イギリス古着買い付けの着地原価|現地£5の服が、日本に着くと何円になるか

イギリス古着買い付けの着地原価|現地£5の服が、日本に着くと何円になるか せどり

この記事は全面的に書き直しました。前の版は「英国ヴィンテージの魅力」を語る記事でした。4大エリア戦略も、5大買い付け術も、至宝リスト12選も、全部削除しました。

理由は2つあります。

先に、立場を明かします

私は、英国に行ったことがありません。古着の買い付けもしていません。

前の版には、チャリティショップの店員との会話の作り方や、カーブーツセールの早朝の空気感が書いてありました。私が見ていないものです。削除しました。

そしてもう1つ。

前の版に書いてあった予算表を計算し直したら、記事の結論が成り立たなくなりました。

その計算を、この記事の本体にします。

書けることと、書けないことを分けます

書けること 書けないこと
渡航にいくらかかり、それが商品1着にいくら乗るか 現地の店の様子、値付けの空気、交渉の呼吸
日本に持ち込むときの関税の仕組み(実行関税率表) 年代判別、真贋の見分け方(実物を見ていません)
公表されている税制と通関の扱い 「この商品はいくらで売れる」という相場の断定
当サイトの判断基準を当てはめると、どう並ぶか 行けば儲かるかどうか

行っていない人間が書ける範囲は、算数と条文だけです。そこだけを書きます。

1. この記事は、英国の魅力を書きません

英国ヴィンテージに価値があることは、争いがありません。ハリスツイードにもベンタイルにも、歴史があります。

そして、そこを説明する文章は、すでに大量にあります。

いま検索して出てこないのは、「で、日本の倉庫に着いた時点でいくらなのか」のほうです。

だからこの記事は、その1点だけを扱います。

よくある記事が答えること この記事が答えること
どこで買うか 日本に着いた時点で1着いくらか
何を買うか その金額を回収するのに何着必要か
どう見分けるか その点数を、滞在日数で割ると1日何着か

2. 現地価格は、原価ではありません

「チャリティショップで£5だった」という話に、意味はありません。

£5は、商品代金です。そこに乗るものが、まだあります。

現地価格のあとに乗るもの
国際送料(または預け荷物の超過料金)
関税・消費税(品目で率が変わります。5章で書きます)
通関手数料
国内送料
クリーニング・補修
販売手数料
そして、渡航費(3章で書きます)

最後の1行が、他のすべてより大きくなります。

当サイトでは、同じ計算を東南アジアの仕入れでもやりました。現地で約79円だった服が、日本に着くと4,448円になるという記事です。英国では、その構造がもっと強く出ます。渡航費が高いからです。

3. いちばん大きい費用は、商品ではありません

ここが、この記事の本体です。

前の版には、こういう予算表が載っていました。私が書いたものです。

前の版が出していた予算(10日〜2週間の滞在) 金額
航空券 25万円〜
英国内の交通費 20万円〜
宿泊費 30万円〜
買い付け資金 45万円〜
合計 120万円

この表を、商品とそれ以外に分けてください。

金額 割合
商品になるお金 45万円 37.5%
商品にならないお金 75万円 62.5%

予算の6割以上が、商品ではありません。

そして、この75万円は消えません。仕入れた商品に乗ります。会計の言葉では配賦といいますが、要は「持ち帰った服で割る」ということです。

3-1. 何着買うかで、1着あたりの上乗せが決まります

持ち帰った点数 1着あたりに乗る渡航費等
50着 15,000円
100着 7,500円
150着 5,000円
200着 3,750円
300着 2,500円
450着 1,667円

50着しか持ち帰らなかった場合、1着に15,000円が乗ります。£5で買った服の話をしていたはずが、そこに15,000円が乗ります。

3-2. そして、ここが決定的です

「なら、安く買って点数を増やせばいい」と思われたはずです。計算してみます。

買い付け資金は45万円で固定です。現地単価を変えると、買える点数が変わります。

現地での1着 買える点数 1着に乗る配賦 配賦後の1着原価 倍率
1,000円 450着 1,667円 2,667円 2.7倍
2,000円 225着 3,333円 5,333円 2.7倍
3,000円 150着 5,000円 8,000円 2.7倍
5,000円 90着 8,333円 13,333円 2.7倍

