カバン修理は自分でできる?持ち手の剥がれ・コバ・角擦れ・ファスナーの直し方と、修理店・ブランドの料金(計算機つき)

カバン修理を自分で:本革は直せる・合皮は直せない。持ち手のコバや角擦れの補色はできることと、ボロボロに剥がれた合皮の持ち手 修理転売・リペア

「カバン 修理 自分で」「鞄 持ち手剥がれ 修理 自分で」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

本革のカバンなら、持ち手やふちのコバの塗り直し、角の擦れの補色、ファスナー・引手・金具の交換、剥がれの接着とほつれの縫いは、自分でできます。私は中古のブランドバッグを直して売っていたころ、この4つを自分の手でやりました。ただ、合皮(ポリウレタン)の持ち手がボロボロに剥がれたものは、剥がれた表面を直すことはできません。加水分解したら廃棄するしかない、というのが私の考えです。持ち手は、工業用ミシンがあれば社外品の持ち手に交換できます。ただ、本体も合皮なら、本体の剥がれも同じ時期に始まります。完全な修復を目指すなら、購入元のブランドに頼むのがいい。自分で直していいのは、使えればいい人と、インフレ前に買った・親から相続したカバンで、正規の修理料金が払えない人です。手間は軽くありません。持ち手1本のコバの塗り直しも、角の擦れ1か所の補色も、乾かす時間を除いて1時間を超えました。補色の色が合わなかった失敗もあります。店に出すと、ミスターミニットで持ち手の補修11,000円〜、スライダー交換8,800円〜、ルイ・ヴィトンの直営でハンドル交換1本20,900円〜(税込)です。自分でやるか店に出すかは、11章の計算機で比べられます。

知りたいこと 答え 章
自分で直せるか 本革なら、コバの塗り直し・補色・ファスナーや金具の交換・剥がれの接着とほつれの縫いはできる(私は4つとも自分の手でやった)。合皮の持ち手がボロボロに剥がれたものは直せない(私の考え) 1章・5章
持ち手が剥がれたら 先に傷み方を分ける。本革で、コバの塗膜の割れや、貼り合わせた革がふちから開いただけなら、貼り戻してコバを塗り直す。革が破れた、芯が見える、付け根が切れかけている、全体が傷んだなら店(持ち手の作り直しは靴専科で1本12,100円〜)。合皮なら表面は直せない 6章・10章
店に出すといくらか ミスターミニットで持ち手の補修11,000円〜、スライダー交換8,800円〜、ほつれ5,500円〜。ルイ・ヴィトンの直営でハンドル交換1本20,900円〜、ファスナー交換30,800円〜(税込) 4章
合皮の皮むけは直せるか 剥がれた表面は直せない。加水分解したら廃棄するしかない、というのが私の考え。ミスターミニットも、合皮は色を塗る補修ができないとしている。持ち手は工業用ミシンがあれば社外品に交換できる(店でも作り直せる)が、本体も合皮なら剥がれは同じ時期に始まる 3章・10章
自分でやるか、店かブランドか 完全な修復ならブランド。使えればいい人と、正規の修理料金が払えない人は自分で。計算機で費用と分かれ目を出せる 2章・11章

1. 先に、立場を書きます

私は中古品の売買を20年近く続けている古物商です。2019年から2022年ごろは、シャネルとルイ・ヴィトンのバッグを中心に、仕入れて直して売っていました(1点3万〜15万円のものが多かった)。修理の一部はアルバイトに手伝ってもらっていましたが、この記事に書くのは、私が自分の手でやった修理です。大阪で二泊三日の研修(染め直し、スプレーガンの使い方、調色。研修費10万円+旅費)も受けました。ただ、手先が器用なほうではありません。この記事のために、私は次のように答えました。選択肢から選んだ答えは、選択肢の説明もカッコで添えます。

