台湾仕入れの記事は、たいてい「物価が安いから利益が出る」と書きます。
それは正確ではありません。
台湾の物価は、日本と大きくは変わらなくなっています。安さで勝負するなら、タイやマレーシアの方がはるかに安い。
それでも台湾を使う理由は、別のところにあります。
台湾の優位は「安い」ことではなく、「小さく、何度も行ける」ことです。
この記事では、渡航費を仕入れ点数で割る計算から始めます。そこで台湾がどういう位置にあるのかが分かれば、何を仕入れるべきかは自動的に決まります。
※為替は2026年8月時点で1台湾ドル≒4.99円。渡航前に必ずご確認ください。
1. 台湾は「安い国」ではなく「近い国」です
1-1. 渡航費を点数で割ると、位置が分かる
海外仕入れの原価で最も重いのは、商品代ではありません。渡航費です。そしてそれは、持ち帰る点数で割られます。
| 仕入れ先 | 渡航費の目安 | 50点 | 100点 | 300点 | 600点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 台湾(LCC・1泊) | 40,000円 | 800円 | 400円 | 133円 | 67円 |
| 韓国(LCC・2泊) | 75,000円 | 1,500円 | 750円 | 250円 | 125円 |
| タイ | 150,000円 | 3,000円 | 1,500円 | 500円 | 250円 |
| マレーシア | 250,000円 | 5,000円 | 2,500円 | 833円 | 417円 |
| ハワイ | 250,000円 | 5,000円 | 2,500円 | 833円 | 417円 |
※渡航費は航空券・宿泊・現地交通・食費の目安です。時期とセールで大きく変動します。
この表の意味はこうです。
マレーシアで100点しか買わなければ、1点あたり2,500円が乗ります。だからマレーシアは、1,000点規模で買わないと成立しません。
一方台湾は100点で400円。6分の1です。少量でも成立する数少ない仕入れ先だということになります。
1-2. 本当の優位は「分割できること」
ここが台湾の核心です。
同じ400点を仕入れる場合で比較します。
| 1回の点数 | 渡航費の合計 | 1点あたり | 同時に寝る資金 | |
|---|---|---|---|---|
| 台湾 年4回×100点 | 100点 | 160,000円 | 400円 | 30,000円 |
| 台湾 年2回×200点 | 200点 | 80,000円 | 200円 | 60,000円 |
| マレーシア 年1回×400点 | 400点 | 250,000円 | 625円 | 120,000円 |
※仕入れ単価を1点300円と仮定した場合の資金拘束額
同じ400点でも、台湾に4回に分けて行けば、同時に寝る資金は4分の1で済みます。
これは資金効率の話です。10万円で仕入れて20日で売れるなら、その10万円は年に18回働きます。60日かかるなら年6回。利益率が同じでも、年間の粗利は3倍違います。
1回の仕入れを小さくできるということは、回転数を上げられるということです。そして回転数は、資金が少ない人にとって唯一のレバーです。
1-3. だから、台湾で狙うべき商品が決まる
1-1と1-2から、条件が導かれます。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 少量でも成立する | 1点400円の按分を吸収できる単価が必要 |
| 軽い・小さい | ハンドキャリーで持ち帰るため |
| 日本で継続的に売れる | 年数回のリピートを前提にするため |
| 規制に引っかからない | 後述 |
逆に言えば、大量に運ばないと成立しない商材は、台湾では選ぶ意味がありません。それはマレーシアやタイの領域です。
2. 実質の仕入れコストを出す
2-1. 値札に乗るもの
| 項目 | 係数 |
|---|---|
| 為替(2026年8月時点) | 1台湾ドル ≒ 4.99円 |
| クレジットカード手数料 | 約2% |
| 実質の仕入れ係数 | 台湾ドル × 約5.1円 |
台湾では表示価格に営業税が含まれているのが一般的です。ただし、市場や個人商店では扱いが異なる場合があります。領収書(統一發票)の有無で判断してください。
2-2. 損益分岐倍率
