「半導体市場の成長に乗って、SOXLで資産を爆発的に増やしたい」
一攫千金の夢を描き、FIRE(早期リタイア)への期待を胸に、あなたはこのページに辿り着いたのかもしれません。
しかし、もしその「長期保有」という安易な戦略が、億り人への近道ではなく、あなたの資産を溶かし尽くす”一発退場”への最短ルートだとしたら…?
この記事では、なぜSOXLの”ガチホ”が「死」を意味するとまで言われるのか、その核心である「逓減リスク」の本当の恐ろしさを、最新データと悪夢のシミュレーションで徹底的に解剖します。
ですが、安心してください。SOXLはただの”猛毒”ではありません。
その仕組みとリスクを100%理解し、正しい知識で向き合えば、資産形成を爆発的に加速させる**最強の”劇薬”**にもなり得るのです。
この記事を最後まで読めば、あなたは感情的な期待や根拠のない恐怖から解放され、SOXLを冷静に、そして戦略的に使いこなすための『賢者の地図』を手にすることができます。
あなたの虎の子の資産が、知識不足によって溶けてしまう前に。
さあ、3倍レバレッジの甘い罠と、その先にある本物のリターンを掴むための旅を始めましょう。
1. 【結論】SOXLの長期保有(ガチホ)は絶対にNG!プロが推奨しない3つの致命的リスク
「SOXLを長期で積み立てれば、いつかは爆益になる」
「半導体は未来の産業だから、ガチホで大丈夫」
…もしあなたが少しでもそんな甘い幻想を抱いているなら、今すぐ捨ててください。
結論から申し上げます。SOXLの長期保有、いわゆる”ガチホ”は、賢明な投資戦略などではなく、限りなくギャンブルに近い、極めて危険な行為です。なぜプロの投資家たちが口を揃えて「SOXLの長期保有はあり得ない」と警鐘を鳴らすのか。その理由は、SOXLが構造的に抱える、避けることのできない3つの「致命的リスク」にあります。
1-1. 理由①:レンジ相場で資産が溶ける「逓減リスク」の恐怖
SOXLの長期保有を考える上で、絶対に、何よりも先に理解しなければならないのが**『逓減(ていげん)リスク』**の存在です。
これは、株価が上昇と下落を繰り返す「レンジ相場」において、大元の指数(ICE半導体指数)がたとえプラスマイナスゼロに戻ったとしても、SOXLの価値だけが時間と共にすり減っていく現象を指します。
例えば、指数が「+10%→-10%」と動くと、元本は99%になります。しかし3倍レバレッジのSOXLは「+30%→-30%」となり、元本はわずか2日で**91%**にまで減少します。
まるで、目に見えない高額な手数料を毎日毎日、強制的に支払っているようなもの。相場が停滞しているだけで、あなたの資産は知らないうちに溶けていくのです。これこそが3倍レバレッジETF最大の罠であり、長期保有が絶望的と言われる最大の理由です。
1-2. 理由②:-90%の暴落も!常人の精神では耐えられない驚異的なボラティリティ
SOXLの魅力である「3倍の値動き」は、上昇局面では強力な追い風ですが、ひとたび下落局面に入ると、全てを破壊する牙を剥きます。
事実、米国の金融引き締めが本格化した2022年、SOXLの価格は年初来で一時約90%も下落しました。これは、お正月に1000万円あった資産が、年末にはわずか100万円になっている計算です。あなたは、この筆舌に尽くしがたい精神的苦痛に、平常心で耐えられますか?