いちばん右の列を見てください。全部、同じ倍率です。

安く買えば点数が増えて、配賦は薄まります。高く買えば点数が減って、配賦は濃くなります。どちらに動かしても、倍率は変わりません。

理由は単純です。予算の内訳が「商品37.5%/それ以外62.5%」で固定されているので、割り算をすると必ず同じ比率になります。

チャリティショップで安く買う、という戦術は、この倍率を1円も下げません。

3-3. 倍率を下げる方法は、3つしかありません

方法 やること 効くか
非商品費を減らす 滞在を短くする、移動を減らす、宿を下げる 効きます。ただし回れる店も減ります
買い付け資金の比率を上げる 同じ渡航費で、より多く仕入れる 効きます。ただし資金が要ります
行かない 渡航費をゼロにする いちばん効きます(7章)

2行目に注目してください。渡航費が固定なら、買い付け資金が大きいほど倍率は下がります。

つまり、この仕入れ方は資金が大きい人ほど有利になる構造です。審美眼の話ではありません。

買い付け資金を45万円から135万円に増やせば、非商品費75万円は3倍の点数で割られます。倍率は2.7倍から約1.6倍まで下がります。同じ店で、同じ服を、同じ目で選んでもです。

4. だから、必要な点数が先に決まります

3章を逆から読みます。

渡航費等の75万円を回収するには、何着売る必要があるか。

1着あたりの粗利で割るだけです。ここでいう粗利は、販売価格から仕入値・送料・関税・手数料を引いた残りです。

1着あたりの粗利 75万円を回収するのに必要な販売点数
2,000円 375着
3,000円 250着
5,000円 150着
10,000円 75着
20,000円 38着

これは「利益を出すのに必要な点数」ではありません。渡航費が消えるだけの点数です。

ここを超えて初めて、利益の話が始まります。

4-1. 滞在日数で割ると、1日のノルマが出ます

前の版は「10日〜2週間の滞在」を前提にしていました。10日で割ります。

必要な点数 10日で割ると
150着 1日15着
250着 1日25着
375着 1日37.5着

これは「見つける」数です。「見る」数ではありません。

チャリティショップを回って、1日に25着、日本で売れる個体を確保し続ける。それを10日間、時差と天候の中で続ける。

できるかどうかは私には分かりません。行っていないからです。ただし、この数字を出さないまま「宝探しの旅」と書くのは、書いた側の不誠実です。前の版がそれをやっていました。

4-2. 高単価に寄せると、点数は減ります。ただし別の問題が出ます

表の下2行を見てください。1着の粗利が2万円なら、38着で渡航費が消えます。

だから「高単価を狙え」という結論になりそうですが、そこで止まると危険です。

高単価に寄せると 何が起きるか
1着あたりの仕入値が上がります 45万円で買える点数が減り、配賦が濃くなります(3-2の表)
売れるまでの日数が延びます 高い服ほど、買い手が現れるまで待ちます
1点の判断ミスが重くなります 真贋・状態・サイズを外したときの損失が大きくなります
関税の額も上がります 5章のとおり、品目によっては率が高くなります

当サイトは利益 ÷ 拘束日数で判断します。高単価は分子を大きくしますが、分母も同時に伸ばします。

そして、渡航費は買い付けの前に全額出ていきます。分母は、飛行機に乗った日から始まっています。

5. 革製品だけ、ルールが違います

ここは、条文の話です。そして、前の版が推奨していた商品に直撃します。

5-1. 甲が革製の履物には、金額での下限が設定されています

税関の実行関税率表を見てください。第6403項(甲が革製の履物)には、こういう形の税率が並んでいます。

税率の書かれ方 意味
「30%または4,300円/足のいずれか高い」 安い靴でも、1足あたり4,300円を下回りません
「60%または4,800円/足のいずれか高い」 区分によっては、さらに高くなります

率ではなく、1足あたりの金額で下限が引かれています。

だから、安く買うほど不利になります。実際に当てはめます。

仕入値 30%だと 実際に適用される額 仕入値に対して
2,000円 600円 4,300円 仕入値の2.15倍
4,000円 1,200円 4,300円 仕入値の1.07倍
10,000円 3,000円 4,300円 仕入値の0.43倍
20,000円 6,000円 6,000円 仕入値の0.30倍

2,000円で買った1足に、4,300円の関税がかかります。仕入れ値より関税のほうが高くなります。

前の版は、Dr. Martensの英国製を「至宝リスト」に入れていました。チャリティショップやカーブーツセールで安く見つける、という文脈でです。安く見つけるほど、この構造では不利になります。

5-2. しかも、簡易税率の対象外です

少額の輸入には、品目を細かく分類せずに済ませる簡易税率があります。ただし、適用されないものが決まっています。

簡易税率
対象 課税価格の合計額が20万円以下の貨物
適用されないもの 革製品、履物などが除かれています(税関)

