プリンター修理は自分でできる?|廃インク吸収パッド・洗浄・部品交換と買い替え判断

プリンター修理自分で 修理転売

壊れたプリンターを前にして、最初に決めるべきことがあります。

直すか、捨てるかではありません。そもそも直せるのかです。

この順番を間違えると、時間と部品代を使ったあとで「メーカーがもう部品を持っていない」と分かります。中古で仕入れて直して売る場合は、仕入れ代金ごと失います。

そして、これは腕の問題ではありません。直せるかどうかは、メーカーが公表している2つの事実でほぼ決まっています。部品保有期間と、廃インク吸収体です。

このジャンルを他のジャンルとどう組み合わせるか(資金別の配分・回転率と利益率の目安)は、親記事のせどりで儲かるジャンルは全部|資金別の逆算表と4象限の配分設計せどりの利益率と回転率|20年3業態の実測値で出した目安にまとめています。

この記事の読み方

先に構造を書きます。「直せるか」という問いには、答えが2つあります。

  • メーカーが受けられるか……部品保有期間と廃インク吸収体で決まります。調べれば確定します
  • 自分で直せるか……分解して該当箇所に到達できるか、原因が絞れるかで決まります

この2つは、別の条件で決まります。メーカーが受けられないことは、その個体が直らないことを意味しません。逆に、メーカーが受けられる場合でも、自分でやったほうが安く済むことがあります。

この記事は、全部読む必要がありません。下の表で自分の位置を確認して、該当する場所だけ読んでください。

いまの状態 メーカーは あなたがやること
部品保有期間内・吸収体は正常 受けられる 修理料金と買い替え価格を比べる(2〜6章
期間内・吸収体が満杯 受けられる カートリッジ対応機なら自分で差し替え。それ以外は料金と比較(3章・6章
期間終了・吸収体は正常 受けられない ここが本命。洗浄と部品交換で直る余地が大きい(7〜10章
期間終了・吸収体が満杯 受けられない ばらして到達できるかで決まる(8章

前半(1〜6章)はメーカーの公式情報だけで組み立てます。キヤノン・エプソン・ブラザーの原文をそのまま引用します。

後半(7〜10章)は、メーカーの保証の外の話です。自己責任の領域なので、7章に前置きを置きました。

そして最後(11〜12章)に、直したものを売る側の話を書きます。「買って直して売る」と「もらって直して売る」では、必要な許可が変わります。これは警察庁の通達に書いてあります。

1. メーカーに出せるかどうかを、先に確定させます

見るもの どこで分かるか これがアウトなら
1 修理対応期間(部品保有期限) 各社の機種別一覧 メーカー修理は不可。部品も出ない。ただし自分でやる余地は残ります(7章へ)
2 廃インク吸収体のエラー 本体の表示・エラーコード 原則ユーザー交換不可。期間が終わっていれば交換もできない。分解して到達できる機種はあります(8章へ)
3 非純正インクの使用痕 カートリッジの刻印・パッケージ メーカー保証・修理が有償になる。輸送時の漏れリスク

3つとも、分解する前に外から確認できます。

この3つが通れば、あとは技術の話になります。通らなければ、メーカーのルートでは技術があっても直りません。順に見ていきます。

2. 部品保有期間 ──「発売から」ではなく「製造終了から」数えます

2-1. ここを取り違えると、計算が全部ずれます

まず、3社に共通する原則から。補修用性能部品の保有期間は、その機種が発売された年からではなく、製造が終了した年から数えます。

これは中古を扱うときに効いてきます。「2018年発売のモデルだから、5年ルールならもう終わっている」という逆算は成立しません。その機種が2023年まで作られていたなら、起算点は2023年です。発売年からは分かりません。

2-2. 3社で、公表の仕方がまったく違います

ブラザーは、年数を一文で言い切っている唯一のメーカーです。

「弊社製品の補修用性能部品の保有期限は製造打切後5年です。修理対応終了日を過ぎたモデルは、修理をお受けすることができません。」

同じページに、こう書かれた行もあります。

「ドットプリンターについては、すべての部品保有期間を既に過ぎており、修理をお受けできません。ご了承お願いいたします。」

キヤノンは年数を公表していません。代わりに、機種ごとの終了年月を一覧で出しています。

「国内で発売した主な商品の修理対応期間対象商品を掲載しております。掲載している修理対応期間は、各終了月末日までとなります。※リストに無い商品は修理を承ることができません。

キヤノンのページは「修理対応期間(部品保有期限)」と書いており、この2つを同義として扱っています。また、一覧には終了年月が「未定」と記載された機種が多数あります。

エプソンは、ここが少し厄介です。公式サイト内で、3種類の異なる記載が併存しています。

掲載ページ 書かれている期間
「製品に関するご注意」(カラリオ) 「製造終了後7年間保有」(一部機種は5年)
「修理対象機種・料金一覧」 「製品製造終了後5年までです。(一部機種は6年)」
FAQ 3736「修理サービスについて」 「製品の製造終了から5年間~12年間です」

いずれもエプソン公式サイト上の記載です。どれが最新・正の情報かは、外からは判別できません。

ビジネスプリンターに至っては、同じ「製品に関するご注意」の中でこう書かれています。

「保守サービスのために必要な補修用性能部品の保有期間はPX-S270Tは製造終了後5年間、EW-M530F、GP-730、PX-M270T、ページプリンターは製造終了後6年間、PX-M380F(中略)は製造終了後10年間、それ以外のビジネスプリンター製品は製造終了後7年間です。」

2-3. 結論:機種別一覧を見る以外に、確実な方法はありません

年数の一般論から逆算しようとすると、エプソンで詰まります。3社とも機種別の一覧を公表しているので、そこを直接見るのが唯一の確実な方法です。

メーカー 見るべきページの名称
キヤノン 「修理対応期間 個人のお客さま向け商品一覧」/「修理対応期間終了商品」
エプソン 「修理対応中の機種・期限・料金一覧」/「修理対応終了製品一覧」
ブラザー 「有償修理サービス料金表」(PDF・修理対応終了日が併記)/「部品供給年限切れ製品」

いずれも各社公式サイトです。ページ名で検索すれば、URLが変わってもたどり着けます。

実務的には、エプソンの一覧が最も使いやすい形をしています。機種名・修理対応期限・修理料金が同じ表に並んでいるので、仕入れ判断に必要な3つが1画面で揃います。

なお、キヤノンには修理対応期間が終わったあとの窓口対応についても方針が公表されています。

「お客様相談センター対応(電話・メール):修理対応期間終了後5年後の年末まで/サービスセンター窓口対応:修理対応期間終了後5年後の年末まで

3. 廃インク吸収体 ── メーカーが交換を前提にしていない部品

3-1. これが、中古プリンターの時限爆弾です

プリンターの中には、ヘッドクリーニングで吐き出したインクを溜めておく部品があります。メーカーによって呼び名が違います。

  • キヤノン ── インク吸収体
  • エプソン ── 廃インク吸収パッド(機種によりメンテナンスボックス
  • ブラザー ── 廃インク吸収パッド(機種により廃インクボックス