ほとんどの個人投資家は、資産が1/10になる過程のどこかで恐怖に耐えきれず、大底で投げ売る**「狼狽売り」に走るか、再起不能の「永久塩漬け」**地獄に陥ります。この常軌を逸したボラティリティこそが、長期的な資産形成を根本から不可能にする第二の理由なのです。
1-3. 理由③:年率0.90%!複利効果を蝕む高すぎる経費(信託報酬)
見落とされがちですが、SOXLは資産を「保有するコスト」も極めて高額です。
2025年7月現在のSOXLの経費率は、年率0.90%。
これがどれほど高いか、最も人気のインデックスファンドである「VOO(S&P 500 ETF)」の年率0.03%と比較してみましょう。その差は実に30倍です。
これは、毎年あなたの投資額の約1%が、リターンに関係なく問答無用で差し引かれ続けることを意味します。せっかくのリターンも、この高すぎるコストによって着実に蝕まれていくのです。
短期決戦のトレーディングならまだしも、資産形成の土台となる長期投資でこのコストを払い続けるのは、あまりにも致命的。これもまた、SOXLが長期投資に全く向いていない、動かぬ証拠と言えるでしょう。
【図解】知らないと即死!3倍レバレッジETF「SOXL」の仕組みと逓減(ていげん)リスク
SOXLが抱える致命的なリスクは、運やタイミングの問題ではなく、その商品の**「仕組み」そのもの**に組み込まれています。
なぜレンジ相場で資産が溶け、ボラティリティに弱いのか。その心臓部である「3倍レバレッジ」と、最大の罠である「逓減リスク」の正体を、ここで徹底的に解剖します。
2-1. SOXLとは?ICE半導体指数(SOX)の「日次」の値動きの3倍を目指す金融商品
SOXLの正式名称は「ディレクション・デイリー・半導体・ブル3X」。米国の資産運用会社Direxion社が提供するレバレッジ型ETFです。
その目的は、NVIDIAやAMDといった米国の主要半導体企業で構成される**「ICE半導体指数(SOX指数)」**のパフォーマンスに連動すること。ここまでは普通の指数ファンドと同じです。
しかし、決定的に違う点が一つだけあります。それは、**「日次(デイリー)」の値動きの「3倍」**を目指す、という部分です。
これが意味するのは、1ヶ月や1年のリターンが3倍になることを保証するものではない、ということです。あくまで「今日1日」の値動きが基準であり、SOXLは毎日その3倍のレバレッジを維持するために、内部で資産の売買(リバランス)を繰り返しています。この**「毎日のリバランス」**こそが、後述する全ての悲劇の始まりなのです。
2-2. 資産が消える「逓減」の具体例:+20%の翌日に-20%下落すると元本は96%に減価する
では、具体例で「逓減リスク」を体感してみましょう。
仮に、あなたが10,000円をSOXLに投資したとします。そして、大元のSOX指数が1日目に+20%、2日目に-20%動いたと仮定します。
【大元のSOX指数の動き】
- 1日目: 10,000円 × (1 + 0.20) = 12,000円
- 2日目: 12,000円 × (1 – 0.20) = 9,600円
- → 2日間で**マイナス4%**の下落
【あなたのSOXLの動き(3倍レバレッジ)】
- 1日目: 10,000円 × (1 + 0.60) = 16,000円 (※+20%の3倍)
- 2日目: 16,000円 × (1 – 0.60) = 6,400円 (※-20%の3倍)
- → 2日間で**マイナス36%**の壊滅的下落
お分かりいただけたでしょうか。
大元の指数はたった4%しか下落していないにも関わらず、あなたのSOXLの価値は36%も失われ、6,400円にまで激減してしまいました。これが「逓減リスク」の正体です。株価が上下に激しく動けば動くほど、あなたの資産は指数とは無関係に、加速度的にすり減っていくのです。
2-3. 上昇相場では3倍以上のリターンも?レバレッジの複利効果(追い風)の側面
もちろん、レバレッジの複利効果は、常にマイナスに働くわけではありません。相場が一方向に、つまり上昇し続けた場合には、逆に3倍以上の驚異的なリターンを生み出すことがあります。
先ほどと同じく、10,000円を投資し、今度はSOX指数が2日連続で+10%上昇したと仮定します。
【大元のSOX指数の動き】
- 1日目: 10,000円 × (1 + 0.10) = 11,000円
- 2日目: 11,000円 × (1 + 0.10) = 12,100円
- → 2日間で**プラス21%**の上昇
【あなたのSOXLの動き(3倍レバレッジ)】
- 1日目: 10,000円 × (1 + 0.30) = 13,000円 (※+10%の3倍)
- 2日目: 13,000円 × (1 + 0.30) = 16,900円 (※+10%の3倍)
- → 2日間で**プラス69%**の爆発的上昇
このケースでは、指数のトータルリターン21%の3倍(63%)を上回る69%のリターンを叩き出しました。これがSOXLに夢を見る投資家がいる理由です。
しかし、現実はそう甘くありません。毎日ひたすら上昇し続ける相場など、極めて稀です。ほとんどの相場は上下動を繰り返すため、このプラスの複利効果の恩恵を受ける前に、前述の**「逓減リスク」によって資産が削り取られていく**ことのほうが圧倒的に多いのです。この甘い蜜だけを期待して長期保有するのは、極めて危険な賭けと言えるでしょう。
3.【悪夢のシミュレーション】もし100万円をSOXLに長期投資していたら?
