先週も見た同じ商品が、同じ値札のまま、同じ棚に並んでいる。値下げシールの位置すら変わっていない。ワゴンの中身も、ジャンクコーナーの積まれ方も、先週とまったく同じ。
それでも一応ひと通り棚を見て、何も買わずに店を出て、次の店へ向かう。気づけば今日も3時間かけて、仕入れはゼロ。
店舗せどりを半年、1年と続けていると、多くの人がこの状態に突き当たります。そして原因を「自分のリサーチ力が足りないから」「目利きができていないから」だと考え、リサーチする商品数を増やそうとします。
しかし、原因はそこではないことがほとんどです。
問題は、そもそも「新しい商品が入ってこない店」を巡回し続けていることにあります。
多くの人はルートを「近い順」「行ったことがある順」「なんとなく前に良い思いをした順」で組んでいます。そこにはその店の棚が入れ替わっているかどうかを検証した形跡がありません。棚が動かない店を100回見ても、成果はゼロのままです。
この記事では、次の3つを提示します。
- 棚が回転する店(神店舗)を判別する具体的な基準
- 時間あたり期待値(EV/h)でルートを評価し、遠征の是非を数字で判断する方法
- 訪問記録をExcelでデータベース化し、ルートを自動的に最適化していく手順
読み終える頃には、巡回する店舗数はむしろ減っているのに、仕入れ額は増えている状態へ向かう道筋が見えているはずです。「今日はどこに行こうか」で迷う時間はゼロになり、隣県への遠征に行くべきかどうかも、感覚ではなく数字で即断できるようになります。
1. 店舗せどりのルートは「距離」ではなく「期待値」で決まる
1-1. なぜ真面目に巡回しているのに仕入れられなくなるのか
店舗せどりで成果が停滞している人の巡回を分解すると、目的がすり替わっていることに気づきます。
本来の目的は「商品が入れ替わっている棚を見ること」です。ところが、いつの間にか「店を見に行くこと」自体が目的化している。訪問した事実で満足してしまい、その店に新しい商品が供給されているかどうかを一度も検証していません。
リサイクルショップの棚に新しい商品が並ぶ経路は、原則ひとつしかありません。買取です。
つまり、買取が入っていない店の棚は、物理的に変化しようがない。あなたが先週見た商品が今週も残っているのは当然であり、そこにリサーチ力は関係ありません。どれだけ丁寧に全棚をスキャンしても、母集団が同じである以上、結果は同じです。
リサーチ量を増やす前に、リサーチする対象そのものを入れ替える必要があります。 これがルート設計という考え方の出発点です。
1-2. ルートの唯一の評価指標=時間あたり期待値(EV/h)
1-2-1. 計算式:EV/h =(見込み粗利 − 交通費)÷(移動時間 + 滞在時間)
店舗せどりでは「今日は1万円の利益商品が取れた」という粗利額で成果を語りがちです。しかし粗利額は、それにかかった時間を無視した数字です。
評価すべきは常に、分母に時間を置いた期待値です。
EV/h =(見込み粗利 − 交通費)÷(移動時間 + 滞在時間)
ここで重要なのは、分母に入れる時間を漏れなく計上することです。具体的には次のすべてが対象になります。
- 自宅から1店舗目までの移動時間
- 店舗間の移動時間
- 駐車場に停めてから入店するまでの時間
- 入店から退店までの滞在時間
- 最終店舗から自宅までの移動時間
「移動中は音声学習しているから無駄ではない」という反論はありますが、それは仕入れの生産性とは別勘定です。ルートの良し悪しを判定する場面では、移動時間は容赦なくコストとして計上してください。
1-2-2. 数字で見る逆転現象
粗利額とEV/hがどれほど乖離するか、モデルケースで確認します。以下は計算例であり、実測値ではありません。
ケースA:遠方の1店舗
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 見込み粗利 | 10,000円 |