これが満杯になると何が起きるか。3社の原文を並べます。

キヤノン

「インク吸収体とは、クリーニングなどで吸い出されたインクを吸収させるための部品です。きれいな印刷を保つ為、クリーニングで吸い出されたインクは、製品内部の『インク吸収体』に吸収されます。インク吸収体は満杯になると交換が必要です。お客様ご自身での交換はできませんので、メッセージが表示されたら、お早めに修理を申し込みください。」

満杯に近づいた段階のFAQには、こうあります。

「インク吸収体が満杯に近づいています。この状態になった場合、エラーを解除して印刷が再開できます。満杯になると、印刷できなくなり、インク吸収体の交換が必要になります。お早めに修理受付窓口へ交換をご依頼ください。お客様ご自身によるインク吸収体の交換はできません。

該当するエラーコードも公表されています。満杯に近づいた段階が 1700〜1715 / 1719 / 171A / E08、満杯になった段階が 5B00 / 5B01 / 5B10〜5B15 / P07 / 1717 / 1718 です。前者はまだ動きますが、後者は止まります。

エプソン

「お客様のご使用頻度等によって期間は異なりますが、廃インクを吸収しているインクパッドの交換等が必要になります。交換に関するメッセージなどが表示されましたら、エプソン修理センターにご相談ください(保証期間経過後は有償となります)。なお、吸収したインクが容量に達した場合、安全性確保の観点からインクが溢れることを防ぐため、修理センターで処置するまで印刷ができないようにさせていただいております。

エプソンは、表示の文言で扱いが分かれると明記しています。ここは重要です。

  • 表示に「メンテナンスボックス」がある場合:お客様ご自身で交換および対処ができます。
  • 表示に「廃インク吸収パッド」がある場合:弊社修理センターでの部品交換が必要です。なお、修理対応が終了していても、延長対応サービス対象機種は廃インク吸収パッドのみの交換が可能です。

ブラザー

「廃インク吸収パッドの吸収量が限界に達すると、本製品内部でのインク漏れを防ぐためにヘッドクリーニングができなくなります。廃インク吸収パッドを交換するまで印刷はできません。

「『まもなく廃インク満杯』または『廃インク吸収パッド満杯』と表示された場合は、お客さまご自身による交換はできませんので、お買い求めいただいた販売店、または弊社に『廃インク吸収パッド』の部品交換(修理)をご依頼ください。部品供給年限切れ製品については、補修用性能部品の保有期間を既に過ぎており、修理をお受けする事ができません。」

3-2. ユーザーが自分で交換できる例外機種は、実名で特定できます

3社とも例外を公表しています。該当するのはごく一部です。

メーカー ユーザー自身で交換できる機種
キヤノン メンテナンスカートリッジ対応の TS6630 / TS6730 のみ
エプソン メンテナンスボックス対応機種(オプションを購入して交換)
ブラザー 廃インクボックス方式の HL-J5113N / MFC-J5010N / MFC-J5115N

キヤノンの原文:「プリンター使用時のインクを吸収するメンテナンスカートリッジ対応の機種では、修理に出すことなくご自身での吸収体交換が可能です。■対応機種 TS6630 TS6730」

ブラザーには、もう一段の例外もあります。

「MFC-J6580CDW、MFC-J6980CDW、MFC-J6995CDW をお使いの場合:廃インク吸収パッドの交換サービスのみ受け付けております。それ以外の修理につきましては、補修用性能部品の保有期間を既に過ぎているため、修理をお受けすることができません。」

エプソンも、修理対応が終わった機種向けに例外を用意しています。

「【修理対応終了製品で、廃インク吸収パッドに関するメッセージが表示されお困りのお客様へ】修理サービス提供中の機種と部品が共有できる一部の機種について、修理期間満了後も引き続き、廃インク吸収パッドのみの交換サービスを開始しています(2022年12月より)。」

この「延長対応サービス」は、2章の部品保有期間の壁に空いた唯一の抜け道です。ただし対象は「修理サービス提供中の機種と部品が共有できる一部の機種」に限られます。

3-3. 2018年度以降のエプソン機は、少しだけ扱いが違います

「なお、2018年度以降に新しく発売いたしましたインクジェット複合機・インクジェットプリンター(例:EP-881A、EP-811A、EP-711A以降)では、廃インク吸収パッドがいっぱいになっても、製品本体側の液晶パネルに表示されたメッセージに従うことで印刷以外の作業は可能となっております。」

「印刷以外」です。スキャンやコピーの一部は使えても、印刷は止まります。

3-4. 運ぶときに、もう一段のリスクがあります

キヤノンが移送についてこう書いています。中古を発送する側には直接効きます。

「製品を立てたり傾けたりすると、製品がダメージを受けたり、まれに本体からインクが漏れるおそれがあります。修理依頼でプリンターを移動させる際には、製品本体を傾けないようご注意ください。」

3-5. ここまでが、メーカーの立場です

ユーザーが交換する部品として想定されていない、ということです。

「想定されていない」と「物理的に不可能」は別です。分解して到達できる機種では、自分で処置している人がいます。その話は8章にまとめました。

ただし自己責任の領域です。先に、この後の章でメーカー側の条件を確定させてから読んでください。順番を逆にすると、直せた個体を壊します。

4. ヘッドクリーニングは、吸収体の寿命を削っています

4-1. この因果関係を、ブラザーが明文で書いています

「印刷がかすれるからヘッドクリーニングを繰り返す」は、素直な対処に見えます。ただしそれは、3章で見た交換できない部品の残量を削る行為です。ブラザーの原文が、そこをつなげて書いています。

「本製品は、電源ボタン([On/Off]ボタン)で電源をオフにした状態でも、自動で定期的にプリントヘッドをクリーニングします。オートクリーニングのタイミングは、設置環境温度、印刷枚数、印刷間隔、電源投入後の経過時間など、多くの要素により決められます。そのため、オートクリーニングを止めたり、開始時間を変更することはできません。

「電源のオン/オフは、電源プラグの抜き差しではなく、電源ボタンで行なうことを強くおすすめします。電源プラグを抜くとオートクリーニングが動作しません。また、電源プラグを頻繁に抜き差しすると必要以上にクリーニングが実行され、インクが多く消費されることがあります。さらに、クリーニングで排出したインクを吸収する部品の交換が、通常よりも早くなる場合があります。

