結論:高卒のまま、大卒を飛ばして修士に行ける
先に結論だけ書きます。
高卒でも、大学を卒業せずに大学院に入れます。大学院側の「個別の入学資格審査」を通れば、22歳以上で実務経験があれば出願できる。2年で修了すれば、履歴書の最終学歴は「高卒」から「大学院修士課程修了」に書き換わります。
そして、これをやる価値があるのは「学歴で切られているゲートが目の前に実在する人」だけです。昇進試験の受験資格が大卒以上、転職したい求人が大卒以上、社内の職種転換に学歴要件がある。そういう人は、最小のコストでそのゲートを通過してください。ゲートに当たっていない人は、この記事を読んでも時間の無駄です。理由は後半に書きます。
私は学歴の価値をほぼ認めていない。それでもこの記事を書く理由
私は就職せずに、大学時代に始めたせどりでそのまま独立して20年やってきた人間です。学歴を一度も使っていません。学歴の価値はかつてないほど下がっていて、超一級の大学でもない限り、そこで学ぶ内容はAIが数秒で要約できるレベルだと思っています。
ただ、それは「学歴そのものの価値」の話であって、「学歴というゲートの実在」の話ではない。この2つは分けて考える必要があります。
会社の中では、昇進試験の受験資格や採用水準に学歴が書いてあることが普通にあります。本人の能力とは無関係に、人事システムの入力欄で弾かれる。高卒だと、ある職種は途中から限界効用が浅くなる。仕事はできるのに、その先の階段が制度的に存在しない。
これを実感したのは学生の頃です。私は卒業単位が足りなくて、千葉のキャンパスから神田のキャンパスまで通っていた時期がありました。そこで見たのが、スーツを着たまま夜間部に通ってくる社会人の姿です。仕事を終えて、そのまま教室に来る。おそらく会社の金で通っていた人も多かったはずです。学歴の底上げや人材育成に、会社側も金を出すだけのニーズがあるということです。
学歴に価値がないなら、あの人たちは夜に通わない。価値があるのではなく、ゲートがあるから通っていた。この記事はそのゲートの通り方の話です。
検索者が本当に知りたいのは「最終学歴は書き換わるのか」
「高卒 大学院」「高卒 MBA」で検索してくる人のうち、この記事を実際に開いているのは「最終学歴」という言葉を足して検索した人です。つまり知りたいのは「MBAの中身」ではなく、「自分の履歴書の一番上の行が変わるのか」です。
答えは、変わります。
履歴書の学歴欄は時系列で書くので、「〇〇高校 卒業」の次に「〇〇大学大学院 〇〇研究科 入学」「同 修了」と続きます。大学の行がないことは見れば分かる。ただ、最終学歴の欄、人事システムの学歴区分、昇進要件の「大卒以上」の判定に使われるのは最終学歴です。修士は大卒以上です。
「大卒を飛ばしていることがバレるのでは」と心配する人がいますが、隠す必要がそもそもありません。個別審査は文部科学省が定めた正規の制度で、大学院側が「大学卒業と同等以上の学力がある」と認めた結果です。むしろ実務経験で審査を通ったという事実は、面接ではプラスに働きます。
制度の骨格:個別の入学資格審査とは何か
大学院の入学資格は、学校教育法施行規則で決まっています。原則は「大学を卒業した者」ですが、その並びに「大学院において、個別の入学資格審査により、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、22歳に達した者」という項目があります。
各大学院はこの条文をもとに独自の審査基準を設けています。ビジネススクール系で多いのは以下のような条件です。
- 22歳以上
- 社会人としての就業経験がおおむね3年以上(学校によって「3〜5年」「同等の経験」など幅がある)
- 職務経歴書、保有資格、専修学校の修了、科目等履修生としての単位取得などを「入学資格審査票」で申告
審査に通ると、大卒者と同じ入試(多くは書類とエッセイ、面接)を受ける権利が得られます。ここから先は大卒者と同じ扱いです。
重要なのは、この審査は「学力試験」ではなく「書類審査」だということです。偏差値も、受験勉強も関係ない。問われるのは、社会人として何をやってきたかです。
3ルートのコストと時間
高卒から最終学歴を上げるルートは実質3つです。それぞれのコストと時間を並べます。
ルートA:個別審査で直接大学院(修士)
