと書いています。
また、「the hero’s journey(英雄の旅)」という言い方は、元の本の中には出てきません。本では「英雄の探求」「英雄の行い」といった言い方をしていて、のちにキャンベル自身が「英雄の旅」という言い方を使うようになった、と財団は説明しています。
2-6. 『スター・ウォーズ』との関係
キャンベル財団は、ジョージ・ルーカスが1985年に話した言葉を紹介しています。脚本の下書きを何度も書いて、何百ページにもなって行き詰まっていたところで『千の顔をもつ英雄』に出会い、「500ページほどあったものを、これが話だ、と言ってくれた」という内容です(要約は私)。早川書房の書籍ページも、この本を〈スター・ウォーズ〉シリーズ創造のインスピレーションの源と紹介しています。
3. ヒーローズジャーニー(神話の法則)の12ステージ
3-1. ボグラーが、ディズニーで書いたメモから
クリストファー・ボグラーは、ウォルト・ディズニー社で働いていたときに、キャンベルの込み入った体系を、書き手や映画会社の人が物語を良くするために使える「実用の手引き」に書き直した、7ページのメモを書きました。このメモが出発点になって、のちに著書『The Writer’s Journey』になった、と本人がブログに書いています。
日本語版は、原書の第2版を訳した『神話の法則 ライターズ・ジャーニー』(岡田勲監訳、講元美香訳、ストーリーアーツ&サイエンス研究所、2002年)と、25周年記念版を訳した『作家の旅 ライターズ・ジャーニー 神話の法則で読み解く物語の構造』(府川由美恵訳、フィルムアート社、2022年)です。「神話の法則」という呼び名は、この本の題から来ています。ステージの訳語は版で違い、たとえば2022年の訳では「日常世界」「冒険への誘い」「冒険の拒否」「師との出会い」「最初の戸口の通過」です(CiNiiの目次)。
3-2. 12のステージ
ステージの名前は、アメリカ議会図書館の目次(2007年の第3版)のものです。日本語は、2002年の日本語版の「日常の世界」「冒険への誘い」に合わせた私の言い方です。例には、この型でよく分析される映画『スター・ウォーズ』(1977年の第1作)を使いました。当てはめ方は一例です。
| ステージ | 原文 | 何が起きるか | 『スター・ウォーズ』では(一例) |
|---|---|---|---|
| 1 日常の世界 | Ordinary World | 旅に出る前の暮らし。何かが足りない | 辺境の星の農場で働くルーク |
| 2 冒険への誘い | Call to Adventure | 日常を破る知らせや出来事 | ロボットに入っていたレイア姫の伝言 |
| 3 冒険の拒否 | Refusal of the Call | いったん断る | 農場の仕事がある、と断る |
| 4 賢者との出会い | Meeting with the Mentor | 導く人が現れる | オビ=ワン・ケノービ |
| 5 第一関門の突破 | Crossing the First Threshold | 後戻りできない一歩 | 家族を失い、星を出る |
| 6 試練、仲間、敵 | Tests, Allies, Enemies | 新しい世界のルールを学ぶ | ハン・ソロたちと組む |
| 7 最も危険な場所への接近 | Approach to the Inmost Cave | いちばん奥の、怖い場所へ近づく | デス・スターの内部へ入る |
| 8 最大の試練 | Ordeal | 死に近い体験。何かを失う | オビ=ワンを失う |
| 9 報酬 | Reward (Seizing the Sword) | 試練の先で、何かを手に入れる | 姫を救い出し、設計図の入ったロボットと一緒に脱出する |
| 10 帰路 | The Road Back | 追われながら戻る | 追ってくる戦闘機を振り切って基地へ戻るが、デス・スターも基地に迫る |
| 11 復活 | Resurrection | 最後の戦いで、別の人間になる | 計器を切り、自分の感覚を信じて撃つ |
| 12 宝を持っての帰還 | Return with the Elixir | 手に入れたものを、元の世界に持ち帰る | 仲間のもとへ戻る |
大きく分けると、旅立ち(1〜5)、試練(6〜9)、帰還(10〜12)の3つです。
3-3. キャンベルの17段階との違い
