eBayオワコン論争の答え|プラットフォームは伸びている。死んだのは低単価モデル

eBayオワコン 輸出

「eBayってもうオワコンなんじゃないの?」

この検索が増えたのは、たまたまではありません。2025年8月に、eBay輸出の前提が制度ごと書き換わりました。

この記事では、掲示板の体感でも成功者の煽りでもなく、米国の制度変更とeBay自身が公表している数字を突き合わせて、何が終わって何が終わっていないのかを整理します。私自身がeBay輸出をやってみて、制度変更のはるか前に撤退した話も書きます。

結論:終わったのは「eBay」ではなく「薄利多売モデル」

先に結論を書きます。

eBayというプラットフォームは、現在も成長しています。しかし低単価の商品を数で回すモデルは、2025年8月29日に制度上ほぼ成立しなくなりました。

「オワコン論争」が噛み合わないのは、この2つを混ぜているからです。「まだ伸びてる」と言う人はプラットフォームの話をしていて、「もう無理」と言う人は自分のモデルの話をしている。どちらも正しい。ただし、正しい範囲が違う。

何が起きたのかを、順番に見ていきます。

2025年8月29日、米国のデミニミスが廃止された

デミニミス(de minimis)とは、米国で一定額以下の輸入品に関税を免除する制度です。1930年関税法321条に基づくもので、800ドル以下の貨物は関税がかからず、通関手続きも簡素化されていました。

日本からeBayで米国に売る場合、ほぼすべての取引がこの800ドル以下に収まります。つまり日本のeBayセラーは長年、関税を一切考えずに商売ができていたということです。これが前提でした。

その前提が消えました。

経緯

時期 内容
2025年5月2日 中国・香港を原産国とする商品にデミニミス廃止(発送元を問わず適用)
2025年7月30日 全世界を対象とする適用停止の大統領令に署名
2025年8月29日 施行。金額にかかわらず全ての輸入品が課税対象に
2025年8月27日 日本郵便が米国宛て郵便物の引受を一時停止(30か国以上の郵便当局が同様の措置)
2026年2月20日 米最高裁がIEEPA(国際緊急経済権限法)に関税賦課権限を認めない判決。CBPは2月24日から同法に基づく追加関税の徴収を停止
2026年2月28日 郵便貨物の従量税選択が終了、従価税のみに
2026年4月14日 日本郵便が米国宛て引受を再開(CBP認証事業者経由での事前関税支払いが条件)
2026年6月24日 CBPが規則により停止を無期限化
2027年7月1日 法定廃止

重要なのは、2026年2月の最高裁判決でも、デミニミスの停止そのものは無効化されなかったという点です。判決はIEEPAに基づく「関税を課す権限」についてのものであり、「免税措置を停止する」措置とは別でした。同日付の大統領令で、800ドル以下の免税を認めない方針は改めて維持が明記されています。

この制度は戻りません。さらに、少額郵便貨物に対する1個あたりの取扱手数料の導入も予定されています。

出典:eBay Japan「米国向け配送に関する関税変更のお知らせ」ジェトロ ビジネス短信

なぜ「薄利多売だけ」が死んだのか

ここが本質です。関税が乗ったから全員が等しく苦しくなった、という話ではありません。特定の価格帯だけが選択的に殺されました。

制度移行の猶予期間中、国際郵便経由の貨物には従量税という選択肢が置かれていました。その金額が、構造を露骨に示しています。

  • 関税率16%未満 → 1点あたり80ドル
  • 関税率16〜25% → 1点あたり160ドル
  • 関税率25%超 → 1点あたり200ドル

1点あたりの定額です。商品がいくらであろうと同じ額が乗る。これを売値に対する比率にすると、こうなります。

売値 1点80ドルが乗ったときの負担率 成立するか
15ドル 533% 不可能
50ドル 160% 不可能
200ドル 40% ほぼ不可能
500ドル 16% 条件次第
1,000ドル 8% 吸収可能

定額コストは、売値で割れません。これが低単価モデルが構造的に消滅した理由です。

現在この従量税方式は終了し、従価税(価格×関税率)のみに移行しています。しかし問題は解決していません。通関手数料、ブローカーの立替手数料、DDP対応にかかる処理費用は、いずれも1荷物あたりの定額だからです。関税そのものが従価になっても、その周辺コストは定額のまま残る。そして予定されている1個あたり取扱手数料が加われば、定額部分はさらに厚くなります。

つまり、米国向けの越境販売は「1荷物ごとに定額のコストが乗る商売」に変わりました。この世界では、単価が低いほど不利になります。例外はありません。

この構造は、eBayのIR数値と完全に一致する

ここで、eBay自身が公表している数字を見ます。2026年第2四半期(4〜6月)の決算です。

指標 数値 前年同期比
GMV(流通総額) 224億ドル +15%
アクティブバイヤー 1億3,600万人 +2%(前四半期比は横ばい)
広告収入(自社広告商品) 5億7,000万ドル +25%

