アンティークコインは、買った瞬間にいくらの資産になるのか

アンティークコインは、買った瞬間にいくらの資産になるのか 転売・投資型の商品

この記事は全面的に書き直しました。前の版は「アンティークコイン投資の始め方」でした。5ステップも、狙うべきコインのカテゴリーも、業者の実名も、全部削除しました。

先に、立場を明かします

アンティークコイン 持っていません。買ったことも、扱ったこともありません
レゴ(廃番セット) 実際に扱ってきました
ワイン 持っていません。6章では、供給の決まり方を比べる材料としてだけ登場します
中古品の二次流通 20年近く続けています。「限定」「廃番」「希少」を売り文句にした商材も扱ってきました
売っているもの コインも金融商品も売っていません。当サイトは投資助言・代理業の登録をしていません

コインを持っていない人間が、なぜこの記事を書けるのか。

「限定」「廃番」「希少」を売り文句にした中古品の二次流通は、対象が何であれ同じ形をしているからです。コインも、レゴも、ワインも、構造は同じです。違うところも1つだけあって、そこがいちばん大事です(6章)。

書けることと、書けないことを分けます

書けること 書けないこと
買値と売値がどこで決まるか、その差がいくらか 真贋の見分け方、年代の判別(現物を見ていません)
前の版が出した数字を、年率に直すとどうなるか どのコインが値上がりするか
税制の条文に何と書いてあるか 買うべきかどうか、いくらが適正か
レゴで実際に見た、廃番と価格の関係 コインの相場観

1. この記事は、コインの選び方を書きません

「ウナとライオン」の説明も、グレードの読み方も、すでに大量にあります。

出てこないのは、「買った瞬間に、それはいくらの資産になっているのか」のほうです。

よくある記事が答えること この記事が答えること
何を買うか 買った瞬間にいくらになるか
どこで買うか その差を埋めるのに何年かかるか
いつ売るか 売るとき、誰が値段を決めるか

2. 前の版が出した数字を、割り算します

前の版には、こういう根拠が書いてありました。私が書いたものです。

「希少なコインの価値は過去10年間で実に71%もの上昇を記録しました。これは、銀行に預けていても決して得られない、驚異的なリターンです。」

この数字は、ある不動産コンサルティング会社が公表している富裕層向け資産の指数から引いたものです。私はこの数字の作り方まで検証していません。だから、正しいと仮定したうえで、割り算だけします。

2-1. 10年で71%を、年率に直します

10年間の上昇率 71%
年率に直すと 約5.5%

「驚異的なリターン」と書いてありました。年率5.5%です。

この数字が高いか低いかは、私は判定しません。比較対象によって答えが変わりますし、当サイトは投資助言をしません。

ここで言いたいのは1つだけです。

10年で71%という表示と、年率5.5%という表示は、同じことを言っています。前者のほうが大きく見えるだけです。

2-2. そして、同じ記事に手数料が書いてありました

前の版の7章には、こう書いてあります。

「売却手数料(落札価格の10〜20%程度)がかかる」

この2つを並べると、記事の中で数字が噛み合わなくなります。次の章で計算します。

3. 買値と売値は、別の市場にあります

ここが、この記事でいちばん持ち帰っていただきたい部分です。

3-1. 株と、実物資産の決定的な違い

買うとき 売るとき
上場株式 同じ板 同じ板
アンティークコイン 販売店の売値 買取店の買値、またはオークションの落札価格
レゴの廃番セット フリマ・ショップの売値 買取価格、または自分で売る手間
ワイン 小売価格 買取価格、またはオークション