百聞は一見に如かず。
第2章でレバレッジETFの理論を学んだところで、ピンとこない方もいるでしょう。では、実際に過去の相場でSOXLを長期保有していたら、あなたの資産は一体どうなっていたのでしょうか?
ここからは、100万円を握りしめてタイムマシンに乗り込み、SOXLホルダーが体験したであろう3つの異なる歴史のIFルートを覗いてみましょう。
3-1. ケース①《天国編》コロナショック後(2020年4月〜2021年末)に投資した場合の驚異的リターン
- 投資時期: 2020年4月(コロナショックで世界中が金融緩和に踏み切った時期)
- 投資金額: 100万円
世界中がパンデミックの混乱に陥る中、あなたは逆張りで半導体の未来に賭け、SOXLに100万円を投じました。その結果…
金融緩和を背景にハイテク株が急騰する、いわゆる「イージーモード」の波に乗り、SOXLの価値は爆発的に上昇。第2章で解説したプラスの複利効果が最大限に発揮され、2021年の末には、あなたの100万円は…
約1,400万円に。
わずか1年半余りで資産が14倍になりました。これこそ、誰もがSOXLに夢を見る理由です。この成功体験を一度味わうと、人はレバレッジの本当の恐ろしさを忘れがちになります。
3-2. ケース②《地獄編》金融引き締め期(2021年末〜2023年末)に投資した場合の資産蒸発シナリオ
- 投資時期: 2021年末(半導体ブームの最高潮、天国編のゴール地点)
- 投資金額: 100万円
天国編の成功に乗り、あなたは「SOXLは最強だ」と確信。ブームの頂点で100万円を全力投資します。しかし、ここから悪夢が始まりました。
FRBがインフレ退治のために急激な利上げを開始。2022年のハイテク株は歴史的な大暴落に見舞われます。マイナスの複利効果と凄まじいボラティリティに襲われたあなたの資産は、2022年10月には一時約10万円にまで激減。
その後、2023年にはAIブームで相場が多少持ち直したものの、2023年末時点でも資産は約40万円。
2年間もの間、ひたすら耐え続けた結果、元本の半分以上を失ったままという、あまりにも悲惨なシナリオです。ほとんどの投資家は、心が折れて途中で市場から退場したことでしょう。
3-3. ケース③《レンジ相場編》値動きが横ばいでも資産が徐々に減っていく恐怖の実証
- 投資時期: 大元の指数が上下動を繰り返した、特定の数ヶ月間
- 投資金額: 100万円
最後に、最もたちが悪く、そしてSOXLの構造的欠陥を浮き彫りにするシミュレーションです。大元のSOX指数が、数ヶ月かけて+15%になったり、-10%になったりと激しく上下動を繰り返し、最終的にスタート地点とほぼ同じ価値に戻った「レンジ相場」を仮定します。
この間、SOX指数に連動する通常の半導体ETF(SMHなど)の価値は、手数料分を除けば、ほぼ100万円のままです。
しかし、あなたのSOXLの資産は、日々の激しい値動きによって**「逓減リスク」に蝕まれ続け、気づけば85万円**にまで減少していました。
これが第2章で解説した**「資産が溶ける」**という現象の正体です。大元の指数が上がっていないにも関わらず、ただ相場が上下に揺れ動くだけで、あなたの資産は毎日、確実に削り取られていくのです。。
