カスタムROMは、スマホに最初から入っているOS(ストックROM)を、別の作り手が組み直したOSに入れ替える仕組みです。メーカーの公式サポートが切れた古い端末を新しいAndroidで動かし続けたり、メーカー独自のUIを自分好みに変えたりできます。
私は実際にPixel 3をLineageOSでAndroid 15まで上げて使っています。以前はEvolution Xも使っていました。中古端末を仕入れて直して売ることも長くやってきました。その両方の立場から、先に結論を3つ書きます。
- 成否は「入れたい端末が、そのROMに今も対応しているか」で大半が決まります。だからこの記事は、対応機種の見分け方と、導入までの流れを中心にします。
- 自分の端末を延命する用途には、価値があります。私のPixel 3は、サポートが切れたあともLineageOSで現役です。
- 一方、カスタムROM化した端末を売る商売は、利益は出ましたが、時間効率が悪くて撤退しました。1台ずつ中身を書き換える手間に、上乗せできる金額が見合わなかったからです。
機種ごとの実際の作業(コマンドなど)は機種で違うので、この記事では書きません。私のPixel 3での実例はPixel 3はまだ使える?LineageOSでAndroid 15にした記録にまとめています。
端末の中身を書き換える作業なので、失敗すると起動しなくなることがあります。無保証・自己責任で、必ずバックアップを取ってから行ってください。
カスタムROMとは何か(「公式」の意味に注意)
スマホには、電源を入れたときに動くOSが入っています。メーカーが用意したこのOSがストックROMで、独自のUIや、消せないアプリ(プリインストールアプリ)が入っていることがあります。
カスタムROMは、これを別の作り手が組み直したOSに入れ替えるものです。代表的なのがLineageOSで、多くのROMがこれをベースに作られています。Evolution XもLineageOSをベースに、Google Pixel風の見た目とカスタマイズを足したROMです。
入れ替えると、メーカーの更新が止まった端末を新しいAndroidで動かし続けたり、メーカー独自のUIを自分好みに変えたり、純正のプリインストールアプリを含まない環境に入れ替えられたりする場合があります。
ここで先に、言葉の意味を1つそろえます。この記事で「公式対応」と言うとき、それはスマホメーカー(Google、Xiaomiなど)が公認しているという意味ではありません。ROMを作っているプロジェクト(LineageOSなど)が、その機種を公式に対応機種として認めている、という意味です。メーカーは、むしろカスタムROMを保証の対象外にします。
導入できる端末の見分け方(この記事で一番大事なところ)
「対応しているか」は、ROMの公式サイトやwikiで確認します。ただ「公式サイトを見てください」だけでは進めないので、どこを見るかを並べます。
| 確認項目 | 見るところ・注意 |
|---|---|
| 型番・コードネーム | 商品名が似ていても別機種。Pixel 3は「blueline」、Pixel 3 XLは「crosshatch」、Pixel 3aは「sargo」で、それぞれ別扱い。自分の端末の型番と一致するか確認する |
| 現在も更新されているか | 機種ページが残っていても、保守が終わっている端末があります。ページの有無ではなく、今のバージョンと最終更新日、スレッドの[CLOSED]表示まで見て判断する |
| 配布ファイルがあるか | 自分の機種向けの公式ビルドが、実際にダウンロードできる状態か |
| 導入条件 | 入れる前に必要な純正ファームウェアのバージョン、指定のリカバリなど。Pixel 3なら「入れる前に純正Android 12」が条件でした |
| 既知の制限 | 通話・SMS・カメラ・おサイフケータイ・決済など、必要な機能に影響がないか |
| 解除条件 | ブートローダーを解除できるか。販売地域や販売元によって解除の可否や条件が変わる機種があります(Xiaomiは後述) |
私が使いやすいと感じるのはEvolution Xですが、機種によって更新がいつまで続くかが違います。実際、Pixel 3向けのEvolution Xは更新が止まったので、私は今LineageOSにしています。「今使えるROMでも、その機種向けの更新がいつまで続くかは別問題」です。長く使う本命の端末ほど、更新が止まっていないものを選んでください。