下の3つは、買う市場と売る市場が別です。だから、買った瞬間に差額が確定します。

これは業者が悪いという話ではありません。買取と販売の差額が、業者の仕事の対価だからです。ただし、買う側から見れば、それは最初に払う費用です。

3-2. 「いま売ったらいくらか」を先に出します

当サイトでは、住まいの記事でも物販の記事でも、同じものを見ています。

やり直しコスト——間違えたと分かったときに、抜けるのにいくらかかるか。

実物資産では、これが1行で出ます。

やり直しコスト率 = いま売ったらいくらか ÷ 買った値段

100万円で買った場合 いま売ると やり直しコスト率
スプレッド10% 90万円 90%
スプレッド20% 80万円 80%
スプレッド30% 70万円 70%

これは値下がりではありません。相場が1円も動いていなくても、この状態から始まります。

「100万円のコインを持っている」ことと、「100万円が手元にある」ことは、別です。

3-3. 前の版が書かなかったのは、ここです

前の版は「維持費は一切ありません」と書いていました。そして同じ記事の別の場所に、こう書いてあります。

「銀行の貸金庫を借りて保管するのが基本です。年間数千円〜数万円のコストはかかりますが」

前の版の記述 同じ記事の別の場所
維持費は一切ありません 年間数千円〜数万円のコストはかかります

矛盾しています。書いたのは私です。

正確に書き直すと、こうなります。

実物資産にかかるもの
買うとき 販売店の利幅(=3-2のスプレッド)
持っている間 保管の費用。金庫、貸金庫、保険
売るとき 買取なら業者の利幅、オークションなら手数料
固定資産税 かかりません。ここは前の版のとおりです

「固定資産税がかからない」ことと、「維持費が一切ない」ことは、別です。

4. だから「5年」という数字が出てきます

2章と3章を、掛け合わせます。

前の版が出していた2つの数字
10年で71%の上昇(=年率約5.5%)
売却手数料は落札価格の10〜20%程度

買った瞬間のマイナスを、年5.5%で埋めるのに何年かかるか。これは1回の割り算で出ます。

買った瞬間のマイナス 年5.5%で取り戻すのにかかる年数
10% 約2.0年
15% 約3.0年
20% 約4.2年
25% 約5.4年

ここまでが、損益がゼロに戻るまでの期間です。利益はそのあとです。

4-1. 「5年以上持て」の正体

アンティークコインの記事は、たいてい「5年以上の長期保有を」と書きます。前の版もそう書いていました。理由は税制だと説明されます。

ただし、上の表を見てください。

「5年」の2つの説明
税制の説明 5年を超えて保有すると、譲渡所得の計算で有利になります(5章)
もう1つの説明 買った瞬間のマイナスを埋めるのに、それくらいかかります

2つの「5年」が、たまたま同じ長さになっています。

税制の話として説明されるほうが、聞こえがいいです。ただし、実務として効いているのは下の行のほうだと私は考えています。ここは私の見立てで、条文でも統計でもありません。

4-2. 短く持つと、なぜ不利になるのか

保有期間 起きること
1〜2年 買ったときのマイナスが、まだ埋まっていません
5年前後 ようやくゼロ近辺です
それ以降 ここからが上乗せです

だから「短期売買には向かない」という説明は正しいです。ただし理由は「値動きが遅いから」ではありません。入口で先に払っているからです。

5. 税制優遇は、「投資」と呼ぶほど遠ざかります

ここは条文の話です。そして、前の版が最大のメリットとして押していた部分に直撃します。

5-1. まず、前の版の説明は条文どおりです

所得税法 第33条第3項第1号・第2号
「…資産の譲渡でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得」/「資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの」

同 第33条第4項
「前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円…とする。」

5年以内と5年超で区分があり、特別控除は50万円。ここまでは、前の版に書いてあるとおりです。

5-2. ただし、同じ条文の第2項が抜けていました

所得税法 第33条第2項第1号
「次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」

営利を目的として継続的に行われる譲渡は、譲渡所得ではありません。

所得の区分 50万円控除と5年超の1/2
1枚だけ買って、後に手放した 譲渡所得になり得ます 使えます
利益を目的に、繰り返し売買している 譲渡所得から外れます 使えません

「投資」として繰り返すほど、投資の税制メリットから遠ざかります。

どこからが「継続的」なのかは、回数だけで決まるものではありません。目的、頻度、規模、事業としての形をとっているかなど、全体で判断されます。個別の判定は税理士か税務署に確認してください。

この記事で書けるのは、条文に「営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得」は譲渡所得に含まれない、と書いてあるという一点までです。

5-3. 前の版は、この2つを同時に勧めていました

前の版が書いていたこと
「アンティークコインは5年以上、じっくり育てる」
「あなたも今日からアンティークコイン投資家です」

1枚を長く持つなら、上の行が効きます。ただしそれは、投資家として売買を繰り返す姿ではありません。下の行に近づくほど、上の行の前提が崩れます。

6. コイン、レゴ、ワインは、同じ形をしています

私はコインを持っていません。レゴの廃番セットは扱ってきました。そして、この2つは同じ構造をしています。

6-1. 共通しているのは、4つです

共通点 意味
買値と売値が別の市場にある 買った瞬間に差額が確定します(3章)
売り文句が「限定」「廃番」「希少」 供給が減ることを根拠にしています
保管が価値に直結する 状態が落ちると、同じ物でも別の値段になります
出口で値段を決めるのが自分ではない 買取業者か、その日の入札者です