「電源プラグを抜いて保管されていた中古機」が危ういのは、ここが理由です。止まっている間にノズルが乾き、通電を再開した瞬間にクリーニングが走り、吸収体が一気に減ります。

同じくブラザーが、乾いた側の帰結も書いています。

「ヘッドクリーニングを長期間行なわないと、プリントヘッドのノズル内のインク粘度が高くなるため目詰まりを起こし、コピーや印刷をしたいときにインクが出なくなります。また、目詰まりがひどい場合には、プリントヘッドを交換しなければならない場合もあります。

そして、モノクロしか使っていなくてもインクは減ります。

「本製品には、印刷品質を維持するために、自動でヘッドクリーニングを行なう機能があります。このとき全色のインクを使用するため、モノクロ印刷だけでも、まったく印刷していなくても、インクは消費されます。

4-2. エプソンは「何回まで繰り返すか」を機種別に公表しています

やみくもに繰り返すのではなく、回数が決まっています。

「ヘッドクリーニングとノズルチェックパターン印刷を交互に繰り返します。ご使用の機種によって、ヘッドクリーニングとノズルチェックパターン印刷を繰り返す回数が異なります。ヘッドクリーニングとノズルチェックパターン印刷を交互に繰り返していただくことにより、より強力なクリーニングを行うモードに入ります。

繰り返す回数 対象機種(エプソン公表の例)
2回 Colorio Me(Eシリーズ)、PM-A900、EP-706A〜EP-812A、EP-905A〜EP-982A3、PX-S05、PX-S06 ほか
3回 EP-315、EP-50V、EP-713A〜EP-817A、EP-879A〜EP-887A、EW-M系、PX-M系 ほか
4回 表中に記載の無い機種
5回 PM-D1000

そして、繰り返しても改善しない場合の手順も決まっています。

「プリンターを休ませる:印刷しない状態で、12時間プリンターを休ませます。FAX機能搭載機種以外は、電源を切った状態でプリンターを休ませてください。プリンターを休ませても改善されない場合は、強力クリーニングを行ってください。強力クリーニング機能がない機種をお使いの場合は修理窓口に修理をご依頼ください。特定の色のみパターンが正常に印刷されない場合は、修理になるケースが多いようです。

「特定の色だけ出ない」は、メーカー自身が修理案件と言っています。仕入れ判断のときに使える基準です。

もう一点、実務的な制約があります。

「プリンターが下記の状態になっていると『ノズルチェック』『ヘッドクリーニング』ができません。状態を解除してから実行してください。/インクの残量が『少ない』または『限界値以下』の状態

インクが空の状態で仕入れた機体は、そのままでは診断すらできません。インク代を先に払わないと、直せるかどうかも分からない。ここは仕入れ値に含めて考える必要があります。

4-3. ブラザーの「スペシャルクリーニング」には、明確な但し書きがあります

「プリントヘッドのクリーニングを行うと、インクを消耗します。プリントヘッドには触らないでください。プリントヘッドに触れると、回復不能な損傷につながり、保証が無効になる場合があります。

「スペシャルクリーニングでは、プリントヘッドを強力にクリーニングしますが、インクの消費量が最も多くなります。スペシャルクリーニングでは、プリントヘッドのクリーニングに大量のインクが必要です。スペシャルクリーニングは、プリントヘッドを数回クリーニングしても、印刷品質が改善されなかった場合にのみ行ってください。」

【確認できず】キヤノンについては、ヘッドクリーニングの回数制限や「繰り返し行わないでください」に相当する警告文を公式サイト上で確認できませんでした(オンラインマニュアルの大半が取得できなかったため)。また1回のクリーニングで消費するインク量の数値は、3社いずれも公表していません。

5. 自分で交換できる部品と、できない部品

ユーザー交換 ユーザー交換不可(メーカー修理)
キヤノン インクタンク/メンテナンスカートリッジ(TS6630・TS6730のみ)/プリントヘッド(G・GX・GMシリーズなど一部。型番BH-30・CH-30等を単品販売) インク吸収体(上記2機種以外の全機種)
エプソン インクカートリッジ/メンテナンスボックス(対応機種のみ・オプション購入) 廃インク吸収パッド(メンテナンスボックス非対応機種)
ブラザー インクカートリッジ/廃インクボックス(HL-J5113N・MFC-J5010N・MFC-J5115Nのみ) 廃インク吸収パッド(上記3機種以外)/プリントヘッド(触れること自体を禁止

キヤノンの一部機種でプリントヘッドが単品交換できるのは、直す側にとって大きい違いです。ただし公式の手順書には、期待を下げる一文も入っています。

「重要:プリントヘッドの金色の端子やプリントヘッドノズルには、手を触れないでください。正しく印刷できなくなる場合があります。プリントヘッドの交換は速やかに行い、プリントヘッドを取り外した状態で放置しないでください。」

「重要:プリントヘッドを交換しても問題が改善しない場合があります。プリントヘッドを交換しても変わらない場合は、本体の不具合が考えられます。」

そして、キヤノンの修理サービス規約はインク吸収体を「消耗部品」に分類し、サービス提供の対象外として列挙しています。

「消耗部品(機器の稼働により消耗するメカ部品、インクジェットプリンターのインク吸収体など)の交換」

6. メーカーに出す場合、直すか買い替えるかの分かれ目

6-1. 3社とも修理料金を公表しています

推定ではありません。機種クラス別の定額で公表されています。ここでは金額そのものより、料金体系の形を押さえてください(金額は改定されます)。

キヤノンは「修理料金+引取修理ご利用料金」の合計方式です。

「下記の修理料金表は、引取修理をご利用いただいた場合の金額です。(修理料金+引取修理ご利用料金の合計金額)※製品保証期間内であっても、引取修理ご利用料金はお客様のご負担となります。

2026年4月1日時点の公表値で、修理料金は税込5,500円(TS203・TS3330・TS3530)から22,000円(XKシリーズ・PRO-S1MarkⅡ・PRO-G2 ほか)まで。これに引取修理ご利用料金3,300円が加算されます。合計では8,800円〜25,300円の幅になります。