カバンで、自分の手でやった修理(アルバイトに任せたものは除く) 「持ち手・ふちのコバ塗り」「角擦れの補色・染め直し」「ファスナー・引手・金具の交換」「剥がれの接着・ほつれの縫い」(4つとも)
持ち手の剥がれ・コバの割れで、自分で直すか店に出すかの線 「その人のスタンスによる完全な修復を目指すなら購入元のブランドに頼むのが良い」
完全な修復を目指さない人のうち、自分で直していいのは 「使えればいい人」(自分が使う物で、色の差や跡が残っても気にしない)、「インフレ前に購入していたり親から相続したが自分の経済水準だと正規の修理料金が支払えない人」
カバンの修理で、いちばん痛かった失敗 「補色の色が合わなかった」(色が浮いて、かえって目立った)
色が合わなかったカバンは、最終的にどうしたか 「自己所有のものはそのまま気にせずに使っている。転売目的のものもそのまま販売したが、露骨に品質がアカンものは廃棄した」
廃棄する線はどこか 「塗膜が割れた・剥がれた」(曲げたら塗った所が割れる)、「ベタつき・臭いが残った」(内側や表面がベタつく、臭いが取れない)、「全部を張り替えないといけないから採算が絶対取れない。正規店でも断られると思う」(誤字だけ直しています)
補色やコバ塗りに使っていた物 「コバ専用の塗料」「エアブラシ・スプレーガン」「革用の塗料を自分で調色」「市販の色付き補修クリーム」
持ち手1本のコバの塗り直しにかかった、手を動かす時間(乾かす時間を除く) 1時間を超えた(選択肢の「それ以上」)
角の擦れ1か所の部分補色にかかった、手を動かす時間(調色を含む) 1時間を超えた(選択肢の「それ以上」)。全体の染め直しは、原料は1回200円ぐらいでも2時間以上かかり、エアスプレーが必須で、専門の工房を作らないと無理だと思う(以前に答えたこと)
合皮(ポリウレタン)の持ち手がボロボロに剥がれたカバンは 「合皮は直せない。加水分解したら廃棄するしかない。」
(下書きを読んだあとの追加)加水分解した持ち手を直したいなら 「加水分解の持ち手直したいなら工業用ミシンがあれば社外品の持ち手に交換は出来ますね。でも本体も合皮だった場合剥がれが同じ時期に始まりますよ。」
ブランドのカバンでファスナー・引手・金具を替えるとき、ロゴ入りの部品は 「ロゴなしの汎用品」(ロゴのない部品に替えて、その旨を書いて売った)
店に出したことは(以前に答えたこと) ルイ・ヴィトンの財布のファスナー交換を直営店に出した(ロゴ入りの引手で、母の形見だったため。工賃は1万〜2万円ぐらい)。エルメスのバッグの縫い直しを、研修先の修理の会社に頼んだ(作業代だけで3万円以上)

2. 自分で直していい人、店やブランドに出す人

私の考えでは、線は「その人のスタンス」で決まります。どこまで元に戻したいかで、選ぶ手段が変わります。

あなたの目的 向く手段 理由
純正の部品やブランドの仕上がりを重視する(完全な修復を目指す) 購入元のブランドに相談する 私の答え。修理店は「元と同一の色・形状にはできません」(ミスターミニット)、「メーカー純正素材は流通していないため、近い色味・質感の素材で修理」(なんぼや)と書いている。金具を替えると、ブランドロゴはなくなる(ミスターミニット)。ただし、ブランドでも元どおりになると約束しているわけではない。ルイ・ヴィトンは、正式な代金は見積もりで案内するとし、汚れやべたつきのクリーニングは行っていない
使えればいい 自分で 私の答え。色の差や跡が残っても困らない。私も、色が合わなかった自分のカバンをそのまま使っている
インフレ前に買った・親から相続したが、正規の修理料金が払えない 自分で(できない所は修理店) 私の答え。ルイ・ヴィトンの直営では、ハンドル交換が1本20,900円〜、ファスナー交換が30,800円〜(税込)
売るために直す 12章 直した所と、ロゴなしの部品に替えたことを書いて売る。靴専科は、転売を目的とする修理を受けていない

完全な修復を目指すかどうかは、思い入れの強さでも変わります。私も、母の形見のルイ・ヴィトンの財布は、ロゴ入りの引手を残すために直営店に出しました。思い入れのある品で、色が合わなくなるのが困るなら、自分で手を入れる前に、ブランドか修理店で見積もりを取ってください。自分で塗った色は、あとで店に出しても元に戻るとは限りません(ミスターミニットは、カラーリングを「ご購入時と同じ状態にするサービスではありません」としています)。手を動かすこと自体が目的なら、11章の計算機で時間の値段を0円にして比べてください。