| 往復移動時間 | 2時間 |
| 滞在時間 | 1時間 |
| 合計時間 | 3時間 |
| EV/h | 約3,333円(交通費控除前) |
ケースB:近場の3店舗
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 見込み粗利 | 2,000円 × 3店舗 = 6,000円 |
| 移動時間合計 | 0.5時間 |
| 滞在時間合計 | 1.5時間 |
| 合計時間 | 2時間 |
| EV/h | 3,000円(交通費控除前) |
粗利額では10,000円 対 6,000円で、遠方店が圧勝に見えます。EV/hでもまだ遠方店がわずかに上回っています。
ところが、ここに再現頻度という軸を掛け合わせた瞬間、評価は反転します。
| 遠方1店 | 近場3店 | |
|---|---|---|
| 1回あたり粗利 | 10,000円 | 6,000円 |
| 実行可能な頻度 | 月1回 | 週1回(月4回) |
| 月間粗利 | 10,000円 | 24,000円 |
| 月間投下時間 | 3時間 | 8時間 |
| 月間EV/h | 約3,333円 | 3,000円 |
| ガソリン・高速代 | 大 | 小 |
月間の粗利額で2.4倍の差がつきます。EV/hは近場がわずかに下回りますが、交通費を控除すると逆転する可能性が高い。さらに、月1回しか実行できない仕入れは、その1回が空振りしたときのリカバリーが効きません。
強い1発より、平凡でも毎週繰り返せる仕入れのほうが、月間では上回る。 これが店舗せどりのルート設計における最重要の原理です。
1-3. 月次で見る「ルートの実効時給」の出し方
もう一段引いた視点として、月単位の実効時給も出しておくべきです。
実効時給 = 月間実現粗利 ÷(巡回総時間 + 出品・梱包・発送時間 + リサーチ時間)
巡回時間だけで計算すると数字が良く見えますが、店舗せどりは仕入れた後の作業時間が必ず発生します。ここまで含めた実効時給を一度も計算していないために、「頑張っているのに手元に残らない」状態が延々と続くケースは非常に多い。
まずは今月の数字を一度出してみてください。多くの人にとって、この記事の中でもっとも痛い作業になるはずです。
2. 仕入れやすい「神店舗」の正体は”買取件数”である
2-1. 買取が集まる店=棚が回転する店
ここが本記事の中心命題です。
リサイクルショップの棚は、買取という入力があってはじめて変化します。したがって店舗の評価軸は、品揃えでも店舗面積でもチェーンのブランドでもなく、その店にどれだけ買取が集まっているかの一点に集約されます。
- 買取が多い店 … 棚が高速で回転する。毎週訪問しても、前回とは違う商品が並んでいる。同じ店を年間50回訪問できる。
- 買取が少ない店 … 棚が動かない。いつ行っても景色が同じ。年間50回訪問しても、実質的な仕入れ機会は数回しかない。
多くのせどり記事は「品揃えの良い店を回りましょう」と書きます。しかしそれは結果を見ているだけです。見るべきは原因である買取流入量であり、これは店頭で直接観察できます。
2-2. 買取が来ている店を見抜く現地チェックリスト
2-2-1. 店頭で確認できる指標
私自身、ブランド品の修理・買取、レトロゲーム機の買取と、扱う品目を変えながら20年近く現場に立ってきました。その経験から断言できるのは、買取が集まっている店は、ジャンルに関係なく、入店した瞬間に分かるということです。特別な訓練は要りません。店をたくさん見ていけば、誰でもすぐに識別できるようになります。
具体的に見えるサインは以下です。
【売り場で分かること】
- 来店するたびに商品が入れ替わっている。 前回マークした商品が消え、見たことのない商品が並んでいる。
