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【決定版】ゼノギアスの謎を徹底考察|ゾハル・デウス・接触者と輪廻の真実

ゼノギアス考察 ゲーム解説
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あなたがプレイした『ゼノギアス』の物語が、15,000年にも及ぶ壮大な叙事詩の、ほんの断片に過ぎないとしたら──?

なぜフェイとエリィの魂は、永い輪廻から逃れられないのか。全ての元凶たる戦略兵器「デウス」の真の目的とは何か。そして、万物の鍵を握る事象変異機関「ゾハル」とは、一体何なのか。

多くのプレイヤーが抱いたであろう、これらの根源的な問い。その答えは、作中の断片的な情報だけでは決して辿り着けない、遥か深淵に眠っています。

本記事は、公式設定資料集『パーフェクトワークス』を基に、点在する全ての謎を一本の線で繋ぎ、あなたの『ゼノギアス』観を根底から覆すための決定版考察です。

読み終えた時、あなたはラカンが絶望した「崩壊の日」の真実、カレルレンが神を求めた本当の理由、そしてこの星の創生に隠された壮大な計画の全てを目撃することになるでしょう。さあ、15,000年の時を超え、物語の「真実」へ至る旅を始めましょう。

 

メルマガ

1. はじめに:なぜ『ゼノギアス』は25年以上考察され続けるのか?

 

1998年の発売から四半世紀以上が経過した今なお、多くのファンを魅了し、新たな考察を生み出し続けるRPGの金字塔、『ゼノギアス』。その魅力の根源は、単なるゲームの面白さだけにとどまりません。私たちが体験した物語が、実は壮大な歴史のほんの一部分であり、その背後には深遠なテーマと緻密なSF設定が隠されているからです。


 

1-1. ゲーム本編(Episode V)は壮大な物語の断片にすぎない

 

私たちが主人公フェイとして冒険した物語は、公式設定上**「Episode V」と呼ばれる、巨大な歴史の中のひとつのエピソードに過ぎません。『ゼノギアス』の歴史は、ゲーム本編の実に15,000年前から始まる、星間戦争を舞台とした「Episode I」**から連なっています

 

Episode Iから始まり、人類創生の謎に迫る「Episode II」、超古代文明の興亡を描く「Episode III」、そして”崩壊の日”の悲劇に至る「Episode IV」。これらゲームでは断片的にしか語られなかった壮大な過去の出来事すべてが、フェイたちの物語に深く影響を及ぼしているのです。プレイヤーが感じる物語の奥深さと謎の数々は、この氷山の一角にすぎない本編の裏に、広大な未体験の物語が広がっていることに起因します。

 


 

1-2. 哲学的・宗教的テーマと難解なSF設定が織りなす魅力

 

『ゼノギアス』が色褪せないもう一つの理由は、その物語が扱うテーマの深遠さにあります。「神と人間」「魂と輪廻」「存在意義」「無意識とペルソナ」といった哲学的・宗教的な問いかけが、作中の至る所に散りばめられています。「デウス」や「ゾハル」といった神を思わせる存在 、「カイン」と「アベル」の名を持つ原初の人間 、そして「ネオ・エルサレム」という言葉 は、物語が単なるSFではないことを示唆しています。

 

これらの難解なテーマが、「事象変異機関」 や「ナノテクノロジー」 、「生体電脳カドモニ」 といった緻密なSF設定と融合することで、他に類を見ない重厚で知的好奇心を刺激する世界観を構築しているのです。

 


 

1-3. 設定資料集『パーフェクトワークス』が解き明かす「物語の真実」

 

では、ゲーム内で語られなかった空白の歴史や謎を、どうすれば知ることができるのでしょうか。その鍵となるのが、公式設定資料集**『ゼノギアス パーフェクトワークス』**です。

この書物には、ゲームのシナリオライターによって監修された詳細な年表、各エピソードの概要、そして物語の核心に迫る設定が記されています。まさに「プロデューサーの声を聞き、物語では明かされなかった事実が今こそ知られ、世界の全体像が理解される」 ための羅針盤と言えるでしょう。本稿では、この『パーフェクトワークス』を徹底的に読み解き、点在する謎を一つずつ解明していくことで、『ゼノギアス』という物語の「真実」に迫ります。

 

2. 『ゼノギアス』サーガの全体像:15,000年に渡る全エピソード概説

 

『ゼノギアス』の物語は、私たちがプレイした本編(Episode V)を遥かに超える、15,000年という壮大なタイムスケールで構成されています 。ここでは、その長大な歴史の全貌を、Episode IからVIまで順番に見ていきましょう。

 

2-1. 【Episode I】星間戦争時代(物語から約15,000年前)

 

2-1-1. 惑星間戦争と戦略兵器「デウス」システムの開発

 