2-1. 店やブランドに出す前に確かめること

  • どの部品を替えるのか。純正の部品か、近い素材の汎用品か。ロゴ入りの金具は残るか
  • 色をどう合わせるのか。全体を塗り直すのか、部分だけか
  • 料金は見積もりで決まるのか。2か所目以降の割引はあるか(ミスターミニットは半額)
  • 何週間かかるか。店に持ち込むのか、送るのか(ミスターミニットは、バッグと財布の配送修理をいまは受けていない)
  • 自分で手を入れた跡があっても受けてもらえるか(ルイ・ヴィトンの公開ページでは、この扱いは見つけられなかった)

3. 先に素材を確かめる:本革か、合皮か

本革か合皮かで、取れる手が変わります。合皮の持ち手がボロボロに剥がれたものは、私は直せないと考えています(10章)。ミスターミニットも、色を塗り直す修理(カラーリング)について、合皮や人工皮革、エナメルなどは補修できないとしています。

素材は、表示だけでは分からないことがあります。消費者庁の「かばん」の品質表示の規程は、牛革・馬革・豚革・羊革・やぎ革を使ったかばん(旅行かばん、事務用かばん、ランドセルなど)が対象で、ハンドバッグ(トート型・ショルダー型を含む)や財布などの袋物は対象外です。この規程ではハンドバッグに表示の義務がないので、表示がなくても素材は分かりません。本体と持ち手で素材が違うこともあります。見た目や手ざわりだけで決めず、メーカーの説明、買ったときの資料、修理店で確かめます。

合皮のポリウレタンの劣化について、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会(衣類のクリーニングの業界団体)の資料は、次のように書いています。資料は衣類向けですが、素材の話です。

  • ポリウレタンは、製造から通常2〜3年で劣化する(衣料についての目安で、すべての製品が2〜3年で使えなくなるという意味ではない)
  • 原因は、空気中の水分による加水分解、紫外線、排気ガスなどのガス、熱、皮脂やアルコール、引っぱりや摩擦
  • 劣化が始まっていると、爪で押すと跡がくっきり残る、引っぱると穴がプツプツ開く。コーティングが剥がれたり、べたついたりする

靴専科も、カバンの内側のベタつきは「内装の合皮素材や接着剤が時間と共に劣化してしまった物」と書いています。スピーカーのエッジが崩れるのも、同じポリウレタンの加水分解です(スピーカーのエッジ交換の記事)。

4. 店やブランドに出すといくらか

公開されている料金の起点(税込)を並べます。実際の金額は、カバンの作りや傷み方で変わります。

修理 ルイ・ヴィトン直営 ミスターミニット 靴専科 なんぼや
持ち手の交換 ハンドルの交換(1本)20,900円〜 新規作製24,200円〜(1か所)、既製の紐・ベルトへの交換12,100円 平手(〜45cm)12,100円〜、丸手(〜45cm)13,200円〜(1本) 20,000円〜
持ち手の部分補修(コバなど) (バッグの例にはない。財布などの小物は、バニッシュ(フチ)塗り直し20,900円〜) ハンドル修理・補強11,000円〜(革で補修する、革で巻く、コバ部分のみ補修するなど) (掲載なし) (掲載なし)
色あせ・擦れ (掲載なし。汚れやべたつきなどのクリーニングは行っていない) カラーリング17,600円(S)〜26,400円(L) 色補修はクリーニングのメニュー 色落ち修理1か所12,000円、2か所〜18,000円
ファスナー ファスナーやファスナー金具(引き手など)の交換30,800円〜 スライダー交換8,800円〜、ファスナー全体15,400円〜(60cmごと) バッグのファスナー交換8,800円〜(〜30cm)。スライダーのみの交換はしない 12,000円〜
引手 引き手革の交換5,170円〜 金具6,600円、革パーツ作製11,000円 新規引手作成3,850円〜 (引手の掲載なし。金具交換は6,000円〜)
ほつれ・縫い直し 縫い直し(部分的)10,340円〜 5,500円〜(20cmごと) ほつれ縫い・つまみ縫い2,200円〜(〜10cm) 6,000円〜
金具 ビスの交換〜10,340円 6,600円〜(ブランドロゴはなくなる) カシメ1,100円〜、ホック3,300円〜、マグネット5,500円〜 6,000円〜
内側のベタつき・破れ (汚れやべたつきなどのクリーニングは行っていない) 18,700円〜(ふた裏の張り替え1か所) 内装の交換14,300円〜(SS)〜38,500円〜(LL) 内袋(裏地)交換35,000円〜
  • ルイ・ヴィトンは「正式な修理代金はお見積り時にご案内」としています
  • ミスターミニットは2026年7月現在の価格で、同じカバンの2か所目以降は半額(いちばん高い修理を1か所目とする)。バッグと財布は、いまは配送修理を受けておらず、店に持ち込みます
  • なんぼやは参考価格で、品物の状態で変わるとしています
  • 靴専科は、スライダーだけの交換を「再発の恐れがあるため」行っておらず、ファスナー交換の修理にしています