日本で売る場合、販売手数料10%と国内送料が乗ります。そして送料は単価に比例しません。
以下は「NT$◯を、日本円でいくらで売れば損益ゼロか」の倍率です。
| 現地価格 | 仕入れ(円) | ネコポス210円 | 宅急便コンパクト650円 |
|---|---|---|---|
| NT$100 | 510円 | 1.34倍 | 1.83倍 |
| NT$300 | 1,530円 | 1.26倍 | 1.58倍 |
| NT$500 | 2,550円 | 1.20倍 | 1.39倍 |
| NT$1,000 | 5,100円 | 1.16倍 | 1.25倍 |
| NT$3,000 | 15,300円 | 1.13倍 | 1.16倍 |
NT$100(約510円)の商品を宅急便で送ると、1.83倍で売ってようやくゼロです。ここに1-1の渡航費按分400円が乗ります。
低単価品は、台湾でも成立しません。近さで有利になるのは按分の部分だけで、送料の壁は他国と同じです。
3. 何を仕入れるか:4つの条件で絞る
商品名のリストは載せません。価格も相場も数ヶ月で動くからです。代わりに、判断の基準を書きます。
3-1. 見るべきは「日本にないこと」
台湾の物価は日本と大きくは変わりません。だから価格差で勝負しても利幅が残りません。
狙うのは「日本で買えない」または「日本で高い」ものです。
| カテゴリ | 狙う条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 古着・ヴィンテージ | 日本では拾えない出物、台湾限定の企業もの | 6章で詳述 |
| レトロゲーム・ホビー | 日本未発売の海外版、現地限定パッケージ | 動作確認が必須 |
| 雑貨・文具 | 台湾デザイン、現地ブランド、限定コラボ | 単価が低く送料負けしやすい |
| 茶葉・食品 | — | 販売目的の輸入は規制あり。4章 |
| 化粧品 | — | 同上。国内販売に規制あり |
3-2. 単価を上げる
2-2の表の通り、低単価品は倍率の壁で死にます。そして1-1の按分400円も乗ります。
NT$100の商品を100個買うより、NT$3,000の商品を10個買う方が成立します。
台湾は「大量に安く」の国ではありません。「少量を、確実に」の国です。
3-3. 軽くて小さいものを選ぶ
ハンドキャリーが前提なので、重量制限が効きます。LCCの受託手荷物は上限が設定されていることが大半です。
重い商材を選ぶと、そもそも点数が確保できません。そして点数が確保できなければ、1-1の按分が跳ね上がります。
3-4. リピートできるものを選ぶ
1-2で見た通り、台湾の価値は「何度も行けること」です。
1回きりの掘り出し物より、次回も同じ場所で同じものが買える商材の方が、この国では価値があります。仕入れ先を1つ固定できれば、次回からのリサーチ時間がゼロになるからです。
4. 【重要】規制のあるカテゴリ
制度は変更され得ます。実際の取り扱いは必ず税関・所管官庁にご確認ください。この記事は法的助言ではありません。
4-1. 食品・茶葉
台湾のお茶やお菓子は人気がありますが、販売目的で輸入する場合、個人利用とは扱いが異なります。食品衛生法上の届出が必要になる場合があります。
「お土産として持ち帰り、余った分を売る」という運用をしている人もいますが、反復継続して行えば、それは販売目的の輸入です。
事業として本格的にやるには、ハードルが高いジャンルだと考えてください。
4-2. 化粧品
日本語の成分表示がない海外化粧品を国内で販売することには、規制があります。継続的な大量出品はリスクを伴います。
個人輸入として持ち込める数量にも上限があります。
4-3. 電化製品
電源プラグやACアダプタを含む製品には、電気用品安全法(PSE)の規制があります。PSEマークのない製品を販売用に輸入することは避けてください。
レトロゲーム機を扱う場合、本体だけでなく付属のACアダプタに注意が必要です。
4-4. ブランド品
真贋の問題があります。そしてコピー品の輸入は、個人使用目的であっても認められません。
夜市などで安価に売られているブランド品は、この観点から手を出さないでください。
5. 免税(TRS)と転売について
台湾には外国人旅行者向けの輸出税額還付(TRS)制度があります。一定額以上の購入で営業税の還付を受けられます。