物語から約15,000年前、人類は母なる星「ロスト・エルサレム」(地球)を離れ、宇宙へと進出していました 。やがて銀河系のほぼ全域に生活圏を拡大するに至りましたが、それと同時に惑星間の対立が激化し、星間戦争が勃発します 。この時代、戦争を終結させるための最終戦略兵器として、生体兵器**「デウス」と、それを制御する生体電脳「カドモニ」、そして動力源である「ゾハル」から成る「デウス・システム」**が開発されました 

 

2-1-2. 全ての始まり:事象変異機関「ゾハル」の発見

 

デウス・システムの根幹を成す**「ゾハル」**は、西暦2001年にアフリカで発掘された謎の物体です 。当初は「MAM(磁気異常物質)」と呼ばれていましたが 、その後の研究で、事象そのものを変化させて無限のエネルギーを取り出す「事象変異機関」であることが判明します 。このゾハルの発見こそが、15,000年に渡る長大な物語の全ての始まりでした。

 

2-2. 【Episode II】創始の時代(物語から約10,000年前)

 

2-2-1. 宇宙船エルドリッジ墜落と唯一の生存者アベル

 

星間戦争の末期、暴走したデウスを移送中だった巨大恒星間移民船**「エルドリッジ」は、デウス自身のハッキングにより航行不能に陥り、未知の惑星(ゼノギアスの舞台となる星)に墜落します 。この時、乗員・移民合わせて120万人以上が乗っていましたが、公式な記録に残る唯一の生存者が、少年アベルでした 。彼は墜落後、デウス・システムの中枢「カドモニ」から分離・誕生した存在「原初のエレハイム」**と出会います 

 

2-2-2. 人類の原初:カイン、ガゼル法院、そして「システムHAWWA」による人類創生

 

墜落した惑星で、デウスは自らを復活させるための部品として「人間」を大量生産する計画を開始します 。そのために、生体電脳カドモニは自己修復プログラム**「システムHAWWA」を起動 。生体分子組立プラントを用いて、人類の始祖となるカインと、彼を補佐する12人のガゼル法院**を創り出しました 。こうして生まれた新たな人類は、カインを神として崇め、地上に文明を築き始めます 。しかし、唯一の旧人類であるアベルは、カインの神格化に反発し、歴史の裏側で対立していくことになります

 

2-3. 【Episode III】ゼボイム文明(物語から約4,000年前)

 

2-3-1. ナノテクノロジーの発展と接触者キム(アベルの転生体)

 

物語から約4,000年前、地上には高度な科学技術を誇るゼボイム文明が栄えていました 。しかし、人々は遺伝子異常により生殖能力に問題を抱えており、種の存続が危ぶまれていました。この時代のアベルの転生体である科学者キムは、この問題を解決すべくナノテクノロジーの研究を進めます 。このナノテクノロジーによって、人工生命体エメラダが誕生しました 

 

2-3-2. ミァンの暗躍と核戦争による文明の「リセット」

 

しかし、人類の管理者であるミァンは、この時代の人間を「デウスの部品として欠陥品」と判断 。キムの研究を利用して新たな人類を創り出そうと画策する一方で 、国家間の対立を煽り、最終的に全面核戦争を引き起こさせます 。この核戦争によってゼボイム文明は崩壊し、人類は再び「リセット」されることになりました

 

2-4. 【Episode IV】ソラリス戦役(物語から約500年前)

 

2-4-1. 接触者ラカンとソフィア、そしてカレルレンの出会い

 

物語から約500年前、天上の国ソラリスは地上への直接支配を開始します 。これに対し、地上では反ソラリス同盟が結成され、大戦が勃発しました。この時代のアベルの転生体であるラカンは、反ソラリス同盟の中心人物であるニサンの聖母ソフィア(エレハイムの転生体)と出会い、恋に落ちます 。そして、彼らの傍には、のちに物語の鍵を握ることになる若き日のカレルレンもいました

 

2-4-2. ソラリスと地上の大戦、ディアボロス・コープスの覚醒と「崩壊の日」

 

ソラリスと地上の戦いが激化する中、ソフィアは戦火の中で命を落とします 。最愛の人を失ったラカンは絶望し、ゾハルと接触 。その強大な力に飲み込まれ、グラーフへと変貌します 。彼はデウスの第一段階機動端末兵器**「ディアボロス・コープス」を覚醒させ、地上を蹂躙 。この大破壊によって地上の人口の96%が失われ、後に「崩壊の日」**と呼ばれる悲劇となりました

 

2-5. 【Episode V】ゼノギアス本編(現代:T.C.9999年)

 

2-5-1. 記憶喪失の青年フェイとラハン村襲撃事件

 