- 価格の見直しが定期的に行われている。 高く値付けしすぎた商品が、適正価格や割安価格に修正されている。これは店側が在庫を「動かす」意思を持って運用している証拠です。逆に、値付けが放置されている店は、そもそも在庫を回す気がないか、回すだけの人手がありません。
- 店内に活気があり、賑わっている。 せどり目線を抜きにしても、純粋に来店して楽しい店。客が入っている店には、買取も持ち込まれます。
【バックヤード周辺で分かること】 ← ここが決定的
- 買取カウンターに人が並んで順番待ちをしている。 これがもっとも明確な指標です。今この瞬間、棚の未来の在庫が供給されている光景そのものです。
- 廊下や通路に、買い取った品や査定待ちの商品が大量に並んでいる。 処理が追いつかないほど買取が来ている状態。
- 棚に並べるための加工(清掃・検品・値付け)を終えた商品が山積みになり、品出しを待っている。 これは「数日以内に棚が入れ替わる」ことの予告です。
多くのせどり実践者は売り場しか見ていません。 しかし店の実力が出るのは買取カウンターとバックヤードの導線です。次の巡回から、入店したらまず買取カウンターの方向を見る習慣をつけてください。判断材料の質が根本的に変わります。
なお、これは体感の話ですが、買取カウンターが常に稼働している店は、店員の動きも速く、査定の判断も明確です。買取が集まる店には、それを裁ける人員と運用が備わっている。逆に言えば、人員と運用が弱い店には買取が定着しません。
2-2-2. 同じ商品を「定点観測」する検証法
上記のサインは強力ですが、訪問時間帯によっては買取カウンターが空いていることもあります。より確実に回転率を判定するには、定点観測を使います。
手順は単純です。
- 初回訪問時に、すぐには売れなさそうな商品を1〜3点マークする。 高額すぎる中古家電、型落ちのオーディオ、割高な値付けのブランド小物など、店側が売り切るのに苦労しそうなものが適しています。写真を撮り、値札の数字を記録します。
- 2週間後に同じ商品を確認する。
- 判定は以下の通りです。
| 2週間後の状態 | 判定 |
|---|---|
| 商品が消えている | 回転が速い。棚全体が動いている可能性が高い |
| 残っているが値下げされている | 在庫を回す運用がある。合格ライン |
| 値札も位置もまったく同じ | 棚が死んでいる。訪問頻度を大幅に下げるか、切る |
この検証は今日から誰でも実行できます。「なんとなく良さそうな店」という主観を、2週間で客観に変換できるのが定点観測の価値です。
2-3. なぜ買取が集中する店とそうでない店が生まれるのか
同じチェーンでも、店舗によって買取流入量はまったく違います。要因は主に次の通りです。
商圏の人口動態 世帯の入れ替わりが多いエリア(賃貸比率が高い、大学や工場がある、転勤族が多い)は、引っ越しに伴う売却が恒常的に発生します。逆に持ち家中心で住民の入れ替わりが少ないエリアは、買取の発生頻度そのものが低くなります。
買取単価の設定と査定スピード 売却する側は「高く」「早く」売りたい。査定に1時間待たされる店と、15分で終わる店では、リピート率がまったく違います。一度スムーズに売却できた人は、次も同じ店に持ち込みます。
店長裁量の大きさ 値付けの修正が素早い店は、現場に裁量があります。これは前述の「価格の見直しが定期的に行われている」というサインと直結します。
チェーン本部の在庫移動方針 一部のチェーンは店舗間で在庫を移動させます。この場合、その店の買取流入量と棚の中身が必ずしも一致しません。判定に定点観測を組み合わせる理由のひとつです。
ここで、買取を行う事業者側の視点を補足します。私は自分でも買取・修理を事業として行ってきましたが、売却者が持ち込む店は「安心して手放せる店」に強く偏ります。査定根拠を説明してくれる、状態が悪くても引き取ってくれる、対応が丁寧である。この積み重ねで、特定の店にだけ買取が集中していきます。
