Amazonせどりは、何も売れなくても固定費が出ていく商売です。価格改定ツールが月5,000円前後、Keepaが月29ユーロ、そこにリサーチや管理のツールを足していくと、月1万円近くが先に消えます。私が現役で回していたときもそうでした。
いまはAIがコードを書きます。「有料ツールでできることをAIに伝えれば、自分で作って代替できるのではないか」。私はそう考えていて、実際にいくつか作らせて使っています。この記事では、せどりの有料ツールを種類ごとに、自作で代替できる水準にあるかを判定します。
先に結論です。
- ロジックだけを見れば、価格改定も監視も高度なプログラミングではない。AIに仕様を伝えれば動くものは出てきます。
- 有料ツールの値段の正体は、コードの難しさではない。蓄積データ、24時間の運用、仕様変更への追随、事故の防止です。
- 管理表・集計・通知は今すぐ自作で代替できる。価格改定は条件つきで代替できる。Keepaは代替できない。自動購入botは作れても勧めない。
私がAIに作らせて使っているもの
私はプログラマーではありません。以下はどれも、やりたいことを日本語で伝えて、AIに作らせたものです。
契約の管理シート(表計算→カレンダー登録)
携帯回線の乗り換え(ケーコジ)は、回線ごとに契約日と解約してよい日が違い、1日ずれると損が出ます。表に契約日を入れるだけで解約の日付が自動で計算され、そこからGoogleカレンダーに直接予定を登録できる仕組みを作らせました。やっていることは日付の足し算とカレンダーへの受け渡しだけですが、これで「覚えておく」という作業が消えました。回線の回し方そのものはケーコジの記事に書いています。
株のスクリーニング
米国株や日本株の銘柄リストを渡し、条件に合うものを抽出させます。そこからさらに、チャートの形と現在の位置を見て、入る優位性があるものに絞り込ませます。条件で機械的に落とす部分と、形を見て絞る部分の2段です。
この2つに共通するのは、入力が自分の手元にあり、間違えても自分で気づけて、24時間動かす必要がないことです。この条件を満たす作業は、いますぐAIで自作に置き換えられます。せどりのツールがこの条件をどこまで満たすかを、次の章から見ていきます。
有料ツールの値段の正体は4つに分かれる
月額課金のツールに払っているお金は、次の4つの合計です。自作で代替できるかどうかは、この4つのどれが本体かで決まります。
| 軸 | 中身 | 自作で埋まるか |
|---|---|---|
| ロジック | 「最安値に合わせる」「条件に合う行を抜き出す」といった処理の手順 | 埋まる。AIがいちばん得意な部分 |
| データ | 過去の価格推移やランキング推移など、時間をかけて貯めたもの | 埋まらない。過去には戻れない |
| 運用 | 24時間止めずに動かす、APIの仕様変更に追随する、認証情報を更新する | 埋まるが、自分の時間を払い続ける |
| 規約と事故 | 公式に許可された接続方法を使う、誤った価格で売ってしまう事故を防ぐ | 公式APIがあれば埋まる。なければ埋めてはいけない |
「自動購入botや価格改定ツールは、そんなに高度な技術ではないのでは」という私の感覚は、ロジックの軸に限れば当たっています。外れるのは残りの3つです。
ツール別の判定
| ツールの種類 | 値段の本体 | 判定 |
|---|---|---|
| 在庫・利益・契約の管理表、売上の集計 | ロジック | 代替できる。ここから始める |
| 商品説明文の作成、出品文の改善 | ロジック | 代替できる。ツールではなくAIに直接やらせる |
| 自分の出品の価格・在庫の監視と通知 | ロジック+運用 | 代替できる(公式APIの範囲) |
| 価格改定 | ロジック+運用+事故防止 | 条件つきで代替できる。出品数が少なく、ルールが単純な段階まで |
| 価格・ランキングの推移(Keepa) | データ | 代替できない |
| 他サイト・フリマの新着監視 | 規約 | 作れるが、長く使える前提で作らない |
| 自動購入bot、自動入札 | 規約+速度の競争 | 作れるが勧めない |
価格改定ツールを分解する
最初に断っておくと、私は価格改定ツールを自作して運用したわけではありません。現役のときは有料ツールを使っていました。以下は、有料ツールがやっていることを工程に分け、自作で埋まるかを軸ごとに判定したものです。
やっていることは3工程
- 調べる:自分の出品と同じ商品の、ほかの出品者の価格・コンディション・FBAかどうか・カートを取っているのは誰かを取得する
- 決める:「FBA同士の最安値に合わせる」「カート価格に合わせる」「ただし下限価格は割らない」といったルールで、新しい価格を計算する
- 書き込む:計算した価格をAmazonに反映する
2の「決める」は足し算と比較だけで、AIに日本語でルールを伝えればそのままコードになります。1と3は、Amazonが出品者向けに公開しているAPI(SP-API)で行います。画面を自動操作して価格を書き換える方法は、規約の面でも安定性の面でも選択肢に入れません。
始める前に必要なもの