「崩壊の日」から500年後。辺境の村ラハンで、主人公フェイ・フォン・ウォンは穏やかな日々を過ごしていました。3年前に仮面の男(グラーフ)によって村に運ばれてきた彼は、それ以前の記憶を失っています。しかし、村がギアの襲撃を受けたことをきっかけに、彼は運命の渦へと巻き込まれていきます 

 

2-5-2. デウス復活を巡る最終戦争の始まり

 

フェイは旅の途中で、ソラリスの士官**エレハイム(エリィ)や、アヴェの王子バルトロメイ(バルト)**など、多くの仲間と出会います。彼らの戦いはやがて、1万年の時を経て最終段階に入った「デウス復活計画」を巡る、星の存亡をかけた最終戦争へと発展していくのです。

 

2-6. 【Episode VI】未だ語られぬ未来

 

2-6-1. ゼノギアス完結後の世界はどうなるのか?

 

『パーフェクトワークス』によれば、Episode VIは「完全に未開拓のエピソード」とされています 。 Episode Vの後の物語であり、『ゼノギアス』という世界の終着点であること以外、その詳細は謎に包まれています。フェイとエリィがデウスの呪縛から解放された後、彼らと世界がどのような未来を迎えるのか、それは今なおファンの想像に委ねられているのです。

 

3. 物語の核心:デウスシステムとゾハルの正体

 

『ゼノギアス』の物語を理解する上で避けては通れないのが、全ての元凶である「デウス」と、万物の鍵を握る「ゾハル」の存在です。ここでは、この二つの核心的な要素と、それらに関わる高次元の存在について、その正体を解き明かしていきます。

 

3-1. 戦略兵器「デウス」とは何か?

 

物語における「神」として君臨するデウス。その正体は、15,000年前の星間戦争時代に開発された、惑星殲滅級の能力を持つ最終戦略兵器システムです。

 

3-1-1. 自己修復・自己進化する生体兵器としての機能

 

デウスが通常の兵器と一線を画すのは、それが機械でありながら**「生体兵器」である点です。ナノマシンによる自己修復能力を持ち、戦闘で受けた損傷を瞬時に回復させることができます。さらに、周囲の環境や生命体を取り込み、自らを自己進化**させる能力も備えています。

ゲームの舞台となる惑星に墜落後、1万年もの間、星そのものを母体(テラフォーミング)として自己改造と成長を続け、最終的には星と一体化するほどの巨大な存在へと変貌を遂げました。この終わりなき成長と再生能力こそが、デウスを神のごとき不死の存在たらしめているのです。

 

3-1-2. デウス復活計画の全貌:「M(マルアク)計画」と人類の役割

 

墜落によって大破したデウスは、自らを完全に復活させるため、壮大な計画を実行します。それが、惑星に創り出した**「人間」を部品として利用する**という恐るべき計画でした。

この計画の中核をなすのが**「M(マルアク)計画」**です。「マルアク」とは「天使」を意味し、これは人間を遺伝子操作によって改良し、デウスの生体部品や、デウスの母艦「メルカバー」の機動端末兵器(=天使)として再構成することを目的としています。

ソラリスが地上を支配し、時に「リセット」と称して大破壊を引き起こしてきたのは、全てこのM計画を推進し、より優れた「部品」を効率的に生産するためでした。つまり、この星の人類の歴史そのものが、兵器デウスを復活させるためだけに仕組まれた壮大な実験だったのです。

 

3-2. 万物の鍵「ゾハル」の謎

 

デウス・システムの動力源であり、作中のあらゆる超常現象の源となっているのが、巨大な目のような形をした物体「ゾハル」です。

 

3-2-1. 無限のエネルギーを生む「事象変異機関」の原理

 

ゾハルの正体は、**「事象変異機関」**と呼ばれる超テクノロジーの産物です。これは、無数に存在する可能性(事象)の中から特定のものを現実に引き出す(変異させる)ことで、その過程で莫大なエネルギーを生み出す装置です。

本来起こり得たかもしれない別の未来をエネルギーに変換している、と考えると分かりやすいかもしれません。この原理により、ゾハルは理論上、無限のエネルギー供給を可能にしています。デウスの惑星破壊級のパワーも、人の限界を超えたエーテル能力も、全てはこのゾハルが生み出すエネルギーに起因します。

 

3-2-2. なぜ人の「願い」に応えるのか?エーテル能力の源泉

 

ゾハル自体は、意志を持たないただの機械です。しかし、人の強い「意志」や「願い」に感応し、その望んだ事象を引き起こすという特性を持っています。

ゲーム内で「魔法」のように扱われるエーテル能力とは、まさにこのゾハルにアクセスし、その事象変異の力を引き出す能力のことです。特に「接触者」であるフェイは、ゾハルと最も深く繋がっており、彼の無意識の渇望や強い願いがゾハルを直接駆動させ、イドの絶大な力や世界の危機を招く引き金となっていました。

 