つまり買取流入量は一時的な運ではなく、店の運用能力が生んだ構造的な差です。だからこそ、一度「買取が集まる店」と判定できた店舗は、その評価が長期にわたって有効になります。ルートの資産価値が生まれるのはここです。
2-4. 店舗ランク付けの基準(S/A/B/C)
ここまでの観察を、実際にルートへ落とし込むためにランク化します。評価軸は3つです。
- 買取流入量(2-2のチェックリストと定点観測の結果)
- 自分の得意ジャンルとの適性(買取が多くても、扱うジャンルが自分の土俵でなければ意味がない)
- 移動時間(EV/hの分母)
| ランク | 定義 | 扱い |
|---|---|---|
| S | 買取カウンター常時稼働、定点観測で2週間以内に商品が動く、得意ジャンルの在庫が厚い、移動15分圏内 | 最優先。訪問頻度を上げる |
| A | 買取流入は確認できるが、得意ジャンルの適性が中程度、または移動30分程度 | 定期巡回の主力 |
| B | 買取流入はあるが少ない、または移動コストが大きい | 頻度を落として維持 |
| C | 定点観測で棚が動かない、買取カウンターが常に無人 | リストから削除 |
重要なのはC判定を出して切ることです。 店舗せどりで停滞する人の多くは、ルートに店を足し続けて引くことをしません。Cランクの店を1つ切るたびに、あなたのEV/hは上がります。
3. ランク別「訪問頻度」の設計
3-1. 頻度を間違えると同じ棚を二度見るだけになる
訪問間隔は、その店の棚が入れ替わる速度に合わせるのが原則です。棚の回転より速く訪問すれば、前回と同じ商品を見るだけの無駄が発生します。逆に遅すぎれば、良い商品を他のせどらーや一般客に取られます。
ランク別の目安は以下の通りです。
| ランク | 訪問間隔 |
|---|---|
| S | 週1回 |
| A | 10日〜隔週 |
| B | 月1回 |
| C | 訪問しない |
これはあくまで初期設定です。第5章で扱う記録が溜まれば、店舗ごとの実測データから最適間隔を出せるようになります。
3-2. 曜日・時間帯の設計
買取の持ち込みは週末に集中しやすい傾向があります。ただし、持ち込まれた商品がそのまま棚に並ぶわけではありません。査定 → 検品 → 清掃・加工 → 値付け → 品出しという工程を経るため、店ごとにリードタイムが発生します。
このリードタイムは店によってまったく違います。人員が潤沢な店は翌日に並び、人手が足りない店は1週間近くかかることもあります。2-2-1で挙げた「品出しを待つ商品が山積みになっている」という光景は、まさにこのリードタイムが可視化されたものです。
したがって、訪問すべきタイミングは「週末の翌日」で一律ではなく、店ごとに検証する必要があります。これも記録対象に含めてください。
3-3. 1日のルートは「3〜5店・移動15分以内」を基本形に
1日の巡回は、店舗間の移動が15分以内に収まる3〜5店を基本形とします。
自己診断のラインとして、移動時間が総所要時間の40%を超えたら、そのルートは設計を疑ってください。 分母の4割が移動で消えている状態では、どれだけ良い店を回ってもEV/hは伸びません。
4. 遠征せどりの罠:粗利は出ているのに時給は下がっている
4-1. 遠征コストを完全計上する
隣県や遠方へ泊まりがけで仕入れに行く。SNSでは華々しい成果報告が流れてきます。しかし、その多くは粗利額のみを提示していて、コストの全計上をしていません。
遠征に本来計上すべきコストは以下です。
- 高速道路代
- ガソリン代
- 宿泊費
- 食費(普段より確実に増える)
- 移動時間そのもの(往復5〜8時間になることも珍しくない)
- 翌日以降のパフォーマンス低下(疲労により出品作業が滞る)
- 大量仕入れした場合の、帰宅後の検品・出品作業時間
ここまで全部を計上したうえでEV/hを計算すると、地元巡回を下回る、あるいは実質赤字になっているケースは決して珍しくありません。