- 大口出品のアカウント。SP-APIを使う前提です。
- 開発者としての登録。セラーセントラルから開発者プロフィールを申請し、自分のアカウント専用のアプリとして登録します。他人に配るツールではなく自分専用、という申請になります。申請の画面と審査の内容は変わるので、手順はセラーセントラルの現行の案内に従ってください。
- 認証情報の管理。発行された認証情報には期限があり、定期的な更新が要ります。切れると、ある日から黙って価格改定が止まります。
- 動かし続ける場所。自宅のパソコンをつけっぱなしにするか、月数百円〜のサーバーを借ります。
事故を防ぐ部分を、最初に作る
自作でいちばん怖いのは、動かないことではなく、間違って動くことです。桁を間違えた価格が反映されれば、在庫が数分で全部売れます。有料ツールの月額には、この事故を起こさないための検証が含まれています。自作するなら、価格を決めるロジックより先に、次のガードを作らせてください。
- 商品ごとの下限価格を必須にし、未設定の商品は改定しない
- 1回の改定で動かしてよい幅に上限を置く(前回価格から◯%以上の変更は止めて通知する)
- 最初の数日は「書き込む」を切り、計算結果を一覧に出すだけにして、目で確認する
- APIがエラーを返したら、その回は何もしない。前の価格を維持する
- 止まったとき、動いたとき、どちらも自分に通知が来る
代替できる範囲
APIには時間あたりの呼び出し回数に上限があるので、出品数が増えるほど全商品を一巡するのに時間がかかります。数千点を数分おきに改定するような使い方は、有料ツールの領分です。逆に、出品が少なく、ルールが「FBA最安値に合わせる、下限は割らない」程度で、1日に数回の改定で足りる段階なら、自作で足ります。初期の段階では、そこまで高機能なものは要りません。
もう1つ見落としやすい点があります。プライスター(月額5,280円・税込)やマカド(月額4,980円・税込)のような価格改定ツールは、価格改定だけのツールではありません。出品、FBA納品の補助、在庫と利益の管理、売上の分析までが同じ月額に入っています(料金は2026年9月に確認)。価格改定だけを自作しても、残りの機能のために結局契約し続けるなら、固定費は1円も減りません。自作するかどうかは、機能ごとではなく、その契約を丸ごと解約できるかで判断します。
Keepaは自作で代替できない
Keepa(2026年の料金改定後で月額29ユーロ)の本体は、グラフを描く機能ではなく、Amazonの膨大な商品について過去の価格とランキングを記録し続けてきたデータそのものです。今日から自分で記録を始めても、手に入るのは今日以降の、自分が選んだ商品の推移だけです。仕入れの判断に要るのは「この商品は去年の同じ時期にいくらで、何個売れていたか」なので、過去に戻れない自作では埋まりません。
ここは払うべき固定費です。Keepaの代わりを探している人は、ERESAはKeepaの代わりになるのかとKeepaは危険なのかを先に読んでください。
監視・通知ツール
自分が出品している商品の価格、カートの取得状況、在庫の残りを定期的に見て、条件に触れたら通知する。これは公式APIの範囲で作れます。通知先をメールやチャットにするだけなので、ロジックとしては契約の管理シートと同じ水準です。
一方、ほかのECサイトやフリマアプリの新着を巡回して通知する仕組みは、事情が違います。かつてフリマウォッチという、複数のフリマアプリを横断して通知を出せるアプリがあり、優位性がありました。しかしフリマ側が規制したことで対応できなくなり、消えました。外部から巡回して得た優位性は、プラットフォームの規制1つで消えます。作ること自体はAIで難しくありませんが、長く使える前提で時間を投じるものではありません。
自動購入botと自動入札は、作れても勧めない
ロジックは単純です。だから「作れるか」と聞かれれば作れます。勧めない理由は3つあります。
- 規約。多くのECサイトは、自動化した手段での購入を利用規約で禁じています。見つかればアカウントを失い、そのサイトでの仕入れ自体ができなくなります。
- 速度の競争。人気商品の自動購入は、同じことをしている相手との速さの勝負です。回線、サーバーの場所、検知のすり抜けに投資している相手に、AIに書かせた初めてのコードで勝つ場面はほぼありません。
- ログイン情報。購入も入札も、自分のアカウントのログイン情報と支払い手段をプログラムに持たせることになります。管理を誤ったときの損失が、浮く月額と釣り合いません。
私はヤフオクの仕入れに自動入札ツールを使っていますが、これは既存のツールを契約しています。自作は考えていません。自動入札の仕組みそのものはヤフオクの自動入札に勝てない理由に書きました。
いますぐ代替できるのは、管理と集計
固定費を減らす目的なら、最初に手をつけるのはここです。
- 在庫と利益の管理表:仕入日・仕入値・売値・手数料を入れると、利益と在庫の経過日数が出る表。
- 損切りの点検:在庫の一覧をAIに読ませて、決めた日数を過ぎた在庫と余剰在庫を抜き出させる。やり方はせどりの損切りタイミングに書きました。