4. SOXLの基本情報を総点検!どんな半導体企業に投資しているのか?
ここまでSOXLの恐ろしいリスクについて徹底的に解説してきましたが、一度冷静になり、SOXLがそもそも「何に」投資している商品なのか、その基本情報を整理しておきましょう。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。SOXLの正体を知ることは、賢明な投資判断を下すための第一歩です。
4-1. 2025年最新の構成銘柄トップ10:NVIDIA、AMD、Broadcomへの集中投資
SOXLが連動を目指す「ICE半導体指数」は、米国に上場する主要な半導体関連企業約30社で構成されています。その中でも、特に影響力が大きい上位10銘柄は以下の通りです。(※構成は時期により変動します)
- NVIDIA (エヌビディア): AIブームの絶対的王者。GPUで他の追随を許さない。
- Broadcom (ブロードコム): 通信半導体に強みを持つ、業界の巨人。
- AMD (アドバンスト・マイクロ・デバイセズ): CPUとGPUでNVIDIAとIntelを猛追する万能型。
- Qualcomm (クアルコム): スマートフォン向け半導体の雄。
- Intel (インテル): 復活を期す、半導体業界の老舗。
- Micron Technology (マイクロン・テクノロジー): メモリ半導体の大手。
- Applied Materials (アプライド・マテリアルズ): 世界最大級の半導体製造装置メーカー。
- Lam Research (ラム・リサーチ): Applied Materialsと並ぶ製造装置の大手。
- Texas Instruments (テキサス・インスツルメンツ): アナログ半導体で高いシェアを誇る。
- KLA Corporation (ケーエルエー): 半導体の検査・測定装置で世界トップクラス。
見ての通り、AI、データセンター、スマートフォンなど、現代社会に不可欠なテクノロジーの中核を担う、錚々たる顔ぶれです。しかし重要なのは、この指数がNVIDIAやBroadcomといったトップ数銘柄に大きく偏った、非常に集中度の高いポートフォリオであるという点。この偏りこそが、良くも悪くもSOXLの爆発的な値動きを生み出す源泉なのです。
4-2. 競合ETFとの比較:1倍の半導体ETF「SMH」や「QQQ」との違いとは?
「半導体業界の成長には期待したいが、SOXLのリスクは高すぎる…」そう感じた方のために、より穏やかな選択肢も存在します。
- vs. SMH (ヴァンエック半導体ETF)SOXLの**「レバレッジなし・1倍バージョン」**と考えると最も分かりやすいのが、このSMHです。連動する指数は若干異なりますが、構成銘柄はSOXLと非常に似ています。半導体業界に投資したいが、逓減リスクや3倍のボラティリティを避けたい投資家にとっては、最も直接的な代替案となります。
- vs. QQQ (インベスコQQQトラスト)こちらは米国ハイテク株の代表格である**「ナスダック100指数」**に連動するETFです。NVIDIAやAMDといった半導体企業も含まれますが、Apple、Microsoft、Amazon、Googleといったソフトウェアやサービスの巨人たちも多数含まれています。半導体という単一セクターに集中するSOXLやSMHに比べ、はるかに分散が効いているため、よりマイルドな値動きを期待できます。
4-3. Direxion社とは?SOXLを運用するレバレッジETFの専門家集団
最後に、SOXLを運用している「Direxion(ディレクション)社」について知っておくことも重要です。
彼らは、バンガード社やブラックロック社のように、長期的な資産形成のための低コストなインデックスファンドを主力とする会社ではありません。Direxion社は、SOXLのようなレバレッジ型や、相場の下落で利益が出るインバース型といった、デリバティブを駆使した戦術的な金融商品を専門とする運用会社です。
事実、Direxion社自身がその目論見書で、これらの商品は**「日次(1日)の投資目標を追求するものであり、長期的なリターンは指数の長期リターンとは大きく異なる可能性がある」**と明確に警告しています。
つまり、運用会社のプロ自身が「この商品は長期保有向けではありません」と公言しているのです。これ以上、何をかいわんや、です。
5. SOXLはゴミなのか?いいえ、猛毒を「劇薬」に変える現実的な投資戦略
ここまでSOXLの危険性について徹底的に解説してきましたが、ではSOXLは一切手を出してはいけない「ゴミ投資商品」なのでしょうか?