粗利15万円という数字だけ見れば大成功に見えます。しかし、往復8時間の移動、1泊、経費4万円、帰宅後の出品作業10時間を計上したら、EV/hは地元の平凡な巡回と大差ない、ということが普通に起こります。
遠征=もっと稼げる、と闇雲に考えるのは危険です。 泊まり込みで隣県に遠征している人には、一度必ず全計上での検算をしてほしいと思います。
4-2. それでも遠征に価値がある3つのケース
一方で、遠征を全否定するつもりもありません。地元だけを回っていても、取れるものには限りがあるのは事実です。遠征が明確に有効なのは次の3ケースです。
① 地元の仕入れが枯れていることがデータで確認できる場合 「最近取れない気がする」ではなく、記録上でヒット率が明確に低下している場合。このときは母集団を広げる以外に手がありません。
② 開拓が主目的で、仕入れは副次的な場合 新エリアの店舗をランク付けして回るための調査旅行。この場合、成果指標は粗利ではなく「Sランク候補を何店見つけたか」です。目的が違えば評価軸も変わります。ここで見つけたSランク店は、以後の資産になります。
③ 自分の得意ジャンルの供給が特定地域に偏っている場合 特定の産業や文化圏に紐づいた商材は、地域偏在が起こります。この場合は移動コストを払う合理性があります。
遠征は「稼ぐため」ではなく「開拓のため」に行く。 この位置づけにすると、判断を誤りません。
4-3. 遠征の損益分岐点を事前に計算する
行く前に計算しておくべき式は次の通りです。
必要粗利 =(地元巡回のEV/h × 遠征の総所要時間)+ 遠征の実費合計
例えば、地元巡回のEV/hが4,000円、遠征の総所要時間が18時間(移動・巡回・帰宅後作業を含む)、実費が45,000円なら、
必要粗利 = 4,000円 × 18時間 + 45,000円 = 117,000円
この遠征は、粗利117,000円を超えて初めてプラスということになります。
この数字を出発前に把握しているかどうかで、遠征の意味はまったく変わります。そして、この計算をするには地元巡回のEV/hを知っている必要がある。次章の記録が、ここで効いてきます。
5. Excelでルートをデータベース化する【実務パート】
5-1. 記録するのは3種類だけ:訪問ログ・仕入れログ・売却ログ
記録が続かない最大の原因は、最初から項目を作り込みすぎることです。最小構成で始めてください。
① 訪問ログ
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 日付 | |
| 曜日 | |
| 店舗名 | |
| 到着時刻 / 退店時刻 | 滞在時間を自動計算 |
| 移動時間 | 前地点からの所要 |
| 仕入点数 | 0でも必ず記録(ここが最重要) |
| 棚の変化 | 3段階評価(大きく変化 / 一部変化 / 変化なし) |
仕入れが0だった訪問こそ記録してください。 ヒット率を計算するために不可欠なデータです。多くの人は成果が出た日しか記録せず、結果として自分のルートの実力を過大評価します。
② 仕入れログ
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 仕入日 / 店舗名 / 商品名 | |
| 仕入原価 | |
| 想定売価 / 見込み粗利 |
③ 売却ログ
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 売却日 / 実売価格 | |
| 手数料・送料 | |
| 実現粗利 | |
| 売却までの日数 | 仕入日からの経過日数 |
3つのログは「店舗名」と「商品名」で紐づけます。Excelでも、スプレッドシートでも構いません。
5-2. 3ヶ月後に出せるようになる4つの指標
記録が3ヶ月分溜まると、次の指標が算出できます。ここからがデータベース化の本番です。