簡略化の枠から、最初に外されている品目です。

5-3. 協定税率を使うには、証明が要ります

日本と英国のあいだには経済連携協定があり、協定に基づく税率が使える場合があります。

ただし、それには原産地であることの証明が必要です。

新品を仕入れる場合 古着を仕入れる場合
誰から買うか メーカーや正規の卸 チャリティショップ、個人、蚤の市
原産地の証明 取引先から取得できます 取得の手立てがありません

タグに「Made in England」と書いてあることと、原産地を証明できることは別です。

ここは個別性が高い部分です。品目分類も、適用できる税率も、貨物ごとに違います。実際の税額は、税関か通関業者に確認してください。この記事で書けるのは、「率ではなく1足あたりの金額で下限が引かれている品目がある」「簡易税率の対象外になっている」という、公表されている仕組みまでです。

5-4. 判定に使うなら、この順番です

順番 確認すること
1 その品目が、率で課税されるのか、金額で下限が引かれるのか
2 金額で下限が引かれるなら、仕入値がその下限を下回っていないか
3 簡易税率が使えるかどうか
4 協定税率を使うなら、証明が取れるかどうか

1と2は、買う前に分かります。買ってからでは変えられません。

6. 為替を固定した予算は、必ず外れます

前の版は「1ポンド=195円換算」で予算を組んでいました。これも私が書いたものです。

為替を1つの数字で固定した予算表は、書いた瞬間から外れていきます。

そして、外れ方が単純ではありません。3章の配賦と掛け合わさるからです。

6-1. 同じ45万円でも、買える点数が変わります

現地で1着£5の服を買う場合で計算します。買い付け資金45万円は動かしません。

為替 買える点数 現地価格(円換算) 1着に乗る配賦 配賦後の1着原価
£1=175円 514着 875円 1,459円 2,334円
£1=195円 461着 975円 1,627円 2,602円
£1=215円 418着 1,075円 1,794円 2,869円

いちばん右の列で、535円の差が出ます。1着あたり23%です。

為替が動くと、現地価格が変わるだけではありません。買える点数が変わり、その点数で渡航費を割るので、配賦も一緒に動きます。2つが同じ向きに効きます。

6-2. 為替が決まるのは、買い付けの前ではありません

時点 確定するもの
航空券とホテルを予約したとき 渡航費が確定します(=分子の75万円)
現地で買っているとき そのときのレートで点数が決まります(=分母)
日本で売るとき 販売価格が決まります

先に確定するのが費用のほうで、あとから決まるのが点数のほうです。順番が逆です。

だから、この記事には「1ポンド=◯円」という換算表を置きません。置いても、読んだ時点で違う数字になっているからです。代わりに、自分で計算する式だけを置きます。

(渡航費等 ÷ 持ち帰る点数)+ 現地価格 = 配賦後の1着原価

7. 行かないルートと、同じ物差しで並べます

3-3で「行かない」を挙げました。ここで並べます。

渡航費 関税 1回に拘束する金額 外したときのやり直し
A 現地に行って買う かかります(75万円) かかります 120万円+10日 次の渡航まで待ちます
B 英国の業者から輸入する ゼロ かかります ロット単位 次の発注で調整できます
C 国内の業者から仕入れる ゼロ ゼロ ロット単位 すぐ調整できます
D 国内で1点ずつ仕入れる ゼロ ゼロ 1着から 1着ごとに調整できます

下に行くほど1着の仕入値は上がります。それは事実です。そのかわり、いちばん右の列が短くなります。

Aだけが、間違いに気づいてから直せるまでの距離が、次の渡航までになります。

7-1. 当サイトの判断基準に当てはめると

利益 ÷ 拘束日数で見ます。

分母(拘束される日数)
A 渡航の準備から、持ち帰った在庫が売り切れるまで。数か月単位になります
D 仕入れてから売れるまで。1着ごとに独立しています

Aは、120万円と10日を1回のまとまりで拘束します。そして、そのまとまりの中で判断を間違えても、途中で降りられません。もう飛行機に乗っているからです。

7-2. それでも現地に行く価値があるのは、こういう場合です

この記事は「行くな」と書いているのではありません。成立する条件があります。

条件 理由
買い付け資金が大きい 3-3のとおり、資金を3倍にすると倍率が2.67倍から1.56倍まで下がります
売り先が先に決まっている 持ち帰った在庫が寝ないので、分母が伸びません
渡航が仕入れ以外の目的も兼ねている 渡航費の一部が、仕入れ以外に配賦されます
行くこと自体が商品になる 記事、動画、店の物語として使えるなら、渡航費は広告費でもあります