3-3. 高次元の存在「波動存在」

 

ゾハルがなぜ、人の願いに応えるような奇跡を起こすのか。その謎を解く鍵は、ゾハルの内部に囚われた、我々の次元を超えた存在にあります。

 

3-3-1. ゾハルとの接触により三次元世界に囚われた“神”

 

その名も**「波動存在」**。宇宙が生まれる以前から高次元に存在していた、実体を持たない純粋なエネルギー生命体です。

15,000年前、人類がゾハルの起動実験を行った際、この波動存在は事故によって高次元から我々の三次元世界へと「落下」し、事象変異機関であるゾハルの内部にエネルギー源として取り込まれてしまいました。ゾハルが持つ神のごとき力の源泉は、この囚われた高次元存在そのものだったのです。

 

3-3-2. アベル(フェイ)の願いと原初のエレハイム(エリィ)の誕生

 

波動存在は、ゾハルという牢獄からの解放を渇望していました。同じ起動実験の際、ゾハルに触れた少年アベル(最初のフェイ)。波動存在はアベルの魂の奥底にある「母を求める」という根源的な願いを感知します。

その願いに応え、波動存在は生体電脳カドモニの「ペルソナ」と呼ばれるプログラムに干渉し、アベルの対となる存在、「原初のエレハイム」(最初のエリィ)を創造しました。

フェイとエリィの魂が1万年もの間、決して離れることなく惹かれ合い、転生を繰り返してきたのは、この「神」の介入によって、彼らの存在が創生の瞬間から固く結びつけられていたからなのです。そして波動存在は、自らを解放してくれる可能性を秘めた唯一の存在として、接触者アベル(フェイ)に永劫の刻を託すことになります。

 

4. 輪廻する魂:接触者・対存在・ミァンの因果

 

『ゼノギアス』の物語の縦糸となるのが、1万年という長大な時を超えて繰り返される魂の輪廻です。なぜフェイは何度も生まれ変わり、エリィと巡り会うのか。そして、その歴史を裏から操る「ミァン」とは何者なのか。ここでは、三者の切っても切れない因果関係を解き明かします。

 

4-1. 接触者アベル(フェイ)の役割と運命

 

物語の主人公フェイ。彼の魂は、最初の人間アベルから始まり、キム、ラカン、そしてフェイへと、時代を超えて受け継がれてきました。この終わらない輪廻には、重大な意味が隠されています。

 

4-1-1. なぜ彼は10,000年の時を超えて転生し続けるのか

 

フェイの魂が輪廻を続ける理由は、彼がゾハル内部に囚われた高次元存在**「波動存在」と最初に接触した「接触者(コンタクト)」**だからです。波動存在は、ゾハルという牢獄から自らを解放するために、三次元世界における代理人を必要としました。それがアベルだったのです。

波動存在は、自らの解放という悲願をアベルの魂に託し、その魂が消滅しないように輪廻の輪に乗せました。つまり、フェイの転生とは、デウスを破壊し、波動存在を解放するという使命を帯びた、1万年に渡る魂の旅路そのものなのです。彼は、デウスと人類の運命を左右する唯一無二の鍵として、歴史の重要な局面で常に生まれ変わる宿命を背負っていました。

 

4-1-2. 破壊者としての宿命と、ペルソナ「イド」の正体

 

接触者であるフェイは、ゾハルから直接エネルギーを引き出すことで、神のごとき強大な力を振るうことができます。しかし、その力は本質的に**「破壊」の力です。そして、その純粋な破壊衝動の化身こそが、フェイのもう一つの人格「イド」**です。

イドは、フェイが幼少期に母親カレンから受けた虐待のトラウマと、接触者として与えられた強大すぎる力によって生まれた、無意識下のペルソナです。父カーンによってその記憶と人格は封印されていましたが、彼の心の深層に潜み続け、絶望や怒りに呼応して表層に現れます。その圧倒的な力は、デウスを破壊するために波動存在が与えた力そのものであり、フェイが背負った破壊者としての宿命の象徴と言えるでしょう。

 

4-2. 対存在エレハイム(エリィ)の真実

 

フェイが転生を繰り返すたびに、必ず彼の前に現れる運命の女性、エリィ。彼女の魂もまた、原初のエレハイムからソフィア、そしてエリィへと輪廻を続けています。彼女は、接触者にとっての「対存在(アンチタイプ)」なのです。

 

4-2-1. 「母」としての役割とミァンとの関係性

 

エリィの役割は、接触者が持つ強大な破壊の力に対する**「抑止力」であり、彼の魂を救済する「母」**として存在することです。原初のエレハイムが、アベルの「母を求める」という願いに応えて波動存在が生み出したように、彼女はいつの時代も接触者の傍らに寄り添い、愛をもって彼をイドの破壊衝動から守ってきました。