そして、期間が切れていればこうです。

「■修理対応期間が終了している製品:修理を承ることができません。恐れ入りますが、買い替えのご検討をお願いいたします。」

エプソンは機種ごとの基本料を公表し、引取料は別建てです。

「(注)引取修理は引取料金3,300円(税別3,000円)が別途必要となります。(注)料金は予告なく変更になる場合がございます。」

ブラザーは「引取送料+修理費」で、修理費が「調整のみ/一般部品交換/特定部品交換」に分かれます。キャンセル料も公表されているのが特徴です。

「宅配業者による故障品の引取り後、修理着手前のキャンセル:送料 [\3,300(税込)]/修理着手後のキャンセル:送料 [\3,300(税込)]+診断料 [\3,300(税込)]=合計 [\6,600(税込)]」

「見積もりだけ取って、高ければ断る」をやると、着手後なら6,600円かかります。中古を仕入れてメーカー診断に出す戦略を考えるなら、ここは織り込んでおく数字です。

6-2. 中古プリンターの実質的な下限価格が、公表値から出せます

キヤノンが「らくらく買替便」という下取りプログラムを公表しています。

「【らくらく買替便】はキヤノン製のインクジェットプリンターの修理をご検討の方向けの買い替えサービスです。送料無料でプリンターをお届けし、ご購入後にお申し込みいただくことでご利用されていた古いプリンター本体を下取り回収いたします。付与ポイントは、本体下取りで1,000ポイント。(中略)ご購入から1カ月以内に本ページからのお申込みと送付をお願いします。下取り対象となる本体とインクカートリッジは、お買い替え前にご利用いただいていた日本国内向けのキヤノン製インクジェットプリンター及びキヤノン純正未開封インクカートリッジのみです。」

壊れていても、キヤノン機なら1,000ポイントの価値がメーカー公認で付いているということです。中古を仕入れる側にとっては、実質的な下限価格の目安になります。

エプソン・ブラザーについては、個人向けの本体下取りプログラムは確認できませんでした。エプソンは家庭用の廃棄をこう案内しています。

「一般のご家庭でお使いの場合は、必ず法令やお住まいの地域の条例、自治体の指示に従って廃棄してください。」

6-3. 判断の順番

  1. 修理対応期間を機種別一覧で確認する。終わっていれば、メーカーのルートはそこで終わりです。自分でやる場合の判断は7章に続きます
  2. 廃インク吸収体のエラーが出ていないか確認する。満杯なら、例外機種でない限りメーカー修理が必要です。自分で処置できるかどうかは、機種の構造で決まります(8章)
  3. 期間内かつ吸収体が生きているなら、その機種の定額修理料金+引取料を調べる
  4. その金額と、同等機の新品価格を比べる
  5. 仕入れて売る場合は、そこにインク代・作業時間・出品手数料・送料を足す

1と2で「終わり」と出た場合も、判断はまだ残っています。終わったのはメーカーのルートで、機械そのものではありません。

7. ここからは、メーカーの保証の外の話です

7-1. 先に、メーカーの言い分を書きます

ここまで読むと、メーカーが不親切に見えるかもしれません。そうではないと思います。

  • 部品を永久に持つことはできません。工業製品である以上、どこかで線を引くしかありません
  • 吸収体をユーザー交換にしないのは、開ければインクが漏れるからです。実際、キヤノンは傾けるだけで漏れるおそれがあると書いています(3-4)
  • 「プリントヘッドに触るな」と書くのは、触れば壊れるからです。ブラザーの原文どおり「回復不能な損傷」につながります(4-3)
  • 誰がやっても同じ結果になることを保証できないものを、メーカーは案内できません

つまり、メーカーが言っているのは「保証できる範囲」の話です。「物理的に不可能」とは言っていません。

この2つは矛盾しません。メーカーは保証の話をしていて、ここから先は保証の外の話です。建前と本音ではなく、立場が違うだけです。

7-2. だから、ここから先は自己責任です

はっきり書いておきます。

  • メーカーの保証は無効になります
  • 開けた時点で、メーカー修理という選択肢は消えます。キヤノンもエプソンも、分解をサービス提供の中止事由に挙げています(11-3に原文)
  • 分解の途中で壊す可能性があります
  • インクが漏れます。手も服も床も汚れます。作業する場所を先に養生してください
  • 高濃度アルコールを使うなら、換気してください。火気厳禁です
  • 電源を抜いてから作業し、完全に乾いてから通電してください。乾く前に電源を入れるのが、いちばん多い壊し方です

これを引き受けられないなら、ここで止めてください。買い替えのほうが安く済みます。

8. 吸収体は、本当に手が出ないのか

8-1. 物理的な満杯と、カウンタの数字は別のものです

吸収体は、要するにインクを吸ったスポンジです。そして本体には、そこにどれだけ溜まったかを推定して数えているカウンタがあります。一定を超えると、エラーとして停止します。

  • パッドそのもの……分解して到達できれば、洗うか、取り替えられます
  • カウンタ……パッドをどうしようと、自動では戻りません

この2つを混同すると、判断を間違えます。パッドだけ処置しても停止は解除されず、カウンタだけ戻してもパッドは空になりません。

8-2. 機種は3つに分かれます

機種のタイプ 状況
メンテナンスカートリッジ/メンテナンスボックス対応機 部品を買って差し替えるだけ。正規の手順です。該当機種は3-2に
分解してパッドに到達できる機 自己責任の領域です。物理的には処置できます
到達できない機 撤退。無理に開けると、直せる可能性まで潰します

判断の基準は、メーカー名ではなく「ばらしてパッドに到達できるか」です。ここが分かると、機種が変わっても同じ考え方が使えます。

8-3. 開ける前に、5分で調べられます

自分の機種の型番と「インク吸収パッド」を並べて、動画で検索してください。「廃インク」でも構いません。

エプソン機なら、同じ機種を分解している動画が高い確率で見つかります。どこのネジを外して、どの順番で開けて、パッドがどこにあるか。文章で読むより、はるかに早く分かります。

見つかるかどうかが、そのまま判定になります。

  • 同じ型番の動画が見つかる……分解して到達できる機種だという証拠です。手順まで一緒に手に入ります
  • 似た型番しか見つからない……外装が同じでも中身が違うことがあります。参考程度に
  • まったく見つからない……到達が難しいか、やっている人が少ないかのどちらかです。最初の1台にはしないでください

そしてコメント欄を読んでください。動画そのものより、こちらのほうが情報量があります。

実際にそれを見て自分の機体でやった人の報告が並んでいます。「同じ機種でできた」が続いているなら、再現性があります。そして詰まる場所も書かれています。ここの爪が折れやすい、この線を先に外さないと切る。やった人しか知らないことが、無料で読めます。