導入までの一般的な流れ
機種別の書き込みコマンドは違うので、ここでは共通する流れだけを示します。実際の手順は、必ずその機種の公式サイト・wikiに従ってください。
- 型番とROMの対応状況を確認する(上の表)。自分の型番向けの公式ビルドが今もあるか。
- ブートローダーを解除できるか確認する。解除できない機種・地域があります(Xiaomiは後述)。解除すると端末の中身は全部消えます。
- 必要な純正ファームウェアと、バックアップを用意する。入れる前に指定バージョンの純正OSにしておく必要がある機種があります。
- その機種の公式手順で導入する。使うリカバリやコマンドは機種ごとに違います。指定されたもの以外を使うと失敗することがあります。
- 必要な機能と、導入後の更新方法を確認する。通話・決済などが使えるか、今後どうやって更新するか。
この流れの2〜4を、私のPixel 3で実際にどう進めたか(TWRPやOrangeFoxで失敗し、公式のLineage Recoveryで通したこと)はPixel 3の記録に書いています。
なぜ入れたいのか:私の場合とXiaomiの場合
私がPixel 3に入れた理由は、Googleの公式サポートがAndroid 12で終わり、更新が来ない端末を使い続けるのが気になったからです。
XiaomiでカスタムROMを入れたい人が多いのは、操作や見た目を自分好みに変えられれば、ハードとしては良い端末になるからです。UIを変えたいというのは、導入目的の一つです。ただXiaomiにはROMを入れる前の段階に、確認が必要な条件があります。
Xiaomiのブートローダー解除は「公式の申請」で、条件つき
Xiaomiは、ブートローダーの解除を公式に用意しています。回避の話ではなく、Xiaomiの公式手順(Mi Unlockツールとアカウント申請)の話です。ただし、条件がいくつもあります。
Xiaomiのグローバル向け公式FAQに書かれている条件を、そのまま並べます。
| 項目 | 公式FAQの記載(要約) |
|---|---|
| 申請 | Mi Unlockツールにアカウントでログインし、端末を紐づけて申請する |
| 地域 | 中国本土以外で登録したアカウントのみ申請できる。中国本土向けの端末は対象外 |
| 待機期間 | 紐づけ後、一定期間(15日、アカウントによっては60日)待つ必要がある |
| 台数制限 | 1アカウントで解除できるのは最大3台。1か月に1台、1年で4台まで、といった制限がある |
| 有効期限 | 解除の権限には期限があり、切れると再申請が必要 |
| 保証・データ | 解除すると公式保証は無効になり、機種によってはデータが消える |
出典:Xiaomi公式FAQ「Boot Loader Lock Use Introduction」
大事なのは、これらの条件が地域・機種・OSのバージョン・申請する時点によって変わることです。別地域の公式FAQには「解除をサポートしない」と書かれている場合もあり、公式情報自体に差があります。だから待機日数や台数を、今の共通ルールとして固定しないでください。Xiaomiを買う前に、自分が使うアカウントの地域とその端末で、公式FAQを見て解除できるかを確認するのが正解です。
初心者には、こうした条件でつまずきにくい、メーカーが素直に解除でき、ROMプロジェクトも今も公式ビルドを配っている機種(Pixelなど)をすすめます。
ROMの選び方:公式ビルドがある機種を軸に
ROMには、大きく2種類あります。
- その機種向けの公式ビルド:ROMプロジェクトが対応機種として認め、今もビルドを配っているもの。
- 非公式ビルド:個人がその機種向けにビルドして配っているもの。更新やサポートは作った人しだいです。
初心者には、今も公式ビルドが配布されている機種をすすめます。非公式ビルドに価値がないわけではありませんが、更新が続くかや不具合の対応が読みにくいぶん、最初の1台には向きません。なお、自分の機種向けでない、別機種用のROMを無理に入れるのは別の話で、これは起動しなくなるリスクが跳ね上がるので避けてください。