① 店舗別EV/h 店舗ごとの実現粗利合計 ÷ その店に費やした総時間。ルートの並び順は、この数値順に決まります。
② 店舗別ヒット率 仕入れができた訪問回数 ÷ 総訪問回数。ヒット率が下がってきた店は、買取流入が細ってきたサインです。2-2のチェックリストで再評価してください。
③ 店舗別の平均回転日数 その店から仕入れた商品が売れるまでの平均日数。粗利が高くても回転が遅い店は、資金効率で不利になります。
④ 曜日・時間帯別のヒット率 3-2で述べたリードタイムが、ここで数字として姿を現します。「この店は火曜午前が突出して高い」といった発見が出てきます。
多くのせどり記事は「メモを取りましょう」で終わります。しかし何を計算するために記録するのかが決まっていない記録は、必ず途中で止まります。 上記4指標を出すという目的が先にあるからこそ、記録が続きます。
5-3. 数字が出たらルートを組み替える
運用ルールは3つだけです。
- EV/hの低い順に店を切る。 下位2割を削除するだけで、全体のEV/hは目に見えて改善します。
- ヒット率が3ヶ月連続で低下した店は再評価する。 買取流入が減ったのか、自分のジャンルと合わなくなったのかを、店頭観察で確認します。
- 訪問間隔を実測値に合わせる。 3-1の初期設定を、実際の棚変化データで上書きしていきます。
5-4. AIに集計させてルートを最適化する
記録が溜まったら、集計と最適化はAIに任せられます。ログをCSVで書き出し、そのまま読ませてください。
プロンプト例:
以下は店舗せどりの訪問ログ・仕入れログ・売却ログのCSVです。
【前提】
- 自宅の所在地:〇〇
- 1日に確保できる巡回時間:〇時間
【依頼】
1. 店舗別のEV/h(実現粗利 ÷(移動時間+滞在時間))を算出し、降順で表にしてください。
2. 店舗別のヒット率と平均回転日数を併記してください。
3. 曜日・時間帯別のヒット率を集計し、統計的に有意と言えるだけの
サンプル数があるかどうかも明記してください。
4. 上記を踏まえ、1日の巡回時間内でEV/hが最大化する
巡回順と訪問頻度を提案してください。移動時間も考慮すること。
5. 切るべき店舗(下位)と、その判断根拠を示してください。
推定値を使った場合は必ず「推定」と明記し、
データ不足で判断できない項目はその旨を述べてください。
ポイントは、サンプル数が足りているかを必ず確認させることです。訪問3回のデータで「この店は火曜が強い」と結論を出しても、それは偶然の可能性が高い。AIは求めれば統計的な妥当性まで判断してくれます。
私自身、株式投資の売買判断もAIを組み込んだルールベースの仕組みで運用していますが、人間の役割は「何を記録するか」と「何を問うか」の設計であり、集計と最適化はAIのほうが正確で速いというのが実感です。店舗せどりのルート最適化は、まさにこの分業が効く領域です。
6. 90日でルートを固めるロードマップ
6-1. 1〜30日:候補店の洗い出しと初回スコアリング
- 商圏内のリサイクルショップ・買取店を可能な限りリストアップする
- 全店を最低1回訪問し、2-2-1のチェックリストで初回スコアを付ける
- 定点観測用の商品を各店で1〜3点マークし、写真と値札を記録する
- 訪問ログの記録を開始する
このフェーズだけは店舗数を増やす方向で動きます。 母集団がなければ選別ができません。
6-2. 31〜60日:定点観測で回転率を確定させる
- マークした商品の2週間後・4週間後の状態を確認し、回転率を判定する
- S/A/B/Cのランクを暫定確定させる
- ランク別の訪問頻度で巡回を開始する
- 仕入れログ・売却ログの運用を軌道に乗せる
6-3. 61〜90日:C店を切り、S店の訪問頻度を上げる
- 店舗別EV/hとヒット率を初めて算出する
- Cランク店をルートから完全に削除する
- S店の訪問頻度を上げ、曜日・時間帯の最適化に着手する
- AIに集計させ、巡回順を組み直す