4行目は、まじめな話です。「英国で買い付けてきた」という事実そのものに値段がつく商売なら、計算式が変わります。ただしそれは、仕入れの計算ではありません。

逆に、この4つに1つも当てはまらないなら、3-3の3行目が答えになります。

8. 判定表|行く前に、6つで確認する

確認すること 該当したら 対応する章
渡航費を、持ち帰る点数で割った金額を出していない 1着の原価が分かっていません 3-1
「安く買えば有利」だと思っている 倍率は変わりません。3-2の右端の列を見てください 3-2
渡航費が消えるのに必要な販売点数を出していない 1日あたり何着ピックする必要があるかも、出ていません 4・4-1
革製の靴やバッグを狙っている 率ではなく1足あたりの金額で下限が引かれている品目があります 5-1
「Made in England」なら協定税率が使えると思っている タグの表記と、原産地の証明は別です 5-3
1ポンド◯円で予算を固定している 現地価格と配賦の両方が同じ向きに動きます 6-1

6つとも、審美眼の話ではありません。全部、飛行機に乗る前に紙の上で終わる話です。

9. 明日からの1手

1つだけ挙げます。

渡航費・宿泊費・現地交通費を合計して、持ち帰れると思う点数で割ってください。

それだけです。出てきた金額が、現地で払う値段に乗ります。

出た金額が 意味
想定している現地単価より小さい 成立の可能性があります。点数を確保できるかを次に検討してください
想定している現地単価と同じくらい 原価が2倍になります。販売価格から逆算し直してください
想定している現地単価より大きい 商品より渡航費のほうが大きい状態です。7章の表と比べてください

前の版の予算をそのまま使うと、3行目になります。75万円と45万円だからです。

10. まとめ

この記事で書いたこと
3章 予算の6割以上は商品ではありません。それが仕入れた服に乗ります
3-2 安く買っても高く買っても、配賦後の倍率は同じでした
3-3 倍率を下げる方法は3つ。滞在を短くする、資金を増やす、行かない
4章 渡航費が消えるだけで、何着売る必要があるかが先に決まります
5章 革製の履物には、率ではなく1足あたりの金額で下限が引かれています
6章 為替は、現地価格と配賦の両方を同じ向きに動かします
7章 現地買い付けだけ、間違いに気づいてから直せるまでが次の渡航になります

全体を1行にすると、こうなります。

英国古着で勝負が決まるのは、現地でいくらで買えたかではありません。渡航費を何着で割るか、そして買う前に品目ごとの課税の形を知っているかです。

前の版に書いてあった「あなたの審美眼が試される旅」という結論は、削除しました。試されるのは、飛行機に乗る前の割り算です。

11. あわせて読む

記事 共通している考え方
マレーシア古着仕入れ|現地価格と着地原価の差 同じ計算を東南アジアでやりました。こちらも、私は行っていません
月商と月利の違い 拘束した金額と、拘束した日数で見る、という同じ形です
利益 ÷ 拘束日数 当サイトの判断基準です。7-1は、これを買い付け旅行に当てはめたものです

12. 出典

出典 この記事で使った箇所
税関「輸入統計品目表(実行関税率表)」 第6403項(甲が革製の履物)の税率の書かれ方。「30%または4,300円/足のいずれか高い」「60%または4,800円/足のいずれか高い」(5-1)
税関「少額輸入貨物の簡易税率」 課税価格の合計額が20万円以下の貨物という対象範囲と、革製品・履物が適用対象から除かれていること(5-2)
税関「主な商品の関税率の目安」 品目によって税率が異なること(2章・5章)
税関「輸入通関(カスタムスアンサー)」 通関手続きの全体(2章・5-3)

税率も制度も改正されます。そして品目分類は、実物ごとに判断が変わります。実際の税額は、税関か通関業者に確認してください。この記事に書いた金額は、公表されている税率を当てはめた計算例です。

13. この記事について

立場 私は英国に行ったことがありません。海外での買い付け経験もありません。中古品の売買は国内で20年近く続けています
だから書いていないこと 現地の店の様子、値付けの空気、交渉の呼吸、年代判別、真贋の見分け方。前の版にはこれらが書いてありましたが、全部削除しました
書いたもの 公表されている税率と、割り算だけです
予算の数字について 3章の120万円は、前の版に私が書いた見積もりです。実額は時期と行程で変わります。使ってほしいのは金額ではなく、商品と非商品に分けて割るという手順のほうです
専門家ではない部分 通関士でも税理士でもありません。品目分類と税額の判断はしていません
前の版との違い 「本物の品格」「至宝リスト12選」「確実な利益を生む鉄板」「高額な利益が約束されます」「あなたの審美眼を証明する旅へ」——全部削除しました
本文中の宣伝 0本です

行っていない人間に書けるのは、行く前に確かめられることだけです。それは裏を返せば、飛行機に乗る前なら、まだ全部やり直せるということでもあります。

 

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