1点500円で買い取ったスーパーファミコンのソフト。これにも古物台帳への記載義務があります。金額は関係ありません。
「対価の総額が1万円未満なら帳簿は不要」という説明を読んだことがある方は、いま矛盾を感じたはずです。その説明自体は間違っていません。ただし、それは原則にすぎず、ゲームソフトはその原則から除外されている品目です。
ここで多くの人が次に思うことは決まっています。「では50本仕入れたら全部書くのか」「そんな手間はかけられない」。
私は古物商許可を取得してから、金額に関係なく全件を記録する運用を続けてきました。そして正直に言うと、面倒だと思ったことが一度もありません。その理由は根性ではなく、環境と仕組みの問題です。本記事の第4章で、実際の負荷を数字とともに開示します。
この記事では、①条文を例外まで正確に読む方法、②どこまでが「ゲームソフト」なのかという境界線、③まとめ買いをどの粒度で記録するのかという実務判断、この3点を他のサイトを見に行かなくて済む水準で書きます。読み終えたとき、あなたは自分の仕入れリストを見て3秒で「これは書く/これは書かなくていい/これは念のため書く」を判断できるようになり、台帳が事業の負債ではなく防御装置に変わっているはずです。
1. 結論:ゲームソフトは1万円未満でも古物台帳への記載が必要
1-1. 30秒で分かる結論
1-1-1. 買取(受け取り)は金額に関係なく記載必須
古物営業法は、対価の総額が1万円未満の取引について本人確認と帳簿記載の義務を原則として免除しています。しかし、その免除から除外されている品目が定められており、家庭用ゲームソフトはその代表格です。
したがって、100円で買っても、500円で買っても、買取であれば本人確認と台帳への記載が必要になります。「安いから省略できる」という判断は成立しません。
1-1-2. 売却(引き渡し)は原則として記載不要
一方で、売却時の扱いは異なります。古物を引き渡したときに記録が必要とされているのは、次の品目に限られます。
- 美術品類
- 時計・宝飾品類
- 自動車(その部分品を含む)
- 自動二輪車および原動機付自転車(その部分品を含む)
ゲームソフトはここに含まれていません。つまりゲームソフトは「仕入れは必須、販売は不要」という非対称な扱いになります。
この非対称性を書いていない解説記事が非常に多く、買取と売却をまとめて「1万円未満は不要」と処理してしまっているケースが目立ちます。義務の方向を取り違えると、必要な記録が漏れる側にも、不要な作業を増やす側にも転びます。
1-1-3. 判断に迷う論点は管轄警察署の生活安全課へ
法令そのものは全国共通です。ただし、実際の運用や指導の温度感には地域差があります。本記事でも判断が割れうる論点には都度その旨を書きますが、最終的に確実なのは営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)に直接確認することです。これは逃げではなく、実務上もっともコストの低い解決手段です。
1-2. なぜ「1万円未満は不要」だけが広まったのか
1-2-1. 条文が「原則 → 免除 → 免除の除外」の三段構えだから
誤解が生まれる原因は、読み手ではなく条文の構造にあります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 第1段:原則 | 古物を受け取ったとき・引き渡したときは、その都度、法定事項を記録する |
| 第2段:免除 | 対価の総額が1万円未満の取引などは、記録義務が免除される |
| 第3段:免除の除外 | ただし、盗品の流通防止上とくに必要な品目は、1万円未満でも免除されない |
第2段で読むのをやめると「1万円未満は不要」という理解が完成します。そして第2段までしか書いていない記事が、実際に検索上位に複数存在します。誰かが悪意で誤情報を流しているというより、条文の構造がそもそも途中で止まりやすい形をしていると考えたほうが実態に近いはずです。
1-2-2. 2025年10月の改正に更新が追いついていない記事が多い
さらに、免除の除外品目は2025年10月1日の施行規則改正で追加されています。この改正を反映していない記事は、公開時点では正しくても現在は不正確です。詳細は第2章の2-3-5で扱います。
2. 根拠条文を「例外まで」正確に読む