候補は、対応状況と既知の不具合で先に絞り、必要ならサブ端末で試すのが安全です。素のAndroidに近い安定志向ならLineageOS、Pixel風の見た目にカスタマイズを足したいならEvolution Xが、私の使ってみた感想です。
セキュリティ:OSの更新と、端末全体の安全は別
「サポートが切れた端末の心配を減らしたい」は、私自身の導入動機でもあります。ただ、ここは誤解しやすいので補足します。
新しいAndroidを入れても、端末の安全性が完全に元どおりになるわけではありません。メーカーのサポートが終わると、OSは更新できても、その下にあるファームウェアやドライバの更新までそろうとは限らないからです。GrapheneOSも、サポートが終わった端末への延長対応は「被害を減らすための一時的なもの」で、完全なセキュリティ修正は提供できない、と説明しています(出典:GrapheneOS FAQ)。
だから私は、使い方を分けています。古い端末をカスタムROMで延命するのは、サブ端末として。銀行・決済アプリを集約するメイン端末は、メーカーのサポートが続いている機種にする。この線引きをしておくと、延命の価値を取りつつ、リスクを抱えすぎずに済みます。
入れる前に知っておくこと(リスク)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 失敗のリスク | 端末の中身を書き換える作業なので、失敗すると起動しなくなることがある。無保証・自己責任 |
| データが消える | ブートローダーを解除すると、端末の中身は全部消える。先にバックアップが必要 |
| アプリが動かないことがある | 端末のチェック(Play Integrityなど)に頼るアプリは動かないことがある。銀行やお金まわりのアプリに多い |
| 使える機能が変わる | 機種やROMによって、通話・カメラ・おサイフケータイなど使える機能・使えない機能が変わる |
| 更新の継続 | その機種向けのROMの更新が、いつまで続くかは保証されない |
中古を扱う立場から:延命と、販売の判断
私は中古端末を仕入れて直して売ることを長くやってきました。その立場から、カスタムROMをどう見ているかを書きます。
カスタムROM化した端末を販売して利益を出した経験はあります。ただし時間効率が悪くて撤退しました。1台ずつ中身を書き換える手間に対して、上乗せできる金額が見合わなかったからです。売るなら、中身を書き換えた端末であることを商品説明に必ず明記する必要があります。
一方で、「サポートが切れた古い端末を安く仕入れて、自分で長く使う(サブ端末として)」という使い方は、今も価値があると思っています。仕入れ・修理・延命の考え方は、修理転売の記事にまとめています。
よくある質問
カスタムROMはどの機種でも入れられますか?
いいえ。入れたいROMが今も対応している機種でないと、失敗のリスクが高くなります。まず自分の型番向けの公式ビルドが今も配布されているかを確認してください。機種ページがあるだけでは、現役対応とは限りません。
「公式対応」とはメーカー公認という意味ですか?
違います。ROMを作っているプロジェクト(LineageOSなど)が、その機種を対応機種として認めているという意味です。スマホメーカーは、むしろカスタムROMを保証の対象外にします。
XiaomiにカスタムROMを入れられますか?
Xiaomiには公式のブートローダー解除の申請(Mi Unlockツール)がありますが、中国本土以外のアカウント限定、待機日数、1アカウントの台数制限、権限の有効期限などの条件があり、地域・機種・時点で変わります。買う前に、自分のアカウントの地域とその端末で、公式FAQを見て解除できるかを確認してください。この記事では、その制限を回避する方法は扱いません。
カスタムROMを入れれば、古い端末も安全になりますか?
OSは新しくできますが、その下のファームウェアやドライバまで完全に更新されるとは限りません。銀行・決済を集約するメイン端末はサポートが続く機種にし、カスタムROMでの延命はサブ端末に、と分けるのが安全です。
カスタムROMを入れた端末は売れますか?
私は販売した経験がありますが、1台ずつの手間に金額が見合わず撤退しました。売る場合は、中身を書き換えた端末であることを商品説明に明記する必要があります。出品できるかや条件は、使う販路の規約を別途確認してください。