- 期間:2年(審査と入試の準備を含めて2年半程度)
- 費用:ビジネススクールで200万円台後半〜350万円程度。たとえばグロービス経営大学院は受講料345万円+入学金8万円で353万円
- 到達点:最終学歴「修士」
- 条件:22歳以上、実務経験3年程度
ルートB:通信制大学で学士を取る
- 期間:最短4年(短大卒・専門卒なら3年次編入で2年)
- 費用:放送大学の全科履修生なら入学料2.4万円+124単位分の授業料で約77万円
- 到達点:最終学歴「大卒(学士)」
- 条件:高卒であれば誰でも入れる。審査なし
ルートC:科目等履修生で単位を積んでから個別審査
- 期間:1年程度単位を取ってから大学院2年
- 費用:単位分の授業料(放送大学なら1単位6,000円)+大学院の学費
- 到達点:最終学歴「修士」
- 位置づけ:実務経験が足りない、または審査の材料を増やしたい人向けのAの補強
ゲート別に「最小コスト」を選ぶ
ここが旧記事にはなかった部分で、一番大事なところです。
MBAが最適解だと言う進学サイトが多いですが、それは学校側の都合です。あなたに必要なのは、目の前のゲートを通過する最小単位の学歴であって、MBAではありません。
ゲートが「大卒以上」で、時間に余裕がある場合 ルートBです。77万円で学士が取れて、それで昇進要件も転職の足切りも通過できる。350万円のMBAは過剰装備です。ただし4年かかる。30代で「あと4年」を待てるなら、これが最安です。
ゲートが「大卒以上」で、2年以内に通過したい場合 ルートAです。学士を取る4年を飛ばして、2年で修士まで行く。費用は4倍以上ですが、昇進試験のタイミングが決まっている人にとっては、時間のほうが高い。
ゲートが「修士以上」や「専門性の証明」の場合 ルートAしかありません。ただし、このゲートに当たる高卒の人はまれです。
すでに短大卒・専門卒の場合 ルートBの編入で2年、費用は40万円前後で学士に届きます。これは私自身が通ったルートです(後述)。
要するに、判断基準は「ゲートが何を要求しているか」と「いつまでに通過したいか」の2軸だけです。学校の知名度、AACSB認証、教員の実務経験、そういう項目は判断に入れる必要がありません。
会社の金で行く:給付金と企業の進学支援
ルートAの350万円をそのまま自腹で払う前提で考えると、多くの人は止まります。ただ、実際にはここまで下がります。
専門実践教育訓練給付金
雇用保険に一定期間加入している人が、厚生労働省の指定講座(主要なビジネススクールのMBAはだいたい指定されています)を受講すると、受講費用の一部が戻ります。2024年10月以降の開始分は3段階です。
- 受講中:費用の50%(年間上限40万円)
- 修了して資格取得し、1年以内に雇用されている:合計70%(年間上限56万円)
- さらに受講前より賃金が5%以上上がった:合計80%(年間上限64万円)
2年制のMBAなら最大で128万円です。グロービスの例で言えば353万円が実質225万円前後まで下がります。在職者が使う前提の制度なので、「会社を辞めずに通う」ことが前提条件になります。
企業の進学支援
神田の夜間部で見た社会人がこれです。企業によっては人材育成として学費の全額または一部を負担し、修了後の勤続を条件にする制度があります。制度がなくても、上司に「昇進要件を満たすために大学院に行く」と相談すると、勤務時間の調整や一部補助が出るケースは珍しくありません。会社側から見れば、辞めさせずに管理職候補を作れるので、金を出す理由があります。
自腹で350万円と、給付金128万円+会社補助で実質数十万円では、まったく別の意思決定になります。行くかどうかを決める前に、この2つを必ず確認してください。
私のルート:偏差値35の高校から4大卒になった経路
軽く触れておきます。私は偏差値35の高校の出身で、当時の学力では普通に大学受験をしても受かる状態ではありませんでした。それでも4大卒の肩書を持っています。経路はこうです。
高校 → 日本大学の短期大学部 → 東京電機大学に3年次編入
大学受験という正面のゲートは通れなかったので、短大という別の入口から入って、編入という制度で4大に接続した。世の中は最終地点しか見ません。経路は問われない。これは今回の「大卒を飛ばして修士」と構造がまったく同じです。