同じ修理でも、ブランドの直営と修理店で差があります。ファスナー交換は、ルイ・ヴィトン直営の30,800円〜に対して靴専科は8,800円〜(〜30cm)で、公開されている起点どうしを割ると3.5倍です。ハンドル交換1本は、20,900円〜と12,100円〜(平手)で1.73倍です。ただ、これは同じ作業の見積もりどうしの比べではありません。ルイ・ヴィトンの30,800円〜は「ファスナーやファスナー金具」の交換の区分で、スライダーだけの交換の料金ではありません。ミスターミニットの11,000円〜は「ハンドル修理・補強」の起点で、コバだけを塗る料金として出ているものではなく、なんぼやの「2か所〜18,000円」が何か所まで同じ料金かは書かれていません。修理店の部品は元と同じではなく、ロゴ入りの金具はロゴなしに替わります。同じ作業内容で見積もりを取って比べてください。

5. 自分で直せる範囲

材料の値段は、2026年10月11日のAmazon.co.jpの検索結果の表示の一例で、1本・1個を買う値段です(1回に使う量の原価ではありません。商品は15章)。

傷み 私は自分でやったか 材料の値段の例 手を動かす時間(私の場合) 店に出すと(起点)
持ち手・ふちのコバが割れた、剥がれた やった コバ専用の塗料738円〜2,068円 1本1時間超 ミスターミニットのハンドル修理・補強11,000円〜
角の擦れ・色あせ(部分) やった(色が合わなかったこともある) 色付き補修クリーム450円〜1,980円。調色する塗料とエアブラシは別 1か所1時間超 なんぼやの色落ち修理1か所12,000円
全体の色あせ(染め直し) やった エアスプレーなどの道具がそろっている前提で、1回に使う原料が200円ぐらい 2時間以上 ミスターミニットのカラーリング17,600円〜
スライダー・引手・金具が壊れた やった(ロゴなしの汎用品) YKKの金属5号スライダー2個160円〜220円 (測っていない) ミスターミニットのスライダー交換8,800円〜、金具6,600円〜
貼り合わせた革の剥がれ、短いほつれ やった コニシの「ボンド G17」20ml 580円(パッケージは「接着できないもの」に高価格品を挙げている。6章) (測っていない) 靴専科のほつれ縫い2,200円〜(〜10cm)
ファスナーのテープが裂けた、歯が欠けた 店に出す(財布の記事では、工業用ミシンが要るので店に出すとした) ― ― 靴専科8,800円〜(〜30cm)、ミスターミニット15,400円〜(60cmごと)
持ち手の革が破れた、芯が見える、付け根が切れかけている、全体が傷んだ (この記事では答えていない) ― ― ミスターミニットのハンドル修理・補強11,000円〜、靴専科の根革作成交換6,600円〜、持ち手交換12,100円〜(1本)
合皮の持ち手がボロボロ 表面は直せない。工業用ミシンがあれば、社外品の持ち手に交換はできる(私の考え)。本体も合皮なら、本体の剥がれも同じ時期に始まる ― ― 持ち手の作り直し(ミスターミニット24,200円〜、既製のベルト12,100円)

材料は数百円から2,000円ほどですが、時間がかかります。私の場合、コバも補色も、1か所に1時間を超えました。全体の染め直しは、専門の工房を作らないと無理だと思っています。

6. 持ち手の剥がれ・コバの割れを自分で直す

コバは、革の切り口です。持ち手やふちの切り口には塗料が塗ってあり、使っているうちに割れたり剥がれたりします。

6-1. 先に、傷み方を分ける

「持ち手が剥がれた」と言っても、中身が違います。この記事で「自分で」とするのは、私が自分の手でやったコバの塗り直しと剥がれの接着、つまり表面と貼り合わせの傷みまでです。