この90日で起きる最大の変化は、巡回店舗数が減ることです。 増やすフェーズから減らすフェーズへ移行できたとき、あなたのルートは完成に向かっています。
7. よくある失敗と対処
7-1. 店舗数を増やし続けてしまう
新しい店を開拓すること自体は良いことですが、足すたびに切るをセットにしてください。切らないルートは、必ず移動時間の比率が肥大していきます。
7-2. 粗利額だけで店を評価してしまう
「あの店では過去に3万円の利益商品を取った」という記憶は強力ですが、それが何回の訪問の末に取れた1回なのかを思い出せる人はほとんどいません。ヒット率とEV/hで見れば、その店の実力は違って見えるはずです。記録は記憶の補正装置です。
7-3. 記録が続かない
続かない原因は、項目が多すぎるか、目的が不明確かのどちらかです。5-1の最小構成に戻してください。特に**「仕入れ0の訪問も記録する」**は、面倒でも死守する価値があります。ここが抜けた記録は、分析にほぼ使えません。
7-4. 他人のルート情報をそのまま真似る
得意ジャンル、保有資金、住所、確保できる時間。これらが違えば、最適ルートは一致しません。他人が「神店舗」と呼ぶ店が、あなたにとってCランクであることは普通に起こります。
ルートは、自分の記録からしか作れません。
この記事で提示した基準は、あくまであなたが自分のデータを取るための観測装置です。装置を手に入れたら、あとは回すだけ。3ヶ月後には、他の誰も持っていないあなた専用のルートが手元にできています。
よくある質問
Q1. 店舗せどりは何店舗くらい回るのが正解ですか?
1日あたり3〜5店が基本形です。ただし重要なのは店舗数ではなく訪問間隔です。棚が回転しない店を増やしても、総所要時間が伸びてEV/hが下がるだけになります。
Q2. リサイクルショップと大型チェーンではルートの組み方が変わりますか?
買取流入量で評価するという原則は同じです。ただしチェーン系は店舗間の在庫移動があるため、その店の買取件数と棚の中身が一致しないことがあります。チェーン系ほど定点観測(2-2-2)を併用して、実際の回転を確認してください。
Q3. 遠征せどりは本当に稼げないのですか?
稼げないのではなく、コストを全計上せずに評価しているケースが多い、というのが正確です。開拓目的であれば十分に有効です。判断基準は4-3の損益分岐点計算を使ってください。
Q4. 車がなくても店舗せどりのルートは組めますか?
組めます。EV/hの分母が移動時間である以上、徒歩・自転車圏内に高回転店がある人は構造的に有利な場面すらあります。ただし大型家電などは扱いから外す前提でジャンル設計をしてください。
Q5. どのくらいの期間で「自分のルート」が完成しますか?
最低3ヶ月です。回転率の判定に2週間×複数回の定点観測が必要なため、それ未満の期間では店舗評価が確定しません。
Q6. 仕入れができない日が続くとき、まず何を見直すべきですか?
ジャンルやリサーチ手法ではなく、訪問している店の買取流入量です。棚の景色が前回と変わっていないなら、それはリサーチの問題ではありません。回る店を入れ替えてください。
まとめ
- 店舗せどりのルートは、粗利額ではなく**時間あたり期待値(EV/h)**で評価する
- 仕入れやすい神店舗の正体は買取件数=棚の回転率。買取カウンターの行列と、通路に並ぶ査定待ち商品を見れば分かる
- 判定に迷ったら2週間の定点観測。主観が客観に変わる
- 遠征はコストを全計上して損益分岐点を出す。遠征は稼ぐためではなく開拓のために行く
- 記録を3ヶ月続ければ、店舗別EV/h・ヒット率・回転日数・曜日別ヒット率が出る。集計と最適化はAIに任せられる
- 増やすフェーズから減らすフェーズへ移行できたとき、ルートは完成に向かう

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