正直に書きます。機種ごとの分解手順を、この記事に書くことはできません。機種の数が多すぎますし、同じシリーズでも中身が違います。書けるのは考え方までです。

ただし、手順が存在するかどうかは、開ける前に確認できます。そしてその確認は無料で、5分で終わります。やらずに開けるのが、いちばん高くつきます。

8-4. キヤノン機で来られた方へ、正直に書きます

この記事にいちばん多く来られるのは、キヤノンの機種で調べている方です。そして正直に言うと、キヤノンの吸収体は厳しいです。

理由は、ここまでに引用した一次情報がそのまま示しています。

  • 「お客様ご自身によるインク吸収体の交換はできません」と明記されている(3-1)
  • 自分で交換できるのはTS6630とTS6730の2機種だけ(3-2)
  • サービス規約は「分解掃除などによる故障及び損傷」をサービス中止事由に列挙(11-3)
  • 修理対応期間が終わっていれば「修理を承ることができません」(6-1)

分解して到達すること自体は、機種によっては可能です。ただし手順の情報がエプソンほど出回っておらず、失敗したときに戻れません。

ここで「じゃあ買い替えよう」と決めるのは、正しい判断です。この記事を閉じてもらって構いません。時間を使ってから同じ結論に着くより、そのほうが早い。

それでもやるなら、8-3の手順で、開ける前に必ず調べてください。

8-5. カウンタについて、書くことと書かないこと

正直に書きます。カウンタを戻す手段は、非公式なものが流通しています。存在は知られていますし、探せば見つかります。

この記事では、入手先も使い方も書きません。理由は2つあります。

1つ目。順番を間違えると、確実に壊れるからです。

カウンタは、パッドの中身を推定して警告を出しています。パッドを処置せずにカウンタだけ戻すと、警告が消えたまま、インクは溜まり続けます。行き場を失ったインクは、本体の中にあふれます。基板にかかれば、そこで終わりです。

エプソンが「安全性確保の観点からインクが溢れることを防ぐため」と書いているのは(3-1)、まさにこのためです。停止は嫌がらせではなく、あふれる前に止めています。

つまりカウンタを戻す操作は「直した証明」ではありません。「警告を消す操作」です。直すのは、パッドを処置するほうです。順番は、物理が先です。

2つ目。売る場合に、別の問題になるからです。これは11-2で書きます。

8-6. そして、多くの場合1回しか使えません

この種の手段には、1機種につき1回、という制約があるものが多いようです。

ここが判断に効きます。次に満杯になったとき、同じ手は使えません。

つまり買っているのは「この機械の残りの寿命」ではなく、「次に満杯になるまでの期間」です。そしてその期間は、ヘッドクリーニングの回数で縮みます。4章で見たとおりです。

だから修理にかけていい金額の上限は、新品価格ではありません。次に満杯になるまでの期間に対して、いくら払うかです。

9. 吸収体以外の故障なら、順番があります

エラーコードを確認して、原因が吸収体でないなら、話が変わります。洗浄と部品交換で直る余地があります。

9-1. いきなり部品を買わないでください

段階 やること 費用の目安
① 清掃 ホコリ・紙片・異物の除去。給紙経路の確認 ほぼ0円
② 洗浄 基板・コネクタ・接点の洗浄 数百〜千円台
③ 消耗部品の交換 給紙ローラーなど、摩耗する部品 数百〜数千円
④ 部品の交換 ヘッド、基板など。ユーザー交換可の機種に限る(5章) 数千円〜
⑤ ニコイチ 同型のジャンクから、生きている部品を移植 もう1台の仕入値
⑥ 撤退 採算・難易度から見送る

①と②を飛ばして④から入る人が、いちばん損をします。「基板が壊れている」と判断した個体が、実際には汚れと接触不良だった、ということが起こるからです。

部品を買う前に、洗ってください。これがこの段階表でいちばん言いたいことです。

9-2. 洗浄剤の使いどころと、使ってはいけないところ

私自身も、ジャンクのプリンターでは基板と接点の洗浄を試してきました。電子機器の洗浄には、高濃度のイソプロピルアルコール(IPA)が使われます。基板・コネクタ・電気接点の洗浄剤として、電子機器用のものが市販されています。

一方で、個別の機種について、メーカーが洗浄を修理方法として案内しているわけではありません。ここははっきりさせておきます。

だから実際の作業では、同型機の分解動画や修理事例を確認しながら、洗浄で救済できる可能性を判断します。「洗えば直る」ではなく、「この機種のこの症状なら、洗って直った例があるか」を先に見る、という順番です。

費用の面では有利です。1本買えば、1台のためだけの材料になりません。2台目、3台目にも使えるので、1台あたりの材料費として見ると小さくなります。

使うのは、電子部品です

  • 基板……インクの飛沫、ホコリ、酸化物が乗っていることがあります
  • コネクタ・接点……接触不良は、故障ではなく汚れであることがあります

プリントヘッドは別です

ここは、4-3で引用したブラザーの原文が答えになっています。

「プリントヘッドには触らないでください。プリントヘッドに触れると、回復不能な損傷につながり、保証が無効になる場合があります。」

メーカーが、触るなと書いています。洗浄剤を使う話も、ここには当てはめないでください。

ゴム・樹脂・コーティングも、材質次第です

アルコールに対する耐性は、材質によって違います。ゴムやエラストマー、特定の樹脂、表面のコーティングは、傷むことがあります。

給紙ローラーのようなゴム部品は、洗浄剤で拭くと一時的に滑らなくなることがありますが、そのぶん劣化を早める可能性があります。消耗品として交換できるなら、③の段階で交換したほうが確実です。

9-3. ニコイチが成立する条件

洗っても部品を替えても直らないとき、最後の手段があります。同型のもう1台から、生きている部品を移植する方法です。

成立する条件が3つあります。

  • 同型であること……型番が違うと、基板もヘッドも互換がないことがあります
  • 壊れている箇所が違うこと……2台とも同じ場所が死んでいたら、部品は取れません
  • もう1台の仕入値を、採算に入れられること……1台の修理費が、実質2台分になります

2つ目が読みにくいところです。同じ機種は、同じ場所から壊れる傾向があります。同型を2台集めても、両方とも同じ故障だった、ということが起こります。

そして吸収体は、ニコイチでも解決しません。両方の個体で、同じように溜まっているからです。

10. 捨てるか、直すか

判断は2段階です。まず、その機種がそもそも土俵に乗るか。次に、その個体が直る見込みがあるか。

10-1. 大局観:クラスとメーカーで、先にふるいにかける

1台ごとに調べる前に、ここで大半が決まります。

クラス 基本方針 理由
ローエンド・4色 買い替え優先 新品が安く、修理に使う時間のほうが高くつく
ローエンド・6色(エプソン) 修理候補 インク方式・中古相場・買い替え費用次第で、延命する価値が出る
ミドル・6色(エプソン) 積極的に修理 新品価格との差が大きい
ハイエンド・6色以上 かなり修理寄り 買い替えのコストが高い
キヤノン 機種ごとに判断 分解の難度に差がある
ブラザー 買い替え寄り 分解の情報量と構造の面で、優先度を下げる