3つ目について、レゴで実際に見たことを書きます。廃番セットの相場は、中身が同じでも箱の状態で大きく変わります。日焼け、潰れ、開封済みかどうか。中身のブロックは何十年経っても劣化しにくいのに、値段を決めているのは箱です。

コインのスラブケースも、ワインのラベルとキャップシールも、同じ位置にあります。

本体ではなく、状態を証明するものが値段を持っています。

6-2. 決定的に違うのは、1つだけです

供給を、誰が決めるか。

供給を決めるのは だから起きること
アンティークコイン 誰も決められません。発行はとっくに終わっています 供給側からの新しい玉は出ません
レゴ メーカーです。廃番にするのも、再販するのも、決めるのはメーカー側です 「廃番だから上がる」は、メーカーの判断に依存しています
ワイン 生産者と、その年の天候です 作付けと出来で、供給量が毎年動きます

ここは、コインが構造的に有利な点です。供給側が増やせないからです。

ただし、同じことが別の意味も持ちます。

供給が動かないということは、価格が動く理由が需要側にしかない、ということです。

価格が上がる理由
レゴ 供給が止まる(廃番)/需要が増える。2つあります
アンティークコイン 需要が増える。これだけです

新しいコレクターが入り続けている間だけ、上がります。

前の版は「供給は減り、需要は増える」を「価値が上がりやすい絶対的な原則」と書いていました。前半は正しいです。後半は、確認しないと分かりません。そして、確認する方法があります。

6-3. 需要を確認する方法は、公開されています

確認できること どこで
同じ種類・同じグレードが、直近でいくらで落ちたか 海外の主要オークションハウスの落札アーカイブ。無料で公開されています
その価格が、何年か前と比べてどうか 同じアーカイブを年でさかのぼるだけです
そもそも取引されているか 落札履歴が出てこないなら、出口が細いということです

3行目がいちばん重要です。

落札履歴が見つからないものは、希少なのではなく、売買されていないのかもしれません。この2つは、外から見ると同じ顔をしています。

7. 鑑定が保証するものと、しないもの

前の版には、こう書いてありました。

「このスラブケースに入ったコインを選ぶ限り、偽物を買う心配はまずありません」
「このルールを徹底するだけで、偽物のリスクは99.9%回避できます」

断定しすぎです。削除しました。

そして、より大きい問題があります。前の版は、鑑定を「リスクを排除するもの」として書いていました。鑑定が扱っているのは、リスクのうちの一部です。

7-1. 分けて書きます

鑑定機関が示してくれるもの 鑑定機関が示さないもの
本物かどうか その値段が妥当かどうか
状態の評価(グレード) そのグレードに対して、その価格が高すぎないか
個体の識別番号 その個体に買い手がいるかどうか
売り手と買い手が同じ言葉で話せること 売りたいときに売れるかどうか

左の列は、値段を決める材料です。値段そのものではありません。

スラブケースに入っているコインでも、相場より高く買うことはできます。鑑定は、それを止めてくれません。

7-2. 鑑定枚数は、現存枚数ではありません

前の版は、鑑定機関が公表している鑑定枚数(Population)を「鑑定上の戸籍」と書いていました。ここは補足が要ります。

鑑定枚数に含まれるもの/含まれないもの
まだ鑑定に出されていない個体は、数に入っていません
同じ個体が、グレードを狙って再提出されることがあります
鑑定機関をまたいで出し直されることがあります
複数の鑑定機関の数字は、単純に足せません

だから、鑑定枚数は「希少性そのもの」ではありません。「その状態で市場に出てくる量」を推し量るための、1つのデータです。

使えないという意味ではありません。使い方が違うだけです。絶対的な希少性の証明としてではなく、供給量の目安として読んでください。

7-3. グレードは、価格差が妥当かどうかで見ます

前の版には「MS65以上を狙うのが王道」と書いてありました。そして、グレードが1点違うと価格が数倍になる例が挙げてありました。その具体的な金額には出典がなかったので、削除しました。

そのうえで、考え方だけ書きます。

やってしまいがちなこと 本来やること
「65以上だから買う」 「64から65に上がることで乗っている価格差が、妥当かどうかを見る」
グレードを条件にする グレードごとの価格差を、落札履歴で確認する