2-1. 記載義務の原則と、記録すべき5項目
古物商は、売買もしくは交換のため、または売買もしくは交換の委託により古物を受け取ったとき・引き渡したときに、その都度、次の事項を記録しなければなりません(古物営業法第16条)。
| # | 記録事項 |
|---|---|
| ① | 取引の年月日 |
| ② | 古物の品目および数量 |
| ③ | 古物の特徴 |
| ④ | 相手方の住所、氏名、職業および年齢 |
| ⑤ | 相手方の確認を行った方法 |
この5項目は第5章で扱う具体的な記入例と対応します。番号を覚えておいてください。
2-2. 免除規定と、本人確認免除の関係
重要なのは、帳簿記載の免除と本人確認の免除がセットで動くという点です。片方だけ免除されるという中途半端な状態は基本的に発生しません。
免除にあたる主なケースは次の3つです。
- 対価の総額が1万円未満の取引をした場合(ただし後述の除外品目を除く)
- 自己が売却した物品を、当該売却の相手方から買い戻した場合
- 国家公安委員会規則で定める古物以外を売却した場合(=1-1-2で挙げた4品目以外の売却)
本人確認の免除は古物営業法施行規則第16条に、帳簿記載の免除は同規則第18条に置かれており、両者の除外品目リストは対応しています。ただし条番号・号番号は改正で動くため、実務判断の根拠として使う際は e-Gov 法令検索で現行条文を確認してください。
2-3. 1万円未満でも義務が外れない品目
2-3-1. 自動二輪車および原動機付自転車とその部分品
本体はもちろん、部分品も対象です。ただし、ねじ、ボルト、ナット、コードなど汎用性のある部分品は除かれます。
2-3-2. 家庭用ゲームソフト
本記事の主題です。条文上は「専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物」と規定されています。
この文言を正確に読んでください。「プログラムを記録した物」であって、媒体を限定していません。この点が第3章の伏線になります。
2-3-3. CD・DVD等(光学的方法により音または影像を記録した物)
音楽CD、映画のDVD、ブルーレイなどが該当します。ゲームと同じ棚に並ぶことが多く、まとめて仕入れる場面が想定されます。
2-3-4. 書籍
ここに攻略本や設定資料集が落ちます。ゲーム関連の商材でありながら分類が異なるため、見落としやすい箇所です(3-3で詳述)。
2-3-5. 【2025年10月1日追加】電線・エアコン室外機・ヒートポンプ・金属製グレーチング
施行規則の改正により、次の品目が1万円未満でも本人確認・記載の対象に追加されました。
- 電線
- エアコンディショナーの室外ユニット(いわゆる室外機)
- 電気温水機器のヒートポンプ(室外機と形状が酷似しているため対象)
- グレーチング(金属製のものに限る)
背景にあるのは金属盗対策です。盗まれた金属製品が、換金目的で1万円未満の少額に分割して持ち込まれるという手口を封じることが目的とされています。
ゲームソフトを扱う事業者にとって、この改正は直接の実務変更ではないかもしれません。しかし読み取るべき示唆があります。免除の除外品目は、減る方向ではなく増える方向に動いているということです。この事実は第4章の結論を補強します。
2-4. 「対価の総額」は1点単価ではない
ここも誤読が多い箇所です。「対価の総額」とは古物1点ごとの単価ではなく、一度の取引に持ち込まれた古物すべての合計額を指します。
したがって「9,900円ずつに分けて取引すれば免除される」という発想は成立しません。分割持込は、そもそも法が想定し警戒している脱法パターンそのものです。
3. どこまでが「ゲームソフト」か
ここからが本記事の中核です。条文解説で終わる記事はここに踏み込みませんが、実務で判断を迫られるのは常にこの境界線上です。
3-1. ROMカセットは対象か
結論から言えば、対象と読むのが自然です。
2-3-2で確認したとおり、条文は「専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物」と定めており、光ディスクに限定していません。ファミコン、スーパーファミコン、ゲームボーイ、ニンテンドーDSなどのROMカセットは、記録媒体が半導体であるだけで「プログラムを記録した物」であることに変わりはありません。