なぜメーカーで差が出るのか

機械の構造だけの話ではありません。先に直した人の記録が、どれだけ残っているかの差でもあります。

同じ症状で分解動画が何本も出ている機種は、手順も、詰まる場所も、すでに誰かが公開しています。そこに乗れるかどうかで、成功率も所要時間も変わります。

だから「直しやすいメーカー」は、構造の話であると同時に、記録の量の話です。

10-2. ミクロ:個体を5項目で見る

判断項目 捨てる方向 直す方向
① 新品価格 1〜2万円程度 3万円以上
② 中古相場 低い それなりに高い
③ 部品価格 高い 数百〜数千円
④ 故障箇所 原因不明・複合故障 原因が絞れる
⑤ 部品取り個体 入手困難 同型ジャンクが安い

①がいちばん効きます。新品が1万円台で買える機種を、時間をかけて直す理由がありません。直す価値があるのは、買い替えが痛い機種です。

④が2番目です。原因が1か所に絞れているなら、直る確率が読めます。「なんとなく動かない」は、いちばん時間を溶かします。

10-3. 目的によって、線が動きます

  • 直して売るなら、ハイエンド機だけです。ミドル以下は、送料と手数料と作業時間を引くと残りません
  • 自分で使うために直すなら、ミドル・6色まで下りてきます。比べる相手が「買い替え費用」なので、手数料も送料もかからないからです

売る前提と、自分で使う前提では、計算式が違います。売る場合は利幅が要りますが、自分で使う場合は買い替えを回避できれば足ります。

10-4. 最初から手を出さないほうがいいもの

  • 吸収体が満杯で、分解して到達できない機種……型番+「インク吸収パッド」で動画が1本も見つからないなら、避けてください
  • インクが漏れている/こぼれた形跡がある……基板まで回っている可能性があります。そして運ぶだけで広がります(3-4)
  • 同型が市場にほとんど出ていない……ニコイチの選択肢が最初からありません
  • 大型機……送料と保管体積が、利幅を超えます
  • インクが空……診断すらできません(4-2)。インク代が先に出ます

10-5. 直して売る場合の採算

自分で使うために直すなら、ここは読み飛ばして構いません。

直るかどうかは、開けてみるまで分かりません。だから、確実な利益ではなく期待値で見ます。

期待利益 =(直る確率 × 売れる価格)- 仕入値 - 部品代 - インク代 - 販売手数料 - 送料

ニコイチをするなら、仕入値は2台分になります。

そして、期待利益 ÷ 拘束時間で見てください。拘束時間には、診断・分解・洗浄・乾燥待ち・組み立て・動作確認・撮影・出品・梱包・発送を全部入れます。ここを入れないと、時給が実際の何倍にも見えます。

「直る確率」は、他人の数字が使えません。扱う機種と、自分の腕と、仕入れ先で変わるからです。だから最初は1台ずつやってください。10台やって何台直ったかを記録すれば、そこから先は自分の数字で計算できます。その数字を持つまでは、まとめて仕入れないでください。

11. 直したものを売るときの法令

11-1.「買って直して売る」と「もらって直して売る」で、許可が変わります

警察庁の解釈運用基準(令和6年8月14日 丙生企発第272号)に、次のように書かれています。

「例えば、無償又は引取料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップは、法第2条第2項第1号の『古物を売却すること』のみを行う営業として法の規制の対象から除外されるが、古物の買取りを行っている場合には、古物営業に該当する。

やり方 古物商許可
壊れたプリンターを買って、直して売る 必要
壊れたプリンターを無償で引き取って、直して売る 不要(通達が明示的に除外)
壊れたプリンターを引取料をもらって引き取り、直して売る 不要(同上)

そして、修理しても「古物」であることは変わりません。同じ通達がそう定義しています。

「法第2条第1項中『幾分の手入れ』とは、物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことをいう。例えば、絵画については表面を修補すること、刀については研ぎ直すことである。」

また、「一度でも一般消費者の手に渡ったものは、未使用でも古物」です。

「法第2条第1項中『使用のために取引されたもの』とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入等されたものをいう。したがって、小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は、それが未だ使用されていない物品であっても『古物』に該当する。

そして「副業だから」は通りません。

「また、その行為が、その者が主として行う本業、本職である場合だけでなく、臨時的に行う副業、内職等というべき場合においても、それは法にいう営業と認められる。

無許可営業の罰則は、古物営業法31条1号で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

11-2.「現状渡し・ノークレーム」はどこまで効くのか

直したものを売る以上、後から「動かない」と言われる可能性はゼロになりません。免責特約の限界は民法に書いてあります。

「(担保責任を負わない旨の特約)第五百七十二条 売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。」

「現状渡し」の特約そのものは原則有効です。ただし、知っていて告げなかったことについては免責されません。

これはこの記事の主題に直結します。廃インク吸収体が満杯に近いことを知っていて、それを書かずに売る。これは572条の「知りながら告げなかった事実」に当たり得ます。

そして8-5で書いたカウンタの件も、ここに当たります。パッドを処置してカウンタを戻した個体は、次に満杯になったとき、買った人には同じ手段がありません。その状態で売るなら、何をした個体なのかを書いてください。

吸収体の状態と、自分がやった処置を商品説明に書いておくことが、そのまま自分を守ります。

買った側の権利も条文で決まっています。

「第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

なお、事業者として消費者に売る場合は、消費者契約法8条が上乗せされます。損害賠償責任の全部を免除する条項は無効です(8条1項1号)。ただし8条2項により、追完責任または代金減額責任を負うと定めていれば、無効化を免れる構造になっています。

個人間のフリマ取引には消費者契約法は適用されず、民法だけが効きます。

11-3. メーカー保証は、中古の買主には引き継がれません

エプソンが明文で書いています。

「保証は弊社または販売店より最初の購入者であるお客様ご本人のみに適用され、お客様が製品を譲渡および販売された第三者には適用されません。

キヤノン・ブラザーの規約に同趣旨の明文は確認できませんでしたが、両社とも「保証書の提示がなければ保証期間内でも有償」という運用です。中古で買う側にとっては、実質的に同じ結論になります。