見えている傷み 手段 店に出すと(起点・税込)
コバの塗膜だけが割れた、剥がれた 自分で、コバを塗り直す ミスターミニットのハンドル修理・補強11,000円〜(コバ部分のみの補修を含む)
貼り合わせた革が、ふちから口を開けた 自分で、貼り戻してからコバを塗り直す 同上
革そのものが破れた、中の芯が見える 店(革で補修する、革で巻く) ミスターミニットのハンドル修理・補強11,000円〜
付け根(本体とつなぐ革)が切れかけている、切れた 店 靴専科の根革作成交換6,600円〜、なんぼやの根革修理8,000円〜
持ち手全体が傷んだ 店で作り直す、またはブランド 靴専科の持ち手交換12,100円〜(1本)、ミスターミニットの新規作製24,200円〜、ルイ・ヴィトンのハンドル交換20,900円〜

付け根や芯は、店では革を当てて縫う、作り直す修理のメニューになっています。接着と塗り直しで直す場所ではありません。

6-2. 貼り戻す接着剤

コニシは、皮革同士の接着に「ボンド ウルトラ多用途SU」シリーズ、「ボンド Gクリヤー」、「ボンド G17」、「ボンド パーツ用」を挙げています。「ボンド G17」(20mlのパッケージ)には、次のように書いてあります。

  • 用途:合成ゴム・皮革・金属・硬質プラスチック・木の接着・補修。「靴・カバン」も挙げている
  • 接着できないもの:軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、発泡スチロール、貴金属、高価格品
  • 使い方:接着面の汚れを落としてよく乾かし、革の接着面には紙やすりをかけておく。両面に塗ってヘラで均一にのばし、ヘラにつかない程度に乾かしてから(20℃で5〜10分)、貼り合わせてすぐに強く押さえる
  • 注意:引火性の液体で火気厳禁。有機溶剤を含むので、使っている間と使ったあとしばらくは換気する。使い方や条件で思わぬ失敗や損傷が起きることがあるので、目的に合うか必ず確かめる

高いブランドバッグに使うなら、メーカーが「接着できないもの」に高価格品を挙げていることを知ったうえで決めてください。

6-3. コバの塗料と時間

私はコバ専用の塗料を使っていました。Amazonでは、コバ専用の塗料が738円〜2,068円ほどで出ています。時間は、持ち手1本で、乾かす時間を除いて1時間を超えました。2本あれば2時間を超えます。

7. 角の擦れの補色と、色が合わなかった失敗

私が使っていたのは、市販の色付き補修クリーム、革用の塗料を自分で調色したもの、エアブラシ・スプレーガンです。調色とスプレーガンは研修で習いました。それでも、角の擦れ1か所に、調色を含めて1時間を超えました。

調色する前提の材料は、たとえばコロンブスの「アドカラーセット」(8,250円)で、10色と白の補修用の絵の具、下地剤、パレット、筆、紙やすり(#240・#400)が入っています。コロンブスは「アドカラーの調色は念入りに行ってください」と書き、起毛革とエナメルには使えないとしています。

いちばん痛かった失敗は、補色の色が合わなかったことです。自分のカバンはそのまま気にせず使っていて、売るつもりのカバンもそのまま売りました。露骨に品質がよくないものは廃棄しました。私が廃棄した線は、塗膜が割れた・剥がれた、ベタつきや臭いが残った、全部を張り替えないといけなくて採算が取れない、の3つです。

思い入れのある品なら、2章のとおり、手を入れる前に見積もりを取ってください。店も、色合わせに手間をかけています。ミスターミニットのカラーリングは、元の色を隠れた部分から探し、それぞれに合った色を作って手作業で塗り直すとしています。そのうえで「ご購入時と同じ状態にするサービスではありません」「修理後、使用状況や保管状況により塗膜が剥離する場合があります」と書いています。

8. ファスナー・引手・金具の交換

8-1. スライダーのサイズ

YKKは、ファスナーのサイズを「チェーン幅のことをいい、数字で表します」としています。スライダーの品番には、材質・機能・表面処理を表す記号が付きます(たとえば機能の記号のNはノッチロック、Fはロックのない自由スライダー)。サイズの数字だけでなく、ファスナーの種類(金属・コイル・樹脂)と、スライダーの形(ロックの有無など)も今のものに合わせます。Amazonでは、YKKの金属5号のスライダーが2個160円〜220円ほどで、コイル用の「5CN」のように種類ごとに分かれて売られています。