ただし、これは「旅行者が自分で使うために持ち帰る」ことを前提とした制度です。
販売目的で仕入れた商品にこの制度を使うことが適切かどうかは、制度の趣旨と個別の条件によります。還付を受けた商品を転売する場合の扱いについては、事前に確認してください。
そして日本側では、販売目的で持ち込む商品に個人の免税枠は適用されません。同一商品を大量に持ち込めば商用と判断される可能性が上がります。
1-1の計算に、税を見込んでおいてください。低単価品ほど、比率として重くのしかかります。
6. 台湾の古着事情
「台湾 古着屋」で検索される方が多いので、この章を置きます。
6-1. 台湾には日本の古着が流れています
台湾は日本のファッションへの親和性が高く、日本ブランドや日本の古着が一定の評価を受けています。日系のリユースチェーンも進出しています。
つまり構造としては、マレーシアと同じです。
日本から出ていった古着が、台湾で売られている。
だから「台湾で日本の古着を安く仕入れて日本で売る」は、原則として成立しません。往復した分のコストが乗っているからです。
6-2. では、台湾の古着に価値はないのか
あります。ただし条件が付きます。
| 狙う | 狙わない |
|---|---|
| 台湾のローカル企業もの・学校もの | 日本ブランドの日本古着 |
| 台湾限定のグラフィック | アメリカ古着の定番 |
| 台湾製(Made in Taiwan)の古い個体 | 日本で普通に流通しているもの |
| アジア経由で流れてきた欧米ヴィンテージ | — |
「日本人がまだ値付けできていないカテゴリ」を探すのが原則です。日本ブランドを台湾で買っても、それは日本で買えます。
6-3. 古着で台湾を使う場合の注意
1-1の表を思い出してください。台湾は少量でも成立するのが強みです。
逆に言えば、古着を大量に仕入れる目的なら、台湾は選択肢になりません。それはタイやマレーシアの領域です。
| 目的 | 向く国 |
|---|---|
| 大量のベール・バンドルを掘る | タイ、マレーシア |
| 選別された良品を1着ずつ拾う | 韓国 |
| 少量を、何度も、リピートで拾う | 台湾 |
台北の古着店は市街地に点在しており、1日で複数店を回れる密度があります。これは1回の滞在を短くできるという点で、1-2の「分割できる」という優位と噛み合います。
ただし、単価は安くありません。キュレーションされた店では日本と同水準か、それ以上のこともあります。2-2の倍率表で必ず検算してください。
6-4. 卸・倉庫はあるのか
台北には衣料の卸が集まるエリアがあります。ただし主力は新品のアパレルで、古着の大量卸とは性格が違います。
古着の卸ルートを開拓したいなら、現地で店主に直接聞くのが最短です。「どこから仕入れているのか」を聞ける関係を作れるかどうかが、すべてになります。
これは1-2の「何度も行ける」という優位が効く場面です。1回の訪問で関係は作れませんが、4回なら作れる可能性があります。
7. 週末2泊で回る場合
台湾の使い方は、長期滞在ではありません。短く、何度もです。
DAY 1:市場調査
買いません。相場を見ます。
- 扱おうとしているカテゴリが、いくらで売られているか
- 日本の相場と比べてどうか
- 2-2の倍率表に当てはめて成立するか
ここで「成立しない」と分かったら、その場でカテゴリを変えてください。1日目に判断できるのが、近い国の利点です。
DAY 2:仕入れと、次回の仕込み
DAY 1で成立すると判断したものを買います。そして次回のために店主と連絡先を交換してください。
1-2で見た通り、台湾の価値はリピートにあります。1回目は仕入れより関係構築の方が重要だと考えてください。
帰国前に測る
- 総仕入れ額
- 総点数
- 総重量
- 渡航費の実額
この4つがあれば、1-1の表に自分の数字を入れられます。次回の判断が、感覚ではなく計算になります。
8. 他の仕入れ先との使い分け
| 台湾 | 韓国 | タイ | マレーシア | |
|---|---|---|---|---|
| 渡航費 | 最安 | 安い | 中 | 高い |
| 1回の規模 | 小さくできる | 中 | 大 | 大 |
| 頻度 | 年数回 | 年数回 | 年1〜2回 | 年1回 |
| 主役の変数 | 回転数 | 物流密度 | ベールのS+A率 | 選別率と点数 |
| 成立する最小点数 | 100点前後 | 200点前後 | 1ベール | 1,000点前後 |