- カードの引き落としと入金の予定表:締め日と引き落とし日を入れておくと、不足が出る日が先に分かる表。
- 売上レポートの集計:セラーセントラルからダウンロードしたレポートを読ませて、月別・商品別にまとめさせる。
どれも、入力が自分の手元にあり、間違えても自分で気づけて、24時間動かす必要がありません。プログラミングすら要らず、表計算ソフトとAIとの会話で完結します。有料の管理ツールにこの機能のためだけに払っているなら、今月で解約できます。
自作が得かどうかの計算
自作は無料ではありません。作る時間と、直し続ける時間を払います。置き換えるツールの月額と比べて、何か月で元が取れるかを出してください。
自作の回収月数の計算機
解約できるツールの月額の合計(円)
作るのにかかる時間の見積もり(時間)
毎月の手直し・見守りにかかる時間(時間/月)
自分の1時間の値段(円。その時間を仕入れや出品に使ったら稼げる額)
サーバー代・AIの利用料など、自作で新しくかかる月額(円)
初期値は入力例で、私の実績や目安ではありません。AIの利用料は、すでに別の用途で契約しているなら0円で構いません。
この計算で効くのは「自分の1時間の値段」です。仕入れに行けば稼げる人ほど、自作は割に合いません。逆に、資金が小さく、時間はあるが毎月の固定費が重い段階の人ほど、自作の意味が大きくなります。ツール代が月商に対して重すぎないかの目安はせどりアプリは月商いくらから成立するかとせどりアプリ×バーコードリーダーの実コストで計算しています。
金額に出ない利点も1つあります。自分で作ると、ツールが何をしているかが分かります。「なぜこの価格になったのか」を説明できない道具に在庫の値付けを任せている状態から、抜けられます。
AIへの頼み方
いきなり「価格改定ツールを作って」と頼むと、動くけれど危ないものが出てきます。順番があります。
- いま契約しているツールの機能一覧を貼り、自分が実際に使っている機能に丸をつけさせる。公式サイトの機能紹介をそのまま貼って、「私が使っているのはこれとこれです。残りは要りません」と伝えます。作る範囲が数分の一になります。
- コードの前に、仕様を日本語で書かせる。「何を入力にして、何を判断して、何を出力するか。失敗したときどうするか」を箇条書きにさせ、自分で読んで直します。ここが読めないものは、作っても運用できません。
- 事故を防ぐ部分から作らせる。価格改定なら下限価格のガードと、書き込まずに結果だけ出すモードが先です。
- エラーはそのまま貼る。動かして出たエラー文を、解釈せずに全文貼って直させます。プログラミングの知識がなくても進むのは、この往復ができるからです。
- 認証情報をAIに貼らない。APIの鍵やパスワードは、会話に貼らずに自分のパソコンの設定ファイルに置き、コードからはそれを読み込む形にさせます。「認証情報はコードに直接書かないで」と最初に伝えてください。
Pythonという言語の名前は覚えておいて損はありません。AIに何も指定しなければ、たいていPythonで書いてきます。文法を先に勉強する必要はなく、作りたいものを先に決めて、AIに作らせながら必要な単語だけ覚えれば足ります。手順はPythonの独学はAI時代にどう変わったかに書きました。
よくある質問
プログラミングの経験がまったくなくても作れますか
管理表・集計・通知までは作れます。私自身がそうです。価格改定のように自分のお金が自動で動くものは、経験の有無より、仕様を自分で読んで理解できるかで決めてください。読んで分からないものを動かすのは、経験者でも危険です。
AIの利用料のほうが高くつきませんか
作るときの会話に使うだけなら、月額の定額プランの範囲で足ります。動かし続けるプログラム自体は、AIを呼び出さない限り利用料はかかりません。価格の比較や日付の計算にAIは要らないので、動く部分にはAIを入れない設計にさせてください。
作ったツールを人に売ってもいいですか
自分専用として登録したAPIの利用と、他人に提供するツールとでは、Amazon側の登録の区分が違います。この記事が扱っているのは、自分のアカウントで自分のために使う範囲だけです。
最初に作るなら何ですか
在庫の管理表です。損切りの点検にも、資金繰りの予定にも、あとで価格改定の下限価格の一覧にも、同じ表がそのまま使えます。
まとめ
- 有料ツールの値段は、ロジック・データ・運用・規約と事故防止の4つの合計。AIで埋まるのはロジック。
- 管理表・集計・通知は今すぐ自作で代替できる。入力が手元にあり、間違いに自分で気づけて、24時間動かす必要がないから。
- 価格改定は、出品が少なくルールが単純な段階なら代替できる。事故を防ぐ部分を先に作る。契約を丸ごと解約できないなら固定費は減らない。
- Keepaは蓄積データが本体なので代替できない。
- 自動購入botは作れるが、規約・速度の競争・ログイン情報の3点で勧めない。
- 自作が得かは、作る時間と手直しの時間を自分の時給で換算して、回収月数で判断する。

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