8-2. スライダーだけ替えるか、ファスナーごと替えるか

店でも判断が分かれます。ミスターミニットはスライダーだけの交換を8,800円〜で受けていて、ファスナーの生地が裂けた場合はファスナー全体を交換するとしています。どちらも「修理部分の周辺を分解して交換・取り付けを行います」と書いていて、作りによっては周りをほどかないとスライダーを通せません。靴専科は、スライダーだけの交換は再発の恐れがあるため行わず、ファスナー交換にしています。歯や生地が傷んでいるなら、ファスナーごと替える修理になります。財布については、ファスナーの交換は工業用ミシンが要るので店に出す、と財布のリペアの記事に書きました。

8-3. ロゴ入りの部品

私はロゴなしの汎用品に替えていました。修理店も同じで、ミスターミニットは金具を替えると「元の金具とは形状が変わります。ブランドロゴはなくなります」としています。ロゴ入りのまま直したいなら、ブランドの直営です。ルイ・ヴィトンは、ファスナーやファスナー金具(引き手など)の交換を30,800円〜、引き手革の交換を5,170円〜としています。

9. 剥がれの接着と、ほつれの縫い

剥がれの貼り戻しは、6-1の接着剤で直します。Amazonでは「ボンド G17」の20mlが580円です。

ほつれは、短いものなら縫い直せます。店に出すと、靴専科はほつれ縫い・つまみ縫い2,200円〜(〜10cm)、ミスターミニットは5,500円〜(20cmごと)、ルイ・ヴィトンは縫い直し(部分的)10,340円〜です。私は、エルメスのバッグの縫い直しを研修先の修理の会社に頼んだことがあり、作業代だけで3万円以上でした。

穴や破れは、店では革を当てて補強する修理になります(靴専科の当て革補修6,600円〜、10cm×10cmまで。ミスターミニットの破れの修理11,000円〜、縦+横25cmまで)。

10. 合皮の持ち手がボロボロになったら

私の考えは「合皮は直せない。加水分解したら廃棄するしかない。」です。3章のとおり、ポリウレタンは水分や紫外線、熱、皮脂、摩擦で劣化し、ミスターミニットも合皮は色を塗る補修ができないとしています。

ネットでは、100円ショップの合皮補修シートやハンドルカバーで覆う方法も紹介されています。覆う方法なので、合皮を直すことにはなりません。

カバン全体を捨てるかどうかは、作り替えられる所かどうかと、本体の素材で変わります。持ち手は、工業用ミシンがあれば、社外品の持ち手に交換できます。店でも作り直せます(ミスターミニットの新規作製24,200円〜、既製の紐・ベルト12,100円。靴専科の持ち手交換12,100円〜)。

ただ、本体も合皮なら、剥がれは持ち手と同じ時期に始まります。持ち手だけを替えても、本体の剥がれは防げません。持ち手に1万円以上かける前に、本体の素材と、本体に剥がれやベタつきが出ていないかを見てください(3章の見分け方)。本体まで劣化しているなら、私は廃棄します。売るためのカバンでは、全部を張り替えないといけないものは採算が取れないと考えていて、正規店でも断られると思っています。

11. 自分で直すか、修理店に出すか、ブランドに出すかを比べる計算機

材料費、作業時間、うまくいく見込み、修理店とブランドの料金を入れると、費用を並べて、修理店に出すのと同じになる「うまくいく見込み」を出します。うまくいかなかったときは、修理店に出す前提か、そのまま使う前提かを選べ、塗膜を落とすなどで増える費用も入れられます。直して売る場合の差額も出します(12章)。

比べるのは金額だけです。「うまくいく」は、自分が納得できる仕上がりで使える状態として、自分で決めて入れてください。思い入れのある品で、失敗したら店に出せば済む、が成り立たないなら、この計算は当てはまりません。

カバンを自分で直すか、修理店に出すか、ブランドに出すか

例を選んで「例を入れる」を押すと、この記事の例の数字が入ります。自分のカバンで考えるときは、数字を書き換えてから「計算する」を押してください。

自分で直す

ほかの手段(空欄なら比べない)

直して売るなら(空欄なら計算しない)

11-1. 例で計算すると

時間の値段は0円としました。コバと補色の作業時間は、私が1か所1時間を超えたので、下限の60分×か所数で入れています。スライダー交換の30分は、私が測った値ではありません。うまくいく見込みは例の値で、補色は私が色合わせで失敗したことがあるので、ほかより低い70%にしました。