いいえ、そうではありません。
SOXLは、知識なく扱えば資産を溶かす**「猛毒」ですが、その特性を100%理解し、厳格なルールのもとで付き合えば、資産形成を加速させる「劇薬」**にもなり得るのです。
もしあなたが、それでもSOXLの爆発的なリターンを諦めきれないのであれば、これから紹介する3つの現実的な投資戦略を「絶対の掟」としてください。
5-1. コア・サテライト戦略:総資産の5%以下で「サテライト」として活用する
まず大前提として、SOXLをあなたの資産形成の「主役」にしては絶対にいけません。
賢明な投資家が実践する**「コア・サテライト戦略」**を徹底しましょう。
- コア(核): 資産の95%以上。VT(全世界株式)やVOO(S&P500)といった、低コストで分散の効いたインデックスファンドで、長期的に安定したリターンを目指します。これがあなたの資産を守る「城壁」です。
- サテライト(衛星): 資産の5%以内。このごく一部の資金で、個別株やテーマ型ETF、そしてSOXLのようなハイリスク・ハイリターンな商品を狙います。
サテライト部分は、あなたの投資の「遊び」や「スパイス」です。SOXLへの投資は、必ずこの5%の範囲内に収めてください。万が一、SOXLが暴落してその価値がゼロになったとしても、あなたの資産全体へのダメージは軽微で済みます。この**「最悪の事態を想定した資金管理」**こそ、市場で生き残るための最重要スキルです。
5-2. 短期〜中期での順張り投資:明確な上昇トレンド発生時のみにエントリー
SOXLで利益を出すためには、「いつ買うか」というタイミングが極めて重要です。そして、その唯一解は**「順張り(トレンドフォロー)」**です。
これは、株価が下落している時に安く買おうとする「逆張り」とは真逆の考え方。明確な上昇トレンドが発生したことを確認してから、その波に乗るようにエントリーする手法です。
- エントリーの目安:
- 株価が50日や200日といった主要な移動平均線の上にあり、その線が上向きである。
- FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに転じるなど、金融緩和が明確である。
決して「安くなったから」という理由だけで手を出してはいけません。SOXLにおいて、落ちてくるナイフを掴むような**「逆張りナンピン買い」は、ただの自殺行為**です。明確な追い風が吹いていることを確認してから、船を出すのです。
5-3. 機械的な利確・損切りルールの徹底:『含み損は塩漬け』が通用しない世界
SOXLとの戦いは、入口(エントリー)よりも出口(イグジット)が重要です。感情を一切排除した、機械的な売買ルールをエントリー前に必ず設定し、それを鉄の意志で守り抜いてください。
「もう少し上がるかも」「いつか戻るはず」といった希望的観測は、SOXLでは通用しません。
- 利確ルールの例:
- 「購入価格から+30%上昇したら、半分を利益確定する」
- 「移動平均線を株価が下回ったら、利益確定する」
- 損切りルールの例:
- 「購入価格から-10%下落したら、無条件で全量を売却する」
多くの投資家が退場する理由は、損切りができないからです。SOXLの世界では、**「損小利大(損失は小さく、利益は大きく)」**を実践できる投資家だけが生き残ります。含み損を塩漬けにして助かるほど、この猛毒は甘くありません。
6.【2025年後半】今の半導体市場はSOXLに手を出すべきタイミングか?
ここまでSOXLの仕組みとリスク、そして現実的な付き合い方を解説してきました。
それを踏まえ、読者の皆さんが最も知りたいであろう問い「で、結局”今”はどうなのか?」について、2025年7月現在の市場環境から分析します。
果たして、今の半導体市場は、SOXLという猛毒に手を出すべきタイミングなのでしょうか?
6-1. AIブームの継続とシリコンサイクルの現状
2025年後半の現在、半導体市場は二つの異なる顔を持っています。
一つは、2023年から続く**「AIブーム」の力強い継続**です。データセンターやAIモデルの学習・推論に使われる高性能GPUへの需要は衰えを知らず、NVIDIAやAMDといった企業の業績を力強く牽引しています。これは、SOXLにとって明確な追い風と言えるでしょう。
しかしその一方で、スマートフォンやPCといった一般消費者向けの分野では、コロナ禍後の需要の反動や在庫調整の動きが見られ、伝統的な「シリコンサイクル」は踊り場を迎えています。
つまり、市場全体が一枚岩で上昇しているわけではなく、AI関連が突出して強い「二極化」の様相を呈しているのです。これは、相場全体の方向性が読みにくく、セクター内でも勝ち負けが分かれる複雑な状況を生み出しています。
6-2. FRBの金融政策と地政学リスクがボラティリティに与える影響
SOXLの値動きを左右する最大の外部要因は、今も昔も**「FRBの金融政策」**です。
2025年に入り、FRBはようやく利下げサイクルを開始しましたが、根強いインフレ圧力から、そのペースは極めて慎重です。市場は毎月の消費者物価指数(CPI)や雇用統計の結果に一喜一憂し、金利の先行き不透明感から、株価は乱高下を繰り返しています。この高いボラティリティは、逓減リスクを持つSOXLにとって、最も苦手な相場環境の一つです。