- キャンベルの出立は「冒険への呼びかけ」から始まります。ボグラーは、その前に「日常の世界」を置きました
- 名前が同じなのは、冒険への呼びかけ(誘い)、呼びかけの拒否、最初の境界を越える(第一関門の突破)の3つです。ほかは、1対1には対応しません
- キャンベルの17は、神話を比べた本の節です。ボグラーの12は、書き手が物語を組み立てたり直したりするための手引きです
- ボグラーの本には、英雄、賢者(メンター)、門番、使者、変身する者、影、トリックスターといった登場人物の型(アーキタイプ)の章もあります
- キャンベルの本の第2部(宇宙創成の円環)は、12ステージには入っていません
どちらも大きな流れは「出る・試される・帰る」で、ボグラーはその中の要素を、書き手が使いやすいように並べ直しています。厳密な対応表があるわけではありません。物語の型として使うなら12ステージのほうが扱いやすく、神話そのものを知りたいならキャンベルの本、という分け方になります。
4. 実例:私が古本の転売を始めた話を、当てはめる
4-1. 4つの場面で書いた話
12は、自分の話を書くには多すぎます。私は、ふだんは4つに絞って書いています。どの出来事をどのステージに置くかは、私の当てはめです。
日常の世界
大学3年生。研究室には受け入れてもらえず、就職活動では面接で落ち続けていました。まわりの、ほかの大学の学生のレベルの高さに圧倒され、ここまで差がついているのかと絶望していました。
冒険への誘い
ある日、就活の帰りに、たまたまブックオフの門前仲町の店に入りました。数日前にAmazonで買ったばかりのロジカルシンキングの本が、100円で売られていました。あまりに安いので買って、Amazonに出してみたら、30分で売れました。これは、同じことを繰り返せるのではないか。
最も危険な場所への接近
内定は取れました。けれど、自分が社会人としてやっていける確信が持てません。頼んでインターンをさせてもらい、任されたのはホームページの更新でした。かんたんな更新なのに、3時間、4時間かけても、まったくできません。隣の席には、1年先に入った、自分より年下の先輩がいて、上司から、仕事ができないことを延々と怒られ続けていました。この場所で、やっていけるのか。
宝を持っての帰還
インターンが終わり、留年も決まったので、内定を辞退しました。もう一度就活をやり直し、今度は証券会社に行きたいと思って、学生団体の勉強会にも通いました。IT業界を志望していたときより、志望動機はすらすら話せて、面接は進みます。それでも、三次面接や最終面接で落とされました。そのかたわら、友人と起業もしましたが、しっくりこなくて辞めました。
行きたい会社がない。それなら、自分が行きたい会社を、自分で作るしかない。そう考えて、並行してうまくいっていた古本の転売でやっていくと決めました。弟子入りした先輩の指導が自分に合っていて、言われたことを全部やったら、月の収入が50万円まで上がり、就職する必要がなくなりました。
4-2. 12ステップに全部当てはめた表
右端の列は、実際に起きた順番です。型の順番とは一致しません。
| ステップ | 私の場合 | 実際の順番 |
|---|---|---|
| 1 日常の世界 | 大学3年生。研究室に受け入れてもらえず、就職活動では面接で落ち続ける。まわりの他大学の学生との差に絶望していた | 1 |
| 2 冒険への誘い | 就活の帰りに入ったブックオフ門前仲町店で、数日前にAmazonで買ったロジカルシンキングの本が100円で売られていた。買ってAmazonに出したら、30分で売れた | 2 |
| 3 冒険の拒否 | それでも就職するつもりで就活を続け、内定を取った | 3 |
| 4 賢者との出会い | 弟子入りした先輩。指導が自分に合っていた | 9 |
| 5 第一関門の突破 | 留年が決まり、内定を辞退した | 5 |
| 6 試練・仲間・敵 | 証券会社を目指して学生団体の勉強会に通う。友人と起業するが、しっくりこなくて辞める | 6 |
| 7 最も危険な場所への接近 | 頼んでさせてもらったインターン。ホームページのかんたんな更新が、3〜4時間かけてもできない。隣では、年下の先輩が上司に怒られ続けていた | 4 |
| 8 最大の試練 | 志望動機はすらすら話せるのに、三次面接、最終面接で落とされ続ける | 7 |
| 9 報酬 | 「行きたい会社がないなら、自分が行きたい会社を自分で作るしかない」という考え | 8 |