例 自分で(うまくいった場合) 自分で(失敗も入れた見込み) 修理店 ブランド 修理店と同じになる見込み 1時間あたり浮く額
持ち手2本のコバ(2時間) 2,068円 5,368円 16,500円 ― 12.5% 7,216円
角の擦れ4か所の補色(4時間) 1,980円 7,380円 18,000円 ― 11.0% 4,005円
スライダー交換1か所(30分) 220円 1,980円 8,800円 30,800円 2.5% 17,160円

修理店の例は、コバがミスターミニットのハンドル修理・補強(1か所11,000円+2か所目の半額5,500円)、補色がなんぼやの色落ち修理(2か所〜18,000円)、スライダーがミスターミニットの8,800円です。ブランドはルイ・ヴィトンのファスナー交換30,800円〜です。

「失敗も入れた見込み」は、うまくいかなかったら修理店に出す前提で、自分でやった費用に、失敗の確率×(修理店の費用+増える費用)を足した値です。例では増える費用を0円とし、修理店が同じ料金で受けてくれる前提にしています。自分で塗った塗膜を落とす手間が増えたり、断られたりすれば、この計算より高くつきます。うまくいく見込みの80%と70%は私が測った値ではなく、根拠のある数字ではありません。コバと補色の時間も、私の「1時間を超えた」の下限で入れているので、実際より短めです。修理店と同じになる見込みが低く出るのは、失敗したときの店の費用を上乗せするだけの計算だからで、自信がなくても試してよいという意味ではありません。

時間に値段をつけると変わります。持ち手2本のコバで、時間を1時間1,500円、初めてそろえる道具を3,000円にすると、自分で直す費用は8,068円、修理店と同じになる見込みは48.9%です。失敗したときに塗膜を落とすなどで3,000円増えるとすると(例の値)、コバの例の分かれ目は26.0%に上がります。1時間あたり浮く額は、コバの7,216円に対して補色は4,005円で、補色は時間がかかるわりに浮く額が小さい計算です。

12. 直して売るなら

自分で使うために直す人は、この章は飛ばしてかまいません。

私は、色が合わなかったカバンもそのまま売り、露骨に品質がよくないものは廃棄しました。金具やスライダーはロゴなしの汎用品に替えて、その旨を書いて売りました。買う人には、直した所とロゴなしの部品に替えたことを書いて伝えます。

店に頼る前提が使えないこともあります。靴専科は「転売を目的とする修理は承っておりません」としています。計算機の「直して売るなら」に、直さずに売れる値段と直して売れる値段を入れると、直したことで増える手取りと、自分で直す費用を引いた額が出ます。

買って直して売るのを続けるなら、古物商の許可の話になります。直して売る商売が稼げるかは、ブランドリペア転売は稼げないのかに、売っていた側から書きました。

13. よくある質問

カバンの持ち手がボロボロになったときの直し方は?

本革で表面と貼り合わせの傷みだけなら、剥がれた所を接着剤で貼り戻し、コバ専用の塗料で塗り直します(6章)。合皮がボロボロに剥がれたものは、私は直せないと考えています(10章)。持ち手全体が傷んでいれば、店で作り直します(靴専科で1本12,100円〜)。

鞄の持ち手修理は自分でできますか?

本革で、コバの塗膜の割れや、貼り合わせた革がふちから開いただけなら自分でできます。革の破れ、芯が見える、付け根が切れかけているものは店です。私は自分の手でやっていて、持ち手1本に1時間を超えました。完全な修復を目指すなら、購入元のブランドに頼むのがいい、というのが私の考えです。

合皮の皮むけは直せますか?

剥がれた表面は、私は直せないと考えています。加水分解したら廃棄するしかない、というのが私の考えです。ミスターミニットも、合皮は色を塗る補修ができないとしています。補修シートやハンドルカバーで覆う方法は、直す方法ではありません。持ち手は、工業用ミシンがあれば社外品に交換できます(店でも作り直せます)。ただ、本体も合皮なら、本体の剥がれも同じ時期に始まります(10章)。

持ち手の剥がれは、ボンドなどの接着剤で直していいですか?