ついでに書くと、本当は高校から東京理科大学の二部(夜間)に行きたかった。推薦の資格は満たしていたのに、担任と親に反対されて進学できませんでした。今の私なら理科大二部一択です。世間の評価がどちらが高いかは明確です。
ここから引き出せる教訓は2つです。学歴は正面から取るものではなく、制度の隙間を経路として設計するものだということ。そして、その設計に外野の反対は関係ないということです。夜間部や通信制や個別審査を「正規ルートじゃない」と言う人は、あなたの昇進試験を代わりに受けてはくれません。
一つだけ正直に付け加えると、私は経路で実力以上の学校に入った結果、中では落ちこぼれていました。単位が足りずに別のキャンパスへ通ったのもその帰結です。ゲートを通過することと、通過した先でやっていけることは別の話です。修士を取って昇進要件を満たしても、管理職の実務はまた別のゲートとして待っている。学歴の書き換えは入場券であって、実力の書き換えではありません。ここを混同すると、私と同じことになります。
この記事を読んでも進学すべきでない人
学歴は会社の中でしか効きません。ここは強調しておきます。
あなたが会社を辞める予定なら、あるいは辞めたいと思ってこのサイトに来たなら、学歴ゲートを通過する意味はゼロです。会社の外に出た瞬間に、修士も学士も誰も見ません。私が20年間一度も学歴を使わなかったのは、買い手が会社ではなかったからです。
逆に言うと、高卒で会社の中にいて、ゲートに当たっている人は2つの選択肢を持っています。
- 学歴ゲートを最小コストで通過して、会社の中で階段を登り続ける
- 会社以外の買い手を作って、そもそも学歴が問われない場所に軸足を移す
この記事は1の話です。2の話は、このサイトの本筋です。どちらが正しいかは人によりますが、「学歴がないから詰んでいる」というのは事実ではなく、片方のルートしか見ていないだけです。
合格までの手順
1. ゲートを特定する 就業規則、昇進要件、社内公募の条件、転職したい求人の応募資格を実際に読む。「大卒以上」なのか「修士以上」なのか、それとも学歴要件は書かれていないのか。ここが曖昧なまま動く人が一番多い。
2. ルートを選ぶ 前述の2軸(要求されている学歴・期限)で、A・B・Cのどれかに決める。
3. 金の出どころを確認する ハローワークで専門実践教育訓練給付の受給資格を確認。並行して、会社の人事に進学支援制度の有無を聞く。
4. 個別審査の書類を作る(ルートAの場合) 職務経歴書を、業務内容ではなく「何を任され、何を判断し、どういう結果を出したか」で書き直す。審査で見られるのは実務の質です。資格があれば全部書く。
5. 出願する 審査に通れば、あとは大卒者と同じ入試です。エッセイと面接が中心なので、「なぜ今、何のために」を自分の言葉で言えれば通ります。
よくある質問
Q. 個別審査は難しいですか? 書類審査なので、学力試験のような難しさはありません。実務経験3年以上で、職務経歴が説明できれば、多くの場合は通ります。逆に、実務経験が1〜2年だと厳しいので、その場合はルートCで単位を積むか、経験年数を待ってください。
Q. 高卒からMBAを取って年収は上がりますか? 分かりません。上がるのはMBAのおかげではなく、ゲートを通過した先の昇進や転職のおかげです。ゲートがない人がMBAを取っても、年収は変わりません。だからこの記事は「ゲートを特定しろ」から始まっています。
Q. 通信制大学の学士と、通学の学士は区別されますか? 人事システム上の学歴区分では区別されません。学士は学士です。気にする人事担当者がいても、要件を満たしているものを弾く根拠がありません。
Q. 一部(昼間)と二部(夜間)で違いはありますか? 学位は同じです。卒業証書にも学位記にも、昼夜の区別は原則書かれません。
まとめ
高卒のまま修士に行く制度は実在し、22歳以上・実務経験3年程度で使えます。ただし、それをやる意味があるのは、学歴のゲートに実際に当たっている人だけです。ゲートが「大卒以上」なら77万円の通信制大学が最安で、2年で通過したいなら個別審査で大学院、費用は給付金と会社支援で大きく圧縮できます。
そして、そのゲートは会社の中にしかありません。会社の外に買い手を持つなら、学歴は一度も使わずに済みます。私はそうしてきました。

コメント