そして、分解した時点で修理を断られます。エプソンの修理サービス規約です。

「2.適用範囲(4)以下に該当する場合、修理をお受け付けできない場合があります。・弊社が定める製品の補修部品の保管期限を経過している場合・製品に不適切な改造、分解に起因する故障および損傷(部品欠損含む)がある場合・製品の廃棄目的による修理依頼の場合・国内で販売されたエプソン製品以外の修理依頼の場合」

さらに、こういう条項もあります。

「・製品に貼付されているラベルまたはプレートを毀損、または剥がすなどし、製品の商品名または製造番号を判別不能または判別困難としているとき。

清掃のつもりでラベルを剥がすと、保証期間内でも有償になります。

キヤノンも同様に、サービス提供中止事由としてこう列挙しています。

弊社または弊社が業務委託をしている協力会社以外での修理、改造、分解掃除などによる故障及び損傷

つまり「自分で開けた瞬間に、メーカー修理という選択肢は消える」と考えておくのが安全です。開ける前に、2章と3章を終わらせておく理由がここにあります。

11-4. 電気用品安全法(PSE)はどうか

電気用品安全法施行令の別表第一(特定電気用品116品目)と別表第二(特定電気用品以外341品目)を全文検索しました。「プリンター」という品目は、どちらにも存在しません。

近い品目としては、事務用機械器具の項に「謄写機及び事務用印刷機」、別項に「複写機(光源の定格出力が一・二キロワット以下のものに限る。)」がありますが、いずれも家庭用インクジェット/レーザープリンターを指すものではありません。

ただし、ACアダプタは別です。別表第一(=特定電気用品、ひし形PSEマーク)にこうあります。

「一一 直流電源装置(交流電源装置と兼用のものを含み、定格電圧が一〇〇ボルト以上三〇〇ボルト以下、定格容量が一キロボルトアンペア以下及び定格周波数が五〇ヘルツ又は六〇ヘルツのものに限り、無線通信機の試験用のものその他の特殊な構造のものを除く。)」

そして販売の制限は、新品と中古を区別していません。

「(販売の制限)第二十七条 電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、第十条第一項の表示が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。

【確認できず】「プリンターは電気用品安全法の対象外である」と経済産業省が名指しで述べたページは見つかりませんでした。上記は施行令別表の原文に品目が存在しないことからの読み取りです。ACアダプタを単体で売る場合は、PSEマークの有無を必ず確認してください。

11-5. 廃棄とリサイクル

直せなかった機体の処分も、法令の対象です。プリンターは小型家電リサイクル法(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)施行令第1条の対象品目です。

「八 プリンターその他の印刷装置

ただし、パソコンと違ってメーカーの回収義務(指定再資源化製品)には指定されていません。資源有効利用促進法では「指定省資源化製品」「指定再利用促進製品」に指定されていますが、これは設計段階の3R配慮義務であって回収義務ではありません。だからエプソンは自治体処分を案内しているわけです。

もう一点、譲渡時に必要な作業があります。エプソンの案内です。

「ネットワークやファクス送信機能に対応している製品の場合、製品を譲渡もしくは廃棄する際にメモリー内に保存されている情報を消去してください。情報を消去する方法は、製品により異なりますのでマニュアルをご参照ください。」

複合機を中古で売るなら、FAX履歴やスキャンデータの消去は必須です。

12. 非純正インクが入っていた中古機

12-1. メーカーはどう扱うか

中古で仕入れると、前の持ち主が入れた互換インクがそのまま残っていることがあります。3社の記載を並べます。

キヤノン

「キヤノン製以外のインクカートリッジ(穴を開ける等によりインクを再補充したものを含みます)をご使用になると、プリンター本体への悪影響やプリント品質の低下などプリンター本来の性能を発揮できない場合があります。また、安全上問題はありませんが、まれに、キヤノン純正品にないインク成分によると見られるプリントヘッド部分の発熱・発煙事例も報告されています(すべてのキヤノン製以外のインクについて当該事例が報告されているものではありません)。キヤノン製以外のインクカートリッジのご使用に起因する不具合への対応については、保守契約期間内または保証期間内であっても有償となります。」

エプソンは、修理に出したときの実務まで書いています。これは中古を扱う人には直接効く記述です。

「(1)エプソン製品以外のインクカートリッジ、メンテナンスボックスをプリンター本体にセットした状態で輸送すると、カートリッジ、メンテナンスボックスの構造によっては大量にインク漏れが発生し、本体の故障に至る場合があります。(2)エプソン製品以外のインクカートリッジ、メンテナンスボックスによるインク漏れについての責任は負いません。(3)修理品でエプソン製品以外のインクカートリッジ、メンテナンスボックスがセットされていた場合は、インク漏れを防ぐためにカートリッジ、メンテナンスボックスを本体から外して返送させていただきます。

つまり、非純正が入っていることは修理に出した時点で判明します。そして輸送中の漏れは、仕入れた側の損失になります。

ブラザー

「修理依頼製品の故障要因がお客様のご使用になられた『非純正品』にあると弊社が判断した場合、メーカーの保証期間に関わらず有償修理とさせていただきます。」

12-2. 国民生活センターの注意喚起

互換インクについては、公的機関からも注意喚起が出ています。

「互換品を使用した場合『印刷の色味が異なる』や『インクが漏れて、プリンターが使えない』といったことも起こりえます。純正品でないインクを使用してプリンターが故障や不具合を起こした場合は、無償修理等の保証期間内であっても有償修理になるなど、メーカーによるサポートが受けられないことがほとんどです。

同じ解説には、中古機を扱う側にとって示唆的な一文もあります。

「また、プリンターが古くなると、純正の交換インクが量販店では売っていないこともあります。

直せたとしても、純正インクが手に入らなければ売り物になりません。部品保有期間とは別に、消耗品の供給という壁があります。

【確認できず】「ファームウェア更新により互換インクが使用できなくなる」という話はよく見かけますが、3社いずれの公式サイトにも該当する記述は見つかりませんでした。各社のファームウェア更新の告知は、いずれも別の目的(不具合の改善、自社純正カートリッジの仕様変更など)のものでした。

13. まとめ

13-1. 結論

「直せるか」の答えは、2つに分かれます。

  • メーカーが受けられるかは、部品保有期間と廃インク吸収体で決まります。ここは調べれば確定します。推測の余地がありません
  • 自分で直せるかは、ばらして到達できるかと、原因が絞れるかで決まります。こちらは機種と症状によります

この2つを混同すると、直る個体を捨てることになります。

メーカーが受けられないと分かった時点で諦める人が多いのですが、そこで終わっているのはメーカーのルートだけです。部品保有期間が終わった機種でも、原因が絞れていて、部品に到達できるなら、直る余地があります。