出典:eBay Inc. Reports Second Quarter 2026 Results

一見すると矛盾しています。GMVが15%伸びているのに、買い手は2%しか増えていない。買い手が増えていないのに流通額が伸びるのは、1件あたりの単価が上がっているからです。

そして、eBayが「Focus Categories(重点カテゴリ)」と呼ぶ領域のGMVは同四半期に前年比26%増。それ以外のカテゴリを20ポイント上回っています。重点カテゴリの中身は、コレクティブル、トレーディングカード、リファービッシュ品(整備済み中古品)、eBay Motors、ラグジュアリー/中古ファッション。いずれも単価の高い領域です。

制度変更が低単価セラーを退場させ、高単価領域が残った。だから買い手数は横ばいのままGMVだけが伸びる。数字と制度は矛盾していません。同じ現象を別の角度から見ているだけです。

広告コストの上昇が追い打ちをかけている

3つ目の数字も見ておく必要があります。広告収入が25%増で、GMVの15%増を10ポイント上回っている。

流通額より広告収入のほうが速く伸びているということは、GMV1ドルあたりに投下される広告費が増えているということです。Amazonで先に起きたのと同じパターンで、マーケットプレイスが広告事業を伸ばすと、オーガニックの露出が相対的に薄まり、上位表示のコストが全セラーに対して静かに上がっていきます。

関税で定額コストが乗り、広告で露出コストが上がる。この2つが同時に来たのが2025年から2026年でした。「昔と同じことをしているのに売れなくなった」という体感には、はっきりした根拠があります。

私は制度変更の前に、同じ理由で撤退していた

ここからは自分の話です。

私はスーパーファミコンのソフト「超武闘伝」を3本(1から3まで)、国内で1本100円で仕入れて、eBayで1本15ドルで販売したことがあります。デミニミス廃止より、はるか前の話です。

数字だけ見れば300円が15ドルですから、悪くない取引に見えます。実際に売れました。それでもやめました。

送料込みで出していた=定額コストを自分で飲んでいた

私はfree shipping(送料込み)で出品していました。バイヤーから見て価格が分かりやすく、売れやすくなるからです。

しかしこれは、国際送料という定額コストを、自分が全部飲むということです。15ドルの売上から、eBayの手数料、決済手数料、そして国際送料が引かれ、そこから仕入れの300円を引く。残ったのは1本あたり小銭でした。

当時の私が直面していたのは、いま全セラーが直面しているのとまったく同じ構造です。売値に比例しないコストが1荷物ごとに乗る。15ドルという価格帯は、その定額を吸収できる水準ではなかった。

デミニミス廃止は、この計算を制度として全員に強制しただけです。私が個人的に成立しないと判断したモデルが、2025年8月に法的に成立しなくなった。同じ計算式が、時期を隔てて2回同じ答えを出したということだと思っています。

もうひとつの理由:出品工数が按分できなかった

あわせて、仕入れが安定しないという問題もありました。超武闘伝は探せば見つかりますが、いつでも300円で見つかるわけではない。1本売って、次はまたゼロから探す。

ここで効いてくるのが、eBayの出品作業は1商品あたりの固定工数だということです。英文タイトルを組み、Item Specificsを埋め、写真を撮り、送料設定をして、コンディションを英語で書く。この一式を毎回やる。

同じ商品を10本流せるなら10本で按分されますが、1点物ばかりなら按分されません。関税も、送料も、出品工数も、すべて「1件あたりに乗る定額」でした。低単価の1点物というのは、その全部を最も不利な形で受け取るポジションです。

5ch・なんJの「オワコン」はどこまで信じていいか

「ebay 5ch」「ebay なんj」で検索している人もいると思います。

掲示板の情報は、体感としては正確です。実際に手を動かしていた人が「終わった」と書いているなら、その人のモデルは本当に終わっています。特に2025年後半以降に書かれたものは、制度変更を直撃した人の声である可能性が高い。

ただし、それは「eBay全体が終わった」という意味ではありません。制度変更が殺したのは価格帯であって、プラットフォームではない。同じ時期に、高単価のコレクティブル領域は前年比26%で伸びています。

逆に、成功者の発信も同じ理由で偏ります。伸びている側にいる人が「今がチャンス」と言うのも、その人の位置からは正しい。

どちらの声も、「その人がどの価格帯にいるか」を確認しないと解釈できません。そこを抜きにした「オワコン/まだいける」は、情報としてほぼ役に立ちません。

続けるか撤退するかを決める3つの基準

1. 1荷物あたりの定額コストを引いて、残るか

最優先はこれです。関税、通関手数料、ブローカー費用、国際送料。これらは売値に比例しません。自分の平均売価に対して、この定額の合計が何パーセントを占めるかを出してください。