| 10 帰路 | (空欄) | ― |
| 11 復活 | 先輩に言われたことを、全部やった | 10 |
| 12 宝を持っての帰還 | 月の収入が50万円になり、就職する必要がなくなった | 11 |
※50万円は、当時の古本の相場での数字です。いま同じことをやって、同じ結果になるわけではありません。
4-3. 当てはめて分かったこと
- 順番は入れ替わります。型では4番目の「賢者との出会い」が、私の場合は9番目に起きました。7番目の「危険な場所への接近」は、4番目に起きています。現実は、脚本のようには進みません。順番を型に合わせるために、事実を動かしてはいけません
- 空欄が出ます。10番の「帰路」に当たる出来事は、私にはありませんでした。無理に埋めると、作り話になります
- 宝は、小さくてかまいません。私の話の宝は「就職する必要がなくなった」です。大金持ちになった、ではありません。読む人が自分の話として読めるのは、手が届く大きさの宝のほうです
- 省きたくなるのは、試練の場面です。3時間かけてもホームページを更新できなかった話は、書いていて気分のいいものではありません。でも、ここを省くと、残るのはただの成功談です
- 12の枠に並べると、抜けが見えます。4つの場面だけで書いた話には、3番(本が売れたあとも、就職するつもりだった)が入りません
2-5のキャンベル財団の説明のとおり、この型は、全部の段階が順番どおりに出てくる手順ではありません。私の話で空欄や入れ替わりが出るのも、そのためです。
5. 売る文章での使い方は、2つある
5-1. 自分の話を、この型で語る
4章がそれです。自己紹介や、メール講座の早い回で使います。目的は、信用してもらうことよりも、覚えてもらうことです。私自身、この型で作られた作品は、あとまで覚えています。案内を受け取る側にとっても同じで、「ほかの売り手とは違う何か」として記憶に残ります。いろいろな型を試しましたが、結果がいちばん安定したのは、この型を表現の土台にしたときでした。
5-2. 読む人を、主人公にする
私のメール講座の登録ページは、章がそのまま旅のステージになっています。ページの中の小さな英語の見出しも、THE ORDINARY WORLD(日常の世界)、THE CALL(誘い)、THE THRESHOLD(関門)、CROSSING THE THRESHOLD(関門の突破)と、ステージの名前をそのまま使っています。ただし、主人公は私ではなく、読む人です。
| 登録ページの章 | ステージ | 書いてあること |
|---|---|---|
| いまの現在地 | 日常の世界 | 正しい選択が通らない、承認を3週間待たされる、という読む人の毎日 |
| 同じ構造が、別の場所にもある | 冒険への誘い | 「壊れているから安い」のではない、という知らせ |
| ここで、たいてい足が止まる | 冒険の拒否 | 「自分に直せるのか」という、断る理由への答え |
| 私は、あなたとは真逆の地点から始めました | 賢者との出会い | 私の経歴。私は主人公ではなく、案内する側 |
| まず14通、受け取ってください | 第一関門の突破 | 登録 |
売る側が主人公のままのページは、自慢話になります。読む人を主人公にして、自分は4番目の「賢者」の席に座る。これが、売る文章でのいちばん大事な使い方だと考えています。ページ全体の構成はLPの作り方に書きました。
6. 書き込み式テンプレート
12ステップを、そのまま書き込めるひな形です。各ステップの下には書くことの目安を付けました。実際に起きた順番を入れておくと、型の順番とは別に、起きた順に並べ直した骨組みも出ます。まとめた文はコピーできます。
神話の法則テンプレート(12ステップ・書き込み式)
書けるところだけ書いてください。1ステップにつき、1〜3文で足ります。右の小さな欄には、その出来事が実際に何番目に起きたかを入れます(分からなければ空欄)。入力した内容は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。
6-1. 時間がない人のための、4つの問い
12は、自分の話を書くには多すぎます。私がふだん使っているのは、次の4つだけです。上のテンプレートの1・2・7・12番だけを埋めれば、この4つになります。
- 日常の世界:始める前、どこで、何に行き詰まっていたか。(場所と、年と、具体的な場面)