注意すべきは、解説記事の多くがCD・DVDとセットで説明しているため、「光ディスクでなければ対象外」という誤った印象が生まれやすいことです。レトロゲームを主戦場にするなら、ここを取り違えると記録漏れが常態化します。
3-2. ゲーム機本体・コントローラー・周辺機器
これらはソフトではありません。分類上は道具類にあたり、免除の除外品目には含まれていないため、1万円未満の買取であれば原則として記載義務はありません。
ここで奇妙な逆転が起きます。
| 買い取ったもの | 価格 | 記載義務(買取時) |
|---|---|---|
| スーファミのソフト1本 | 500円 | 必要 |
| スーファミ本体 | 8,000円 | 原則不要 |
金額が16倍でも義務は逆です。これは法の目的が「取引額の把握」ではなく「盗品の流通防止と被害の迅速な回復」にあることを踏まえると理解できます。過去に盗品として流通しやすかった品目が、金額と無関係に指定されているのです。
3-3. 攻略本・設定資料集は「書籍」として対象
ゲーム関連商材でありながら、分類は書籍です。書籍も免除の除外品目であるため、1万円未満でも記載が必要になります。
実務上、攻略本はソフトとセットで持ち込まれることが多く、「ゲーム関連の付属品」として意識から外れがちです。ソフトと同じ扱いになると覚えておけば漏れません。
3-4. ダウンロードコード等(グレーゾーン)
パッケージにダウンロードコードのみが封入されている商品や、コードカード単体の取引はどう扱うべきか。物理媒体にプログラムそのものが記録されていないため、条文の文言との対応が明確ではありません。金券類との境界も絡みます。
この点について、私は断定できる材料を持っていません。取扱量が多いのであれば、管轄の生活安全課に確認することを勧めます。不確かなまま「たぶん不要」で運用するより、一度聞いて確定させたほうが、その後の判断コストがゼロになります。
3-5. トレーディングカード・フィギュアは法令上の例外品目ではない
「1万円未満でもトレカは記載必須」と書いている記事を見かけますが、施行規則が免除の除外として列挙しているのは、自動二輪車・原付とその部分品、家庭用ゲームソフト、光ディスク等、書籍、および2025年10月追加分です。トレーディングカードは含まれていません。
ただし、近年のトレカ高額化を受けて、所轄が実務上の指導として記録を求める可能性は十分にあります。法令上の義務と、現場での指導は別物です。この記事では両者を混ぜずに書きますが、実際の運用では指導があればそれに従うのが合理的です。
3-6. 混在ロットの扱い(最重要の実務論点)
ここが、せどり実務にもっとも直撃する論点です。
取引の合計額が1万円未満であっても、その取引に免除の除外品目が1点でも含まれていれば、取引全体に本人確認と記載の義務が生じます。
具体的に考えてみてください。フリマや実店舗でまとめ買いをするとき、ゲームソフト、ゲーム機本体、コントローラー、攻略本、音楽CDが混在することはごく普通に起こります。この中でソフト・攻略本・CDは除外品目です。つまりソフトが1本混ざった時点で、そのロット全体が対象になる。
ゲームを主力にしている以上、「今回は書かなくていい取引」はほとんど発生しません。これが、本記事が「全件記録を標準にすべき」と主張する第一の理由です。
4. 「全件記録」を続けてきた側の話
4-1. 面倒だと思ったことが一度もない
私は古物商許可を取得してから、東京都中央区にしか住んだことがありませんでした。そして中央区では、金額に関係なく記録が必要という前提で説明を受けています。免除規定の存在を後から知って「省略できたのか」と思ったことはありますが、それで運用を変えようと思ったことは一度もありません。
理由は単純です。全件記録のほうが、判断コストが低いからです。
免除規定を使おうとすると、取引のたびに次を判定しなければなりません。
- この取引の総額は1万円未満か
- この中に除外品目が混ざっていないか
- この商材は「ゲームソフト」に該当するか、「本体」に該当するか
- 攻略本は入っていないか
- これは買取か売却か、売却なら記録対象の4品目か
この判定を毎回正確に行うには、除外品目リストを暗記し、改正のたびに更新し続ける必要があります。判断を1回間違えれば記録漏れになります。