上のグレードほど良い、は正しいです。上のグレードほど得、は別の話です。

8. 判定表|買う前に、6つで確認する

確認すること 該当したら 対応する章
「これをいま買い取るとしたら、いくらですか」を聞いていない やり直しコスト率が出ていません 3-2
「◯年で◯%上昇」という表示を、年率に直していない 大きく見えるだけの表示かもしれません 2-1
買った瞬間のマイナスを埋める年数を計算していない 「何年持つか」を決める根拠がありません 4
繰り返し売買するつもりなのに、譲渡所得の優遇を前提にしている 条文上、その枠から外れる可能性があります 5-2
同じ種類・同じグレードの落札履歴を、自分で見ていない 出口があるかどうかが確認できていません 6-3
「鑑定済みだから安心」で止まっている 鑑定は値段の妥当性を示しません 7-1

6つとも、コインの知識ではありません。全部、買う前に確認できることです。

9. 明日からの1手

1つだけ挙げます。

買おうとしている店に、こう聞いてください。「これを今日、そちらに買い取っていただくとしたら、いくらになりますか」

これで、3-2のやり直しコスト率が出ます。

返ってきた答え 意味
金額を即答してくれる 出口があります。その差額が、あなたが最初に払う費用です
「そのときの相場によります」 普通の答えです。それでも、目安の幅は聞けます
買取自体をやっていない その店で買ったものを、その店では手放せません

この質問は、コインでもレゴでもワインでも、そのまま使えます。そして、答えにくい質問ではありません。買取をしている店なら、日常的に出している数字だからです。

10. まとめ

この記事で書いたこと
2章 前の版の「10年で71%」は、年率に直すと約5.5%です
3章 買値と売値が別の市場にあるので、買った瞬間に差額が確定します
4章 その差額を年5.5%で埋めるのに2〜5年。「5年持て」の実態はこちらです
5章 営利目的で継続的に売買すると、譲渡所得の枠から外れます
6章 コインは供給側が増やせません。だから価格が動く理由は需要側にしかありません
7章 鑑定は真贋と状態を示します。値段の妥当性は示しません

全体を1行にすると、こうなります。

実物資産で最初に確認するのは、値上がりの見込みではありません。いま売ったらいくらか、です。

前の版に書いてあった「究極の資産形成術」「天井知らずの価値」という表現は、全部削除しました。

11. あわせて読む

記事 共通している考え方
月商と月利の違い 拘束した金額と、拘束した日数で見る、という同じ形です
レバレッジ型の商品を、どう扱っているか 「置いている期間」で結果が変わる、という同じ構造です
利益 ÷ 拘束日数 当サイトの判断基準です

12. 出典

出典 この記事で使った箇所
e-Gov法令検索「所得税法」第33条 第2項第1号(営利を目的として継続的に行われる譲渡は譲渡所得に含まれない)、第3項(5年以内と5年超の区分)、第4項(特別控除50万円)(5章)
前の版の記述(この記事の旧版) 「10年で71%」「売却手数料10〜20%」「維持費は一切ありません」「年間数千円〜数万円のコスト」。2章・3-3・4章で使った数字は、すべて前の版に書かれていたものです

「10年で71%」の原典は、富裕層向け資産の指数です。私はその算出方法まで確認していません。この記事でやったのは、その数字が正しいと仮定したうえでの年率換算だけです。原典を確認したい方は、指数の公表元をあたってください。

税制は改正されますし、所得区分の判定は個別の事情で変わります。金額の判断が必要な場面では、必ず税理士か税務署に確認してください。

13. この記事について

立場 アンティークコインは持っていません。レゴの廃番セットは扱ってきました。中古品の売買は20年近く続けています
だから書いていないこと 真贋の見分け方、年代判別、グレードの実物判断、おすすめ銘柄、値上がり予測
書いたもの 条文と、前の版が出した数字の割り算だけです
見立てだと明記した箇所 4-1(「5年持て」の実態はスプレッドの回収期間だという読み)。ここは条文でも統計でもありません
登録 当サイトは投資助言・代理業の登録をしていません。税理士でもありません
削除したもの 「究極の守りの資産」「天井知らずの価値」「偽物のリスクは99.9%回避」「相場より著しく安いコインは存在しません」「余剰資金の20%」、出典のないグレード別価格例、業者・書籍・チャンネルの実名推奨、「2025年以降に狙うべきコイン」
本文中の宣伝 0本です

買うなとも、買えとも書いていません。書いたのは、買う前に自分で確認できることの順番だけです。

 

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