- 冒険への誘い:最初の「あれ?」は何だったか。(日付が浮かぶくらいの、小さな出来事)
- 最も危険な場所への接近:いちばん「自分はだめかもしれない」と思った場面はどこか。
- 宝を持っての帰還:何を手に入れて、何をしなくてよくなったか。(小さく、正確に)
6-2. AIに文章にしてもらうときの順番
テンプレートを埋めてから、AIに渡してください。「骨組みにまとめる」で出てきた文を、実際に起きた順番も含めてそのまま貼り、出来事と順番は変えないように頼みます。
逆の順番、つまり、何も渡さずに「神話の法則で、感動的な起業ストーリーを書いて」と頼むと、AIは12ステップを全部、もっともらしい出来事で埋めてきます。空欄も、順番の入れ替わりもない、きれいな話です。きれいすぎる話は、誰の話でもありません。4-2の表の「空欄」と「実際の順番」の列は、AIには埋められません。材料と文章の分け方はコンテンツの作り方に書きました。
7. 使うときに守っていることと、この型の限界
7-1. 守っていること
- 事実を動かさない。型に合わせるために、順番や出来事を作らない
- 宝を大きく書かない。「あなたもこうなれます」と約束しない。私の50万円は、当時の古本の相場での数字です
- 試練を省かない。うまくいった場面だけを並べると、型はただの自慢の順番表になります
- 帰還のあとも書く。私の場合、就職しなくてよくなったあとに、自分の作業時間がそのまま収入の上限になる、という別の壁が来ました。旅は1回で終わりません。続きは自己紹介に書いてあります
7-2. この型の限界
型だけで売れる、ということはありません。1-3に書いたとおり、私は神話の法則だけで売ってきましたが、その裏には、主張を裏付ける経験がありました。私は同じ作り方で、個別指導の案内をしてきました。教える中身が無在庫転売だった時期は、およそ30人に1人が申し込みました。修理して売る方法に変えてからは、およそ100人に1人です。物語は、覚えてもらうためのものです。買う理由そのものは、商品と、相手との相性が決めます。
登場人物の型(アーキタイプ)は、使いにくいので、私はあまり使っていません。物語を作る人には役に立つ道具です。ただ、私の発信の中身は、特定のキャラクターを演じることからではなく、自分との対話と内省から出てきました。12タイプの一覧と診断はアーキタイプ診断に置いてあります。
どの話にも当てはまるわけではありません。キャンベルの型も、キャンベルが神話を比べて論じたもので、すべての物語に当てはまると証明された法則ではありません。旅に出ない主人公、帰ってこない主人公の物語もあります。型は、書き終わったあとに「試練を省いていないか」「宝を盛っていないか」を点検する道具として使うのが、ちょうどよい距離です。
8. よくある質問
『千の顔をもつ英雄』の内容は?
世界中の英雄の神話を比べて、出立・イニシエーション・帰還という共通の流れ(モノミス)があると論じた本です。第1部が英雄の旅、第2部が世界の始まりと終わりの神話(宇宙創成の円環)です(2章)。
モノミスとは、どういう意味ですか?
キャンベルがジェイムズ・ジョイスから借りた言葉で、どの文化の英雄の話にも共通する型のことです。芯は「分離(出立)→イニシエーション→帰還」の3つです(2-3)。
スター・ウォーズと『千の顔をもつ英雄』は関係ありますか?
あります。キャンベル財団は、ルーカスが1985年に、脚本に行き詰まっていたところでこの本に出会い、話の形が決まったと語った言葉を紹介しています。早川書房も、〈スター・ウォーズ〉創造のインスピレーションの源と紹介しています(2-6)。
ヒーローズジャーニーと神話の法則は、違うものですか?
ヒーローズジャーニー(英雄の旅)は、キャンベルが論じた英雄の旅の型の呼び名で、キャンベル自身ものちに使いました。『神話の法則』は、ボグラーがそれを書き手向けに12ステージに整理した本の、2002年の日本語版の題です。12ステージのことを「ヒーローズジャーニー」と呼ぶ説明もよく見かけますが、キャンベルの本の17の節とは区切り方が違います(3章)。
17段階と12ステージ、どちらを使えばいいですか?
自分の話や物語を組み立てるなら、12ステージのほうが扱いやすいです。それでも12は多いので、私は1・2・7・12番の4つで書いています(6-1)。神話そのものを知りたいなら、キャンベルの本です。
「千の顔を持つ英雄」と「千の顔をもつ英雄」、どちらが正しい表記ですか?