全件記録なら、この判定がすべて消えます。暗記も更新も判定も不要で、ただ書くだけになる。多くの記事は読者に暗記と判定を要求していますが、その暗記と判定こそが負荷の正体です。
4-2. 実際の負荷を数字で出す
抽象論では意味がないので、私の実数を出します。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 買取の頻度 | 月2〜4回 |
| 1回あたりの記帳時間 | 10分規模 |
| 月間の記帳負荷 | およそ30分前後 |
月30分です。この負荷を理由に法定義務を省略する、という判断が事業として合理的かどうかは、読んでいる方が自分で計算してください。
ただし正直に留保します。これは買取頻度が低い業態だから成立している数字でもあります。1日に20件、30件と買い取る店舗型であれば、同じ話にはなりません。その場合の答えは4-4にあります。
4-3. ブックオフは全件やっている
ここで、規模の話をします。
大手の中古書籍・ゲーム販売チェーンは、1日に膨大な点数を買い取っています。そして本人確認も記録も、全件処理しています。オペレーションとして完全に成立しているわけです。
我々個人・小規模の事業者は、その業態を模倣して利益を得ようとしている側です。規模が小さいことは、同じ処理をしなくていい理由になりません。むしろ処理すべき件数が少ないぶん、条件は有利です。
「大手は専用システムがあるから」という反論は成立します。ただしそれは「だから省略していい」ではなく「だから仕組みを持つべきだ」という結論に向かうはずです。次節がその話です。
4-4. 今から組むなら、記録を業務フローに埋め込む
私がいまゼロから設計するなら、次のように組みます。
4-4-1. フォーマットはAIに作らせる
2-1で挙げた法定5項目に加えて、ゲームソフト用の特徴欄テンプレート(ハード名/タイトル/型番/箱・説明書の有無/状態)をExcelまたはスプレッドシートで生成します。目的は、判断の余地をなくし「埋めるだけ」の構造にすることです。
自由記述欄が広いほど、何を書くべきか迷い、記帳時間が伸び、記載内容にばらつきが出ます。項目を固定するだけで作業は機械化されます。
4-4-2. モバイルプリンターは机上の空論ではない
現場で明細や控えを出力する運用について、実現性を疑う必要はありません。
私が買取を行っていた15年以上前の時点で、モバイルプリンターは実用上まったく問題のない水準に到達していました。運送会社が配達現場で伝票を出力している光景を、誰もが何度も目にしているはずです。屋外、車内、顧客の面前という条件下での運用実績は、業界を横断して長期間蓄積されています。当時で問題なかった以上、現在の機種はさらに安定していると考えるのが妥当でしょう。
ただし、正確に書いておきます。これは法定要件ではありません。電子データの保存・書面表示に関する要件は営業所に対して課されるもので、買取現場での出力が義務づけられているわけではない。モバイルプリンターの価値は次の3点です。
- 買取明細や受領書をその場で顧客に渡せる(信頼と、後日のトラブル防止)
- 記憶に頼らずその場で記録を確定できる(記載精度が上がる)
- 記録が業務フローに埋め込まれ、後回しにできない構造になる
4-4-3. その場で完結させれば、判断が消える
3点目が本質です。帰宅・帰社してから記帳する運用は、記憶の劣化と後回しを必ず生みます。逆に、顧客対応・記録・控えの発行を買取のその場で終わらせてしまえば、「書くかどうか」を判断する場面そのものが消滅します。これが4-1で述べた「判断コストが低い」の実装です。
4-4-4. クラウド同期はデータ消失対策であり、義務対策でもある
電子データで台帳を管理している場合、データの破損や消失は所轄警察署への届出義務が発生する事象です。つまりクラウド同期は利便性の話ではなく、義務違反を回避するための措置でもあります。ローカルとクラウドの二重化を前提に組んでください。
4-5. 地域差は、全件記録していれば問題にならない
冒頭で触れたとおり、法令は全国共通でも運用指導には差があります。住んでいる地域によって、求められる水準が変わることは実際にあります。