彼女と、後述するミァンは、元々「ペルソナ」と呼ばれる一つのプログラムから分かたれた存在です。エリィはシステムの**「OFF」状態であり「母性」を、ミァンは「ON」状態**であり「兵器」としての機能を表しています。二人は表裏一体であり、同一存在の異なる側面に他なりません。

 

4-2-2. 全ての女性に宿る「ミァン因子」とは

 

この星で生まれた全ての女性の遺伝子には、**「ミァン因子」**と呼ばれる特殊な遺伝子情報が組み込まれています。これは、デウス・システムが仕掛けたバックアップシステムです。

当代のミァンが死ぬと、即座に別の場所にいる最も適性の高い女性のミァン因子が覚醒します。覚醒した女性は、それまでの人格や記憶を全て上書きされ、新たなミァンとして再生されるのです。これにより、デウスの代弁者であるミァンは、1万年間途切れることなく歴史上に存在し続けることができました。そして、原初のエレハイムであるエリィこそが、デウス復活の日に覚醒し、デウスと融合する**「最後のミァン」**となる運命でした。

 

4-3. 歴史を支配する者「ミァン・ハッワー」

 

作中、幾度となくフェイたちの前に立ちはだかり、歴史を裏から操ってきた存在、ミァン。彼女は特定の個人ではなく、デウス復活という唯一の目的のために機能する「システム」そのものです。

 

4-3-1. デウスの代弁者であり生体端末としてのシステム

 

ミァン・ハッワーとは、デウスの意志を代行する生体端末です。彼女の役目は、人類を管理・統制し、文明をコントロールしながら、デウス復活計画を滞りなく進行させること。いわば、デウスという巨大コンピュータの地上における最高管理者(アドミニストレーター)です。

前述のミァン因子による継承システムによって、彼女の存在は不滅です。肉体は滅びても、その役割と意志は即座に次の世代に引き継がれ、歴史の舞台から消えることはありません。

 

4-3-2. 歴代ミァンの暗躍とデウス復活への執念

 

1万年の長きにわたり、無数の女性がミァンとして覚醒し、その時代時代で暗躍してきました。ゼボイム文明を核戦争で滅ぼしたのも、ソラリス戦役を裏で操ったのも、全ては当代のミァンの仕業です。彼女たちは、より優れた「部品」を生み出すために人類の進化を促し、時には戦争によって文明をリセットすることさえ厭いません。

その行動は、全て「デウスの復活」という絶対的なプログラムに突き動かされています。彼女たちの執念深い暗躍こそが、1万年にも及ぶ人類の苦難の歴史を創り上げてきたのです。

 

5. 物語を動かす者たち:グラーフとカレルレンの目的

 

『ゼノギアス』の物語は、二人の男の絶望と渇望によって大きく動かされてきました。一人は強大な「力」の化身となった悲劇の英雄。もう一人は「神」を創り出そうとした孤独な探求者。ここでは、物語の黒幕として君臨したグラーフとカレルレン、その行動原理の根源にある目的を解き明かします。

 

5-1. 力の化身「グラーフ」の悲劇

 

フェイの前に幾度となく現れ、圧倒的な力で彼を追い詰める仮面の男、グラーフ。その正体は、500年前の「接触者」ラカンが、深い絶望の果てに変貌した姿です。

 

5-1-1. 接触者ラカンはなぜ絶望し、グラーフとなったのか

 

500年前のソラリス戦役において、画家であったラカンは反ソラリス同盟の中心人物として戦っていました。彼はニサンの聖母ソフィア(エリィの転生体)と深く愛し合っていましたが、その幸せは、ソラリスのガゼル法院とシェバトの長老会による裏取引によって無残に打ち砕かれます。

ソフィアは裏切りによって見殺しにされ、巨大兵器メルカバーの攻撃によって命を落とします。最愛の人を守れなかった無力感と、人間たちの醜い裏切りを目の当たりにしたラカンは、深い悲しみと怒り、そして世界そのものへの絶望に囚われました。

彼は万能の力を求め、事象変異機関「ゾハル」と接触します。しかし、憎しみに満ちた不完全な接触は、彼の内に眠る接触者の強大な力を暴走させ、ラカンの人格を破壊衝動の化身**「グラーフ」**へと変貌させてしまいました。それは、ラカンの「イド」が完全に肉体を乗っ取った姿でした。力の化身となった彼は、地上人口の96%を殺戮する「崩壊の日」を引き起こし、世界を破滅の淵へと追いやったのです。

 

5-1-2. 500年間、転生者を追い続けた真の目的

 

ラカンとしての肉体は滅びましたが、その強大な力と意志は「グラーフ」として500年間も生き長らえました。彼は他者の肉体に憑依することで存在を維持し、ある目的のために行動していました。