さらに、米中間のハイテク覇権争いや、台湾をめぐる地政学リスクも、常に半導体セクターの頭上を覆う暗雲です。いつ突発的な規制強化や有事が発生し、サプライチェーンが混乱するかわからない。こうした予測不能なリスクは、SOXLの価格を瞬時に数十パーセント下落させる爆弾を常に抱えている状態と言えます。
6-3. 長期的な半導体需要の展望と、それでもSOXLの長期投資が危険な理由
「短期的な動きはともかく、長期的には半導体の需要は伸び続けるのだから、いつかSOXLも報われるはずだ」
そう考える方もいるかもしれません。確かに、AI、自動運転、IoTといったメガトレンドを考えれば、今後10年で半導体市場が大きく成長することは、ほぼ間違いないでしょう。
しかし、ここで改めて、この記事で最も重要なことを思い出してください。
『半導体業界の長期的な成長』と『SOXLの長期保有で利益が出ること』は、全くの別問題です。
今後10年の道のりは、決して右肩上がりの直線ではありません。必ず、2022年に経験したような金融引き締めによる暴落や、数年にわたる停滞期(レンジ相場)が訪れます。その度に、SOXLは逓減リスクによって価値を大きく毀損し、元本を回復できないほどのダメージを負う可能性が高いのです。
たとえ10年後に半導体指数が今の3倍になっていたとしても、その間のアップダウンによって、SOXLの価値は3倍どころか、マイナスになっていることすら十分にあり得る。これが、SOXLの長期投資が構造的に破綻していると言われる所以なのです。
7. まとめ:SOXLは億り人への近道ではなく、退場への最短ルートになり得る
私たちはこの記事を通して、SOXLという金融商品が持つ、凄まじい破壊力と、ほんの一握りの可能性を見てきました。
その結論は、非常にシンプルです。
SOXLは、あなたを「億り人」へと導く魔法の杖ではありません。むしろ、知識なく安易に手を伸ばせば、大切に築いた資産をすべて失い、株式市場から**「退場」させられる最短ルート**になり得る、極めて危険な代物なのです。
最後に、あなたが今後、賢明な投資家として市場で生き残り、着実に資産を築いていくために、心に刻むべき3つのことをお伝えします。
7-1. 「長期・積立・分散」という投資の王道から逸脱した商品であることの再認識
ウォーレン・バフェットをはじめ、世界中の賢人たちが成功の秘訣として挙げる、資産形成の「王道」があります。それは、**「長期・積立・分散」**の3つの原則です。
- 長期: 時間を味方につけ、複利効果で資産を育てる。
- 積立: 定期的に買い付け、購入単価を平準化する(ドルコスト平均法)。
- 分散: 様々な資産に投資を分け、リスクを低減させる。
では、SOXLはどうでしょうか。
SOXLは、この3つの原則すべてから、真逆の方向に逸脱しています。
- 逓減リスクがあるため**「長期」**保有に向かない。
- レンジ相場で価値が目減りするため**「積立」**投資のリスクが高い。
- 単一セクターへの集中投資であり**「分散」**が全く効いていない。
SOXLは、資産形成の王道ではなく、短期的な値動きを狙うトレーダーのための、極めて特殊な「邪道」の商品であること。この事実を、決して忘れないでください。
7-2. あなたは本当にSOXLのリスクを許容できるのか?自分自身への問いかけ
この記事を読み、あなたは「自分なら上手くやれる」と思ったかもしれません。しかし、最後に一度だけ、冷静に自分自身の心に問いかけてみてください。
- 1年間で資産が10分の1になる可能性を受け入れ、夜も眠れますか?
- 明確な売買ルールを感情に流されず、機械のように実行し続ける自信はありますか?
- あなたの投資の動機は、論理的な戦略ですか?それとも「一発当てたい」という根拠のない欲望ですか?
SOXLが要求するのは、資金だけではありません。市場を常に監視する時間、そして何よりも、暴落に動じない強靭な精神力です。そのリスクとリターンが、本当にあなたの人生に見合っているのか。答えを出せるのは、あなた自身しかいません。
7-3. 資産形成の主役はインデックスファンド(VOO, VTなど)に。SOXLはあくまでスパイスと心得るべし
結論として、これから本気で資産を築きたいと考える大多数の個人投資家にとって、ポートフォリオの**「主役」**に据えるべきは、VOO(S&P500)やVT(全世界株式)のような、全世界に分散された低コストのインデックスファンドです。これこそが、あなたの資産を着実に、そして穏やかに育ててくれる、最高のパートナーです。
では、SOXLの居場所はどこにあるのか。
それは、料理における**「スパイス」**です。
ほんの少し加えるだけで、料理の風味を劇的に引き立てることがある。しかし、間違ってもスパイスだけで食事をしようなどと考える人はいません。
SOXLも同じです。失っても痛くない、ごく僅かな資金で、ポートフォリオに刺激を加える。それ以上の役割をSOXLに求めてはいけません。
賢明な投資家は、時間と複利を味方につけます。決して、逓減リスクとボラティリティを敵に回してはいけないのです。
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