ただし、これは全件記録を採用していればそもそも論点になりません。厳しいほうに合わせておけば、引っ越しても、営業所を移しても、どの所轄に当たっても運用を変える必要がない。地域差という不確実性を、運用設計だけで丸ごと消せます。
そのうえで、3-4のダウンロードコードのように判断が割れる論点だけを管轄の生活安全課に確認する。これがもっともコストの低い進め方です。
5. 記録オペレーションの実務
5-1. Excel・スプレッドシート運用の必須条件
台帳は紙でなくても構いません。電磁的方法による記録が認められています。
ただし条件があります。電子データで保管する場合、営業所において直ちに書面で表示できる状態にしておかなければなりません。これは実務上、台帳データの入ったパソコンとプリンターを営業所に設置しておくことを意味します。
「Excelでも大丈夫」とだけ書いてある解説を読んで、クラウド上に置きっぱなしにしている方は、この要件を満たしているか確認してください。立入検査でその場に出せなければ、記録していないのと同じ扱いになりかねません。
5-2. 記載5項目のゲームソフト記入例
2-1で挙げた5項目を、ゲームソフトに当てはめます。
| # | 項目 | ゲームソフトでの書き方 |
|---|---|---|
| ① | 取引の年月日 | 買取を行った日 |
| ② | 品目および数量 | 道具類(家庭用ゲームソフト)/20本 |
| ③ | 古物の特徴 | ハード名・タイトル・型番・箱/説明書の有無・状態 |
| ④ | 相手方の住所・氏名・職業・年齢 | 身分証の記載どおりに転記 |
| ⑤ | 確認を行った方法 | 「運転免許証の提示を受けた」など具体的に |
力を入れるべきは③の特徴欄です。特徴欄が薄い台帳は、盗品照会の場面で機能しません。台帳の目的が盗品の追跡である以上、後から個体を特定できない記録は、義務を形式的に満たしただけで、あなたを守る役には立たないということです。
5-3. まとめ買いの記載粒度:ロットで書くか、1本ずつ書くか
実務でもっとも判断に迷うのがここです。原則を先に示します。
5-3-1. 判断基準は「後からその1本を特定する必要があるか」
記録の目的が個体の追跡である以上、粒度もその目的から逆算します。
5-3-2. 例1:スーファミのソフト20本を、一括3,000円で買い取った
この場合は、品目「家庭用ゲームソフト」、数量20、特徴欄はロット単位の記載で足ります。個別の値付けをしていないのですから、記録を個別に割る必然性がありません。
5-3-3. 例2:同じ20本の中に高値のタイトルが1本あり、それだけ5,000円で買い取った
この場合、その1本はタイトル・型番・状態を個別に記録します。理由は3つあります。
- 価格が突出している商品は、盗品照会の対象になりやすい
- 単価を分けて値付けした事実があるなら、記録も分けるほうが記載内容として整合的である
- 高額品ほど後日トラブル化する確率が高く、そのとき個別記録が自分を守る材料になる
5-3-4. どちらの例も、総額は1万円未満だが記録義務は発生している
ここを取り違えないでください。例1も例2も合計額は1万円未満ですが、ゲームソフトは免除の対象外です。この節で論じているのは「書くか書かないか」ではなく「どの粒度で書くか」です。
5-4. 非対面買取(メルカリ・ヤフオク・宅配)の本人確認
インターネット経由の非対面買取でも、義務の内容は対面と変わりません。
方法としては、相手方から身分証明書の画像やコピーを送付してもらう、あるいはオンライン本人確認サービスを利用するなどが考えられます。そして台帳の確認方法欄には、実際に用いた手段を具体的に書きます。「本人確認済」とだけ書いた記録は、確認方法を記録したことになりません。
5-5. 3年保存と、データ滅失時の届出
台帳は紙・電子を問わず、最終の記載をした日から3年間保存する必要があります。
そして、帳簿を破損・紛失した場合、電子データが破損・消失した場合は、直ちに営業所の所在地を管轄する警察署に届け出なければなりません。届出を怠ることも違反にあたります。4-4-4でクラウド同期を義務対策と書いたのはこのためです。
6. 違反したときに何が起きるか
6-1. 刑事罰
必要な記録をしなかった場合、虚偽の記録をした場合、記録の滅失等を届け出なかった場合には、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。