その真の目的とは、自らの後継者、すなわち完全な器となるべき現代の「接触者」フェイと融合することです。

グラーフは、フェイに試練を与え、絶望の淵に突き落とすことで、彼の内に眠る「イド」を覚醒させ、自分と同じ境地に至らせようとします。それは、フェイを鍛え上げ、自らの全てを受け継がせるに足る、究極の存在へと変えるための儀式でした。グラーフにとって、フェイは憎むべき敵であると同時に、自らの悲願を成就させるための唯一無二の希望だったのです。500年に渡る彼の執着は、神(デウス)と一体化するという歪んだ野望を果たすためのものでした。

 

5-2. 神への探求者「カレルレン」の苦悩

 

ソラリスの最高実力者として君臨し、ゲブラー総司令やエトーンを操り、デウス復活計画を主導する天才、カレルレン。彼の行動原理もまた、500年前のソフィアの死に起因する深い苦悩と絶望から生まれています。

 

5-2-1. ソフィアへの愛と喪失が彼をどう変えたのか

 

若き日のカレルレンは、ラカンと共にソフィアに仕え、彼女に対して深い敬愛と愛情を抱いていました。しかし彼もまた、ソフィアの死を防ぐことができませんでした。彼は、人間が持つ不完全さ、愚かさ、そして裏切りが彼女を死に追いやったと結論づけます。

敬愛する聖母の死は、彼の人間そのものへの信頼を打ち砕きました。彼は、苦しみや争いを繰り返す不完全な人間も、それを救済しない神も、等しく不完全な存在であると断じます。そして、この絶望から、彼は常人には理解し得ない壮大な計画へと至るのです。**「完全な神が存在しないのであれば、自らの手で創り出す」**と。

 

5-2-2. 「神」を創り出し、人に成り代わろうとした計画の全貌

 

ソフィアを失った後、カレルレンはソラリスに渡り、その卓越した才能をもって瞬く間に組織の頂点に立ちます。彼はガゼル法院やミァンさえも手玉に取り、デウス復活計画を自らの理想を実現するための手段として乗っ取ってしまいました。

カレルレンの最終目的、それはデウスを復活させ、全人類を肉体の軛(くびき)から解放し、その魂をデウスと融合させて完全なる一つの存在へと昇華(アセンション)させることでした。

彼にとってそれは、苦しみも悲しみもない永遠の世界を創り出す、究極の「救済」でした。不完全な人間という存在を消し去り、自らが創造主となって新たな神(デウス)の一部として永遠の安寧を与える。この恐るべき計画は、ソフィアへの歪んだ愛と、人間という存在そのものへの深い絶望から生まれた、壮大かつ狂気に満ちた探求の果てだったのです。

 

6. 世界の構造と歴史の裏側

 

『ゼノギアス』の世界は、単純な善悪二元論では語れない、複雑な国家間の関係性と歴史の裏側が存在します。ここでは、天上から地上を支配するソラリス、それに翻弄される地上の国家、そして最後まで抵抗を続けた天空の国シェバト、それぞれの構造と思惑を解き明かしていきます。

 

6-1. 天上の国「ソラリス」と地上の民「ラムズ」

 

物語の舞台となる惑星において、絶対的な支配者として君臨するのが、成層圏に浮かぶ神聖帝国ソラリスです。

 

6-1-1. 人類の管理者ソラリスと、その被支配層の構造

 

ソラリスは、人類の始祖カインと12人のガゼル法院によって建国された、デウス復活計画の拠点です。彼らは自らを「選ばれた民」とし、地上で暮らす人々を**「ラムズ(子羊)」**と呼び、完全な管理下に置いています。

ソラリス内部も厳格な階級社会で構成されており、純血のソラリス人が住む第一級市民層「エテメンアンキ」、労働などで功績を認められた者が移住を許される第二級市民層、そして地上から連れてこられた労働力である第三級市民層「働き蜂」に分かれています。この徹底した管理体制によって、ソラリスは巨大な国家機能を維持しているのです。

 

6-1-2. 人体に埋め込まれた「リミッター」の役割

 

ソラリスが地上人を容易に支配できる最大の理由が、全人類の遺伝子に埋め込まれた**「リミッター」**と呼ばれる制御プログラムです。これは500年前の「崩壊の日」の後に、カレルレンの主導で施されました。

このリミッターには、二つの重大な役割があります。一つは、エーテル能力をはじめとする人々の潜在能力を抑制すること。もう一つは、思考そのものを制御し、ソラリスへの絶対的な忠誠心を植え付けることです。地上人がソラリスの存在自体を知らず、無意識のうちにその支配を受け入れているのは、このリミッターによる精神的な枷(かせ)があるためです。人々は知らず知らずのうちに、神(ソラリス)に管理される羊の群れと化していたのです。

 