本革で、貼り合わせた革がふちから開いただけなら、接着剤で貼り戻せます。コニシは皮革同士にG17やGクリヤーなどを挙げています。ただ、G17のパッケージは「接着できないもの」に高価格品とナイロンを挙げ、火気厳禁・換気の注意も書いています。付け根や芯が傷んだものは、接着では直らないので店です(6章)。

鞄の持ち手の修理の相場はいくらですか?

起点(税込)で、ミスターミニットのハンドル修理・補強11,000円〜、新規作製24,200円〜、靴専科の持ち手交換12,100円〜(1本)、なんぼやの持ち手交換20,000円〜、ルイ・ヴィトン直営のハンドル交換1本20,900円〜です(4章)。

カバンのファスナーは自分で直せますか?

スライダーが壊れただけなら、同じサイズ・同じ種類のスライダーに替えて直せます。作りによっては周りをほどかないと通せません。私はロゴなしの汎用品に替えていました。生地が裂けた、歯が欠けた場合はファスナーごとの交換で、店に出します。靴専科は、スライダーだけの交換は再発の恐れがあるとして行っていません(8章)。

カバンに穴が空いたらどうすればいいですか?

店では、革を当てて補強する修理になります。靴専科の当て革補修は6,600円〜(10cm×10cmまで)、ミスターミニットの破れの修理は11,000円〜(縦+横25cmまで)です。

自分で直したカバンは、ブランドで修理を断られますか?

ルイ・ヴィトンの公開ページでは、ほかで修理した製品の扱いは見つけられませんでした。あとでブランドに出すかもしれないなら、自分で手を入れる前にブランドに聞いてください。

14. まとめ

  • 本革のカバンなら、コバの塗り直し、角の擦れの補色、ファスナー・引手・金具の交換、剥がれの接着とほつれの縫いは自分でできる。私は4つとも自分の手でやった
  • 線はその人のスタンス。完全な修復を目指すなら購入元のブランド(それでも元どおりの約束ではない)。自分で直していいのは、使えればいい人と、インフレ前に買った・相続したカバンで正規の修理料金が払えない人
  • 合皮の持ち手がボロボロに剥がれたものは、表面を直せない。加水分解したら廃棄するしかない(私の考え)。持ち手は工業用ミシンがあれば社外品に交換できるが、本体も合皮なら本体の剥がれも同じ時期に始まる。ハンドバッグには、品質表示の規程による素材の表示の義務がない
  • 持ち手は、先に傷み方を分ける。自分で直せるのはコバの塗膜と、貼り合わせた革の剥がれまで。付け根や芯は店
  • 接着剤のG17は、パッケージで高価格品を「接着できないもの」に挙げている
  • 手間は軽くない。コバも補色も、1か所1時間を超えた。補色の色が合わなかった失敗もある
  • 店に出すと、持ち手の補修11,000円〜、スライダー交換8,800円〜、ほつれ2,200円〜。ルイ・ヴィトン直営はハンドル交換1本20,900円〜、ファスナー交換30,800円〜
  • 修理店でも、元と同じ色・形には戻らず、ロゴ入りの金具はロゴなしになる

15. 参考資料

16. あわせて読む

17. この記事について

書いた人 中古品の売買を20年近く続けている古物商。2019〜2022年ごろ、シャネルとルイ・ヴィトンのバッグを中心に仕入れて直して売っていた。大阪で染め直し・調色の研修を受けた
一次情報 1章の答え(自分の手でやった修理、自分で直すか店に出すかの線、自分で直していい人、補色の失敗とその後、廃棄の線、使った材料と道具、作業時間、合皮の考え、合皮の持ち手の交換と本体の剥がれの時期、ロゴ入り部品の扱い、店に出した経験)
確かめた日 2026年10月11日(ルイ・ヴィトン、ミスターミニット、靴専科、なんぼやの料金ページ、消費者庁、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会の資料、コニシ、コロンブス、YKK、Amazon.co.jpの表示)
確かめられなかったこと スライダー交換と接着・縫いに私がかけた時間。自分で直したときのうまくいく割合。ブランドごとの、ほかで修理したカバンの扱い。各店の実際の見積もり額
計算機 11章:自分で直す場合(うまくいく見込みと、うまくいかなかったときの手段を入れる)と、修理店・ブランド・中古の買い直しを比べる単純な計算。元の色や部品に戻るか、保証、手間の好き嫌いは入れていない。直して売る場合は手数料を引き、うまくいかなかったら直さないときと同じ値段で売る前提

 

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