また両罰規定が置かれているため、法人として営業している場合、行為者本人だけでなく法人にも罰金刑が科されることがあります。
6-2. 行政処分
公安委員会は、違反した事業者に対して指示、営業停止命令、さらには許可の取消しを行うことができます。
ここで数字をひとつ強調しておきます。許可を取り消されると、その後5年間は再取得ができません。これは事業の一時停止ではなく、事実上の消滅です。5年という期間は、いま組み立てている事業計画の大半が意味を失う長さでしょう。
6-3. 盗品を引いてしまったときの防御
もっとも現実的なリスクはここにあります。
中古品を扱う以上、盗品を掴む可能性はゼロにできません。そのとき、いつ・誰から・どのような確認をして受け取ったかの記録がなければ、取引経緯を説明する手段そのものがありません。
台帳は課された義務であると同時に、あなた自身を守るための装置です。この視点を持てるかどうかで、記帳という作業の意味が変わります。
7. まとめ:3秒で判断するチェックリスト
| 場面 | 記載義務 |
|---|---|
| ゲームソフトの買取(金額不問) | 必要 |
| ROMカセットの買取 | 必要(媒体は限定されていない) |
| 攻略本の買取 | 必要(書籍として対象) |
| CD・DVDの買取 | 必要 |
| ゲーム機本体・周辺機器の買取(1万円未満) | 原則不要 |
| トレカの買取(1万円未満) | 法令上は原則不要(所轄の指導があれば従う) |
| ソフトが1本でも混ざったロット | 取引全体が必要 |
| ゲームソフトの売却 | 原則不要 |
| 一括値付けのまとめ買い | ロット単位の記載で可 |
| 1本だけ個別に高値で値付けした場合 | その1本はタイトル単位で記録 |
最後にもう一度だけ、この記事の主張を短く書きます。
ゲームソフトを扱うなら、除外品目を暗記して毎回判定するより、全件記録を標準にしたほうが速く、安全で、地域差にも改正にも影響されません。負荷は仕組みで潰せますし、仕組みを持つ前提の事業設計は、大手がすでに証明しています。
判断に迷う論点が出てきたときは、管轄警察署の生活安全課に確認してください。それが常に最終的な正解になります。
よくある質問
Q1. 500円で買ったレトロゲームでも古物台帳は必要ですか?
買取であれば必要です。ゲームソフトは1万円未満の免除規定から除外されている品目のため、金額に関わらず本人確認と記載が求められます。
Q2. ゲーム機本体を8,000円で買った場合はどうなりますか?
本体はソフトではないため、原則として1万円未満なら記載義務はありません。ただし同じ取引にソフトが1本でも含まれていれば、取引全体が対象になります。
Q3. 20本まとめて買った場合、1本ずつ書く必要がありますか?
一括で値付けしたのであれば、品目・数量とロット単位の特徴の記載で足ります。ただし特定の1本だけを高値で個別に値付けしたのであれば、その1本はタイトル単位で記録してください。
Q4. ゲームソフトを販売したときも台帳に書く必要がありますか?
原則として不要です。売却時に記載義務があるのは、美術品類、時計・宝飾品類、自動車、自動二輪車および原動機付自転車に限られます。
Q5. メルカリやヤフオクで仕入れた場合の本人確認はどうしますか?
義務の内容は対面と同じです。身分証の画像を受領する、オンライン本人確認サービスを用いるなどの方法をとり、台帳の確認方法欄にその手段を具体的に記載します。
Q6. 古物台帳をExcelだけで管理してもいいですか?
可能です。ただし営業所において直ちに書面で表示できることが条件となるため、実務上はプリンターの設置が前提になります。データが消失した場合は所轄警察署への届出義務も発生します。
※本記事は執筆時点の法令および公表資料に基づく一般的な解説です。条文の条番号・号番号は改正により変動する可能性があるため、実務判断の根拠として用いる際は e-Gov 法令検索の現行条文および警察庁・都道府県警察の公表資料をご確認ください。個別の取引に関する判断は、営業所を管轄する警察署の生活安全課にお問い合わせください。



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