| 典型的な失敗 | 低単価品を選ぶ | ハンドキャリー | B品率の見誤り | 安さだけで少量購入 |
台湾は「海外仕入れが成立する最低ライン」を知るための国です。
ここで成立させられないなら、渡航費がより高い国では、より難しくなります。逆に台湾で回せるようになれば、その手順を他国に持っていけます。
9. まとめ
- 台湾は安い国ではなく、近い国です。物価は日本と大きく変わりません。
- 優位は渡航費の按分にあります。100点で1点400円。マレーシアの6分の1です。
- 本当の価値は分割できること。同じ400点でも、年4回に分ければ資金拘束は4分の1です。
- ただし送料の壁は他国と同じです。NT$100の商品を宅急便で送れば1.83倍でようやくゼロ。低単価品は成立しません。
- だから少量・高単価・軽量・リピート可能の4条件で絞ります。
- 古着は日本ブランドの日本古着を避け、台湾のローカルものや日本人が値付けできていないカテゴリを狙います。
- 食品・化粧品・電化製品には規制があります。事前に確認してください。
台湾で成立させられるかどうかは、1-1の表に自分の数字を入れれば分かります。渡航費、持ち帰れる点数、扱う商品の単価。この3つです。
【持ち帰った後の話】
海外仕入れでいちばん多い失敗は、目利きではありません。「売れるとは思ったが、売れるまでが長かった」です。
10万円で仕入れて20日で売れるなら、その10万円は年に18回働きます。
同じ10万円で60日かかるなら、年に6回しか働きません。
利益率が同じでも、年間の粗利は3倍違います。
台湾の優位が「分割できること」だと書いたのは、これが理由です。1回を小さくできれば、回転数を上げられます。そして回転数は、資金が少ない人にとって唯一動かせるレバーです。
だから私は、仕入れる前に日数を出します。出品中の件数と、その期間に売れた件数さえ数えれば、計算できます。
「過去に売れているか」と「何日で売れるか」は、まったく別の情報です。
よくある質問
台湾仕入れは物価が安いから儲かるのですか?
物価は日本と大きく変わりません。安さで選ぶならタイやマレーシアの方がはるかに安いです。台湾の優位は渡航費にあります。LCCと1泊で4万円程度なら、100点仕入れて1点あたり400円の按分です。マレーシアの2,500円と比べると6分の1になります。
何点くらい仕入れれば成立しますか?
100点前後から成立します。マレーシアが1,000点規模を必要とするのに対し、台湾は渡航費が安いため少量でも按分が軽く済みます。ただし送料の壁は他国と同じで、NT$100の商品を宅急便で送る場合は1.83倍で売ってようやく損益ゼロです。低単価品は台湾でも成立しません。
年に何回行くのが効率的ですか?
分割できることが台湾の最大の価値です。同じ400点を仕入れる場合、年4回×100点なら同時に寝る資金は3万円ですが、年1回×400点なら12万円になります。1回を小さくすれば回転数が上がり、資金が少なくても回せます。
台湾で古着を仕入れるのはどうですか?
日本ブランドの日本古着は避けてください。日本から出ていったものが台湾で売られている構造なので、往復した分のコストが乗っています。狙うのは台湾のローカル企業もの、学校もの、台湾製の古い個体、台湾限定のグラフィックなど「日本人がまだ値付けできていないカテゴリ」です。なお大量に仕入れる目的なら、台湾ではなくタイやマレーシアが向きます。
台湾から食品や化粧品を仕入れてもいいですか?
販売目的の輸入には規制があります。食品は食品衛生法上の届出が必要になる場合があり、日本語の成分表示がない海外化粧品を国内販売することにも規制があります。電化製品はPSEの問題があり、レトロゲーム機を扱う場合は付属のACアダプタに注意してください。実際の取り扱いは税関・所管官庁に確認してください。
免税(TRS)で買った商品を転売できますか?
TRSは旅行者が自分で使うために持ち帰ることを前提とした制度です。販売目的で仕入れた商品に使うことが適切かは、制度の趣旨と個別の条件によるため事前に確認してください。また日本側では、販売目的で持ち込む商品に個人の免税枠は適用されません。同一商品を大量に持ち込めば商用と判断される可能性が上がります。

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