早川書房の新訳版の題は「千の顔をもつ英雄」(ひらがなの「もつ」)です。検索では「持つ」と漢字で書かれることも多く、同じ本を指しています。
『千の顔をもつ英雄』と『神話の法則』、読むならどちらですか?
私は『神話の法則』をすすめます。いま買うなら、新しい訳の『作家の旅』(フィルムアート社、2022年)です。『千の顔をもつ英雄』は、新訳版の上巻を買いましたが、訳が冗長で読み切れませんでした(1-1)。
『神話の法則』と『作家の旅』は、同じ本ですか?
同じボグラーの『The Writer’s Journey』の日本語版です。『神話の法則』(2002年)は原書の第2版の訳、『作家の旅』(2022年)は25周年記念版の訳です(3-1)。
9. まとめ
- 読むなら『神話の法則』。いま買うなら新しい訳の『作家の旅』。『千の顔をもつ英雄』は、私は訳が読みにくく、読み切れなかった
- 『千の顔をもつ英雄』は、英雄の神話に共通の型(モノミス)があると論じた、1949年のキャンベルの本。芯は出立・イニシエーション・帰還の3つ
- 「17段階」は、第1部の3つの章の節の数。全部の神話に順番どおり出てくる手順ではない
- ヒーローズジャーニー(英雄の旅)は、キャンベルの型の呼び名。ボグラーが書き手向けに12ステージに整理し、その本の邦訳の題が『神話の法則』
- 自分の話を書くなら、日常・誘い・接近・帰還の4つで足りる。現実の出来事は、型の順番どおりには起きない
- 売る文章では、読む人を主人公にして、自分は「賢者」の席に座る。物語は覚えてもらうためのもので、売れるかどうかは商品と相手が決める
10. 出典
- Joseph Campbell Foundation「Joseph Campbell and the Hero’s Journey」https://www.jcf.org/learn/joseph-campbell-heros-journey
- 早川書房「千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上」(ハヤカワ文庫NF、2015年12月18日)https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000090452/
- CiNii Books「千の顔をもつ英雄」(早川書房、2015年、目次)https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB20347657
- Library of Congress「Table of contents for The hero with a thousand faces」https://catdir.loc.gov/catdir/toc/ecip0816/2008014990.html
- Library of Congress「Table of contents for The writer’s journey」https://catdir.loc.gov/catdir/toc/ecip0721/2007026844.html
- Chris Vogler’s Writer’s Journey Blog(Walt Disney の記事)https://chrisvogler.wordpress.com/category/walt-disney/
- CiNii Books「神話の法則 ライターズ・ジャーニー」(2002年)https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA61640440
- CiNii Books「作家の旅 ライターズ・ジャーニー」(2022年)https://ci.nii.ac.jp/ncid/BC13366080
(いずれも2026年10月9日に確認)
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| コンテンツの作り方 | 材料は自分、文章はAI、という分け方 |
| 細野悠輔 自己紹介 | 4章の話の続き |
12. この記事について
| 書いた人 | 中古品の売買を20年近く続けてきた出品者。自己紹介とメール講座の登録ページを、この型を土台に作っている |
| 確かめた日 | 2026年10月9日(キャンベル財団の説明、早川書房の書籍ページ、CiNiiとアメリカ議会図書館の目次、ボグラー本人のブログ)。2026年11月1日(フィルムアート社の『作家の旅』の書誌) |
| 私の経験から書いたこと | 古本の転売を始めた経緯と、その12ステップへの当てはめ。メール講座の登録ページの構成。個別指導の申し込みの割合(30人に1人、のちに100人に1人)。使うときに守っていること。『千の顔をもつ英雄』を上巻で投げたこと。『神話の法則』と『作家の旅』を読んだこと。神話の法則だけで売っていたころの規模(登録が月100人前後、売上が月80万〜150万円)。LPが文字中心の2万〜5万字であること |
| 確かめられなかったこと | 原書と新訳版の本文、各節の新訳版での訳語、ボグラーの日本語版の各ステージの訳語。本の中身は、目次とキャンベル財団の説明の範囲で書いている |
| この記事にまとめた記事 | 「ヒーローズジャーニー(英雄の旅)とは」と「神話の法則テンプレート」は、この記事にまとめました |