30%を超えているなら、そのモデルは価格帯を上げない限り厳しい。10%以下に収まっているなら、まだ設計の余地があります。

2. eBayが伸ばしたいカテゴリにいるか

コレクティブル、トレーディングカード、リファービッシュ品、自動車部品、中古・ラグジュアリーファッション。これらは前年比26%成長の側にいます。それ以外は微増です。同じ努力でも、乗っている流れが違います。

ここで注目すべきは、リファービッシュ品が公式に成長ドライバーとして挙げられている点です。eBayは中古と再流通に寄せる方針を明確にしている。安く仕入れて右から左に流す人には逆風であり、状態を判断して価値を戻せる人には追い風だということです。

3. 広告費を原価に入れているか

広告収入がGMVより速く伸びているという事実は、広告なしで上位表示される前提の利益計算がすでに古いことを意味します。プロモーテッドリスティングの費用を最初から原価に入れて、それでも残るかで判断してください。

まとめ

  • 2025年8月29日に米国のデミニミス(800ドル以下の免税)が廃止され、金額を問わず課税対象になった。この措置は無期限化されており、戻らない
  • 効いたのは関税率ではなく「1荷物あたりの定額コスト」。定額は売値で割れないため、低単価ほど致命的になる
  • eBay全体のGMVは+15%だが買い手は+2%。単価が上がって流通額が伸びている
  • 重点カテゴリ(高単価)は+26%、それ以外は+6%。低単価が退場し高単価が残ったという構造
  • 広告収入は+25%とGMVより速く、上位表示のコストも同時に上がっている

「eBayはオワコンか」という問いには、正確には答えられません。プラットフォームの話とモデルの話を混ぜている限り、どちらの立場からも反例が出せてしまうからです。

代わりに計算してください。自分の平均売価から、1荷物あたりの定額コストと広告費を引いて、出品工数を時給換算して、それでも残るか。

残るなら続ければいいし、残らないなら、それは努力の問題ではなく設計の問題です。私の場合は残らなかったので、制度が変わるずっと前に国内に戻りました。

※関税率や運用は流動的です。実際の発送前には、必ずeBay Japanの関税情報ページと利用する配送業者の最新案内を確認してください。

よくある質問

結局、これから始めるのは遅いですか?

低単価の商材から入るなら、条件は過去最悪です。1荷物あたりの定額コストを吸収できないためです。逆に、高単価かつ日本に優位性がある領域(コレクティブル、中古カメラ、ヴィンテージ楽器、整備済み中古品など)に専門性があるなら、遅くはありません。むしろ低単価セラーが退場した分、競合は減っています。

デミニミスは復活しませんか?

CBPが2026年6月24日付の規則で停止を無期限化しており、2027年7月1日には法定での廃止が控えています。復活を前提にした事業計画は立てないほうがいいです。

日本郵便は使えますか?

2026年4月14日から米国宛ての引受が再開されています。ただし、CBPが認証した事業者のアプリケーション経由で事前に関税を支払う手続きが必要です。書類および100ドル以下の個人間の贈答品については、従来どおり免税で差し出せます。詳細は日本郵便の案内を確認してください。

関税はバイヤーとセラーのどちらが負担しますか?

DDU(バイヤー負担)とDDP(セラー負担)のどちらも選べます。DDUは受け取り時にバイヤーが請求されるため、受取拒否やクレームの原因になりやすい。DDPはセラーが飲むため、その分を価格に織り込む必要があります。どちらにしても誰かが払うことに変わりはなく、結局は原価計算の問題です。

英語ができないと無理ですか?

翻訳ツールで通常の実務は回ります。ただし関税トラブルや返品交渉が増えている現在は、対応に時間を割けるかどうかのほうが実務上は効きます。英語力より可処分時間の問題です。

円安なら有利では?

輸出には有利です。ただし為替は前提であって優位性ではありません。円高に戻ったときに成立しなくなる利益率で回しているなら、それは為替に賭けているのと同じです。定額コストを引いた後で、為替が動いても残る部分がどこかを先に把握しておくべきです。

無在庫販売はどうですか?

在庫切れによるセラー都合キャンセルは取引欠陥率に直結し、セラーレベル降格や出品制限につながります。加えて、無在庫は低単価・価格比較が容易な商材に寄りやすく、定額コスト上昇と広告コスト上昇の両方を最も強く受ける領域です。現在の環境とは相性が悪い手法です。

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