6-2. アヴェ・キスレブ戦争に隠されたソラリスの思惑

 

ゲーム序盤の舞台となる、砂漠の国アヴェと軍事帝国キスレブの長きにわたる戦争。これもまた、ソラリスによって裏から巧妙に仕組まれた壮大な茶番劇でした。

 

6-2-1. 兵器開発の実験場としての地上世界

 

ソラリスは、デウスの部品としての人類をより効率的に進化させるため、**「闘争」**という環境を利用しました。アヴェとキスレブの戦争は、彼らにとって最適な実験場だったのです。

ソラリスは両国に兵器技術を供与し、軍事力が拮抗するように裏でバランスを調整し続けていました。これにより戦争を長引かせ、兵器の性能データや人間の戦闘データを収集し、より強力な「部品」へと人間を「改良」していたのです。地上で流される多くの血は、ソラリスの壮大な実験のための犠牲に過ぎませんでした。

 

6-2-2. 教会組織「エトーン」とゲブラー部隊の暗躍

 

この地上操作を実行するために、ソラリスは二つの組織を地上に派遣しています。

一つは、ラムズ統治のための表向きの組織である**教会組織「エトーン」**です。彼らは宗教の仮面を被り、地上人の精神を支配すると同時に、遺跡発掘や情報収集、リミッターの維持管理を行っていました。キスレブの闇の組織「B委員会」も、エトーンの下部組織です。

もう一つが、皇帝直属の特務部隊**「ゲブラー」**です。カレルレンやラムサスが所属するこの部隊は、ソラリスの尖兵として軍事行動を担当します。作中でアヴェに軍事支援を行っていたのは、彼らが意図的に戦争のバランスを操作していたためです。この二つの組織が飴と鞭のように機能することで、ソラリスは地上世界を完全に掌握していました。

 

6-3. 天空の「シェバト」とガゼル法院の対立

 

ソラリスの支配に対し、唯一公然と反旗を翻してきたのが、天空に浮かぶ王国シェバトです。

 

6-3-1. 反ソラリスを掲げるシェバトの歴史と役割

 

シェバトは、かつてアクヴィエリア中央にそびえていた「バベルタワー」の頂上部分に築かれた国家です。500年前のソラリス戦役では反ソラリス同盟の中心として戦いましたが、「崩壊の日」の難を逃れるため、首都部分を切り離して天空を彷徨う現在の姿となりました。

以降、ソラリスからの侵攻を三度にわたり退けるなど、地上の民にとって最後の希望とも言える存在です。しかし、500年前の大戦時、指導者であった長老会がソラリスのガゼル法院と裏取引を行い、ソフィアを見殺しにするという汚点を歴史に残しています。彼らの抵抗の裏には、地上支配という野望もまた隠されていました。

 

6-3-2. 肉体を捨てデータ化したガゼル法院の悲願と末路

 

人類の始祖カインを補佐した12人の賢者、ガゼル法院。彼らは500年前の「崩壊の日」にラカン(グラーフ)によって肉体を滅ぼされますが、その精神と記憶はデータとして情報集積回路**「SOL-9000」**の中に保存され、生き長らえていました。

肉体を失った彼らの悲願は、デウスと完全に融合し、不滅の肉体を得て神として君臨すること。この目的のために、彼らはソラリスの最高意思決定機関としてデウス復活を推進していました。しかし、独自の計画を持つカレルレンやミァンとは対立。最終的に、彼らは自らの野望の駒として利用しようとしたフェイ(ゼノギアス)によって、そのデータごと完全に消去され、1万年にわたる永い歴史に終止符を打つことになります。

 

7. 未回収の伏線とさらなる考察

 

『パーフェクトワークス』によって物語の大部分は明らかになりましたが、それでもなお、いくつかの謎は明確な答えのないまま残されています。ここでは、作中に残された未回収の伏線を基に、物語のさらなる深層と、語られるはずだった未来について考察します。

 

7-1. 「ロスト・エルサレム(失われた約束の地)」とはどこか?

 

作中で何度も言及される、人類の母なる星「ロスト・エルサレム」。その正体は、15,000年前に人類が旅立った故郷、**惑星「地球」**です 

 

デウスが暴走した際、エルドリッジの航行目標を本来の目的地であった「ネオ・エルサレム」から、この「ロスト・エルサレム」、すなわち地球へと強制的に変更しました 。デウスがなぜ自らの故郷でもない地球を目指したのか、その理由は作中で完全には明かされていませんが、物語の根幹に関わる重要な伏線の一つです。

 

7-2. なぜ地球は「禁断の地」となったのか?