逆もあります。吸収体が満杯で、ばらして到達できない機種は、腕に関係なく終わりです。ここに時間を使わないでください。

そして、メーカーの立場も繰り返しておきます。メーカーは「保証できる範囲」を言っています。部品を永久に持つことはできませんし、開ければインクが漏れる部品を、誰にでも交換してくださいとは言えません。正しいことを言っています。ここから先を自分でやるのは、その保証の外に出るということです。

13-2. 判断の順番

  1. エラーコードを確認して、原因を絞る
  2. 機種別一覧で、メーカーが受けられるかを確認する
  3. 受けられるなら、修理料金と買い替え価格を比べる
  4. 受けられないなら、型番と症状で分解動画を探す。見つかるかどうかが、そのまま自分でやれるかの判定になります
  5. 新品価格・部品価格・原因の絞り込み・部品取り個体の入手性で、直すか捨てるかを決める

ここまで全部、機械を開ける前にできます。開けてから考えるのが、いちばん高くつきます。

13-3. 一次情報から言えること

  • 部品保有期間は「製造終了から」起算します。発売年からの逆算は成立しません
  • 年数を明記しているのはブラザーだけ(製造打切後5年)。キヤノンは年数非公表で機種別、エプソンは公式内で数字が揺れています。機種別一覧を見る以外に確実な方法はありません
  • 廃インク吸収体は原則ユーザー交換不可で、満杯になると印刷が止まります。例外機種は実名で特定でき、ごく少数です
  • 修理対応期間が終わっていれば、吸収体の交換すらできません。エプソンの延長対応サービスが唯一の抜け道です
  • ヘッドクリーニングは吸収体の寿命を削ります。ブラザーがこの因果関係を明文で書いています。電源プラグの抜き差しも同様です
  • インクが空だと診断すらできません。インク代は仕入れ値に含めて考える必要があります
  • 自分で開けた時点で、メーカー修理という選択肢は消えます。開ける前に1〜3章を終わらせてください
  • 「買って直して売る」は古物商許可が必要。「もらって直して売る」は不要です(警察庁通達が明示)。副業でも「営業」に当たります
  • 「現状渡し」は原則有効ですが、知っていて告げなかったことは免責されません(民法572条)。吸収体の状態と、自分がやった処置を書くことが、そのまま自分を守ります
  • メーカー保証は中古の買主に引き継がれません(エプソンが明文化)

13-4. この記事で確認できなかったこと

項目 理由
キヤノンの部品保有期間の年数 同社は年数を公表せず、機種別の終了年月のみを掲載
エプソンの部品保有期間の統一値 公式サイト内で「5年(一部6年)」「7年(一部5・6・10年)」「5年〜12年」の3種類が併存
キヤノンのヘッドクリーニングの回数制限・警告文 オンラインマニュアルの大半が取得できず
1回のクリーニングで消費するインク量 3社とも未公表
ファームウェア更新と互換インクの関係 3社いずれの公式サイトにも該当記述なし
「プリンターはPSE対象外」という経産省の明文 施行令別表に品目がないことは確認できたが、名指しで対象外と述べた文書は見つからず
プリンターの故障原因の統計 メーカー・公的機関・JEITAいずれも未公表。JEITAは出荷統計のみ
中古プリンターに特化した公的な注意喚起 互換インクとフリマ全般の注意喚起は存在するが、中古プリンター固有のものは確認できず

13-5. この記事の情報を、自分で最新版に確認する方法

修理料金も部品保有期間も、改定されます。この記事が使ったページの正式名称を挙げておきます。名称で検索すれば、URLが変わってもたどり着けます。

確認したいこと ページの正式名称
修理対応期間 キヤノン「修理対応期間 個人のお客さま向け商品一覧」「修理対応期間終了商品」/エプソン「修理対応中の機種・期限・料金一覧」「修理対応終了製品」/ブラザー「部品供給年限切れ製品」「有償修理サービス料金表」(PDF)
修理料金 キヤノン FAQ「修理料金を知りたい」/エプソン「修理対象機種・料金一覧」/ブラザー「有償修理サービス料金表」(PDF)
廃インク吸収体 キヤノン FAQ「インク吸収体の交換が必要です」「インク吸収体が満杯に近づきました」/エプソン FAQ 1859・「製品に関するご注意」/ブラザー FAQ「廃インク吸収パッドが満杯です と表示された」
修理・保証の条件 各社「修理サービス規約」/エプソン「修理に関するご注意」
古物営業法の解釈 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」(令和6年8月14日 丙生企発第272号)

【免責】本記事は、各メーカーおよび公的機関が公表している資料に基づく情報の整理と、筆者自身の作業経験の記録です。筆者はメーカーの認定修理業者ではなく、弁護士でもありません。分解・修理は自己責任で行ってください。分解した製品はメーカー修理を受けられなくなる場合があります。

引用した各社の規約・料金・対応期間は、本記事作成時点で公表されていたものです。いずれも予告なく変更されます。13-5にページの正式名称を挙げましたので、実際の判断前に必ず最新版をご確認ください。

古物商許可の要否、契約不適合責任の範囲などの法的判断は、具体的な事実関係により変わります。個別の判断は所轄の警察署(生活安全課)または弁護士にご相談ください。

【主な出典】キヤノン「修理・メンテナンスのお申し込み」「修理対応期間 個人のお客さま向け商品一覧」「修理対応期間終了商品」「サポート対応終了ポリシー」「修理サービス規約」「らくらく買替便」、同FAQ「インク吸収体の交換が必要です」「インク吸収体が満杯に近づきました」「修理料金を知りたい」「プリントヘッドの交換方法」、同オンラインマニュアル(サポート番号1700)/エプソン「製品に関するご注意」「修理対象機種・料金一覧」「修理対応終了製品」「修理に関するご注意(修理サービス規約)」「エプソン製品以外のインクカートリッジ、メンテナンスボックス使用による不具合事例」、同FAQ 1859/3736/1224/52135/32272/ブラザー「部品供給年限切れ製品」「有償修理サービス料金表」「修理サービスのご案内」、同FAQ 10665/9595/9596、同製品マニュアル「本製品からプリントヘッドのクリーニングをする」/警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」(令和6年8月14日 丙生企発第272号)/e-Gov法令検索「古物営業法」「民法」「消費者契約法」「電気用品安全法」「電気用品安全法施行令」「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律施行令」「資源の有効な利用の促進に関する法律施行令」「家庭用品品質表示法施行令」/経済産業省「電気用品安全法の概要」/国民生活センター「純正品でない格安のプリンター用インク」(2020年10月28日)「相談急増!フリマサービスでのトラブルにご注意」(2018年2月22日)/一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)プリンター出荷統計

最終更新:2026年8月29日

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