 

『パーフェクトワークス』によれば、人類が宇宙へ旅立った直後のT.C.(Transcend Christ)暦16年、地球は**「禁断の地」**と定められ、何人も侵入することができなくなりました 

 

しかし、その理由は「不明」とされています 。惑星環境に急激な変化が起きたわけでもないとされており、何らかの秘密が隠されている可能性が示唆されています 

 

考えられる可能性としては、全ての始まりである「ゾハル」が発見された場所であるため、その存在を宇宙規模で秘匿する必要があったのかもしれません。あるいは、人類の存在そのものに関わる、さらに根源的な秘密が地球には眠っているとも考えられます。この謎は、『ゼノギアス』サーガにおける最大のミステリーの一つとして残されています。

 

7-3. ゼノギアス(ギア)とゾハルの関係性

 

物語のタイトルでもある最強のギア「ゼノギアス」。この機体は、単なる高性能なギアではありません。それは、「接触者」が「ゾハル」の力を完全に引き出すために存在する、唯一無二のインターフェースです。

500年前にラカンが駆った「オリジナル・ヴェルトール」は、ゾハルと接触することで絶対的な力を引き出し、ゼノギアスと同様の変貌を遂げたとされています 。つまり、ゼノギアスとは、接触者(フェイ)の精神、動力源(ゾハル)、そして機体(ヴェルトール)の三位が一体となった時に初めて覚醒する、神を殺すためのシステムなのです。

 

**ゾハルが神の「心臓」であるならば、ゼノギアスは神を討つための「拳」**と言えるでしょう。

 

7-4. Episode VIで語られるはずだった物語とは

 

『パーフェクトワークス』において、Episode VIは**「完全に未開拓のエピソード」

であり、「ゼノギアス世界の終着点」**であると記されています 。具体的な内容は明かされていませんが、Episode Vの結末からその物語を推測することは可能です。

 

Episode Vのエンディングで、フェイとエリィはデウスの軛(くびき)から解放され、ゾハル(波動存在)もまた永い囚われから自由になりました。Episode VIで語られるはずだったのは、「神」という支配者を失った人類が、自らの足で歩み出す未来の物語だったのではないでしょうか。

それは、人類が再び星々の海へと旅立ち、かつて自分たちを創り出した異星文明や、あるいは宇宙に存在するであろう真の脅威と対峙する物語かもしれません。そして、フェイとエリィが、1万年にも及ぶ輪廻の宿命から解放された「ただの人間」として、その未来をどう生きていくのかを描く、壮大なサーガの完結編となるはずだったのでしょう。

 

8. まとめ:『ゼノギアス』が問いかける「存在意義」と「神殺しの物語」

 

15,000年という壮大な時を超え、数多の魂の輪廻を経て紡がれてきた『ゼノギアス』の物語。その核心は、一つの根源的な問いへと収束します。それは「人の存在意義は何か?」という、私たち自身にも通じる問いかけです。


 

8-1. 人は神(デウス)の部品なのか、あるいは独立した存在なのか

 

『ゼノギアス』の世界において、人類は**戦略兵器「デウス」を復活させるための「部品」**として生み出されました 。その1万年の歴史は、より優れた部品を生産するための、創造主による壮大な実験に他なりませんでした 

 

カレルレンが目指した「全人類のデウスとの融合」は、この考えを突き詰めた究極の形です。つまり、人は神の一部となることで初めてその存在意義を全うできる、という思想です。

しかし、フェイやエリィたちは、この仕組まれた運命に抗い続けました。彼らの戦いは、創造主の都合で生まれ、死んでいく「部品」としての生を拒絶し、自らの意志で生きる「独立した存在」としての尊厳を勝ち取るための闘争でした。人は神のために存在するのではない。人は、人のために存在するのだと、その生き様をもって証明しようとしたのです。


 

8-2. 15,000年の物語の果てにフェイとエリィが見つけた答え

 

永い輪廻の旅路の果てに、フェイとエリィが見つけ出した「存在意義」の答え。それは、決して難解な思想や哲学ではありませんでした。

答えは、ただ愛する人と共に生きたいという、極めてシンプルで純粋な願いでした。

フェイは、イドという破壊の衝動も、臆病な自分も、その全てをエリィへの愛を通じて受け入れ、一つの統合された人格となりました。エリィもまた、母やミァンという役割から解放され、ただ一人の人間としてフェイを愛することを選びました。

二人が最後にデウスを打ち破った力は、接触者や対存在という特殊な力だけではありません。1万年間、引き裂かれてもなお求め続けた互いへの想い、そして未来を共に生きたいと願う強い意志こそが、神をも殺す力となったのです。

『ゼノギアス』は、人に作られた「神」を殺し、その支配から脱却することで、人は初めて真の「人間」になるのだと語りかけます。15,000年に渡る壮大な物語がたどり着いた終着点。それは、存在意義とは誰かに与えられるものではなく、誰かを愛し、誰かと共に生きたいと願う、その心の中にこそ見出せるという、普遍的な愛の物語なのです。

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